登録日:2015/05/31 Sun 16:36:00
更新日:2025/09/25 Thu 08:46:51
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性能(E型)
全長:937mm
重量:4500g
銃身長:508mm
使用弾薬:
7.92x57mmマウザー弾
銃口初速:761m/秒
装弾数:10/20+1発
発射速度:900RPM
作動方式:ロングストロークガスピストン ターンロックボルト
有効射程:550m
概要
1942年にラインメタル社が開発しナチス・ドイツが運用した自動小銃である。
FGとはFallschirm jägerGewehr(降下猟兵小銃)の略称。
空挺部隊が降下直後から戦闘能力を発揮することを目的としており、小銃と軽機関銃を兼ねた多目的な銃となっている。
開発経緯
ドイツでは1936年より空軍管轄の空挺部隊である降下猟兵を組織しており、1940年のノルウェー侵攻にて世界初の大規模空挺作戦を行った。
空挺降下(エアボーン/空中挺進)は航空機を用いた機動作戦のひとつ。車による機械化歩兵とは比べ物にならない速度で展開できる能力を持つ。
敵前線の後方にいきなり現れ、攪乱や前線部隊との挟み撃ちを行い前線部隊を支援する。
電撃戦との相性も良く、制空権が確保できていた大戦中盤までにおいては多大な戦果を挙げた。
しかしデメリットもある。まず第一に、降下猟兵は降下時に極めて軽装であることを
強いられる。
ドイツ式のパラシュートは腰に固定して前のめりに降下する構造上、足に分解した銃を巻き付けるなどの重装化が難しかった。
そうすると身に着けて降下できるものは拳銃、手榴弾、降下猟兵用特殊空挺ナイフだけ。
当時の歩兵用銃器は
短機関銃を除き軒並みかさばるため、同時投下されるコンテナに積み込んでいた。強風や座標ミス等でコンテナが兵士の降下地点から離れたところに落下することがあり、そのせいで回収できず貧弱な武装で戦うハメになることが多々発生した。
1941年のクレタ島の戦いでは、風で流され攻略地点の周囲に散らばる形となってしまったこととコンテナの件が重なり損害も発生している。
後の米軍等大戦後半に活躍した空挺部隊では、空挺兵がケース入りのカービンや
短機関銃を携行し対策している。しかしドイツ軍では前述のパラシュートの問題によりあまり重たくてかさばるものを持たせることができない。
そういう戦訓が出る前から降下猟兵用に軽量なライフルが試作されてはいたのだが、既存のKar98k改修型の場合折り畳み式での強度不足が解消できなかったり短縮による反動増加等で射撃継続に問題が出るなどが発生。それにどのみち機関銃が持てないので、制圧や分隊支援を行うことができない。
そんなわけで降下猟兵用の小銃と機関銃を兼ね備えた自動小銃が必要としたゲーリング元帥は以下の要求を主張。
- 全長は1m以下で、主力小銃と同等かそれ以下の重量
- 主力小銃弾を使用
- 火力支援としてライフルグレネードを発射可能
- 簡易的に狙撃が可能な命中精度
- 銃剣を用いた白兵戦に耐えられる強度
- フルオートによる制圧射撃が可能
当時の世界の技術水準を考えると無茶とかそういうレベルですらない、
正気を疑う無茶ぶりである。
陸軍兵器局は非現実的として開発を拒否。そのため空軍独自で開発会社を探したところ、航空/対空機関砲を手がけていたラインメタル社とクリークホフ社が手を上げた。
1942年にルイス・シュタンゲ技師によるラインメタル案が採用。ラインメタルが既存の
機関銃生産で手一杯だったため、生産はクリークホフに委託されることとなった。
構造
材質はスウェーデン鋼を多用。
プロトタイプでは強度を優先してマンガン鋼を採用していたが、戦車にも大量に使われる重要素材のため銃に回す余裕がなかったと思われる。
ただ、このせいで量産性が低下している。
専用のスパイク銃剣が用意されており、普段は銃身下部の筒状の鞘に収納されているが、引き抜いてひっくり返し、元の位置に突っ込めば使えるようになっていた。
ストックは連射を意識して直銃床を採用。
機関部には後の
突撃銃ベースの機関銃に見られるような、セミオート時はクローズドボルト/フルオート時はオープンボルトで駆動。単発射撃精度と銃身冷却性を両立している。作動方式も堅実なもので信頼性が確保されている。
弾倉はグリップの左直上に差し込む。
ブルパップ式とまではいわないが、全長を短くしつつ銃身長も確保しようとしている。
しかしKar98kに比べて90mm短いため、マズルフラッシュがかなり大きくなった。対策としてF/G型ではフラッシュハイダーが改良されている。
デメリットとしては射撃に伴う左右の重量バランス変化が酷く、
