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バント(野球・犠打)

登録日:2009/12/26 Sat 17:57:42
更新日:2026/06/27 Sat 20:44:44
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バント(bunt)とは、野球において打者がバットを振らずに意図的に内野ゴロを転がすことにより、進塁や出塁、あるいは得点を狙う技術である。

▽目次

◎主なバントの種類

○送りバント

その名の通り、1塁や2塁の走者を次の塁へ進めるためのバントである。
正確な名称は英語では「サクリファイス・バント」
日本語では「犠打*1」「犠牲バント」である。

バントは打球の方向を容易にコントロールできるため、「2塁あるいは3塁への送球が遅くなる場所」に向けて転がすことで、走者が刺される確率を可能な限り下げるために行われる。
野球のルール上、フライ(いわゆる小フライ)にしてしまうと走者が進塁できない……どころか、バントを当てにして飛び出した走者が刺されてしまうため、送りバントに限った話ではないが何としてでもゴロにしなければならない。

日本プロ野球の指名打者制を採用しない試合で無死、一死で投手の打順を迎えた場合はこれを行うことが多い(投手は打撃練習に時間を割けず打力で大きく劣ることが多いため)。

米大リーグのナショナル・リーグでは、スモールベースボールを好む監督が率いるチームでは投手が打席に立った際に見られることもある一方、
指名打者制のアメリカン・リーグでは滅多に見られない。
これはメジャーリーガーの身体能力の高さに依るところが大きく、日本でも打力の高い外国人投手にはバントをさせず普通に打たせることがある。
逆もまたしかりで、たとえ正規の打者であっても打力が低く安打が期待しにくい選手なら状況によって犠打をさせる場合もある。
予告先発制度と大谷ルールができた現在ではまずないが、指名打者に投手を偵察メンバーとして置いてしまう采配ミスによって起きたこともある*2
基本的に日本以上に分業制が顕著なMLBにおいて、投手が打撃練習して打撃力を磨くことや野手転向を前提に打撃練習を行うことは、ほぼない。よって、打撃練習せずにパワーと体格に任せて振り回すか、さもなくば責めてバントだけ練習して送りバントに徹するかの、二つに一つである。

高校野球以下の守備力水準においては、送りバント性の打球で偶々打者走者が生還してしまって内野安打となることも少なくない。

◇主な犠牲バントの名手
  • 川相昌弘(元巨人→中日)=現役通算533犠打の世界記録保持者
  • 宮本慎也(元ヤクルト)=シーズン最多犠打記録保持者
  • 関本健太郎(元阪神)
  • 桑田真澄(元巨人)←投手
  • 今宮健太(ソフトバンク)←現役最多犠打記録保持者
  • 山本昌(元中日)←投手の犠打数日本記録保持者
  • 菊池涼介(広島)←シーズン最多安打&最多犠打の同時達成(史上初)
  • 荒木雅博(元中日)
  • 田中浩康(元ヤクルト→元DeNA)

晩年の川相はバント専門の代打として登場するだけで、球場を大歓声で包ませた。
※川相のバント職人としての伝説としてはじめに1球ライン上にバント、次の球をバントして前の球に当てることができる、といったものがある。


○セーフティ・バント

セーフティ・バントは「セーフ」すなわち出塁を狙ったバントであり、基本的には俊足の選手が行う戦術である。
送りバントと異なり、日米・アジア関係なく俊足の選手なら塁に出る手段の一つとして普遍的に行われている。
またプロに比べて守備のレベルが低いことが多い学生野球の場合、打者が目立った俊足でなくとも投手への揺さぶり等を目的として行うこともある。
オールスターでホームランを予告した後に行った歯の白い強者(宇宙人)もいたりする。

基本は走者のいない時に行う戦術だが、前記した送りバントの状況で走者を進めつつ、自らも塁に生きようとするパターンもある。
「どうせなら生きようとした方が良いに決まってるじゃん」と思うかもしれないが、理想的な送りバントと理想的なセーフティでは大きく差がある。
例えばバントの構えをとるタイミングは、セーフティはバントを事前に読まれると厳しいので相手に悟らせずギリギリで当てに行くが、送りバントは多少バントを警戒されるより狙いを定めて確実にゴロにする方が大事であるため投手が投球フォームに入ったらすぐ構えることが多い。
転がす場所もセーフティではライン際狙いなどの挑戦的な転がし方が求められる。

また長打力のある選手が内野が後退守備を敷いている時、ツーアウト満塁といった状況で奇襲をかける目的で行うこともある。
ツーアウト満塁でサヨナラセーフティバントという事例もある。無論成功すれば値千金であるが失敗すればネタにされる

◇主なセーフティ・バントの名手
  • イチロー(マリナーズ)
  • リッキー・ヘンダーソン(元アスレチックス、通算盗塁数世界記録保持者)
  • 波留敏夫(元横浜→中日→ロッテ)
  • 小坂誠(ロッテ→巨人→楽天)
  • ホアン・ピエール(ホワイトソックス)
  • エンディ・チャベス(マリナーズ)
  • ルイス・カスティーヨ(メッツ)
  • ジャック•ブルームフィールド(近鉄→南海、パ・リーグ初の外国人選手による首位打者)
  • 張本勲(日拓→巨人→ロッテ)

