はるな型護衛艦

登録日:2012/09/24(月) 20:30:16
更新日:2022/07/06 Wed 12:28:04
所要時間:約 7 分で読めます




はるな型護衛艦は、海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)


【スペック】

諸元 ()内はFRAM(近代化改修)実施後
基準排水量 4700t (はるな4950t ひえい5050t)
満載排水量 不明 (はるな6850t ひえい6950t)
全長 153m (153m)
全幅 17.5m (17.5m)
深さ 11.0m (11.0m)
喫水 5.2m ひえいは5.3m (5.2m ひえいは5.3m)
最高出力 70000馬力 (70000馬力)
最大速力 32ノット (31ノット)
航続距離 不明
乗員 約360名 (約370名)

機関 缶ボイラー蒸気タービンエンジン 2基
推進器 2軸

兵装
73式54口径5インチ単装砲 2基
74式アスロック対潜ロケット魚雷8連装発射機 1基
3連装魚雷発射管 2基
(Mk.25 シー・スパロー対空ミサイル8連装発射機 1基)
(高性能20mm機関砲(CIWS) 2基)

艦載機 HSS-2/2A 3機 (HSS-2B SH-60J 3機)



レーダー及び電子装備類
OPS-11レーダー(対空) (OPS-11Cレーダー)
OPS-17レーダー(対水上) (OPS-28レーダー)
OQS-3バウ・ソナー (OQS-6バウ・ソナー)
FCS-1A (FCS-1A FCS-2-12MFCS)
NOLR-5電子戦装備
(NOLQ-1-3統合電子戦システム OLR-9Bミサイル警報機 Mk.137 チャフ・フレア発射機 4基)

次級
しらね型護衛艦


【概要】

はるな型護衛艦は海上自衛隊が第3次防衛力整備計画によって建造された海上自衛隊初のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)である。

竣工当初は当時の海上自衛隊最大の戦闘艦であり、強力な洋上航空運用能力を有する護衛艦であり、
後継のひゅうが型護衛艦が竣工するまで、しらね型とともに長年護衛艦隊群の旗艦を務めていた。

そのため、あのむらさめ型護衛艦を凌ぎ多くの事件、映画、アニメ、漫画等に登場している。(後述)


【建造まで】

海上自衛隊は創設時より対潜空母や護衛空母を中心にした対潜掃討群を作る構想があり、第1次防衛整備計画時代には米海軍から補助空母を供与してもらう計画を勧めていた。
しかし、財政的な面からこれを断念。
続く第2次防衛力整備計画でもヘリコプター母艦の建造を一旦は決定したが、60年安保などで政局が混迷を極めたなどの諸事情により建造を断念した経緯がある。

そして第3次防衛力整備計画時に、5000t以下の護衛艦でもヘリの安全運用可能な減揺装置とヘリ着艦拘束装置などの開発に見通しが付いたため、
ヘリ母艦の替わりにヘリ3機を搭載するヘリ搭載護衛艦(DDH)2隻の建造することが決定された。
これが後のはるな型護衛艦である。


【特徴】

はるな型の特徴は、通常の護衛艦と同等の武装を持ちながら、最大3機のヘリコプターを運用できることであろう。
世界的にみてもヘリコプターを3機も運用可能な水上戦闘艦艇というのは稀有である。
ヘリコプターが3機運用可能になったことによりはるな型は既存の護衛艦に比べ格段に対潜掃討能力が向上し、海上自衛隊の対潜能力の向上にも大きく貢献した。

また4次防以降に建造された汎用護衛艦(DD)よりもヘリ整備能力があり長期航海の場合、艦隊全体のヘリ整備工場としての役目も負っている。
しかし全通甲板ではなく艦尾側のみを発着艦甲板にしたため、ヘリコプターの同時発着艦はできず、1機ずつの発艦しかできない。
更に2機目を発艦させる為にはさらに20分かかり、発艦作業中はあまり激しい艦の操作は出来ない。しかも実際には3機目のヘリは予備機状態となっているのが現状である。
そして狭い艦内配置の為ヘリのローター交換はヘリ甲板に出して行わなければならず、悪天候・夜間は危険な為、交換作業はできず、その間は着艦作業もできない。

その為空母型よりもヘリの運用・整備能力は低いと言わざると得ない。


【FRAM(近代化改修)】

はるな型護衛艦は83~85年度計画によって1986年3月から1987年10月にかけてはるなが1987年8月から1989年3月にはひえいがFRAMを実施された。


FRAMの内容は
①潜探索能力の近代化
②ヘリ格納庫上にシー・スパロー対空ミサイル、高性能20mm機関砲の搭載による対空能力の向上及び後方射界制限問題の解消
③戦術機能の向上(戦闘情報・指揮管制システム・リンク11・リンク14)
④電子戦能力向上
⑤艦齢の延長
である。
このFRAMによりはるな型はシステム艦に進化し、一部能力においては第4次防で建造されたしらね型の能力を凌駕した*1

