登録日:2011/03/10(木) 21:02:21
更新日:2025/01/26 Sun 12:26:21
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Necropotence / ネクロポーテンス (黒)(黒)(黒)
エンチャント
あなたのドロー・ステップを飛ばす。
あなたがカードを捨てるたび、あなたの墓地にあるそのカードを追放する。
1点のライフを支払う:あなたのライブラリーの一番上のカードを裏向きのまま追放する。あなたの次の終了ステップの開始時に、そのカードをあなたの手札に加える。
概要
マジック史上でもトップクラスの
ドローエンジンで、極めて強力なメリットとデメリットを持つ。
自らのライフを犠牲してアドバンテージを得るカードが多い
黒の中でも尚、その効果は強烈である。
まず自らのドローを飛ばす効果。
カードを引けなくなるということは結果的にカード・アドバンテージを失う強力なデメリット能力であると言える。
第二の効果はあまり目立つものではないが、捨てた手札が墓地に行かないのでハンデスを食らったときのリカバリーが厳しかったりと忘れた頃に効いてくることがある。一応マッドネスはちゃんと使えるので安心。
そして第三の効果、これこそがネクロポーテンスのキモであり第一の効果と対となるメリット効果。
自らのライフを代償として、その分だけカードを手札に加えることができるのだ。
正確に言えば手札に加えられるタイミングは自らの終了ステップ開始時なのでライフを払ってすぐに手札に入るわけではない点に注意。
一見、非常に使いづらいように見えるが実際は強力な効果である。
マジックは使えるカードが多ければ多いほど有利になる、当然だろう。
ライフを払って危険になる?なら倒される前に倒せばいいだけの話である。
実際、マジックではライフの優位性よりも使用可能なカード枚数の優位性のほうが優先度が高い傾向にある。(一概には言えないが)
ヴィンテージだとデメリットが重くのしかかる前に相手が死ぬので
Necropotence / ネクロポーテンス (黒)(黒)(黒)
ソーサリー
ネクロポーテンスを唱えるための追加コストとして、10点のライフを失い、次のドロー・ステップでのドローを飛ばす。
カードを10枚引く。
と読み替えられるとか。
とは言うもののやはりライフ損失とドロースキップというデメリットは大きく、このカードをメインで使う場合、その点を気をつけたデッキ構築にしないといけない。
↑で挙げた例のように殺られる前に殺るか、何らかのライフ回復手段と絡めるか、使い終わった後は破壊する手段を残しておくか、等々。
だいたい「ドロー」に読み替えられるので意識されることは少ないが、手札補充効果は厳密には「カードを引く」効果ではない。近年流行している《
オークの弓使い/Orcish Bowmasters》などのドローメタをすり抜けることが可能であり、下記関連カードにはないこのカード独自の利点である。
これだけ強力ながらマナ・コストが黒3マナなのも優秀。一見トリプルシンボルが重そうに見えるが…
暗黒の儀式 / Dark Ritual (黒)
インスタント
あなたのマナ・
プールに(黒)(黒)(黒)を加える。
黒おなじみの《
暗黒の儀式》を使えば簡単にこの問題が解決する。
ここまで持ち上げて書いては見たものの実はこのカード、当初
カスレア扱いされていた。
理由は上でも述べているとおり、ドローが出来なくなること、ライフの損失のデメリット、そしてカードが手札に入るタイミングの問題で使いづらかったという点が挙げられる。
また《
黒の万力》という手札の枚数が多ければ多いほどダメージを受けてしまうという露骨なアンチカードがあったのが使われなかった理由でもあるだろう。
しかし、《黒の万力》が制限指定されたことと良き相方である《
ネビニラルの円盤》を見つけたことによって後に語り継がれることとなる
「ネクロディスク」というデッキが誕生することとなる。
まぁ「ネクロディスク」については「
ネクロの夏」の項目を参照していただければわかるだろう。
この当時の使われ方は主に「消費した手札を毎ターン上限値(7枚)まで回復できる」というものだった。
そしてしばらく後、エクステンデッド・フォーマットで新しい使用法が発見される。
それが、
ドネイトデッキの発明から生まれた
コンボパーツの急速確保という使い方。
