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ティミー、ジョニー、スパイク/ヴォーソス、メルヴィン(TCG用語)

登録日:2014/12/01 Mon 13:50:44
更新日:2026/07/03 Fri 00:26:56
所要時間:約 5 分で読めます




概要

ティミー(Timmy)、ジョニー(Johnny)、スパイク(Spike)、ヴォーソス(Vorthos)、メルヴィン(Melvin)とは、
トレーディングカードゲーム(TCG)の開発において、カード開発の際に対象となるユーザーを大きく分類したものである。
提唱したのはMagic the Gatheringの開発元であるWotC社開発部(通称R&D)の筆頭デザイナー、マローことマーク・ローズウォーター氏。

TCGの楽しみ方は人によって千差万別であり、新しいカードへの需要も十人十色。
全てのプレイヤーが求めるものを的確に供給することは難しいため、プレイヤーのスタイルを大きく分類し、広い需要に合わせたカード開発を行うための指針として使われる。
ただしその考え自体は他のTCGにも応用でき、むしろ売り上げの原動力として重要視されている。
MTG(とデュエル・マスターズ)はスタッフが開発部のネタを開陳するのが大好きな文化を持つというだけで、開発部の偉い人があまり顔を出さないゲームでもそういう開発指標はあるのかもしれない。

注意点として、これはあくまでも開発時に方向性を決めるための指針であり、全てのプレイヤーが分類できるわけではない
1人で多くの楽しみ方をするプレイヤーもいれば、同じ分類の中でも更に細かく分類できたりもする。
そして何より、どのスタイルが正しく、どのスタイルが間違っているというわけでもない
間違っても、「彼はジョニーだから悪いプレイヤーだ」などとレッテルを貼るのには使わないように。

ちなみにこれらの名称はプレイヤーのサンプルとして名付けられただけで、名前そのものに深い意味は無い。
元WotC社デザイナーのマイケル・エリオット氏がバトルスピリッツのコラムで言及した際には、ティミー、ジョニー、スパイクをそれぞれジギークラッキー、マックスと呼んでいた。
こういった「顧客の対象を具体化する」手法はペルソナと呼ばれ、玩具に限らずYoutuberから高級レストランの食事に至るまで、様々なものに使われるビジネスの基本的なテクニックである。

楽しみ方の分類

ティミー

TCGに「楽しい体験」を求めるプレイヤーとされる。
ゲームそのものを楽しむプレイヤーであり「かっこ良くて強いクリーチャーを呼び出して戦いたい」「みんなでワイワイ遊びたい」ということを求める。
いわゆるファンデッカーのシンプル寄り。

勝ち負けやカードの流行を重視しないわけではないが、それらよりも「体験」を重視するプレイヤー。
開発・販促上ティミーに対しては「一見して強さがわかりやすいカード」「全く新しいルールでのゲーム」などが主に有効とされる。
いわゆる「嫁カード」「相棒カード」のようなこだわりがあったりするタイプであり、スパイクの中にもティミー気質の人は結構いる。
一概に「単純な顧客」というわけではなく、彼らが満足するカードを作るというのはこれが結構難しい。該当するプレイヤーの好みが幅広すぎる。
多くのTCGにおけるデザイナーズ・コンボやテーマデッキを使って遊ぶのが好きなプレイヤーの大半もこれに該当する。

さらに細分化するのであれば
  • パワー・ゲーマー:重くて巨大なクリーチャーや強力な呪文を撃つ派手なゲームが好きなプレイヤー。
  • ソーシャル・ゲーマー:親しい友人たちと遊びたいプレイヤー。これもまた「体験」重視であるという点でティミーの代表格である。
  • ダイバーシティ・ゲーマー:やったことのないゲームがしたいプレイヤー。新弾や新フォーマットを好む*1
  • アドレナリン・ゲーマー:運ゲー大好きプレイヤー。今引きやコイントスなどを好む。
  • グリーファー:嫌がらせ大好きプレイヤー。相手の戦術を台無しにすること自体を勝利よりも好む。
などが例として挙げられる。

ジョニー

TCGに「自己表現」を求めるプレイヤーとされる。
ゲームで自分だけのプレイやデッキを皆に披露したいプレイヤーであり「独自のコンボやデッキを発見・開発したい」「誰も使わないようなカードを使ってみたい」ということを求める。
同じくファンデッカーのロマン寄りで、改良の余地がほとんどないテーマデッキや露骨なデザイナーズ・コンボを避けたがる。

「自己表現」を求めているため、知名度の高いデザイナーズデッキや流行デッキは好まないことが多い。あくまで「相手の驚く顔を見たい」「相手を翻弄したい」ことを望む。
つまり「これまでにない独特のギミック、かつそれが制御可能なもの」を考えなければならず、ジョニーに対するカード開発が最も難しいとされる。
また、ルールの抜け穴を突いてしまい予想外の挙動を見つけ出すこともある。

