StG44

登録日:2011/06/05(日) 13:13:08
更新日:2025/09/26 Fri 09:12:22
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性能

全長:940mm
重量:5.21kg
使用弾薬:7.92x33mmクルツ弾
装弾数:30+1
動作方式:ロングストロークガスピストン ティルトボルトロック



概要

1942年頃よりハーネル社により開発され1944年に制式採用された突撃銃
それまでのフェドロフM1916などと違い、突撃銃として生まれ突撃銃(Sturm Gewehr)として用いられた最初期の銃とされる。



歴史

7.92x33mmクルツ弾

第一次大戦の塹壕対塹壕の戦いでは、当時の小銃が想定していた1000mを超える戦闘はほぼ起こり得ず最長でも400m程度に収まっていた。
戦中に何とか出したMP18短機関銃では200mが限度で、確かに近接戦闘では威力を発揮したもののいささか威力不足に感じられた。
そうして200〜400mの交戦距離での最適解が出ないまま第一次大戦は終結した。

時は移って戦間期。他国は短機関銃とライフルの組み合わせに満足する(しかない)中で、軍縮中のドイツではより最適化された弾丸に関する構想を開始。
そうして再軍備宣言後の1938年に7.92x30mm弾の試作が完成。1941年に諸々のテストが完了し7.92x33mmKulz(短小)弾として結実した。
主力小銃の7.92x57mm弾を縮めた形状で、鉄製薬莢でもスムーズに排莢できるよう強くテーパーがかかっている。既存の生産設備をある程度流用でき、コストも下げられるメリットもあった。

短機関銃の拳銃弾 と ライフル弾 の間ということで、これらの弾丸は中間弾と呼ばれるようになる。

Mkb42、MP43

1941~2年当時、並行して自動小銃の開発も進んでいた。Gew41とFG42が最たる例であるが、これらは小銃の域の重量でフルサイズライフル弾を連発する為機構などにいささか負荷が高かった。
そんな中、1938年に弾と並行して開発されていたクルツ弾を用いる銃は良好な結果を示した。それらはMkb42(MaschinenKarabiner/自動カービン)と呼ばれることとなる。
ハーネル/ワルサー各社で生産されたMKb42(H)とMKb42(W)は両方とも少数生産され、1943年初頭に東部戦線にてテストされた。
その結果ハーネル社の物が信頼性で優れているとされ、そちらをブラッシュアップする方向で進行。完成品に満足したアルベルト・シュペーア軍需大臣(当時)はMP43(MaschinenPistole/機関拳銃、短機関銃)として大量生産を開始させた。

ヒトラーの反対

MP43の生産について、当初ヒトラーは許可を下さなかった。
ヒトラーは新型弾薬により兵站が混乱すると判断。第一/第二次大戦ともにライフルと短機関銃以外の組み合わせを行った軍隊はそうそういないので間違いではない。
何より、当時はクルスクの戦い前後で東部戦線は膠着といった状態であり、新型戦車の導入などで既にカツカツな面もあった。
しかしながらこっそり生産していたものを配備してテストを実施。運用した第93歩兵師団の将兵は性能に満足し、勲章授与式にてさらなる配備をヒトラーに嘆願。これによりヒトラーは折れ、1943年9月にMP43の量産を許可した。

MP44、StG44

こうしてMP43は生産が認められ、暗視装置やライフルグレネードの改修などの試作が行われた。1944年4月にはMP44と改称され、その後再々度改称しStG44となる。
StG(突撃銃)の名はヒトラーが名付けた説以外にもエーリヒ・ヤシュケ将軍名付け説やプロパガンダから発展した説など様々な説があるが定かではない。
そうしてStg44は終戦までに42万丁が生産された。平時であれば十分以上な量ではあるが、戦時中ましてや43年末から押され始めた*1ドイツにとっては必要とした数の1/10程度であり、それらが戦場に与えられる影響は微々たるものであった。

