M14

登録日:2011/06/15(水) 13:22:31
更新日:2025/09/10 Wed 20:29:32
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性能

全長:1118mm
重量:4,500g
使用弾:7.62x51mmNATO弾
銃口初速:850m/s
装弾数:20+1発
連射速度:700RPM
動作方式:ショートストロークガスピストン ターンロックボルト



概要

アメリカのスプリングフィールド造兵廠が開発した突撃銃である。正式名称はUS Rifle, Caliber7.62mm, M14*1
M1ガーランドに代わって1959年から配備され、ベトナム戦争序盤を始め様々な戦場で使用された。



歴史

開発

M1ガーランドの改修による更新計画は1944年末には検討され始め、ガーランド氏も参加しT20~T25の試作が行われていた。
その段階で20連ボックスマガジンとフルオート機能が採用されていた。ついでに直銃床も試されたが照準線が高くなる点が嫌われキャンセルされた。
また、T25と同時に作成した7.62x49mm弾を.30-06と.300サベージをもとに改修した.300サヴェージ改良弾(T65)がのちの7.62x51mm弾となる。

その後T20~T25はT44、T47に改名/改良され、ショートストロークガスピストンが採用されるなどほぼ基盤が固まっていた。
そうして完成した2丁に加え、FN FALのアメリカ製バージョンであるT48との3丁でコンペが実施されることとなった。
T47は早期に脱落し、T44とT48の一騎打ちで試験開始。序盤はT48が優勢だったものの、寒冷地想定の試験にてT48はガスシステムの破損が目立ちはじめた。その結果からT44が優れていると判断されコンペの照射となった*2

T44は他にもM1ガーランドのシンプルな構造を引き継いでおり、生産設備がそのまま流用できるなどの利点が見込まれた。
まあ生産設備の転換は実際にやってみたらうまく行かなかったんだが
国防省はこの銃を主力小銃の更新のみに留めず、戦争を経て増えてしまった数多の小火器(BAR、M1/2カービン、M1トンプソン、M3グリースガン)を全て代替することも画策していた。訓練や兵站コストを抑えられるのは当然として、後に控えていたSPIW計画*3の第一段階としての側面もあったであろう。
むしろSPIW計画のためにケチっていたきらいもある。
それらを期待しつつ1959年にT44を制式採用。弾もNATOにごり押ししたのは別の話、7.62x51mm弾の箇所を参照。

ベトナム戦争

本銃は1959~65年にかけ、全軍に向けて急速な配備が行われた。

建て主はM14が好きだ。そりゃあもう、名前を付けて毎日一緒に寝るくらい。綺麗だよ、シャーリーン…
だが、認めなきゃならないことがある。ベトナム戦争ではM14はほぼ活躍できなかった。

既に弾薬の項目を見ていただいている諸兄には言わずもがな、致命的に相性が悪かった。
高温多湿な気候がM14の木製ストックを(そのままの意味で)腐らせ、ジャングル内では取り回しの悪さで短機関銃やカービンの代替にはなれず。分隊支援射手のみ許されたフルオート射撃も曲銃床のせいで制御しきれず…
国防省の思惑はガッツリ外れることとなってしまった。

しかしSPIW計画のバックアップ的ポジションにあったM16(とM79、M203グレネードランチャー)が想定以上に高性能を示したため、61年からM16がM14を置き換えることとなった。80年代まで訓練に供されハートマン軍曹を射殺したのち モスボール*4されることとなった。
ついでにスプリングフィールド造兵廠は閉鎖された。

ちなみに自衛隊でもM1ガーランドなどに倣って本銃を配備しようとする動きがあったが、なんとか自国生産を押し通して64式小銃を採用したのも別の話。









こうして主力小銃としてのM14は短命に終わった……




































-ふざけるな!-
-追っかけろ!玉落としたか!?-

Sir,Yes Sir!










時は流れて1989年、米軍はM14をDMRとしてアップグレードするプログラムを発動。
海兵隊で運用されボルトアクションのM40よりも即応性に優れるとして運用が継続されている。
陸軍もアフガニスタン、イラクにて使用。広大な砂漠では300m以遠の遠距離戦が頻発することから、長距離射撃向きのM14は良好な結果を残したとされる。
さらには海軍でもSEALsがM25及びMk14Mod0を採用した。

こうして長年配備されたことで、M14は「主力小銃として3番目に配備期間が短い銃」とともに「歩兵用小銃として1番配備期間が長い銃」という相反する称号を保持している。



ただし、砂塵環境下では信頼性が低下する点が問題である。精度もDMRとしてはお世辞には良いとは言えず*5、現状は命中精度に定評のあるM24*6や後継といえるM110*7、M110A1*8に更新されていくのが現状。
ぶっちゃけM14が再び脚光を浴びていたのは単にM16の中東での運用経験や戦訓の不足による一時的なモノでしかなかったんじゃ?、なんて話もあったりなかったり……

59年当時から軍に振り回された面も否めず、苦労人な銃なのであった…



バリエーション

  • M14
基本モデル。歩兵向けにはフルオート機能はロックされた状態で配備された。
  • M15
ブローニングBARの後継として改修されたモデル。M14に小改造を施したM14A1で良いとされて廃止。
  • M21/M25
狙撃用に調整されたモデル。
  • M39EMR(Enhanced Marksman Rifle/強化型マークルマンライフル)
海兵隊向け近代化改修モデル。
  • Mk14EBR(Enhanced Battle Rifle/強化型バトルライフル)
SOCOM向け近代化改修モデル。
  • M14NM(ナショナルマッチ)
民間向け高精度モデル。68年に民間販売が禁止された。M1Aのパーツなどに名残を見ることができる。
  • M1A
スプリングフィールドアーモリー社製の民間向けセミオートモデル。16インチ銃身に短縮したSOCOM-16等のバリエーションが存在。

その他、イスラエルのTCI社(旧TEI社)の「TEI M89SR」やアメリカのShort Rifles Stock Systems社の「BULLDOG」にように、内部機構を殆ど弄らずにブルパップに改造されたモデルも存在している。


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最終更新:2025年09月10日 20:29

*1 M2~M13にも一応対応する型番はあり、.22LRの訓練用/サバイバル用ライフル(M2、M4、M6、M12、M13)や無反動砲のスポッティングライフル(M5、M7、M8、M9)に割り振られている。未使用の箇所(M3、M10、M11)もあるが。

*2 尚T44のみテスト中に寒冷地仕様に改修したとされ、多少恣意的な部分を感じる。T48も後から寒冷地仕様に改修できる時間が与えられたのだが、それ以前故障発生がマイナス印象として引き摺られてしまった模様

*3 簡単に言えば、グレネードランチャーやフレシェット弾を備えた多機能な銃を兵士に持たせてなんでもさせる計画。

*4 使用しなくなった兵器を保管向きな状態で保管すること。他でいうとミズーリら米戦艦もこの状態で保管されている。

*5 M80相当の通常弾で2.5MOA。同じ弾でも新規設計の銃ならもっと出せるだろう。

*6 レミントンM700ベースのボルトアクションライフル

*7 M16を大口径化したSR-25ベースの自動小銃

*8 HK417の派生型がベースの自動小銃、役割が同じなので同じ型番にさせられた模様。