機関銃としても威力・有効射程ともに低くなっている。
用意された箱型弾倉は10発ないし20発だが、10発の方はフルオート射撃に適さない為か全くと言っていいほど使われなかったらしい。射手は8+1個の20連弾倉を携帯した。
右側面の排莢口にはクリップ(装弾子)用のガイドがあり、これによりクリップ装弾も行えた。
セレクターは64式小銃に似た竜頭のようなレバー式。単射(E)、安全(S)、連射(D)の順に並んでいる。
伏射などでのフルオート制圧射撃を考慮して、バイポッドが標準装備されている。
しかしE型では展開後の固定機構がなく、伏射中に勝手に畳まれてしまう場合があった。
光学スコープもZFG-42/ZF4 4倍率スコープが標準で支給され、機関銃/狙撃銃としての使用も想定されていた。しかしこれがクセモノで、100発で調整ノブが壊れレンズが曇ってしまう。
戦中ドイツでは銃用のスコープにおいて(Kar98Kの狙撃仕様のように)満足のいくものが配備されることがなかったので仕方なし。
ライフルグレネード対応だけは強度上の問題を解決できず達成できなかった。
過酷な要求の大半を実現したというだけでもラインメタルの技術力は相当凄いことには変わりないが。
しかしながら複雑な構造で部品点数が多く材質も高価、そして既存の生産ラインに無理やりねじ込んだことから生産数は伸びず、総生産数は7000丁前後とされる。
実戦
記録に残っている中で初の実戦運用はロードス島の戦い。直後のグラン・サッソ襲撃(ムッソリーニ救出作戦)でも運用されたが、その際には早期に制圧が完了したため発砲はされなかった。
大戦後半からは制空権も取られ侵攻作戦もほぼなくなったことから空挺降下は行われなくなったものの、降下猟兵は練度が高く歩兵としても優秀だったため防衛戦で活躍。その過程で本銃も実戦をくぐり抜けていった。
バリエーション
A~D型は試作/極初期モデル。大量生産されたのはE型以降となる。
E型(I型)
初期型。異様に急角度な金属製グリップと金属製ストックが特徴。
バイポッドは銃身の中間辺りに接続され、銃身方向へ折り畳む仕組みになっている。生産数は2000丁前後。
F/G型(II型)
1944年8月以降の後期型。スウェーデン鋼を使わず強度を確保するため、連射速度が低下したほか各部が多少大型化して200gほど重くなった。
グリップはプラスチック製で角度も緩くなった。
ストックも木製に変更され、形状も多少変更が加えられている。
フラッシュハイダーも改良されて蛇腹のような形状に変更(G型以降)。
バイポッドは銃口付近に移され、ロック機構が追加された。
排莢口にケースデフレクターが設置されクリップ装弾機能はオミットされている。
その他、フロントサイトカバーやマガジンハウジングのダストカバーを追加するなど多数改良されている。
余談
鹵獲された本銃は米軍に
テストされ、意外なほどの高評価を受けたという。
超過酷な要求をほとんどクリアしているという点では確かに好評なのもわかる。
MG42をリバースエンジニアリングしたT24の開発に失敗したため、本銃とMG42を融合したT44が試作された。
最終的にはよりブラッシュアップされたT161E3となり、M60汎用機関銃につながる。
降下中に制圧射をするための急角度グリップなのだ、という主張は結構いろんな所で見る。
だがしかし、前述のパラシュートの都合上半身に重いものは持たせられないし両手がふさがるのは言語道断である。
そもそも軍用の落下傘で降下中に銃を撃てるほどの時間的猶予はほとんどない。仮に高度500mから撃ったとして約5m/sで降下するので100秒で接地する。それなら降りた後を想定したほうが良い。
どうしてもやりたかったら最後の大隊みたく
吸血鬼になってからどうぞ。
フィクション
もともとドイツ軍がいないとかなり苦しい、第二次大戦ものの
FPSやその他創作作品にて多く登場。
変わったところでは『ドールズフロントラインシリーズ』にも無印のサービスインから本銃の戦術人形(キャラ)が収録されている。
追記・修正は落下傘降下中に制圧射撃しながらお願いします。
- 初代Call of Dutyの説明書では「白兵戦も狙撃もイケるチートウェポン!ドイツの化学力は世界一ィィィ!」みたいな嘘解説が載ってた -- 名無しさん (2015-06-01 22:50:27)
- 人狼が入ってないとか立て主分かってないな -- 名無しさん (2015-06-04 14:34:37)
- これのセミオートとフルオートの切り替えの中身が狂おしいほど好き -- 名無しさん (2021-10-25 12:45:46)
最終更新:2025年09月25日 08:46