さらに細分化するのであれば
  • コンボ・プレイヤー:新たなコンボを発見してそれをみんなに見せたいプレイヤー。
  • オフビート・デザイナー:土地単や満足など、突飛な発想に基づくデッキを構築したいコンボ・プレイヤーの亜種。
  • デッキ・アーティスト:単純な強さより世界観にフォーカスしたデッキ・ストーリー再現デッキなどを組みたいデッキビルダー。後述のヴォーソスとも重なる。
  • ユーバー・ジョニー:非常識なデッキを作りたいプレイヤー。カスレアを活用することなどで自己主張をしたいプレイヤー。
などが例として挙げられる。

スパイク

TCGに「困難な挑戦」を求めるプレイヤーとされる。
すなわちゲームに勝利すること、そしてトーナメントで結果を残すことを目的とするプレイヤーであり、「誰も目をつけていない強力カードで環境を制したい」「完成したデッキ、または環境に則したデッキを創りあげたい」ということを求める。
いわゆる「ガチデッカー」である。

「困難な挑戦」の最終目標はやはり「プレイヤー内の頂点に立つこと」であろう。
彼らに対しては極論をいうと「強力なカードを開発する」ことで需要を満たせるが、強力なカードを作り続けるとゲームがインフレしてしまうし、
そもそも単なる娯楽商品なのであまりにインフレを重ねてしまうとスパイク自身が離れていってしまうことも問題となる。
カード開発そのものは難しくないが、ゲームの寿命を維持するための長期計画は組みづらいとされる。

いわゆる「意識高い系」のプレイヤーも該当しやすく、たびたびカードゲームで温度差をテーマにした問題提起が提唱される際、悪者にされてしまう。
その一方で「強いプレイヤー」や「正義のプレイヤー」というお墨付きを与えやすいことから、ゲームを放置しておくとどんどんプレイヤーのスパイク化、つまり意識高い化が進んでしまう。
一時期のMTGはプレイヤーの半分以上がスパイク(とトレーダー崩れ)となり、ゲームの寿命自体が危ぶまれた。ここにテコ入れを行ったのが背景ストーリーの刷新や「統率者戦」の制定である。

さらに細分化するのであれば
  • イノベイター:新弾発売直後に環境最強デッキを組みたいデッキビルダー。ジョニーと被る点もあるが、あくまで強さを求める。
  • チューナー:環境で結果を出したデッキを(多少調整しながら)使って勝ちたいプレイヤー。
  • アナリスト:環境読みを行い、環境をメタるデッキを使って勝ちたいプレイヤー。
  • ナッツ・アンド・ボルト:デッキ調整よりもプレイング自体を磨いて勝ちたいプレイヤー
などが例として挙げられる。


以上の3つの大分類および小分類がある。
所詮は大分類であり、絶対的なものではないということは覚えておきたい。
小分類自体も例*2にすぎず、これら以外のプレイヤーも当然存在する。


たとえば(当時の分類での)ティミー、ジョニー、スパイクの3種類のプレイヤーが大満足したカードにこんなものがある。

Doran, the Siege Tower / 包囲の塔、ドラン (白)(黒)(緑)
伝説のクリーチャー — ツリーフォーク(Treefolk) シャーマン(Shaman)
各クリーチャーは、パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る。
0/5

実質3マナ5/5かつ、対戦相手の頭でっかちを弱体化させるというテキストを持つカード。
この性質はスパイク気質のプレイヤーを「そもそも戦略の軸として依存しやすい=除去されるとデッキ自体が脆くなるこれを入れるべきか?入れるにしても自分のデッキをドランに寄せるべきか?」という問題提起で悩ませ、
ティミー気質のプレイヤーを「ふはははー!3マナ5/5はつよいぞー!かっこいいぞー!ついでに隣にいる《ツリーフォークの先触れ》は1マナ3/3、《不屈の古樹》は4マナ10/10だ!」と喜ばせ、
ジョニー気質のプレイヤーを「どうにかしてこれで電波デッキ組めないかな、たとえば覇権と組み合わせてモードを自在に切り替えたり……」とワクワクさせたのである。


逆に彼ら全員にそっぽを向かれたカードというのもある。

Molten Sentry / 溶鉄の歩哨 (3)(赤)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental)
溶鉄の歩哨が戦場に出るに際し、コインを1枚投げる。表が出た場合、溶鉄の歩哨は速攻を持つ5/2のクリーチャーとして戦場に出る。裏が出た場合、溶鉄の歩哨は防衛を持つ2/5のクリーチャーとして戦場に出る。

