H&K G3

登録日:2012/03/26 Mon 16:40:00
更新日:2025/09/12 Fri 20:21:07
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性能

全長:1025mm
重量:4.34kg
使用弾:7.62mmNATO弾
装弾数:20+1
動作方式:ローラーロック式ディレイドブローバック



概要

ドイツのH&K社によって製造され1964年から配備されていた突撃銃。H&K社のモデルナンバーはHK31。
数多くの国で採用されたベストセラー。ドイツ連邦軍では既にG36に後を継ぎ第一線からは身を引いているが、今でも主力として用いている国も存在する。
H&K社の戦略によりバリエーションが多数製造されている。

AK-47FN FALコルト M16と並び「世界四大突撃銃」と称される*1



前史

開発の系譜 戦中からの血脈

直接の祖先としては戦中、モーゼル社のStG45に由来する。モーゼル社は有名なハーネル社のStG44とは別路線で7.92x33クルツ弾(のちの中間弾薬)を用いる突撃銃の開発を行っていた。
MG42で用いられていたローラーロック式ショートリコイルについて、ショートリコイル機能*2を排しても動作できると確認できたことからより簡易にできる点に注目。
StG45ではローラーロック式ディレイドブローバックとして研究され、StG44よりも36%安い*3点で売り込みを掛けようとしていたもののナチスドイツが敗北。
StG45自体は30丁ぶんの部品を残して葬られたものの、技術者はフランスのミュルーズ兵器研究所(CEAM)に移って研究を続けることができた。
CEAMにて改良がくわえられ、Carabine Mitrailleuse Modèle 1950として結実しかけた…もののここで弾の問題が出てくる。
7.62mmNATO弾が西側標準となり、主力小銃もそれに合わせる必要がでてきた*4
やむなくStG45とCEAMの技術者はスペインの特殊素材技術研究センター(CETME/セトメ)に移り、そこで7.62mmNATO弾仕様に改修されセトメライフル(CETME Modell 58)として結実した。
この改修にてH&K社がかかわっており、その縁でライセンス生産が叶い西ドイツ軍に制式採用されることとなる。

西ドイツの苦悩

戦後、東西に分割されて誕生した西ドイツは、冷戦の最前線として1955年のNATO加盟後再軍備を急務としていた。
まずはベルギーのFN FALを1956年にG1として導入するも、思うように配備が進まない。
理由としてはFALが人気すぎて生産が追い付かなかった点が大きい。ライセンス生産を希望するも、戦中ドイツに占領され反感燻る当時ではFN社らの反対に遭い破談。
続いてスイスのSIG SG510もG2として試験されたが、防衛向きな思想故重かった点が嫌われ大規模配備は中止された。

そうして路頭に迷っていた際にCETME社とH&K社の助け舟、セトメライフルが来る。
G2トライアル時に提出していたクルツ弾対応のモデルAはいったん却下されていたが、7.62mmNATO弾に対応し小改良を経たモデルBが合格。ドイツ向けに調整しG3となった。
ライセンス問題もオランダのNWM社が仲介することで解決。1959年に制式採用された。



構造

元がMG42の簡略化に端を発するので、パーツ自体はかなりシンプル。しかし独特な機構のためそれぞれのパーツに精度が要求される。
射撃精度は100mで12cm未満=4MOA未満。8cm未満(=2.6MOA)は精度が高いとしてスコープ付きのG3A3ZFとして出荷された*5。2020年代から見てみると少し悪めに感じるが歩兵銃としては及第点。
元がクルツ弾向けであったことから例によってフルオートは苦手だが直銃床のためある程度は対応できる。
操作系統としてはセレクターの位置と操作角度が小さく扱いやすい。ハンドガード左上には折り畳み式のコッキングハンドルがあり、場所は少し遠いが概ね適当。非レシプロとなっており稼働するハンドルに左手がぶつかることもない。
ハンドガード、ストックも木かプラスチック製で熱を伝えにくい構造となっている。

ボルトストップ

自動ボルトストップがなく、ホールドオープンを維持する際には手動でコッキングハンドルを溝にひっかける必要がある。
弾倉交換時にホールドオープンし、弾倉を入れ替えた後上からチャージハンドルを叩いて前進位置にする通称「H&Kスラップ」が人気。
普通にチャージハンドルを戻してもいいのだが、下手に力を抜くとボルトを戻すスプリングの力で腕を痛めるので、叩いた方がある程度安全というのもある。
ただし遊戯銃でこれをやると、チャージハンドル周りの剛性が足りず折れてしまいかねない。2021年に東京マルイが出した新型のMP5A5ではわざわざ「スラップ対応」とアピールするほど。

ローラーロック式ディレイドブローバック

ボルト両側面にローラー上のロッキングブロックが存在しており、楔状のファイアリングピンが内側から押してテンションを加えている。
これにより発射時の反動でボルトが後退するのを抑え、ボルトの後退を遅延させる。
他方式に比べて銃身に穴をあけたり前後動させたりする必要がないが、ロッキングブロックなどへの負担は相応にかかるので使い込みすぎると摩耗して隙間が開く*6
ボルトにダメージが行かないように、薬室を閉鎖したままの弾倉交換(タクティカルリロード)も推奨されない。
また、薬莢前部が薬室に張り付いた状態でボルトが後退しかねないので薬室にガスで薬莢をはがすための溝が彫られている。薬莢につく痕も独特(StG45から引き継いだ特徴)。
そしてコッキングが重い。