MtGのコンボデッキにはいくつかアーキタイプというものがあるが、その中に「これとこれが揃うと勝利」というのがある。
いにしえの
チャネルボール以来から存在するコンボデッキの手法だが、ネクロポーテンスがこの戦略に非常に適している事が分かったのだ。
「ネクロを置いてライフの許す限り手札を引っ張り、コンボに必要なものを選抜して後は捨ててしまえ。どうせ次のターンに人は死ぬのだ」
という、乱暴だが至極まっとうな理屈である。
青いカード2枚で(ほぼ)勝利になるドネイトコンボとの色の組み合わせ・コンボパーツであるIllusions of Grandeurのライフゲインでネクロお代わりという構成カードの相性の良さから生まれた、
この「ネクロ・ドネイト」はトーナメントシーンを
荒らし回り、以後の環境にも影響を与えることになった…。
色々逸話のあるこのカードだが英語版しか存在しなかったアイスエイジの頃はそのテキストの長さで初心者にはもはやカード効果がわからないカード扱いだったらしい。
マジックは敷居が高いという先入観はこういう難しいカードが有るせいなのかもしれない。まぁそれが面白いところでもあるのだが。
ちなみに当時の英語版をそのまま訳すとこんな感じになる。
Necropotence / ネクロポーテンス (黒)(黒)(黒)
エンチャント(場)
あなたのドローフェイズを飛ばす。もしあなたが手札を1枚捨てたなら、そのカードを
ゲームから取り除く。
0:ライフを1点支払い、ライブラリーの一番上のカードを脇に置く。あなたの次のディスカードフェイズの開始時に、そのカードをあなたの手札に入れる。ダメージを軽減もしくは移し替える効果はこのライフ喪失に対しては使うことができない。
このようにMtGに多大な影響を与えたネクロポーテンスだが、今現在使える環境はエターナルのみ。
そのうちレガシーでは
禁止カードであり、ヴィンテージだけは使用可能だがそこでも
制限カード扱いである。
一応
統率者戦では使えるが、使った瞬間に真っ先にヘイトを勝って自分が死ぬリスクを背負うことになるのでかなり使い所を選ぶ。
しかし、初期ライフが倍になっているので通ったときの見返りもより大きい。
ちなみに
MTGアリーナ限定フォーマットのタイムレスでは何と無制限で4積み可能。そこでは同じくヴィンテージ級カードの《ボーラスの城塞》とタッグを組み、
『ネクロで不要牌を弾き、城塞の能力でライフを払って呪文を踏み倒す。ライフが足りなくなったら《苦悶の触手》で補充。準備が整ったら2枚目の触手か城塞のタップ能力で相手ライフを消し飛ばして勝ち』
という素敵すぎるデッキが登場。城塞は6マナと重いためネクロは城塞着地までのドローソースとしての役割も担う無駄のないデザインをしている。
ネクロのあり得ない程のカードパワーを体験してみたい方は
規制される前にプレイしてみるのも一興。
関連カード
このカードは環境に影響を与えただけではなく後のカードの作成にまで影響を与えている。
具体的に言うと「ライフ1点=1ドロー」という等式を確立させ、黒の手札補充の一つのスタンダードになった。
ネクロポーテンスが登場したのは1995年。カードゲームというジャンルそのものが手探りだった時代に現れ、カード入手がライフ維持よりも重視されることを、その並外れた強力さによって一般的なプレイヤーにまで知らしめた功績は大きい。
ネクロポーテンスはマジックを一段進化させたのだ。
ということで、特に関連性の深い派生カードを見ていく。
Greed / 強欲 (3)(黒)
エンチャント
(黒),2点のライフを支払う:カードを1枚引く。
ネクロよりも前に登場したライフを払うドローソース。
消費ライフに加えてマナまで要求するのでネクロに比べて明らかに効率が悪いが、それでも継続的なドローソースとしては優秀。
なのだが、言うまでもなくネクロがカスレア扱いだったときはこっちもカスレア扱いだった。ネクロが真のポテンシャルを発揮してからは翻ってきちんとした評価をされるようになっている。
Yawgmoth's Bargain / ヨーグモスの取り引き (4)(黒)(黒)
エンチャント
あなたのドロー・ステップを飛ばす。
1点のライフを支払う:カードを1枚引く。
ネクロのリメイクであり、ネクロ本体と下記の《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》と並ぶ黒のドローエンチャント三銃士の一つ。通称「バーゲン」。
