お受験

登録日:2015/11/20 Fri 20:52:56
更新日:2023/04/29 Sat 17:35:17
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お受験とは、私立、国立の幼稚園小学校の入学試験を受け(させ)ることである(狭義)。
中学以上の受験となると「お」は何故か付かなくなる……と思う。


●概要
今までは一部の富裕層しか受験しないことや、(中学生以上ならまだしも)未就学児が自身の入りたい学校を選んだり決めたりなどまずできるはずがないため、「一族のブランドのために子供を犠牲にしている」、「親のエゴ」と言った否定的なイメージが強かった。

が、近年の ゆとり教育 による公立小学校の学力低下、学級崩壊などが社会問題になり、「教育方針がしっかりしている」、「設備が整っている」、「質の高い指導が受けられる」等の理由から注目が集まっている。
また地元公立校がいじめやDQN・質の悪い教師やあてにならない教育委員会の跋扈や学級崩壊などで荒れている場合、然程裕福でない家庭も無理をして受験させ逃れることもあるようだ。
学校の方も少子化の影響により、今までよりもさらに幅広く門戸を開くようになっていることもあって、首都圏や関西都市部では当たり前になりつつある。
特に受験率が高いとされる東京都渋谷区、千代田区、文京区では全小学生の半数弱が私立に在学しているというデータがあるほど。


●入試内容
  • 面接
基本的に親子セットであることが多い。受験した理由や家での生活、親の職業や教育方針について質問される。
服装や態度もチェックされるので(学校によって違う)、気が抜けない。

  • ペーパーテスト
いわゆる筆記試験。迷路をゴールまでなぞる問題や図形、数に関するなぞなぞのような問題が中心。
また、一般常識(節句、マナー)を問う問題もある。これを課さない学校もあり、そちらの方が受かる基準が分かりにくく難しいとされる。
またペーパーテストを「1次試験」と称し、これに受からないと面接が受けられないという2段構えな学校もある。かなり難解な問題も多く、有名校の入試だと大学生でもわからないこともある。

  • 運動
試験官の指示に従って、マット運動やジャンプ、走る等の実技を行う。このためにお受験対策でバレエやスポーツ教室に入る子供も多いとか。

  • 行動観察
他の受験児と一緒に遊びや作業等を行う。主に協調性やリーダーシップを審査する。あいさつや言葉遣い、態度等の基本的な生活習慣も見られる。

  • 巧緻性
手先の器用さを審査する試験。折り紙や糸を穴に通したり、服をたたんだりする試験もあり、しつけ面も審査されるというわけ。

  • 記憶
絵とお話の場合の2種類ある。
前者は、絵を見たり話を聞いたりした後、それについての質問に答える問題。
後者については原稿用紙10枚分くらいに及ぶこともあり、記憶力が問われる。また、絵からその場のアドリブで話を作らせるパターン(作話)もある。

  • 無言
正式名称不明。先生が子供が食いつきそうな話題を話して、子ども側はひたすら黙り続け、絶対に反応してはいけないテスト。
私立学校の場合公共交通機関を利用しての通学が多いので、交通機関でのマナーを鍛えるものとされる。


●小学校の種類(例)
  • 大学までエスカレーター式(青山学院・慶応義塾早稲田・学習院・聖心女子学院・立教など)
入学すれば中学、高校、大学までテストなしでそのまま進学できるパターン。
基本的に卒業生が子供に受験させる事が多い。但し、中学~大学もハイレベルで有名であることが多いため、小学校の難易度も非常に高い。また、いわゆる名門校であることが多いので著名人の子息が集中する。
入学後は系列大学に進学する前提で授業が行われるため高校で受験対策をしないことがあり、将来の進路が狭くなってしまう可能性がある。系列により大学への進学のしやすさは違いが大きく、何も勉強しなくてもほぼ行けるところもあれば、希望の学科には学内でよい成績を収めないと推薦してもらえないところもある。
また、小学校から入学した生徒と中学以降から入学した生徒との格差も問題になることも(後述)。

  • 進学校附属パターン(暁星・雙葉・白百合学園など)
中学、高校が有名な進学校で、その附属の小学校というパターン。
中学入試だと勉強内容が難しいので早いうちに入学したい、というケースである。
後述の宗教系に当てはまる学校も多く、中学・高校が有名であればあるほど難易度も高くなる。

