スクイズ

登録日:2009/09/02 Wed 19:58:19
更新日:2025/07/29 Tue 20:57:51
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概要

野球用語の1つ。
ランナーが3塁にいる場合に行う送りバントを指す。
語源は英語のsqueeze(搾り取る)から。
決してかのエロゲーは関係ない。


スクイズを成功させると打者はアウトになるが1点入るため、確実に点が欲しいとき、安打を撃ちたいが打者が非力なときなどによく行われる。

来る球を当てて転がす簡単な仕事…のように思われるがただの送りバントよりも圧倒的に難しい。
その理由として、まず3塁ランナーが必ず走らないと成功しないことである。

バントは球の勢いを殺すため、キャッチャーや前進したファーストサードに取られる。
そのため本塁を狙うスクイズではタッチアウトを防ぐため、3塁ランナーは投球と同時に走る必要がある。

しかも3塁ランナーが走り出すなんてスクイズ以外ではまずしないので、守備には確実にバレる。あんまり素直に球を転がすとすぐに内野に捕られてバックホーム、最悪ホームゲッツーの危険性がある。
そのためバッターは球を殺し、線上に上手に転がすことを要求される。

そしてもう1つの理由がプレッシャーが非常にかかることである。
成功するチャンスは3塁ランナーが全力で飛び出す一度だけ。
仮に失敗すると貴重な3塁ランナーがアウトになることは勿論、点を取れそうだった試合の流れが相手側に一気に傾いてしまう。
そのためバッターの責任は重大であり、失敗は許されないほどの空気になる。てかなる。

中にはこのプレッシャーの中、簡単にスクイズを決める人がいる。まさに職人の名にふさわしい。

しかしその職人芸に至るまで幾度となく練習、失敗を繰り返してきたのである。
そんな彼らのバントはもはや芸術ともいえる。



守備側がスクイズを防ぐために取る作戦として、ピッチアウトが挙げられる。

これはバットが届かないくらい外側にボールを投げてバントを失敗させ、飛び出した3塁ランナーを封殺する作戦である。
実例を挙げると「江夏の21球」19球目*1、「飛ぶキャッチャー石原」*2などがわかりやすい。

投球を外されようがミットに収めた瞬間スクイズ失敗となる打者も、時には横っ飛びジャンプをしてでも意地でも当てようとする(ちなみに体が地面に着く前に当てないとアウト)が、横っ飛びスクイズの成功率は勿論低い(140k/hで外に逃げていくこぶし大の球体に横っ飛びジャンプで当てるのは、至難の業。いや、技という次元じゃなく、気迫の問題か)。

しかし、スクイズしなければ普通のボール球。無計画に使ってもボールカウントが悪くなっていくだけなので、投手が不利になっていく。どこで外すか、これは捕手の経験と監督の洞察力が問われる。


高校野球ではよく見られるがプロ野球ではあまり見られない。
高校野球で多い理由は守備側のミスを誘いやすい、当てるだけならプロよりは難しくない、一度負けたら終了のトーナメント戦であるため(=決勝点を入れてこの試合に勝利することがもっとも大事だから)、等が挙げられる。
プロならば基本的に苦肉の策であるため、あまり好まれて行われない。打者がよっぽど期待出来ない、投手を打ち崩せない時など特殊な状況でない限り行われる事はあまりない。

難しく感じない人はパワプロででも試してみよう。投球と同時にスタートさせ確実に転がす。サード捕球と同時に走者タッチアウトされたりと意外と確実な作戦ではなく感じる。
栄冠ナインですら、ヒットエンドランの次にハイリスクな作戦*3なのは何回か練習試合で試すだけでも理解できると思う。

なお、サヨナラスクイズはアウトが取れないためヒットとなる。


またスクイズに対してのキャッチャーの対応を逆手に取る作戦もある。

使える場面は、1つ目はランナー1、3塁で2アウト以外の時。

まず、ピッチャーが投球動作に入ると同時にバッターはスクイズの動作にはいり、1塁ランナーはスタート、3塁ランナーはスタートのふりをする
次にバッターはスクイズをしに行くと見せ掛けて、わざと空振りをする
するとキャッチャーはスクイズの失敗だと思い込み、飛び出してるであろう3塁ランナーを刺そうとするのだが3塁ランナーは飛び出しておらず、その間に1塁ランナーは安全に2塁へ進む事ができる、という作戦だ

こうなるとダブルプレー(ライナーゲッツーを除く)の心配が無くなり、よりチャンスが拡大するのだ

高校野球でたまに、プロでは稀に見られるが、ある程度の練習が必要で、バッターの空振りが下手だと普通にキャッチャーに2塁へ投げられ、1塁ランナーが犬死になんて事もある。