ネクロポーテンス特有の面倒くさい挙動を分かりやすくすっきりした形にした結果、ネクロよりもデメリットが少し軽くなりドロー効果を起動したら即座に手札に加わるようになった。代わりにマナ・コストは2倍になっている。
一瞬のうちに大量ドローしてコンボに繋げられるという相当大味な使い方ができるカードで、着地したら最後コンボが通るか自滅するかの二択になるので「裏のエンドカード」とも言われる。
エクステンデッド・エターナルではそんな一面のせいで本家ネクロよりも早く規制された伝説を持つが、やはり6マナというコストは無視できなかったのかスタンダードは規制されず完走し、ヴィンテージでも同様の理由からこちらは規制解除された。
Phyrexian Arena / ファイレクシアの闘技場 (1)(黒)(黒)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたはカード1枚を引き、1点のライフを失う。
こちらもネクロのリメイクであり、黒のドローエンチャント三銃士の一つ。通称「アリーナ」。
ネクロポーテンスのライフロスを除くデメリットをなくした代わりに自分のアップキープに各1度しかドローできなくなった。マナ・コストに関しては3マナという点は同じだが黒マナが一つ減っている。
爆発力を失いかなり大人しくなったが、ライフだけで継続的に1枚のハンド・アドバンテージを確保できるのは相当優秀。コントロール系デッキであればこれ1枚でじわじわとアドバンテージ差を広げられる。
強力でありながら壊れていはいないという絶妙すぎるカードパワーゆえにアリーナからの派生カードも含めればスタンダード環境にも長く登場し、デッキ次第では下の環境でも十分使われる良カードである。
ちなみに三銃士の残る2つ《ネクロポーテンス/Necropotence》《ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth's Bargain》とは相互互換という関係性で、適正デッキが異なる。
それぞれネクロは速攻、バーゲンはコンボ、アリーナはコントロールに向いていると言われているが、環境次第では十分他のアーキタイプでも使われうるポテンシャルを持っている。
Night's Whisper / 夜の囁き (1)(黒)
ソーサリー
あなたはカードを2枚引き、あなたは2点のライフを失う。
ネクロ(正確にはバーゲン)2回分を切り出した呪文。先程触れた「ライフ1点=1ドロー」という等式がそのままこちらでも成立している。
現在の黒のドロー呪文はこれが基準になっており、ここから様々な追加効果が付与されて各エキスパンション用ドローソースとなっている。
Griselbrand / グリセルブランド (4)(黒)(黒)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー — デーモン(Demon)
飛行、絆魂
7点のライフを支払う:カードを7枚引く。
7/7
生ける《ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth's Bargain》とでも言うべきクリーチャー。バーゲンより2マナ重くなったが色々とオマケも付いている。
払うライフは固定で7点なので小回りが利かないが、クリーチャーになったことで場に出す手段が豊富。
より詳しくは
項目参照。
Necrodominance / ネクロドミナンス (黒)(黒)(黒)
伝説のエンチャント
あなたのドロー・ステップを飛ばす。
あなたの終了ステップの開始時に、望む点数のライフを支払ってもよい。そうしたなら、その点数に等しい枚数のカードを引く。
あなたの手札の上限は5枚である。
カードや
トークンがいずこかからあなたの墓地に置かれるなら、代わりにそれを追放する。
ネクロのリメイク令和版。
マナ・コストは完全にネクロと同じだが、追放デメリットが重くなり、更に手札上限に制限がかけられるようになった。ドローについても終了ステップにまとめてライフを払う形になっている。地味に伝説になってるが本家の時点で複数枚並べる意味が皆無に等しかったのでこれは伝説参照カードの恩恵を受けやすいというメリットの側面の方が大きいか。
