アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト

登録日:2014/08/13 (水) 15:05:58
更新日:2024/08/05 Mon 16:00:29
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何人も無能な上官や盟主にめぐりあったが、最後にこの上なく偉大な皇帝につかえることができた。

けっこう幸運な人生と言うべきだろう。順番が逆だったら目もあてられぬ……。




アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト(帝国歴456年~新帝国歴002年)は、銀河英雄伝説に登場する人物。
ゴールデンバウム王朝、ローエングラム王朝に仕えた軍人で、銀河帝国軍艦隊司令官。

CV:速水奨(OVA)、竹内良太(Die Neue These)



■[来歴]■

後に主君と仰ぐことになるラインハルト・フォン・ローエングラムよりも下級の貴族の家に生まれた。
家は非常に困窮しており、ファーレンハイト自身も「喰うために軍人になった」と公言しているほど。

アスターテ星域会戦におけるラインハルト指揮下の分艦隊司令として初登場。このときの階級は少将。
この時、ラインハルトの作戦にメルカッツやシュターデンらのベテラン将官たちが難色を示す中、最年少(といってもラインハルトより11歳上だが)ただ一人その作戦の意図を理解し、興味を抱く。
その様子がキルヒアイスの目に止まり、戦いの先陣を任されることとなる。

リップシュタット戦役では中将に昇進しており、メルカッツと共に貴族連合側の数少ない良将として活躍する。
道原版では最初の戦略会議においてシュターデンの別動隊案に異を唱えようとしており(ランズベルクの勢いに遮られて言えなかった)、戦略眼も確かであったことがうかがえる。
艦隊指揮の他に戦場でラインハルト軍の動きを読んで友軍貴族に警告も行っており、無能な盟主と友軍に悩まされながらも軍人として最善を尽くしていた。

しかし要塞を包囲された状態でのブラウンシュヴァイク公による無謀な出陣命令にはこれを拒否。
さらには人心を失いつつある盟主に痛烈な批判を浴びせる。

要塞の利を生かして敵に出血を強い、長期戦に持ち込んで状況の変化を待つべきであるのに今出戦してなんの意味があるか。ただ敗北を早めるだけではないか。

そもそも公と小官とは同士であって主従ではない。身分に上下はあっても同じ銀河帝国の廷臣であり、ローエングラム侯の専横に対してゴールデンバウム王朝を守護したてまつる、その目的でむすばれた仲であるはずだ。

小官は軍事の専門家として、最悪の結果をもたらすことのないよう忠告している。

それなのに、命令がましくご自分の意思をおしつけるとは、ブラウンシュヴァイク公はなにを勘ちがいされたか

ブラウンシュヴァイク公は憤るもののもはや逆上する気力もなく、ファーレンハイトは宣言通りにガイエスブルク要塞に留まった。
やがて侵攻してきたラインハルト軍の捕虜となり、その才を惜しんだラインハルトから戦後に勧誘を受けて改めてローエングラム陣営にその名を連ねることになる。

その後はラグナロック作戦に参加するものの目立った功績を上げることはなかった。
回廊の戦いでは、ビッテンフェルトと共に先陣を切り、イゼルローン回廊に突入した彼を追う形でヤン艦隊と交戦状態に入る。
しかし回廊の地形を巧みに利用するヤンの奇策の前にビッテンフェルト同様手玉に取られてしまい、窮地に陥る。
自身の艦隊に7割近くの損害を出しつつ、殿を務めて味方を逃がす役目を担うが、宇宙歴800年/新帝国歴2年4月30日23時15分、旗艦アースグリムに被弾し負傷。
幼年士官に対し、彼の命を形見としてラインハルトの元へ帰還するよう命令し、戦死。同日23時25分、アースグリムも撃沈した。

ローエングラム陣営の中では初めて戦死した上級士官である。
死後、ラインハルトにより元帥号を送られ、後に新造された要塞「三元帥の城(ドライ・グロスアドミラルスブルク)」の名前の由来の一つとされた。