戦後

なんだかんだ生産されたことから各地に散らばっており、60年代までは各国で使用されていた。2012年にはシリアの反政府勢力が1万丁の本銃を所持していたことが確認されている。

また、戦中から鹵獲により詳細をつかんでいた連合国では各々本銃を踏まえた新型ライフルの開発に注力していく。

  • ソ連では本銃と設計図1万枚に技術者を押収し、開発中の自動小銃など*2の改良に関する参考品として使用。
  • イギリスでは小口径弾のEM-2を試作。
  • スペインでは簡易製造版(StG45)の技術者を囲いクルツ弾を用いるセトメライフルを開発。
  • アメリカでも多少の小型化として7.62x51mm弾とM14へ更新。のちにより中間弾然とした5.56x45mm弾を用いるM16へ再更新。

そして 突撃銃 の名は後に英語圏で「Assault Rifle」と略され、本銃と同じコンセプトの小銃を指すジャンルとして確立していくこととなる。



特徴

動作方式はロングストロークガスピストンとティルトボルトで機関銃に似た組み合わせ。Mkb42(H)の時点ではオープンボルトのストライカー式とより機関銃じみていたが改修によりクローズドボルト、ハンマー式に落ちづいた。
操作系はレバーによるセーフティーとクロスボルトのセレクター、機関部左側面にコッキングハンドルが存在。ガスチューブ先端にはガスレギュレーターと、その先に突起がある*3
製造工程や構造面では、フレームを鋼板プレス、機関部パーツを切削加工、ストックとグリップパネルのみ木材を用いる。トリガーメカはユニット化され取り外し可能。
ハンドガードもフレームと同じ鋼板製で、長時間連射をする際にはすぐに加熱してしまう。
そして鋼板を多用した都合5kgとサイズ感のわりにかなり重くなってしまった(弾の強いスオミKP/31と考えれば十分…ではない)。



フィクション

  • コールオブデューティー
  • メダルオブオナー
  • ヒトラー~最後の12日間~(映画)
  • フューリー
  • 紺碧の艦隊
  • 旭日の艦隊
  • ヤングガン・カルナバル

エアガンでは、海外製のものがよく出回っています。(内部調整等は必須ですが…)
よりリアル且つ高級な代物をお求めの方は、松栄製作所謹製のMP44はいかがだろうか?
そのリアルさは、ベルギーの博物館に寄贈できる程の素晴らしさ!
ただし、値段が少々お高いのが難点。



余談

フォアザッツラウフ(Vorsatzlauf*4)またはクルムラウフ(Krummlauf/Curved Barrel)という延長銃身アタッチメントが開発されている。
フェルディナント駆逐戦車に自衛用機関銃が設置されていない点を危惧したことから開発が始まったのだが、側面に追加の穴をあけるわけにもいかないので上面に穴を設けた。
その為このアタッチメントは30~90度*5に曲がっており、発射した弾丸を曲げて上面から横方向に弾をばらまくようになっている。
弾が毎回片面に沿って進むので摩擦で摩耗がかなり早まってしまう*6が、弾頭が高熱で砕けるので散弾状になり存外殺傷力は維持された模様。
アルケット社製4号戦車(実質的な4号駆逐戦車)や歩兵用などでも開発された。
実用面で光るものがあったらしく、PPSh-41やM3グリースガンにも同様の装備が試作されている。
歩兵用としてはより進歩したものとしてコーナーショットがある。




追記・修正は総統の目を欺きつつお願いします。

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最終更新:2025年09月26日 09:12

*1 43年7月のクルスク戦敗退にはじまり44年6月にはノルマンディー上陸作戦で西部戦線も押し戻され始める。それ以前に爆撃で国力も消耗されていた。

*2 あくまで運用思想のみであり、AKはStG44の技術自体を継承してはいない。

*3 叉銃用とされる

*4 日本ではマスターキートンによるものかボーザツラウフと呼ばれている

*5 30/45/60/90度の4種

*6 150発程度で限界が来る