余談だがはるな型はFRAMを行った最後の艦の一つで、これ以降海上自衛隊はFRAMを実施していない。

その理由はFRAMがあまりにも費用効率が悪かったためである。
なお更に余談だがはるな型と同時期にたかつき型護衛艦4隻中2隻がFRAMを実施している。


【活躍】

さて先にも述べたがこのはるな型、海上自衛隊現主力艦のむらさめ型を差し置き大活躍している。

  • 三次元
1974年11月9日。第十雄洋丸事件が発生。積み荷のナフサやプロパンの爆発による二次災害を防ぐため、はるなを旗艦とする臨時処分部隊が災害派遣出動。
11月26日にたかつき、もちづき、ゆきかぜとともに処分現場に派遣され、翌27日から28日にかけて海没処分するための射撃を実施。第十雄洋丸を沈没させた。

1980年。リムパック80にひえいが護衛艦あまつかぜと共に初参加。

1999年3月23日能登半島沖不審船事件が発生。海上自衛隊に初の海上警備行動発令された。
この際、はるながみょうこうとあぶくまを率い不審船を追跡。
不審船に威嚇射撃を実施した。
その後不審船を取り逃がし、海上自衛隊はこの事件により特別警備隊(海上自衛隊)が創設される。

2002年2月。はるながテロ対策特別措置法に基づき、護衛艦さわかぜ、補給艦ときわと共にインド洋に派遣。同年6月まで任務に従事する。

2002年9月。ひえいがテロ対策特別措置法に基づき護衛艦さみだれと共にインド洋に派遣。同年12月まで任務に従事。

2003年7月。はるながテロ対策特別措置法に基づき、護衛艦あさぎり補給艦とわだと共にインド洋に派遣。同年10月まで任務に従事。

2002年9月。ひえいがテロ対策特別措置法に基づき護衛艦さみだれと共にインド洋に派遣。同年12月まで任務に従事。

2003年7月。はるながテロ対策特別措置法に基づき、護衛艦あさぎり補給艦とわだと共にインド洋に派遣。同年10月まで任務に従事。

2003年10月。ひえいがテロ対策特別措置法に基づき護衛艦あけぼの、補給艦ときわと共にインド洋に派遣。2004年1月まで任務に従事。


  • 二次元
映画
ゴジラ(1984年)
ゴジラ捜索へ向かう護衛艦と哨戒ヘリの編隊飛行シーンでFRAM前のはるなが登場。

ゴジラVSビオランテ
ひえい登場。以後平成ゴジラシリーズ(ゴジラvsキングギドラ他)に常連登場。ゴジラvsスペースゴジラでは国連Gフォースに参加。

亡国のイージス

男たちの大和/YAMATO
大和(戦艦)の航跡のCG素材用としてひえいを撮影に使用。(ひえい以外の護衛艦数隻も大和の航跡のCG素材用の撮影に使用)
また大和に着任したばかりの海軍特別年少兵たちが大和の機関室を見学するシーンは、ひえいの機関室が撮影に使用された。



【余談】

ひえいの就役期間36年3ヶ月は歴代の海上自衛隊艦艇の中でも最長で、航行距離は地球約44周分。航海時間は約7万9千時間に達する。



さてタグで気づいた方もいるかもしれないが、現在はひゅうが型に後を託しはるな、ひえいともに退役している

2007年12月14日しらねのCICが火災事故により損傷。指揮通信系統を全て交換、修理しなければならなくなった。
見積もりの結果しらねの指揮通信系統の新造修理には多大な時間と費用がかかる事が判明。
そこで防衛省は損傷したしらねを退役させ、はるなを延命する事を検討していた。
しかしはるなの艦体の老朽化を鑑み、最終的には退役予定のはるなのCICをしらねへ移植する事に決定。
その後しらねは、はるなのCICと共に前線に復帰した。

このCIC移植修理がはるな型最後の活躍であった。


【同型艦】

DDH-141はるな
1970年3月19日起工。
1973年2月22日竣工。
2009年3月18日退役。
2009年10月 解体の為江田島に係留。2010年1月解体終了。
2009年3月18日除籍。

DDH-142ひえい
1972年3月8日起工。
1974年11月27日竣工。
2011年3月16日退役。
その後呉に係留。
2011年3月16日除籍。




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最終更新:2022年07月06日 12:28

*1 ただ、しらね型で搭載されたOQS-101バウ・ソナーは当初後日装備予定だったものの、OQS-101自体大重量であったことから、最終的に搭載しなかった。また、しらね型で搭載された可変深度ソナーも装備されなかった。