  • 小学校だけ(東京三育学院・リリーベールなど)
小学校しかないパターン。中学受験の塾を小学校に置き換えた感じで(実際経営元が塾の場合もある)、卒業したらほぼ全員が私立中学に進学する。カリキュラムもそれ前提になっている。
小学校のみが共学で、中学以上が男子校/女子校という学校だと、上の学校が受け入れる性別ではないほうの児童にとってはこのパターンに入る。

  • 宗教系(清泉女学院・東洋英和女学院・創価など)
私立ならではの、宗教教育を取り入れている学校。
朝ドラ『花子とアン』でおなじみのミッションスクールから仏教系、カルト寄りの新興宗教系まで様々だが、首都圏では大体キリスト教系。ちなみに入信していないと入れないということはなく、その宗教の信徒ではない子女も合格さえすれば普通に受け入れられるし、何ならミッションスクールには住職の子が何故か学年に一人はいるものらしい。
とはいえスクールモットーに教義の影響が色濃いことをはじめ、学校行事にミサや礼拝や募金などの慈善活動、花祭りなどは当たり前に組み込まれているので、合わない人にはとことん合わないかもしれない。もしカルト色の強い所だと殆ど濃い信者しかいない。
厳密には宗教と異なるが、カルトに近い特異な思想に基づいた教育方針の私立も若干存在し(正式な小学校ではないフリースクール扱いの所が大半だが一部正式な一条校になったところもある)、そういう所だと必ずしも一般的な学力を重視しない。
その他の特徴としては歴史の古い学校が多く、所謂お金持ち学校が多いこと、共学の学校が少なくたいてい男女別学(共学でも中学からそうなってしまう場合が多い)であること。また、上記の進学校パターンにも当てはまる学校も多い。

  • 国立校(筑波大学付属・お茶の水女子大付属・東京学芸大学附属など)
国立大学の附属小学校。大学の教育学部の実習用として設置されていることが多い。そのため、公立以上に教育実習が多く組まれるので、公立よりも授業が遅くなっている場合もある(学校にもよる)。
前述の私立に比べると費用が格段に安い(公立のチョイ高めくらい)ので人気が高い。
要するに「授業料お安くするよ、その代わりに教育学の発展のための研究に協力してね」という感じ。児童生徒はいわばモニターで、悪く言えばモルモット
しかし受験者が多すぎて(都内では1,000人を超えることも!)まず抽選を行うため、試験に受かっていても抽選で落とされる可能性が高いのである意味私立より難しい。まさに運ゲー。
ちなみに秋篠宮悠仁殿下が通ったお茶の水女子大付属小学校の抽選は約9~10人に1人の確率(さらに実技、再抽選で削られ、約3,000~4,000人中50人弱が合格する)。
また、学校がある都道府県以外からは受験できないことがある。


●お受験のメリット
  • 勉強面
公立と違い、教科担任制(中高のように教科で先生が変わる)を取る学校も多いので、基本的に授業のレベルが高い。
また、エスカレーター式の学校に入った場合、以降は入学試験なしでそのまま進めるため余裕ができる(但し受験対策をしないことがあるので、場合によっては進路の仇になる)。

  • 環境面
基本的に冷暖房完備の学校がほとんどで、施設も格段にきれい。安くはない学費がちゃんと還元されている。お弁当持参のケースも多いが、給食を有名なホテルが用意する学校もあるとか。

  • 人間関係
私立はもちろん、国立でも「貧しさゆえのDQN」というタイプは殆どいない。
地域の民度や価値観によっては、「勉強ができる子」が生意気とみなされていじめの対象になる場合もあるが、進学校の場合は(妬む者もいないとは言わないが)いじめられるような目に遭うことだけは少ないだろう。むしろ一目置かれるかも?
有名人の子の場合、東京の私立の有名人子弟御用達学校ならば似たような親が多いためある意味気楽なこともある。
デメリットにも述べるが、いじめ自体とは無縁という訳ではない。


