マゼラン星人マヤ

登録日:2014/11/15 Sat 21:56:24
更新日:2025/05/05 Mon 18:30:56
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こんな狂った星を……?

見てご覧なさい、こんな星侵略する価値があると思って?



ウルトラセブン』の第37話「盗まれたウルトラ・アイ」に登場した宇宙人
身長:1.6メートル
体重:40キログラム
演:吉田ゆり

▽目次

概要

地球を「狂った星」と見なすマゼラン星から送り込まれた工作員の少女。
マゼラン星から発射された「恒星間弾道弾」を地球に命中させるため、セブンに邪魔をさせないようにウルトラ・アイを盗み出すことが任務。
地球人と変わらない容姿をしているが、口を開かずテレパシーで会話ができる。

とある山中に飛来した球状の未確認飛行物体から地球に侵入。
近くを走っていた黄色のダンプトラックを奪い、アマギの指示によって検問を張っていたダンを襲ってウルトラ・アイを盗み取る事に成功。

その後は、とある街のスナック・ノアに潜伏し、マゼラン星に「ムカエハマダカ ムカエハマダカ」と、作戦の完了を終えた自身の回収を要請する通信をひたすらに送っていたが、
その電波を探知したウルトラ警備隊に発見され、赴いたダンとテレパシーで会話。
踊り狂う若者たちの中で自分もまた踊りながら、地球を「狂った星」「侵略する価値がない」と項目冒頭のように語り逃走する。

その後、ダンからリズムボックスに通信機が仕掛けられていることを聞いたウルトラ警備隊はそれを押収。
それでマヤと同じやり方、つまり同じ内容の通信を送ると、マゼラン星から返信があったが、アマギが解析したその内容は以下のものであった。
「恒星間弾道弾は既に発射された。迎えに及ぶ時間なし」
マゼラン星はマヤがウルトラ・アイを盗み出したことを知るや否や、地球に向けて恒星間弾道弾を発射していた。
着弾予定時間はこの返信があった17時の七時間後、つまり翌日の午前零時であった。
マゼラン星は母星に戻りたいと通信で訴え続けたマヤに、ギリギリで「地球と一緒に死ね」(意訳)と通告したのである。

その内容を知ったダンは単独でマヤの捜索に向かい、スナック・ノアで彼女と接触する。
マヤは未だに「恒星間弾道弾が地球に着弾する前に仲間が迎えに来てくれる」と信じていたが、
ダンは先程のマゼラン星からの返信内容が収められたテープを彼女に渡し、既にマヤは母星に見捨てられていると告げる。
テープを確認し、落胆したように黙り込むマヤに、ダンは「この星で一緒に暮らそう」と提案するが、
マヤは一言も発することなく、黙り込んだままダンにウルトラ・アイを返却した。

その頃、マゼラン星から発射され、地球目掛けて突き進む恒星間弾道弾は迎撃するステーションV2を破壊・突破しており、
ウルトラホーク1号と2号のレーザー攻撃でも破壊出来なかったが、内部に進入したセブンによって軌道を反転させられ宇宙へ飛び去った。

ウルトラ・アイを返却したマヤは、セブンに変身したダンが去った後もスナック・ノアに一人佇んでいた。
そして、思い詰めたような表情のまま、マヤはジュークボックスを操作する。
その瞬間、ジュークボックスから大量の白い煙が溢れ出し、マヤの身体を包んでいく。
やがて煙が晴れた時、マヤの姿はどこにもなかった。
直後、ウルトラ警備隊とセブンの尽力によって弾道弾の脅威から護られた地球は無事に午前零時を迎えたが、
裏切られた絶望で既に自ら命を絶っていたマヤには、最早関係のない話であった。

やがてダンがスナック・ノアを訪れるが、マヤの痕跡は彼女が付けていたブローチ以外、何も残っていなかった。
それを見てマヤの決断と最期を悟ったダンは、
「何故、他の星でも生きようとしなかったんだ…僕だって、同じ宇宙人じゃないか…」
と無念そうに呟くと、スナック・ノアを後にするのであった。



◆恒星間弾道弾
マゼラン星が地球を破壊するために発射した数百メートル規模の巨大な弾道ミサイル。
ミサイルというよりは巨大要塞といった感じの破壊兵器で、内部にはミサイルを地球へ誘導する装置が備わった制御室がある。
質量兵器としての意味合いもあるようで、ステーションV2に正面衝突しても起爆せずそのまま地球目掛けて直進し、
地球に到達する寸前で起爆装置が作動している。

ウルトラホークのレーザーの集中攻撃を受けても無傷なほど強固であるが、セブンが突入した際には呆気なく破られている。
弾頭部分もV2を一方的に破壊するなど強固ではあったが、制御室がある側面部分は案外物理的な力には脆かったのかもしれない。

準備稿では「ブラマトン」という名称がある。


解説

本作は序盤に円盤こそ登場するが、巨大な宇宙人も怪獣も一切登場しないという異色の回である。
物語の本筋はダンと自分の星に見捨てられた宇宙人の少女との人間ドラマであり、当時の子供たちにはかなり難解だったと思われる。
本作のようにセブン本人以外の着ぐるみ怪獣or宇宙人が一切登場しない話は、
他には第33話「侵略する死者たち」と第43話「第四惑星の悪夢」がある。

