シルバー事件

登録日:2010/10/22(金) 04:20:35
更新日:2024/09/17 Tue 20:32:57
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─Kill the past─

過去ヲセ─。


■シルバー事件

『The Silver case』はグラスホッパー・マニファクチュア(ghm)が開発、99年にアスキーから発売されたPS用ソフト。
須田剛一率いるghmの独立第一弾ソフトである。
ジャンルは“犯罪”アドベンチャー。
須田剛一の手掛けたゲーム作品群の中でも特に須田の美学、趣味が反映された“SUDA51”の代表作として知られている。

続編に『花と太陽と雨と』『シルバー事件25区』がある。


【概要】

プレイヤーの分身たる主人公の視点で進む“事件発現編”「Transmitter」とモリシマトキオの視点で進む“事件解析編”「Placebo」の二編からなる。
物語は複雑に絡み合い、両者を交互に体験する事でプレイヤーは真実の一端に触れる事になる。
テキストをひたすらに読むプレイスタイルだが、自ら『FILM WINDOW』と名付けたCG、イラスト、アニメ、実写を組み合わせた画面構成が臨場感を与える、先鋭的な作品である。
元々は開発環境が小規模だったことからの逆転の発想だったとのことだが、こうしたシンプル、且つスタイリッシュな演出はghmのお家芸となっていった。

【物語】

99年の年の始め、極東の市場経済主導型社会主義国家「カントウ」の国家経済特別行政自治区「24区」に「シルバー事件」の主犯・伝説の殺人鬼ウエハラカムイが舞い戻る。
24署凶悪犯罪二課特別捜査官…カムイを逮捕した男<クサビテツゴロウは帰宅途中だった…。
「シルバー事件」から20年…「24区」に再び、疾風怒濤の衝撃が走る…。


【用語解説】


■24区

物語の舞台となる街。
次期・首都移転のモデル都市として、20年前から現在まで、以下の派閥による利権獲得と陰謀の為の争いの場となって来た。
人口10万人。
区民の格差は貧富では無く、3割の情報を知る者と7割の知らない者に分けられると云う。

■FSO(フロンティア派)

かつての政争に敗れた環境の保全を主軸とした非営利組織。(保守派)
※現在では非合法のテロ集団と化したと言われている。

■TRO(テクノ派)

分子生物系の技術により、資源なき国家の為の資源育成を掲げる。(急進的改革派)

■CCO(シビック派)

介護・教育・シビリアンコントロールによる都市機能の安定を掲げる。


※20年前の「24区」の再開発事業に絡み政治、行政への絶大な発言権を得ていた上記NGO三派の争いの結果、FSOは駆逐され、現在の「24区」はTRO/CCO連合が支配している…。
しかし、その二派も一枚岩では無く、TROは通産局、財政局、更には中央警察部…CCOは資産運用局、環境局、公安警察部を支配と、対立の火種を抱えている。

■シルバー事件

20年前、FSO対TRO/CCO連合の対立が決定的になった際にFSOが切り札として放った殺し屋・ウエハラカムイによって、TRO/CCO連合の長老達が皆殺しにされた事件の戒名
老人が犠牲になったので”シルバー”事件。
事件は権力の象徴たるTVタワーで起きた。
カムイを逮捕したのは当時の広域捜査官・クサビテツゴロウ…そして、事件は「再生」する…。

※以上の情報はブックレット等の公式の物を引用しておりますが、情報に多分のが含まれておりますので、ご注意下さい。
…ぶっちゃけゲームのプレイ上、役には立たないし、知っていた所で得にもならない。

※それがSUDA51作品…以下、付いてこれる人だけどーぞ。


【登場人物】


■主人公
サントラ等でのデフォルトネームはアキラ。
公安特殊部隊の壊滅後、24署凶悪犯罪課で飼われる事になる。
あだ名はデカチン
……命名理由はゲームで。

■クサビテツゴロウ
凶犯二課特別捜査官。
本作の狂言回し。
飄々としたオッサンだが、犯罪を嗅ぎ分ける嗅覚に優れ、戦闘能力(犯罪力)も高い生粋の猟犬。
一方、娘に嫌われたくないから禁煙を考えたり、競馬で大損こいたりと空気な主人公を差し置いて人間的魅力を放ちまくっている。
元・広域捜査官。
「5万貸してくれ」
「テメェ、撃ち殺しちゃうぞ!?」

■コダイスミオ
凶犯二課特別捜査官。
クサビのパートナーを務める若い刑事。
礼儀正しく、言葉遣いも丁寧な痩身のイケメン…だが、時折ぞんざいな口調になる他、フェティッシュな面を見せたりとやっぱり変。
……少し耳が悪いらしい。
須田の敬愛するザ・スミスに由来する“スミオ(スミス)”の名を持つ男。

■モリカワキヨシ
凶犯一課特別捜査官。
クサビ同様、広域出身のバックアップ専門のベテラン。
サングラスがトレードマークのナイスガイ。
コトブキから「シルバー事件」の調査を頼まれている。
チヅルとは大人の関係。

■ハチスカチヅル
凶犯一課特別捜査官。
科学捜査専門の才媛。
凶犯課の紅一点だが、プライドが高い事と凶犯課では科学捜査の出番が無い為か、やや煙たがられている。
「24区」区長ハチスカカオルの娘である事が苦痛の様だ…。

■ナカテガワモリチカ
凶犯一課特別捜査官。
公安出身の事情通。
ダブルのスーツを着こなす裏にも通じる都会派…と思いきや、フェミニストを公言したり、ロリコン疑惑があったりと楽しい人。