●お受験のデメリット
  • 人間関係
最低6年間(高校まで一緒なら12年間)同じメンバーで過ごすことになるため、どこかでトラブルが起きると気まずいまま過ごさなければならない。学校によってはクラス替えをしないこともある。滅多なことでは顔ぶれが入れ替わらないので、人間関係の良し悪し次第で環境が天国にも地獄にもなりうる。
長期間同じメンバーで過ごす&勉学重視になる故一般的な公立学校とは別のスクールカーストがガチガチに構築される事もあり、進学校だからこその陰湿ないじめというのも少なくない。

公立と違い電車通学の生徒も多く、同級生同士でも気軽に互いの家に遊びに行く機会も少なくなるので、学校以外での人間関係が作れない(地元はほぼ無理)。
住んでいる自治体が開く成人式では知り合いがおらず肩身が狭いので、クラブなんかを借り切って学校単位の成人式を開く学校もある。

似た環境(特に経済的な意味で)の子供が集まるため、少し常識知らずになる可能性がある。
小学校受験を経験したこの多くは実家が裕福であるため、進学後に中学以降から入ってきた子との格差の問題が生じやすい(特に大学まである学校では友達づきあいの出費を埋めるために援交に走る学生もいるほどらしい……)。

後述の経済面の問題とも重なるが、あまりにも名士の子が多い学校の場合、うっかり庶民の子が入ると金銭から人脈からあらゆる感覚が違いすぎて付き合いが辛くなってしまうことがある。リアル『花より男子』状態。中には相当イケズな層が多い学校もあり、子供の友達の身元調査を行う親すらいるとか。
ことに幼稚園〜小学校はPTAや行事で親の出番も何かと多いため、子供本人は上手くやれても親が神経をすり減らし中退するケースも稀にあるようだ。

お勉強重視や学費高い系でなくてもこうした問題はあり、カルト寄り思想の学校だと「思想をちゃんと守れているか」という同調圧力による相互チェックがきつく、これでドロップアウトする者もいる。
また、思想系・宗教系学校の場合親が狂信者で子供がそうでない場合非常にキツい思いをすることになる。
中学校以上なら、わざと入試で白紙提出や面接で態度を悪く演技して落ちるという知恵が回る者もいるだろうが、小学校までだとわけもわからないうちに受かって行かされてしまう場合もある。


  • 学力面
大学までエスカレーター式で上がれて、かつ上への推薦基準がユルいところだと、「遊んでいても大学に行ける」という安心感から大学に上がる頃にはすっかりお馬鹿さんと化してしまうことがある。
低偏差値大学の付属だと、これで内部推薦すらもらえなくなり(お情けでもらえたとしても、希望する学部学科にはまず行けないものと思わなくてはならない)あらゆる意味で「何者にもなれないダメ人間」となってしまうケースは少なくない。
逆にガリ勉系の学校に無理して入って燃え尽きてしまい、早い者だと大学受験まですらもたず精神崩壊して人生を棒に振る者も……。


  • 経済面
私立の場合、小学校の入学で平均100万前後、また受験対策だけで200~500万かかると言われているため、かなり余裕がないと厳しい。
子供が小さいうちはママ友付き合いでも何かとお金と心労がかかるので、無理して入ると親の精神も削られる。最悪の場合、入学時点では経済的に余裕があってその状態がずっと続く前提でいたところ、その後事業の失敗やリストラに遭うなどして(学校に減免制度がありその適用を受けても)授業料が工面できなくなってしまった、という経済的な理由での転校も少なからず起きうる。
また、ママ友に至っては(学校にもよる)、「ママ友会の出費が月自動車数台分」、「子供の誕生日会はホテル貸切」、「手土産は最低でも三越レベル」といった見栄の張り合いがあることも。


【余談】
今やお受験の必須事項になった面接の歴史は当然ながら古い。中でも、かつての旧日本海軍の士官学校である海軍兵学校は難関として知られていた。
エリートの仲間入りである兵学校への入学は狭き門で、全国から集ったエリート達も面接で苦戦した記録が残されている。世の学生を悩ます面接はこの頃から存在しており、面接はここ100年間の子供や若者達の悩みのタネである(陸軍士官学校に比べると相当に狭き門であった)。少なくとも今の若者の曾祖父さんから高祖父世代から続く文化であり、慣習なのだ。



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最終更新:2023年04月29日 17:35