2つ目はセーフティースクイズという作戦もあり、これは普通のスクイズとは違いランナーはスタートせず、バッターがバントをしてボールが転がったのを確認してからランナーがスタートする、というものである。

セーフティースクイズは3塁ランナーがポップフライや空振りを見極める事が出来るのでスクイズに比べリスクが低い。
しかし、3塁ランナーは転がってからスタートするのでランナーの足がある程度速く、なおかつランナーの判断が良く無ければ成功しない作戦である。

ちなみに最近の高校野球ではスクイズよりもこちらの方が頻繁に見る作戦でもある。

3つ目はノーアウト及び1アウトで得点圏(2・3塁)に2人ともランナーがいる時に2人ともホームに帰す2ランスクイズ、さらには走者一掃or引き続きランナー3塁を狙って敢行する満塁スクイズと言う上級者向けのスクイズもある。
これはダブルスチールを行い、スクイズも行った後で相手が1塁にボールを送る隙を突いて2塁ランナーがホームまで一気に突入すると言う作戦だが、かなりギャンブル性が高い。
失敗すると2人とも刺されてダブルプレーを取られやすい上に、当てても守備シフトの真正面に打ってしまって、相手が3塁ランナーの刺殺を狙いホームに送った場合は2塁ランナーが帰れないなどのリスクがある為、成功率は通常のスクイズよりも非常に低い。特に満塁スクイズは本塁がフォースアウト扱いになる(=走者にボールを持った手でタッチした時点ではなく、捕手がボールを持ってホームベースに触れた時点で3塁ランナーのアウト・本塁生還失敗が成立)ためバント戦術としてもかなり失敗率が高く、アマ野球でも現実では試みられることは稀。

著名なスクイズプレイ


第100回全国高校野球選手権大会 準々決勝 近江-金足農業

この大会、破竹の勢いで勝ち進んでいた金足農業。
1点ビハインドの展開で迎えた9回裏無死満塁、一打サヨナラの場面で金足農業9番齋藤がスクイズを敢行。
三塁手の前へ転がった間に三塁ランナーが生還。しかし、これでは終わらない。三塁手が打球を処理し一塁へ送球した時には既に二塁ランナー菊池は迷いの無い激走で三塁を蹴っていた。
一塁から矢のような送球が返るも、菊池は間一髪生還。大会史上初の満塁サヨナラ2ランスクイズ成功となった。
この大会、金足農業は勢いそのままに決勝進出し、準優勝した。

2018年4月6日 阪神ー中日

1点ビハインドの9回裏、阪神の大山が二塁打を放つと金本監督はこの日まで打率3割の糸原に送りバントを指示。
打率1割台で二日前にセーフティースクイズを成功させた梅野が打席に立つと、三塁代走に俊足の植田を送る。
誰がどう見てもスクイズではないか?という状況なので中日は当然スクイズを警戒。梅野も3球続けてバントの構えを取っている。
4球目に強引にバットに当てスクイズを敢行するも、無情にもボールは投手の前に転がりグラブトスで植田は本塁タッチアウト、梅野も一塁フォースアウトで併殺となり試合終了。
試合後に金本は梅野を非難し、かくして金本の蔑称がまた一つ増えたのであった。

2025年4月30日 中日ー阪神

同点の9回裏、中日の細川が塁に出ると次打者が投手だったため代打に出された駿太はすかさず送りバント。
木下が敬遠されるとその次のロドリゲスも送りバントでランナー二三塁。岡林も四球で出塁し二死満塁で前打席にヒットを打っている山本に打席が回ってきた。
サヨナラが期待される場面であったが、山本はセーフティスクイズを敢行。だが無情にも投手正面に転がってしまいホームに送球されてフォースアウトとなり延長突入となった。井上監督は苦笑いした。
試合は11回裏にカリステがサヨナラの犠牲フライを決めたことで中日の勝利に終わったが、試合後山本のバントに関して井上監督は「彼が考えてやったことだから」と山本を擁護した。この人間性の違いよ



ファイヤーシスターズ「予告編スクイズ!」
火憐「ランナーをあの世に送りバント」
月火「失敗じゃん」

川相「追記、修正よろしくお願いいたします。」

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最終更新:2025年07月29日 20:57

*1 近鉄・石渡茂への2球目、このスクイズ阻止成功でツーアウト→空振り三振で救援成功

*2 ピッチアウトの球に当てようとして文字通り跳んだことから。複数回試みてすべてスクイズ失敗というオチもあってプロ野球ファンにはまあまあ著名

*3 しかもエンドランについては思考ルーチン上の不具合から「スイングしない」ことが頻繁に起きるのも理由の一つのため、事実上スクイズとエンドランで同率1位のハイリスク戦術とも解釈できる。本来のエンドランは高校・プロ問わず指示が出た時点で必ず振る