■コトブキシンジ
24区犯罪本部本部長。
凶犯課のボス。
一昔前の刑事ドラマのボスみたいな見た目で、役割もそんな感じ。
前身である広域時代からの重鎮。

※尚、凶悪犯罪課とは伝染性凶悪犯罪の蔓延を防止する為に、犯罪者の即時抹消の権限を与えられた殺し屋達の事である。


■モリシマトキオ
フリーの事件記者。
以前は大手に勤めていたが「言うのも恥ずかしい理由」で辞めてしまったらしい。
ヘビースモーカーで、愛煙している銘柄は「プラシーボ*1
ある筋からカムイの調査を依頼される。
━━物語のラストに彼を待つ物は……。
アカミミと云うカメを飼っている。
「うるせーや」

■ユカワエリカ
「Placebo」編のヒロイン。
トキオのかつての恋人。
情の深いイイ女。

■バーテン
トキオの行き付けのバー「ジャックハマー」のバーテン。トキオとは物語を通じて友人となる。
非常に味わい深い人物。

■エンザワカイジ
…トキオが取材で出会った「カムイ信者」のオッサン。
でも、本当は「アヤメ信者」らしい…。
掴み所が無く、事情通でもある不気味な存在。

■ナツメダイゴ
公安特殊部隊「リパブリック」隊長。
広域出身。
主人公の元上司。
容姿からファンのあだ名は「ウッチャン」カムイ捕獲作戦中に重傷を負い退場。

■サカモトケンイチ
■イノマタハルヒコ
「リパブリック」隊員。
カムイ捕獲作戦中に共に殉職する…。

■ウエハラカムイ
本作のシンボル。
人呼んで「絶対零度の天使」
20年前の「シルバー事件」により逮捕されて以降、隔離施設に収監されていた筈…なのだが、プレイヤーはいきなりカムイについて矛盾した情報を叩き付けられる事になる。
重ねて言うが、この物語の矛盾を文字通り象徴する存在。
「銀の眼」を持つ、不滅の「隣人」

■シモヒラアヤメ
デジタルアーティスト。
カムイとはかつてアートユニットを組んでいた。
謎多き、純化された美女。
カムイ同様の「隣人」


【エピソード】



#「Transmitter」


case#0:lunatics

- VANISHING POINT -
帰宅途中のクサビテツゴロウ。その行く道を塞ぐように立つ一人の青年。その手から放たれる銃弾━━。
同時刻、公安警察部非公安事件専任特殊部隊「リパブリック」は当該人物の捕捉を開始、「処分」へと向かっていた。
舞台は私鉄の中枢施設「カリフラワー」。
「リパブリック」の一員である主人公もまた、「カリフラワー」に突入する。
生存者の女性、首のない女性の死体、そして追い詰められた青年の慟哭━━。
恐るべき真実が月の光に照らされる。

case#1:decoyman

- BIZARRE LOVE TRIANGLE -

case#2:spctrum

- Love will tear us apart -

case#3:parade

- regret -

case#4:kamuidrome

- THE PERFECT KISS -

case#5:lifecut

- World in Motion -

case#!談話室タムラ



*「Pracebo」


report*1:yume

- All the way -

report*2:hana

- true faith -

report*3:tsuki

- Shell Shock -

report*4:ai

- Love less -

report*5:hikari

- Blue Monday -



※各エピソードのタイトルは須田の好きな英国のロックバンド“ニュー・オーダー”の楽曲から。(Case#2のみ前身となる“ジョイ・ディヴィジョン”の楽曲。)

【余談】


※OPの格好良さは異常。
見たけりゃゲームを買うかダウンロードするか、ググるべし。
このOPに代金分の価値があると語るファンすら居る。

※上記の様に須田の別作『ムーンライトシンドローム』や『killer7』にも通じるアイディアや、引き継ぎ、引き継がれている美学が色濃く反映されている。
…それら須田作品を体感した人間ならば楽しめるかもしれない。

※続編の『25区』と共に本作のニンテンドーDSへの移植計画は数年を掛けた後に頓挫。
しかし、2016年にSteamとPLAYISMでリメイク版『シルバー事件』がダウンロード販売されたのを皮切りに情報が賑やかになり、須田が『25区』のリメイクにも言及。
2018年に、PS4にて『25区』のリメイク版も含む『シルバー事件2425』として、念願の復活を果たした。
PS4版の販売は日本一ソフトウェア

PSアーカイブスにて配信されている。

※グッと来る事請け合いなイカしたサントラが自社レーベルから発売されていたが、現在は改訂版、アレンジ版共に販売休止中…。
一般販売での復活を望む声は多い。
……結局、サントラの再版は叶わなかったものの、上記のPC版、PS4版の限定版に再編集版サントラが同梱されており、高騰化したサントラを買うよりは限定版買った方が安いという事態になっている。
PS4版は『25区』や新録含む4枚組の決定版。

※モリシマトキオは『探偵 神宮寺三郎Innocent Black』にカメオ出演している。
パスワードは「SLVR」


"the silver incident" sucked a lot of blood.
「シルバー事件」は多くの血を吸い、

"the silver incident" claimed a lot of lives.
「シルバー事件」は幾多の命を奪い、

"the silver incident" created the hero.
「シルバー事件」は英雄を創造し、

"the silver incident" rubbed out the hope.
「シルバー事件」は希望をかき消し、

"the silver incident" was act obeyed on very naturally human instinct......
「シルバー事件」は、ある(ごく自然な)、人の本能に従った行動だということを・・・




過去をせた方のみ、
追記、修正願います

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最終更新:2024年09月17日 20:32

*1 偽薬効果を意味する医学用語。因みに、煙草としての「プラシーボ」のモチーフとなっていたのは明治時代から販売されていた日本最古の煙草であった「ゴールデンバット」である。モリシマ気分を味わいたいのなら……と言いたい所だが2019年に北海道以外での発売が中止。2022年には銘柄中止となり完全に製造が中止された。