バリエーション

ストックを伸縮式に取り換えただけの短縮版でもモデルナンバーが分かれているのでバリエーション豊か。

ドイツ軍で使用された主流なもの

  • G3
 木製パーツと折りたたみ式照準器を搭載
  • G3 A1
 フルオート連射に備えてM14等に近い折りたたみ式の肩当を追加
  • G3 A2
 ドラム式リアサイトに変更
  • G3 A3
 木製部分をプラスチックに置き換え、フリーフローティングバレルに変更。
 デンマーク向けA5、イラン向けA6、トルコ向けA7が存在する。
  • G3 A3 ZF
 スコープ付きのA3
  • G3 SG 1
 精密なトリガー、スコープ、バイポッドを追加したマークスマン向けモデル
  • G3 A4
 伸縮ストックを備えたA3。パキスタン向けのP4が存在する。

セミオートモデル

  • HK41
 警察、民間用
  • HK91
 HK41の輸出モデル(主に米国市場向け)
  • SL7
 木製ストックの民間バージョン
  • SR9(HK911)
 HK91ベースで、PSG1等に近い形状の民間バージョン。競技用のT、TCが存在。

その他

  • G3 K
 315mmのショートバレルと伸縮ストックを装着した短縮バージョン
  • G3 DMR
 SG1にストックの調整機構追加とグリップの変更を実施したモデル
  • G3 TGS
 40 mm グレネード ランチャーHK 79を搭載した試作モデル
  • HK21、HK11(G8)
 機関銃。HK21はベルトリンクに対応。

他国生産品

  • MC 51
 イギリスのFRオードナンスが製造したG3のコンパクト版。MP5などと同等のサイズまで短縮化。


再設計などの派生型

PSG1

MSG-90


MP5(HK54)

HK33

 5.56mmNATO弾対応

HK32

 7.62x39mm弾対応、大々的な生産はされず


口径違いや機関銃などのバリエーション数多く存在するが、これは当時まだ弱小メーカーだったH&Kが軍用小火器部門でのシェアを築くための戦略によるもの。
操作の同一性を保つことによる訓練期間の短縮やコスト削減が狙いで、導入の障壁を低減している*10

H&K社や西ドイツ政府の方針で生産ライセンスが15ヶ国以上に付与されている。北欧やアジアなど多数の国で主力小銃として採用され、それぞれの国で製造し独自の名前が付与されている(Ak4等)。
ライセンス生産を含めると生産数は累計1000万丁を超えると思われる。
しかし、その先々で反政府勢力などの手に渡っており、1980~2000年頃はAKに次いで紛争でよく見かける銃という立ち位置ともなっていた。



フィクション

G3

じーすり先輩。妹がいっぱいいる。はしたない技を持つ。

アニメ一期第三話と第九話にてトリエラが使用。

アインが埠頭襲撃時に使用。

主に敵勢力の超国家主義者が使用。M21とは弾薬の互換性がある。

ミレニアムサイエンススクール所属の双子の姉妹、才羽モモイ・才羽ミドリが所持。姉・モモイがG3を、妹・ミドリがSG/1を使用している。
モモイの方は「ユニーク・アイディア」、ミドリの方は「フレッシュ・インスピレーション」という名がついている。

PSG1

  • メタルギアソリッド
    • 「MGS1」ではスナイパー・ウルフ戦で、「MGS2」ではオイルフェンス上のエマ・エメリッヒ護衛の際に使用。
  • バイオハザード5
  • ブルーアーカイブ -Blue Archive-
    • 陸八魔アルが持つ「ワインレッド・アドマイアー」、黒舘ハルナが持つ「アイディール」のベースとなっている。なお両名とも「ゲヘナ学園」の所属。
  • Angel Beats! 高松
  • そらのおとしもの…(第8話)
  • 学園黙示録…南リカ(原作漫画5、13話 アニメ5話)
  • Call of Duty:Black Ops
  • 白竜(8巻『渋谷の王』編)
    • 今回の敵役、渋谷中央署署長・神内が自分を脅迫するヤクザの始末に使用。
      結果、着弾したヤクザの頭が破裂し、ほぼ首無し遺体が血や脳を通行人に撒き散らすという大惨事になり、新宿駅前はパニックに陥った。

MSG90

古すぎないがマイナーな狙撃銃ということから、マニアック気味な作品でたまに出番がある。
  • Phantom ~Requiem for the Phantom~
    • ただし形状がPSG1に似ているという声もある。
  • 名探偵コナン
    • 黒の組織のメンバー、カルバドスが使用していた狙撃用ライフルがこれ。



遊戯銃

G3

エアガンでは東京マルイがスタンダード、ハイサイクルなどの電動ガンで販売。
特にMC51をモデルにしたと思われるG3SASはネタ/サバイバルゲーム適正ともに高い。

PSG1

エアガンでは東京マルイが製造しているが、値段の高さ、電動ガンなのにセミオートオンリー、さらに首周りのギシギシ感等…愛でカバー出来る豪気な漢はお求めください。



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最終更新:2025年09月12日 20:21

*1 これの出どころがわからない…少なくとも2000年代にはそう呼んでいる文献がみられる

*2 マズルブースターによるガスを利用し複雑

*3 70→45ライヒスマルク

*4 結局フランスはMAS-49と独自弾薬を貫いたが後々NATO弾対応の汎用機関銃などを配備している

*5 逆説的にスコープの搭載されていないG3は2.6~4MOAの精度となる

*6 MP5などではマガジン挿入口から測定儀を差し込み隙間が一定範囲でない場合は工場に送るようにとされている

*7 かつてこの記事にも書かれていた「迅速な連続射撃が難しいボルトアクション式狙撃銃を使用していたため」というのは完全に誤り

*8 「~と言われている」程度で真偽不明

*9 よってすべての発射方式を併用はできない。またほぼ確実に単射を搭載する為、実質的に1~2ポジションに2点/3点/連射を割り振る形となる

*10 しかし高性能であるもののそもそもが高価格帯の銃であったがため、G3とMP5を除いて商業的に成功したとは言い難い