■[能力]■
速攻性のある機動力と高い攻撃力を有する指揮官で、特に攻勢の場面では非常に高い能力を発揮する。
反面、守勢に回ると粘りに欠けるとされ、総合的に見ればビッテンフェルト同様猛将型の指揮官といえる。
しかしその巧みな用兵術には定評があり、正面からの攻勢はもちろん、敵の側面や背後を突く奇襲戦も得意としている。

ローエングラム陣営に加わってからは、ビッテンフェルトと同じく予備兵力として待機することが多かったが、彼に比べて戦場を冷静に見渡す戦略眼が非常に高く、
主に神々の黄昏作戦においては戦況に応じて臨機応変な対応を見せたことから、非凡な才能を持った司令官であることがうかがえる。
アスターテ星域会戦でラインハルトの唱える作戦の意味を瞬時に読み取ったことから見ても、それは明白であろう。

座乗艦はダルムシュタット(アスターテ~リップシュタット戦役)、アースグリム(神々の黄昏作戦~)。
最終階級は元帥。


■[人物]■

貧乏貴族の出身ではあるが、そのコンプレックスを感じさせない程の清廉潔白。
リップシュタット戦役で貴族連合につき、敗戦を悟った際にメルカッツのような亡命ではなく降伏と転向を選んでおり、国や体制に尽くす職業軍人の意識が強い人物。

こうした性格から部下や同僚やラインハルトからも信頼も厚く、ローエングラム陣営では叛乱軍からの転向という経歴があるにもかかわらず、古参の将と同等の待遇を受けていた。
リップシュタット戦役戦勝式典でアンスバッハによるラインハルトの暗殺未遂及びキルヒアイスの死という大事件が起きた際も、投降者である彼の関与が疑われる様子がなかったことに普段からの信頼の厚さが窺える。
後の同盟併合の際に、ジョアン・レベロを殺害し帝国に投降したロックウェルがファーレンハイトを自らと同類であると訴えた際にはこれに激怒。
ラインハルトもファーレンハイトに同意し、その意を汲んで処刑を任せた。

生涯を通じて上官に恵まれなかったことが彼自身の不幸であり、特にブラウンシュヴァイク公のケースは顕著である。
自らが是としたことは相手が上官であろうが大貴族であろうが物おじせずに主張するため、ゴールデンバウム王朝時代は大貴族中心の上層部から扱いにくい将校として見られていた様子。
死の間際には「最後に偉大なるカイザーに仕えることが出来た。案外幸福な人生だったというべきか」という言葉を遺している。

なお、回廊の戦いでファーレンハイトを追い詰めたのはかつての戦友・メルカッツであった。
報告を受けたファーレンハイトは「よろしい、本懐である」と清々しく受け止め、メルカッツ自身も「流石だな」と賛辞を送っている。
メルカッツはファーレンハイトの戦死が報じられた後、ごく短い期間ではあるが喪に服している。

実はコルネリアス・ルッツと同い年だったりする。


■[部下]■

  • ザンデルス
副官。アスターテ星域会戦よりファーレンハイトに付き従っている古参の将。
回廊の戦いでは、味方を巻き込み被害を拡大させる黒色槍騎兵艦隊に対し「自分たち自身の牙で墓穴を掘りやがれ」と辛辣な批判を行い、上官に窘められている。
同戦いでファーレンハイトと共に戦死。最終階級は中佐。

  • ブクステフーデ
参謀長。神々の黄昏作戦より参加。
第1次ランテマリオ星域会戦では宇宙潮流の詳しすぎる解説を披露し、無理に横断するのは危険であると上官に進言した。
回廊の戦いでファーレンハイトと共に戦死。最終階級は少将。

  • ホフマイスター
ファーレンハイトの戦死後、ビッテンフェルトの指揮下で残存兵力を指揮する。
ファーレンハイトの部下の中には上官の死の理由がビッテンフェルトにあると信じるものが多く、このホフマイスターも例外ではなかった。
それ故黒色槍騎兵艦隊と反目し合い連携がとれず、そこをヤン艦隊に付け込まれ突き崩されたこともあった。
しかし第二次ランテマリオ会戦ではこの反目が競争心を生み、結果として爆発的な攻撃力を繰り出すことに繋がり、ロイエンタールを苦笑させている。





この追記・修正……メルカッツ提督か。

よろしい、本懐である

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最終更新:2024年08月05日 16:00