スクイズ・バント

スクイズ・バントは走者が3塁に存在する際に行う戦術である。基本的には単にスクイズと呼ばれる。
何かの酒やガムのCMでも言っていたが「スクイズ(squeeze)」は「搾り出す」という意味があり、「得点を搾り出すバント」という意味である。

端的に言えば、3塁走者を進めて得点するための送りバント
とはいえ通常の送りバントの感覚では本塁には間に合わないため、3塁走者に本塁への盗塁を行わせる必要があり、バットに当てられなかった場合ほぼ走者は挟殺プレーでアウトとなる。
そのため打者は身を挺してバットにボールを当てる必要があり、ベンチも的確なタイミングでの戦術の採用が必要となる。
打者がバントした後に3塁走者がスタートするスクイズも存在し、その場合は「セーフティースクイズ」と呼ばれる。

この戦術は主に高校野球で良く見られるが、日本プロ野球においてもたまに用いられる。
基本的には通常の送りバントと同じく、投手などの打撃に期待できない選手の打席で点が欲しい場合に用いられる。プロ野球ではギャンブルスタート絡みのスクイズはあまり見られず大抵セーフティースクイズになる。

また非常に稀なケースだが、ランナー2、3塁で二人の走者を本塁に還す「2ランスクイズ」という戦術がとられることもある。

近年では2014年に広島の菊池涼介が決めたことがある。この際は菊池自身もセーフになっている。相手のミス絡みではあるが2016年にDeNAの関根大気も2ランスクイズを決めた。
決めた相手はいずれもヤクルト。
また、2018年の夏の甲子園では金足農(秋田)が2ランスクイズを決めてサヨナラ勝ちしている。
2021年にはシーズン最終戦でオリックス・安達了一が楽天相手に2ランスクイズを決めた。
「身を挺して」スクイズをする選手としては石原慶幸(広島)が有名。
その派手な飛び付きっぷりから「空飛ぶキャッチャー」と呼ばれることもある。

◎送りバントは愚策?

高校野球では使用されることが多いが、プロ野球では監督によって使用量は大きく異なる。
頻度だけでなく使いどころにも監督の能力や勝負勘が反映される戦術と言える。
歴代のプロ野球監督の中でも極端なアンチ・バント派として知られるのは、横浜ベイスターズを優勝に導いた権藤博である。
彼は「送りバントはわざわざ敵にアウトを献上するもの」との考えを持っていた。
ただ、そんな権藤も選手の自主的な判断によるセーフティバントや試合・シーズンの重要局面における送りバントは否定していない。

実際のところ、送りバントとは理論上は損な作戦であり、野球が数字で語れないことの代表例である。
日本野球において「ノーアウト1塁なら送りバント」は「堅実な戦術」と言われていたこともあったが、野球を統計で見た「セイバーメトリクス」によるとノーアウト1塁よりワンナウト2塁のほうが得点の期待値は0.1~2点下がる(送りバントが成功する前提であり、失敗を考慮したら当然もっと下がる)とされており、権藤のような送りバントアンチは現代野球においてむしろ正当性を得ており、「(送り)バントは愚策」と当たり前のように言われている。

だが権藤が全てを否定していないように、具体的な例として同点の状況においては、重要なのは「1点でも取れるかどうか」であり、「得点期待値=何点取れるか」は適切な評価基準ではないため、「1点を取るための戦術」としての送りバントは統計上も有効である。
……ただし、無死→1死で走者を前に進めるだけでは「1点取れる確率」も大して上がるわけではないとされているため、追加点が全く意味を持たない同点9回裏以外では必ずしも適用できないが。
2009年*3のペナントレースにて、4点ビハインドの8回にバントさせた某九州のチームの監督は某巨大掲示板で「勝つ気無いのか?」とかなり叩かれた。
ランナーを2塁に進めて得点圏で強打者の打席を迎えた……と思ったらその打者が丁度空いた1塁に歩かされたなんてのはザラ。
近年ではひとたび不可解なバント戦術が行われると、ファンの非難の声によりSNSが炎上状態になってしまうことも。

もっとも統計は統計にすぎず、「送りバントした方が期待値が下がるため送りバントする意味はない」というのもまた極論である。
なぜならば統計では打者の力量や投手の力量等は一切考慮されていないため。当然ながら、その打者が3割打てるのと2割も打てなそうなのとではバントの評価は全く異なる。
送りバントの「損益分岐点」は僅か打率1割強と言われており、通算打率だけで見ればそんな打者が打席に立つ事はプロ野球では稀ではあるが、「打率」と「その打席で打てる確率」はイコールではない。
分かり易い例で言えば相手投手が絶対的エースだとか絶対的守護神レベルであったり打者にとって極端に相性の悪い投手だったりすれば、「その打席で打てる確率」は大幅に下がってしまうことはあり得る。
それ以外にも様々な心理的要因も考慮する必要があり、バントという選択肢によって守備への「揺さぶり」が発生するのは紛れもない事実である。
打ちにいった結果ダブルプレーになった時に「流れが悪くなる」……といった表現はデータ的には無意味だろうが、実際にプレーする選手への影響がないとは言い切れないだろう。

