H&K G3

登録日:2012/03/26 Mon 16:40:00
更新日:2025/07/29 Tue 12:36:44
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性能

全長:1025mm
重量:4.34kg
使用弾:7.62mmNATO弾
装弾数:20+1
動作方式:ローラーロック式ディレイドブローバック



概要

ドイツのH&K社によって製造され1964年から配備されている突撃銃。H&K社のモデルナンバーはHK31。

AK-47FN FALコルト M16と並び「世界四大突撃銃」と称される*1
数多くの国で採用されたベストセラー。ドイツ連邦軍では既にG36に後を継ぎ第一線からは身を引いているが、今でも主力として用いている国も存在する。



前史

開発の系譜 戦中からの血脈

直接の子孫としては戦中ドイツのStG45に由来する。モーゼル社のStG45は有名なハーネル社のStG44とは別路線で7.92x33クルツ弾(のちの中間弾薬)を用いる突撃銃の開発を行っていた。
MG42で用いられていたローラーロック式ショートリコイルについて、ショートリコイル機能*2を排しても動作できると確認できたことからより簡易にできる点に注目。
StG45ではローラーロック式ディレイドブローバックとして研究され、StG44よりも36%安い*3点で売り込みを掛けようとしていたもののナチスドイツが敗北。
StG45は30丁ぶんの部品を残してドイツとともに葬られたものの、技術者はフランスに移って研究を続けることができた。
ミュルーズ兵器研究所(CEAM)にて改良がくわえられ、Carabine Mitrailleuse Modèle 1950として結実しかけた…もののここで弾の問題が出てくる。
7.62mmNATO弾が西側標準となり、主力小銃もそれに合わせる必要がある(フランスはMAS-49と独自弾薬を貫いた)。
やむなくStG45とCEAMの技術者はスペインの特殊素材技術研究センター(CETME/セトメ)に移り、そこで7.62mmNATO弾仕様に改修されセトメライフル(CETME Modell 58)として結実した。
この改修にてH&K社がかかわっており、その縁でライセンス生産が叶い西ドイツ軍に制式採用されることとなる。

西ドイツの再軍備とH&K社

1949年、元シュナイダーの技師であったエドムント・ヘッケラーが元モーゼル社のテオドール・コッホやその他技師らとともにH&K社を設立((当時は戦後の軍備解体で路頭に迷っていた元銃器メーカー作業者の受け入れ先となっていた模様))。
最初はミシンや工具などの製造をしていたが、CETME社内にいた元ドイツ人の銃器技師ら(前述のSgG45などの研究者)との交流により1952年頃からスポーツ用銃などの製造承認を受けて銃器製造能力を獲得。
1955年に西ドイツがNATOに加盟し再軍備が可能となったことからH&K社が大々的に銃器開発を開始することができるようになった。

西ドイツの苦悩

戦後、東西に分割されて誕生した西ドイツは冷戦の最前線として再軍備を急務としていた。
まずはベルギーのFN FALを1956年にG1として導入するも、思うように配備が進まなかった。
理由としては、FALが人気すぎて生産が追い付かなかった点。ライセンス生産を希望するも、戦中ドイツに占領され反感燻る当時ではFN社の反対に遭い破談。
スイスのSIG SG510もG2として試験されるも、防衛向きな思想からか重いG2の配備は中止された。

そうして路頭に迷っていた際にCETME社からの助け舟、セトメライフルが来る。
G2時のモデルAではクルツ弾対応のためいったん却下されていたが、7.62mmNATO弾に対応し小改良を経たモデルBをドイツ向けに調整し、G3となった。
G1で発生したライセンス生産問題もオランダのNWM社が仲介することで解決。1959年にG3として採用された。



構造

元がMG42の簡略化に端を発するので、パーツ自体はかなりシンプル。しかし独特な機構のためそれぞれのパーツに精度が要求される。
動作機構上薬室に張り付きやすいので薬室にガスで薬莢をはがすための溝が彫られている。薬莢につく痕も独特(StG45からの特徴)。
そしてボルトにダメージが行かないように、薬室を閉鎖したままの弾倉交換(タクティカルリロード)も推奨されない。
自動ボルトストップがなく、ホールドオープンを維持する際には手動で非レシプロのコッキングハンドルを溝にひっかける方式。動作方式の都合コッキングも重い。