デメリットの中では手札上限が痛く、インスタント・タイミングで使い切ったり最後に手札調整する前提でない場合の最大ドロー枚数は5枚と本家比で2枚も減っている。あとモダン環境では《暗黒の儀式》がいないのも厳しい点。とはいえライフだけで一瞬で手札を回復できる点は変わらず優秀で、このカードをドローソースにした【黒単ネクロ】というデッキが成立している。
インスタント・タイミングでカードをプレイする手段がある場合は引ける枚数は当然多くなる。この点を活かし終了ステップにブン回すというコンボデッキが考案されていたりする。
Necro-Impotence (黒)(黒)(黒)
エンチャント
あなたのアンタップステップを飛ばす。
あなたのアップキープの開始時に、あなたはX点のライフを支払ってもよい。そうした場合、X個のパーマネントをアンタップする。
1/2点のライフを支払う:あなたのライブラリーの一番上のカードを裏向きに追放する。ターン終了時に、そのカードをあなたの手札に加える。
ジョークエキスパンション『アンヒンジド』に収録された
パロディカード。
起動に必要なライフコストは銀枠特有の1/2点になっている。半減しているのでここは強化点。
ドローステップの代わりにアンタップステップを飛ばし、アンタップするのにライフを要求されるが、これも通常アンタップしない置物をアンタップできるようになるのでコンボパーツとしての応用も効く。
そして捨てたカードを追放する効果は丸ごと削除されている。
分数ライフ支払いを除けば一見してまっとうなカードに仕上がっているのだが、ではどこがパロディカードなのかというとまずカード名。「死の力」に否定を意味するimが挟まることで「
死のインポテンツ」になってしまっている。
まともに見える効果も要は
「勃たなくする」効果で、カードイラストではネクロポーテンスで描かれていた骸骨がひどくしょんぼりとしている。しかも骸骨の額には"♂"の矢印部分が下向きにへにゃっと曲がった記号が描かれている。
――死の円盤が輝く夏はもう来ない。今では思い出として語られるばかりである――
追記・修正ステップを飛ばす
1点のライフを支払う:この項目を
全消しする。あなたの次の登録ステップの開始時にこの項目の追記・修正を行う。
- ネクロの夏の時代だと一枚何円くらいしたの? -- 名無しさん (2014-02-05 00:34:37)
- シングルカード販売の概念が殆ど無かった -- っt (2016-04-17 21:40:15)
- ちなみにmtgにおいてカード1枚の価値はおおよそライフ3点弱といわれてる。つまりこのカードは約3倍の効率でアドを生み出す。どれほどぶっ壊れかお分かりいただけるだろうか -- 名無しさん (2016-06-16 08:59:00)
- 当時のマジック専門誌ではかなり注目されてて、「強い」と言い切ってた編集者も少なくなかったが、プレイヤーの間では躊躇されてたんだよな。 -- 名無しさん (2016-06-16 09:14:48)
- 手札に加えたりそれを使う自分のターンが来るまでのタイムラグは大していたくないの? -- 名無しさん (2017-01-27 09:19:22)
- マークのデッキ見ると「インスタントで動くカードは1種類のみ、しかもピッチで撃てる」なので、相手のターンで考えなくてよかったみたい。第2メインで使った手札の枚数に応じてペイライフで引けばラグもほぼ無いし -- 名無しさん (2017-01-27 15:00:29)
- 遊戯王だとマクロと櫃を足した感じだが既に裏除外まであったとかさすが元祖だな -- 名無しさん (2017-01-27 16:05:58)
- 遊戯王だと《悪夢の蜃気楼》が近いのかな? 使い勝手は異なるだろうが、消費した手札をタダみたいなリソースで回復させられるという点では。 -- 名無しさん (2019-08-29 17:21:46)
- ネクロが本当にやばかったのはコンボデッキに使われた時で、ネクロの夏は強いけど禁止レベルのヤバカードではなかったんだよなあ -- 名無しさん (2020-12-22 10:00:29)
- 今ではEDH御用達カード、加えるなのでドローロックを抜け出せるのも強み -- 名無しさん (2021-02-12 10:14:24)
- ズアーの頭の上に乗っかっていた -- 名無しさん (2022-08-19 21:52:25)
- 「死のインポテンツ」という冷静に読むとおそろしく嫌な字面 -- 名無しさん (2023-01-09 19:50:56)
最終更新:2025年01月26日 12:26