/*


コイントスの結果でスタッツが決まるカード。
スパイク気質のプレイヤーは「テキストを読んだ時間を無駄にしたな」と見向きもしない。
ティミー気質のプレイヤーは「4マナ5/2って弱くない?しかも半分の確率で単なる壁?なんなんだこのカード?何に使えばいいの?」と疑問を持つ。
ジョニー気質のプレイヤーは「そもそもコイントスが制御できないなら、多少デメリットを持っていても普通の4マナでパワー5のカード使った方がいいよ」となる。
マーク・ローズウォーター直々に「すべてのプレイヤーが満足できるカードを作ろうとして、結果的に誰にとっても不満足なカードになってしまった」と言われたカードである。せめてスタッツがもっと派手ならね……。


また、前述したように1人のプレイヤーが多くの分類に属していたり、プレイを続けているうちに他の分類に変わったりもする。
そもそもこの分類自体、歴史とともにかなり変わってくるものである。
たとえばテキストが複雑化してデカブツを出すのがとても簡単になったゲームにおいては、むしろティミーは「小粒のクリーチャーで一気に勝ちを拾う」ような奇妙なデッキを好むようになるし、
ジョニーというのはテキストを自分で組み合わせるのが好きな生き物なので、むしろかつてのティミーのような派手な動き……何度も同じカードを使い続けて相手を殺すなど……をもって自己表現をするようになる。
コラボカードやメディア展開が盛んになれば、ヴォーソスはメルヴィン化していく。

さて、この3つが「プレイヤーの分類」であるが、それに加えて「デザイン観の分類」というものも存在する。

デザイン観の分類

ヴォーソス

カードの世界観やフレーバーテキスト、カードイラストなどを重視する。
同じシリーズや背景ストーリーで仲間であるカードでまとまったデッキを好む。
また、TVアニメや漫画とタイアップした作品ならば、その作品が好きでキャラクターが使用したデッキを求めたりもする。

プレイヤーではないためテキストの強さはわからないが、カードそのものの価値を求めるコレクターがヴォーソスの最たる例だろう。

メルヴィン

カードのギミックやメカニズム、フレーバーではなくテキストそのものを重視する。
カード性能を第一とし、実際に運用した際の機能性を求める。ルールの穴を探したり、詰めパズルや複雑なコンボを構築したり。

ジョニー気質が強めのプレイヤーがこの気質を持っていると、その独創性は手がつけられない。
本当に細かいルールの穴を的確に突いて、摩訶不思議な動きとともに勝利をもぎ取るため。
発想自体が異次元の領域になるため、単なるティミーやジョニーが「分かっていても普通やるか!?」というレベルで収まるのに対し、
メルヴィン気質が強いジョニーがデッキを組むと「そもそも何を言っているのかまったく理解できない……」となることさえある。

以上が、カードデザイン観を大きく二分したものである。
この2つはほぼ相容れることのない要素であるが、極端にどちらかにしか属さないプレイヤーはほとんど存在しないといわれている。
多くのプレイヤーはカードのどちらの面も愛する「メルソス(Melthos)」と呼ぶべき存在だとも言われている他、メルヴィン的な視点からヴォーソス的な要素を見出す人もいるし、ヴォーソス的な視点からメルヴィン性癖を満たすような人もいる。
極端な話、興奮する要素が「萌えイラストや原作再現」か「複雑なテキスト」か、という分類なので、決して相反する要素というわけではない。



ティミー、ジョニー、スパイク。
ヴォーソス、メルヴィン、そしてメルソス。
これらはプレイヤーの側面でしか無く、これだけの要素を持つゲームはそれだけ奥深いとも言える。
各々のプレイスタイルを尊重し合い、ともにゲームを盛り上げていくのが正しいプレイヤーのあるべき姿ではないだろうか。

なお、MtGでは銀枠(ジョーク・エキスパンション)世界に上記の分類をネタとしたカードが存在している。

まずティミー。

Timmy, Power Gamer
(2)(緑)(緑)
Summon — (Legend)
(4):あなたの手札にあるクリーチャーを1体戦場に出す。
1/1

手札のクリーチャーのコストを踏み倒す、「かっこ良くて強いクリーチャーを呼び出して戦いたい」を体現したカード。
ちなみにフレイバーテキストは

Just wait till I get my Leviathan....
(俺のリバイアサンを引くまで待ってくれ...)

…いや、リバイアサンですか。わざわざ自分の土地をボロボロにするカードをあえてチョイスする辺り、かなりのこだわりを感じさせられる。

ちなみに再録時にはこう変わっている。

Just wait till I get my Gigantosaurus....
(俺のギガントサウルスを引くまで待ってくれ...)