精度は100mで12cm未満=4MOA未満。8cm未満(=2.6MOA)は精度が高いとしてスコープ付きのG3A3ZFとして出荷された。2020年代から見てみると少し悪めに感じるが歩兵銃としては及第点。
元がクルツ弾向けであったことから例によってフルオートは苦手。
操作系統としてはセレクターの位置と操作角度が小さく扱いやすい。人が触れる部分も木かプラスチック製で熱を伝えにくい構造となっている。


弾倉交換時にホールドオープンし、弾倉を入れ替えた後上からチャージハンドルを叩いて前進位置にする通称「H&Kスラップ」が人気。
普通にチャージハンドルを戻してもいいのだが、下手に力を抜くとボルトを戻すスプリングの力で腕を痛めるので、叩いた方がある程度安全というのもある。
ただし遊戯銃でこれをやると、チャージハンドル周りの剛性が足りず折れてしまいかねない。2021年に東京マルイが出した新世代MP5A5ではわざわざ「スラップ対応」とアピールするほど。



バリエーション

  • G3:木製パーツと折りたたみ式照準器を搭載
  • G3 A1:M14等についているような折りたたみ式の肩当を追加
  • G3 A2:ドラム式リアサイトを備えたバージョン
  • G3 A3:プラスチックに置き換え、フリーフローティングバレルに変更
  • G3 A3 ZF:スコープ付きのA3
  • G3 SG 1:精密なトリガー、スコープ、バイポッドを追加したマークスマン向けモデル
  • G3 A4:伸縮ストックを備えたA3

再設計などの派生型は以下の通り
  • PSG-1:より高精度に調整された狙撃モデルで高価
  • MSG-90:PSG-1の廉価版
  • G3 K:315mmのショートバレルと伸縮ストックを装着した短縮バージョン
  • G3 DMR:SG1にストックの調整機構追加とグリップの変更を実施したモデル
  • G3 TGS:40 mm グレネード ランチャーHK 79を搭載した試作モデル

セミオートモデルは以下の通り
  • HK41:セミオートモデル(警察、民間用)
  • HK91:HK41の輸出モデル(主に米国市場向け)
  • SL7:木製ストックの民間バージョン


他国向けの生産品は以下の通り。
  • G3 A5:デンマーク向けA3
  • G3 A6:イラン向けA3
  • G3 A7:トルコ向けA3
  • G3 P4:パキスタン向けA4
  • MC 51:イギリスのFRオードナンスが製造したコンパクト版でMP5などと同等のサイズまで短縮化

これ以外にもライセンス生産品が多岐にわたり、生産数は累計1000万丁を超えると思われる・


さらにはG3の形式を流用して5.56mmNATO弾9mmパラベラム弾、7.62×39mm弾などの別弾種に対応したモデルやベルトリンクに対応した機関銃が開発された。
それぞれHK33、MP5(HK54)、HK32、HK21(とベルトリンクをオミットしたHK11(G8))。短縮版などでもモデルナンバーが分かれているのでバリエーション豊か。

これは当時まだ弱小メーカーだったH&Kが軍用小火器部門でのシェアを築くための戦略によるもの。
操作の同一性を保つことによる訓練期間の短縮やコスト削減が狙いで、導入の障壁を低減している*4


H&K社や西ドイツ政府の方針で生産ライセンスが15ヶ国以上に付与されている。北欧やアジアなど多数の国で主力小銃として採用され、それぞれの国で製造し独自の名前が付与されている(Ak4等)。
しかし、その先々で反政府勢力などの手に渡っており、1980~2000年頃はAKに次いで紛争でよく見かける銃という立ち位置ともなっていた。




フィクション

じーすり先輩。妹がいっぱいいる。はしたない技を持つ。

アニメ一期第三話と第九話にてトリエラが使用。

アインが埠頭襲撃時に使用。

主に敵勢力の超国家主義者が使用。M21とは弾薬の互換性がある。

ミレニアムサイエンススクール所属の双子の姉妹、才羽モモイ・才羽ミドリが所持。姉・モモイがG3を、妹・ミドリがSG/1を使用している。
モモイの方は「ユニーク・アイディア」、ミドリの方は「フレッシュ・インスピレーション」という名がついている。



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最終更新:2025年07月29日 12:36

*1 これの出どころがわからない…少なくとも2000年代にはそう呼んでいる文献がみられる

*2 マズルブースターによるガスを利用し複雑

*3 70→45ライヒスマルク

*4 しかし高性能であるもののそもそもが高価格帯の銃であったがため、G3とMP5を除いて商業的に成功したとは言い難い