脚本の市川森一氏は、
「あるときね、新しい宇宙人造れないって言うんだ、造る金がない……。その前の回で先輩たちが使っちゃうんでね……。」
何とか宇宙人なしの回を1回出来ないかって注文が来たんですよ
と語っており、予算不足による苦肉の策だったらしい。

本編ではセブンに変身後はすぐミサイル内部に突入して事態を解決するが、
脚本ではセブンがミサイルを受け止めて大気圏突入を食い止めようとするという展開になっている。
上記のように予算不足であったため、着ぐるみ怪獣と同じようにミサイルの巨大セットを作らなければならなかったのでカットはやむを得なかったのだろう。
それはそれで、ホークと同じようにセブンとミサイルが操演で戦う場面は作れたかもしれないが。

結果として、本作は着ぐるみが登場しないエピソード3部作の中で唯一、7話と同じくセブンが戦う場面が一切ない話となった。

タイトルは「盗まれたウルトラアイ」だが、ウルトラアイは第3話のピット星人、第4話のゴドラ星人、第17話のユートム等に既に盗まれており、
メタ的な意味では今更なタイトルである。正しいタイトルは「またまた盗まれたウルトラ・アイ」

余談だがマヤの自害の演出は、ジュークボックスの「J」「7」のキーを押すと白い煙が発生して彼女を包み、
煙が晴れた時には身に付けていたブローチを除いて、彼女の姿は無くなっているというものだった。
このジュークボックスのキーには「I」が無く、母星から見捨てられたマヤには母星からの「愛」が無かった、という意味だと解釈される事があるが、
実はジュークボックスのキーには、元々アルファベットの「I」「O」が存在しない。数字の「1」「0」と混同しないようにするためである。

ちなみに、ジュークボックスの曲名はよく見ると確認でき、
  • D9:小指の思い出 KOYUBI NO OMOIDE
  • D10:夜霧にかくれて YOGIRI NI KAKURETE
  • E7:夜霧のブルース YOGIRI NO BLUCE
  • E8:俺は待ってるぜ ORE HA MATTERUZE Sam Taylor
  • E9:碧空 BLAUER HIMMEL アルフレッド ハウゼ楽団 Alhred Hause & his Orch
  • E10:ジェラシー JEALOUSY アルフレッド ハウゼ楽団 Alhred Hause & his Orch
E7、E8は石原裕次郎の曲をサム・テイラーがカバーしたもの。なお、マヤが押した「J7」は画面外のためわからない。


準備稿

本作の準備稿として、「他人の星」という脚本があった事が知られている。
決定稿との違いはマヤの名前が「マーヤ」となっている位で、話の筋に大きな違いはない。

しかし、「他人の星」のさらに準備稿「標的は踊る」という脚本がある事はあまり知られていない。
こちらは、「他人の星」と比べて決定稿と大きな違いがある。
決定稿では、マヤは母星のため任務を成功させたが結局は見捨てられ、捨て駒とされた事に絶望し、命を絶ってしまうが
「標的は踊る」ではマヤは初めから死を覚悟しており、ダンから迎えが来ない事を告げられても絶望するどころか、
勿論そうね。でも死ぬのは私一人じゃない! あなたも、地球も、大陽も、皆で一緒に死ぬのよ!」と言い放つ。
当然、マヤがダンにウルトラ・アイを返すシーンも存在せず、ダンは力ずくでウルトラ・アイを取り返す流れになっている。
そして、マヤは任務に失敗した事を悟り、自決する。

ラストシーンは、フルハシとパトロールをしているダンの前を、1台の車が通りすぎる。
フルハシはドライバーを見て「あの娘だ!」と叫ぶが、ダンは直前でマヤの死を知っている。
しかし、フルハシが尚も「確かにあの娘だった!」と言うのでダンもその気になり、アクセルを踏み込むというシーンで完結する。

「標的は踊る」と「盗まれたウルトラ・アイ」(並びに「他人の星」)では、マヤのキャラクターに大きな違いがあり、
なぜここまでの変更になったのかは、はっきりとした理由は分からない。


その他の作品

  • 漫画『ウルトラマン超闘士激伝』では、カネゴン共々モブ観客の常連としてほぼレギュラーキャラになっている。
    復刊ドットコムの完全版第4巻では何故か闘士になったイラストまで書き下ろされた。


  • ウルトラマンオーブ』では毎話過去作品のサブタイトルが登場人物のセリフ等に含まれている「サブタイを探せ!」というお遊びが行われており、
    第20話「復讐の引き金」ではメトロン星人タルデのセリフに本作の準備稿タイトルである「他人の星」が含まれているが、正解は「円盤が来た」である。
    なお、メトロン星人ならびに「円盤が来た」のどちらも「ウルトラセブン」関連である。




追記・修正は「夜霧のブルース」を熱唱してからお願いします。

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  • 後味の悪いオチ
  • 救いがない
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最終更新:2025年05月05日 18:30