そしてバントというのは警戒されないほど成功しやすいので、バントが有効ではないと認識されるほどバントが不意打ちとして有効になるというある種のパラドックスがあるため、極端に廃れていくことはおそらくないだろう。


なお、日本における送りバント文化の背景として、各国のプロリーグとは異なりアマチュア、特に高校野球は原則トーナメント制であることがしばしば挙げられる。
前述したように高校野球では送りバントが多用されるが、「年間100試合以上を戦って総合戦績で争う」のと「1回負けたら全てが終わる」のとでは、実際には1つの試合に勝つための理屈はほぼ変わらないとしても、「確実性」に対する考え方や、「得点期待値」と「得点成功確率」とどちらが大事なのかの判断が変わってくるのは当然だろう。
また、バント処理は守備の中でも特に難しいため、アマチュアではミスを誘発しやすく、プロ基準の統計はそのまま当てはめられない。実際にバント処理で誤ったゆえに試合が動いたことは高校野球の方が圧倒的に語られているだろう(プロでもないわけではない*4が)。
そして日本のプロは原則的に高校野球を通る以上、バントを尊重しがちというのもあるし、バントができて当然の技術として身についている……という構造があると思われる。


◎余談

甲子園出場常連校の愛肛大冥殿…もとい愛工大名電が多用する事でも有名。
甲子園で送りバントやセーフティーバントが決まると『ナイスメイデン』と賞賛され、失敗すると『ダメイデン』とがっかりされる。
ワンアウトじゃない。0.5アウトだ。

また、とある野球ゲームではバントでホームランが出来たりする。

里崎智也は自身の公式YouTubeチャンネルの動画で「バッテリー以外の野手は基本1番かクリンナップを打っている選手がプロ入りするので、そいつらがアマチュア時代に送りバントの練習なんかする訳ない」という趣旨の主張をしており、「アマチュア時代にバントするような(打順の)奴はプロには入れません!」と高校野球とプロ野球でバントの技術において逆転現象が起こっている理由について端的に説明している。

大リーグでは「アンリトゥンルール(不文律)」という物が適用されており、7点差以上の点差が付いた試合でバントや盗塁を行うのは「死者に鞭を打つ行為」だとして禁止されており、成功してもケガするレベルの報復死球をされても自業自得とみなされるらしい。
この件に関して元中日監督の落合博満が自らの著書で、ルーキーだった頃の大島洋平が大量リードした場面でセーフティバントを試みた際に大リーグの関係者から批判された例を挙げ、

「どれだけ大差が開いていようと勝つ為に死力を尽くすのは、プロである以上は当然の事。」
「審判が試合終了のコールを告げるまでは、試合というのは何が起こるか分からない。」
「大島だってレギュラーを取るのに必死で、何とかして塁に出ようと工夫した結果がセーフティーバントなんだ。」
「死者に鞭を打つ行為だと言うが、うちのチームだって大差がついた状態から大逆転された事がある。」

などと持論を展開し、大リーグを痛烈に批判していた。
日本は 一度でも負けたら終わりなので死ぬ思いで勝ちにいかないといけない甲子園大会があり、そこでは同じチームともう一度戦うのは何年先になるかわからずその時にはメンバーは大半入れ替わっている。
という性質上「実際のルールにはないが破ったら次の試合で報復される不文律」があまり馴染まないという特徴がある*5
それでもNPBでも似たような不文律自体は存在し、過剰リード中にバントや盗塁が好まれないという事例自体は存在する。特にナイターだと試合終了時刻次第では普通に終電が終わるため。ましてや18歳未満の場合は青少年健全育成条例で深夜徘徊が禁止されているため、そうした観客への配慮も必要である。


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最終更新:2026年06月27日 20:44

*1 狭義の犠打は=送りバントで、これは野球の記録の分類として公認野球規則上定義されたものである。だが広義には、犠牲フライ(犠飛)も含めたものを犠打とすることも多い。

*2 指名打者は特筆すべき理由がない限り必ず一打席は立たなくてはならないため。

*3 まだセイバーメトリクスが日本で市民権を得ていない頃だが、さすがにそれ以前でも「大量得点が必要な時にバントは愚策」というのは共通認識である。

*4 バントに限らず「予想以上に勢いがない内野ゴロ」の処理はプロでも難しい。人工芝の抵抗を見誤ったこと、打者走者が俊足の柳田だったことででサヨナラ三塁線内野安打を許してしまった2017年6月6日のヤクルト-ソフトバンク戦(いわゆる「崩れ落ちる久古事件」)などが著名

*5 これに加え、高校野球の場合、仮に抗議の意味合いで故意死球を与えた場合、「故意に怪我をさせうるプレイを選択した」として死球を与えた側のチームにペナルティを下される可能性も十分考えられる。一応極端に反スポーツマンシップと見做せる行動についてはダメとはしているものの、どこまでが確実に勝つためにやむを得ない戦術であるのかは高野連側もおそらく判断を明示しにくい。