アスターテ星域会戦(銀河英雄伝説)

登録日:2010/06/14(月) 18:27:21
更新日:2024/12/24 Tue 12:42:21
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わが軍は包囲殲滅の危機にあるのではない。各個撃破の好機にあるのだ



アスターテ星域会戦とは、「銀河英雄伝説」の中で行われた戦役の一つ。
本編が開始されて最初に行われた戦役である。




【戦役に先駆けて】

宇宙歴796年/帝国歴487年2月、断絶していたローエングラム伯爵の地位を引き継ぎ、上級大将に昇進した帝国の若き司令官、ラインハルト・フォン・ローエングラム
第4次ティアマト星系の会戦で、帝国軍総司令官グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥を出し抜いた鮮やかな戦法で、同盟軍を撃破したラインハルト。
しかし彼を亡き者にしようとする貴族たちはそれを快しとしなかった。

ブラウンシュヴァイク公の策謀により、それまでの戦いで彼と共にあった分艦隊司令官ウォルフガング・ミッターマイヤー少将とオスカー・フォン・ロイエンタール少将、参謀長エルネスト・メックリンガー准将、ブリュンヒルト艦長カール・ロベルト・シュタインメッツ大佐ら主だった部下たちは全て転属となり、ラインハルトのもとには副官のジークフリード・キルヒアイス大佐が残るのみであった。
また代わりに与えられた帝国軍士官は、「堅物な老提督」ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将、「プライドの高い」アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト少将、「口先だけ」のシュターデン中将、「カス」のフォーゲル中将、エルラッハ少将(Byミッタマイヤー&ロイエンタール)という、ラインハルトが扱いづらい将ばかりがあてがわれた。兵力は2万余隻。
さらにフレーゲル男爵の策謀により、この情報はルビンスキーを介して同盟側にリークされ、同盟軍は倍の4万隻を導入し、帝国軍の殲滅を図った。

誰もが同盟軍の勝利を疑うこともなかったこの戦いは、帝国の若き獅子による覇業の第一歩となるのである。
しかし同時に、彼のその進軍を阻む同盟の"魔術師"も、息を潜めていた。


【登場人物-銀河帝国軍】

上級大将。帝国軍総司令官。旗艦はブリュンヒルト。副官はジークフリード・キルヒアイス大佐。
圧倒的不利な状況でも、部下たちの忠告に耳を貸さず、絶対的勝利を確信して進軍する。

大将。帝国軍艦隊司令官。旗艦はネルトリンゲン。副官はベルンハルト・フォン・シュナイダー少佐。
ラインハルトに意見する一人だが、彼の作戦にある程度の理解は示す。

  • シュターデン
中将。帝国軍艦隊司令官。旗艦はアウグスブルク。
ラインハルトの作戦に「机上の空論だ!」と反論するが、おまえが言うな。

  • フォーゲル
中将。帝国軍艦隊司令官。旗艦はバッツマン。
エルラッハに比べて出番もほとんどない。

少将。帝国軍艦隊司令官。旗艦はダルムシュタット。
「食うために軍人になった」若き司令官。キルヒアイスの目に適い、先鋒を命じられる。

  • エルラッハ
少将。帝国軍艦隊司令官。旗艦はハイデンハイム。
ラインハルトを終始見下している。


【登場人物-自由惑星同盟軍】

  • パエッタ
中将。同盟軍第2艦隊司令官。旗艦はパトロクロス。次席幕僚にヤン・ウェンリー准将。
過去の戦役でも散々敗北してるのに全く懲りず、ワンマンぶりを披露。

  • パストーレ
中将。同盟軍第4艦隊司令官。旗艦はレオニダス。分艦隊司令にエドウィン・フィッシャー大佐。
パエッタの友人で、彼曰く「百戦錬磨の猛将」らしい。

  • ムーア
中将。同盟軍第6艦隊司令官。旗艦はペルガモン。参謀はジャン・ロベール・ラップ少佐。
勇猛果敢な軍人だが、部下の進言を聞き入れないのはパエッタ以上。

  • ジャン・ロベール・ラップ
少佐。同盟軍第6艦隊参謀。
ヤンの同期で親友。能力もさることながら人望も厚く、ヤンからは自分よりも将器に優れていると評されている(ただし病気の為に出世は遅れ、ヤンはもちろん後輩のダスティ・アッテンボロー(当時大佐)にも抜かれている)。
音楽教師であるジェシカ・エドワーズと婚約しており、作戦の後に結婚するつもりであったという盛大な死亡フラグを立てていた







【結果】

勝者である銀河帝国では、総司令官のラインハルトが元帥・宇宙艦隊副司令長官に昇進し、自らの元帥府を開設した。そこにはミッタマイヤーやロイエンタールを始め、ラインハルトとキルヒアイスがこれぞと思う平民や下級貴族出身の有能な将官が集められ、彼らと帝国軍宇宙艦隊の半数を得たラインハルトは更なる高みへと進んでいく。

一方敗者である自由惑星同盟は、敗戦を糊塗する為に第2艦隊の司令官代理であったヤンを殊更称揚した。そして第4・6艦隊の残兵と新規戦力、併せて6400隻・70万人をもって第13艦隊を新設、その司令官に少将に昇進させたヤンをあてた。その最初の任務は過去6回の攻撃全てが失敗し、同盟将兵の屍をさらしてきた難攻不落の要塞「イゼルローン要塞」の攻略であった。
またラップを失い、婚前未亡人となったジェシカ・エドワーズはこの後反戦運動に参加し、後に同盟議員となり反戦派の象徴となっていくが・・・

評価

ラインハルトとヤン、非凡な両提督の采配を際立たせる最初の戦いとして描写された。
また当時の読者層は戦術と戦略の違いも説明しなければならない程度の理解度であったため、非常に単純化され、わかりやすい展開に終始している。
宇宙艦隊の戦闘にしてはやけに平面的という批判は発表当時からあったが、やむを得ない事情もあったのだ。

メディアミックス

銀河英雄伝説は各媒体に展開したことはよく知られているが、媒体毎に描写はかなり異なる。
当然アスターテもその例外ではない。

アニメ版

  • OVAでは描写はさらに単純化され、各艦隊は均等に1万3000隻とされた。
  • 劇場版「新たなる戦いの序曲」では原作に沿った展開に独自の要素を加味し、貴族側並びにフェザーンの思惑でラインハルト必敗の態勢が取られたことにされている。
  • Die Neue Theseでは第6艦隊が応戦中、妨害電波もありペルガモンの管制システムがダウンしてモニターがロスト、ムーアは降伏勧告を拒否してブリッジを上昇させ目視での戦闘継続を指示した矢先、クラスター弾を撃たれてブリッジが破壊され、爆発している。
    • また同盟軍が通信不能に陥ったり敵艦隊をあっさり見失ったのは、各個撃破を目論むラインハルトの策略によるジャミング工作と言う状況が追加された。
    • さらにその状況を見越していたヤンは艦隊運動プログラムを事前に全艦に配布しており、ジャミング下でも最小限の通信で艦隊行動ができるよう仕込んでいた。

コミック版

  • 道原かつみ版においてはこの戦いは「帝国の双璧」たちのラインハルト麾下でのデビュー戦という扱いになり、ミッターマイヤーとロイエンタールが参戦している。彼らはこの戦いでラインハルトの、またラインハルトは同じく彼らの将器を推し量り、双方共に満足する結果を得た。
  • 藤崎竜版ではさらに描写が洗練され、同盟三艦隊が合流しない理由をトリューニヒトの政治的意図に求めたことで説得力を増している。


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最終更新:2024年12月24日 12:42