5マナ10/10バニラに切り札が変わった。流石に色も合わずデメリットも強烈なリバイアサンを使うのはやめたようだ。

次はジョニー。

Johnny, Combo Player
(2)(青)(青)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) ゲーマー(Gamer)
(4):あなたのライブラリーからカードを1枚探し、それをあなたの手札に加える。その後あなたのライブラリーを切り直す。
1/1

デッキから任意のカードをサーチする、「独自のコンボやデッキを発見・開発したい」を体現したカード。
そしてフレイバーテキストは

"Just wait till I get my Krark-Clan Ironworks, Genesis Chamber, and Grinding Station. Oh yeah, and a second Myr Retriever."
(クラーク族の鉄工所と起源室と研磨基地が出るまで待っててよ。あっと、あと2枚目のマイアの回収者もいるな。)

…簡単に言えばこの5枚が揃えば、無限マナ・無限トークン・無限デッキ破壊の条件が整う。5枚中1枚しかパーツが揃っていないため、コンボが炸裂するのはだいぶ後になりそうである。


そしてスパイク。

Spike, Tournament Grinder (2)(黒/Φ)(黒/Φ)
伝説のクリーチャー ― 人間(Human) ゲーマー(Gamer)
((黒/Φ)は(黒)でも2点のライフでも支払うことができる。)
(黒/Φ)(黒/Φ)(黒/Φ)(黒/Φ):ゲームの外部から、あなたが所有していて構築フォーマットで禁止又は制限されたことのあるカード1枚を選び、それを公開し、それをあなたの手札に入れる。
1/1

デッキ外からマジックの歴史上で禁止カードまたは制限カードになったことのあるカード1枚を持ってくる。「強力カードで環境を制したい」を(ちょっと掟破りであるが)体現したカード。
ファイレクシアマナ(Φ)という上から下まであらゆる環境で暴れまわったシステムかつ、初心者が嫌う「自分のライフを削る」効果を持っているのも"Tournament Grinder"=勝つために大規模大会に足繁く通う人 という名前の通りである。

そしてフレイバーテキストは

"Just wait—I have a response."
(ちょっと待って ― それにスタックで)

大会などではどこでも聞くことになる応答である。スタックでどういう行動をするかは不明だが、例えばこの能力で《マナ吸収/Mana Drain》や《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を持ってきてしまえば上二人の計画はズタズタになることだろう。

2022年、満を持して登場したメガサイクルの四枚目はヴォーソス。

神話の重鎮、ヴォーソス/Vorthos, Steward of Myth (1)(赤)
伝説のクリーチャー ― 人間(Human) ゲーマー(Gamer)
神話の重鎮、ヴォーソスが戦場に出るに際し、名前のあるマジックのキャラクター1人を選ぶ。
あなたが、その選ばれたキャラクターが名前やフレイバー・テキストやアートに含まれている呪文を唱えるためのコストは(白)(青)(黒)(赤)(緑)少なくなる。この効果は、あなたが支払う色マナの点数のみを減らす。
[どんぐりシンボル付き - トーナメントでは使用できない。]
1/3

特定のキャラクターを選び、その色マナを軽減する。判定はかなりゆるゆるで、「別名・変身した姿でも可」「本人じゃなくて石像とかでも可」「ラクドス教団やアヴァシン教会のように個人名か団体名か区別がつかなくても全部まとめて可」「本名不明でも誰なのか特定できるなら可」などなど。
2コストで特定のカードを軽減、とくに多色であれば2コスト以上軽減することが可能であり、どんぐり銀枠でさえなければ普通に強い。なんならスパイクよりトーナメントで強いまである。地味にタフネスも3あり、他3人と比べて随分打たれ強い。ニコル・ボーラスのコスプレイヤーの彼女だが実際ボーラスは3色で重くて登場期間が長いので相性抜群。

そしてフレイバーテキストは

"Just wait,my Madara deck isn't all Emperor Bolas. There's an Umezawa Subtheme!"
(ちょっと待って、私のマダラ帝国デッキはニコル・ボーラスだけじゃない。梅沢もサブテーマに持ってるの!)
……ニコル・ボーラスデッキを組むにしても、レジェンド(1994年発売のパック)時代のテーマは流石に尖りすぎではないだろうか?


追記・修正はシンプル&ダイナミックかつ独自性・拡張性があり実戦的で格好良くてテキストが合理的なカードを開発しながらおねがいします。

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最終更新:2026年07月03日 00:26

*1 が、必ずしも新弾を使った革命的・強力なデッキを作ることに拘らず、新たな体験自体に魅力を感じる

*2 2006年のMtG公式記事で挙げられたもの