連続テレビ小説(朝ドラ)

登録日:2017/04/24 Sun 21:30:00
更新日:2025/04/04 Fri 19:01:57
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     テ     
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     ビ     
     小     
     説     



連続テレビ小説とは、NHKが制作・放送している帯形式のテレビドラマである。
初回が朝に放送されているため「朝ドラ」の通称があり、この項目でも以降便宜上朝ドラと表記する。

【概要】

1961年から放送が開始され、大河ドラマよりも長い歴史を持つシリーズである。
地上波では毎週月曜~土曜の朝8時から放送しているが、NHKBS・BS4Kでは7時半から先行放送されている。
再放送はNHK総合で同日12時45分から実施。地味に1日3回視聴可能なので、お好きな時間を選ぼう*1

最大の特徴は月曜~土曜まで毎日15分放送されているという点である。現在、月曜~土曜まで中断なく放送されているテレビドラマは朝ドラが日本では唯一。
なお、2020年前半クールより新作の放送は月曜〜金曜に短縮され、土曜日は1週間の総集編になっている。
また、1975年に放送された『水色の時』以降、余裕をもって制作に取り組めるようにするため、前期(4~9月)を東京放送局が、後期(10~3月)を大阪放送局が交代で製作しているのも特徴である*2
最終回前には次回作の主演俳優が前作の収録現場を訪れ、前作の主演俳優から白いバトンを受けとる「バトンタッチ」のセレモニーを行うのが恒例行事となっている。

50年以上休みなく放送され続けたため、作品数が非常に多く2019年の『なつぞら』で100作目に突入するといった具合である。

朝ドラの源流は戦後にラジオで放送されていた小説の朗読番組である。この番組の名前が「連続ラジオ小説」で、その枠が小説の朗読からラジオドラマになり、テレビ放送開始によって「連続テレビ小説」となった。

朝の8時という家事の忙しい時間帯であることから音声だけでもストーリーを追えるよう、作中では語り部と呼ばれるナレーションも設けられており、こちらは別途俳優や歌手・タレントが起用される*3ことが多い。

歴史ある番組のためか、視聴率が非常に高い。
60年代から80年代辺りは平均視聴率が40~50%が当たり前であり、その中でも1983年に放送された『おしん』はとある話の視聴率が62.9%という驚異的な数値を叩き出した。
現在は娯楽の多様化で視聴率がその頃の半分程度までに落ち込んでしまったが、それでも現在放送されているほぼ全てのドラマの平均視聴率と比べたら圧倒的に高い。

中には例え賛否両論あってもほぼ義務…もとい一家のルーチンワークとして欠かさず見ている視聴者層も少なくなく、良くも悪くも印象に残りやすい基盤が整っている枠である。
現在はSNSの隆盛期だけあってトレンドに毎日のように朝ドラの名前が並ぶこともよくある話である。

過去作の再放送も電波を問わず頻繁に行われており、NHKで放送する場合は当該作品の主演俳優などに新規のインタビュー映像を追加収録して放送することがある。

【内容】

100作品以上あるので、実在の人物の生涯を描いた作品*4と、架空の人物の物語を描いたオリジナルの作品とに内容がそれぞれ分かれる。
しかし近代~現代の日本を舞台とした話である事はどれも共通している。

世界観も作品ごとに異なり、明治から現代までのどの時代の事を書かれるかは作品によって変わってくる。
なお、『あさが来た』は序盤だけとはいえ、朝ドラ史上初めて江戸時代を舞台にして話題を呼んだ。
また、『おかえりモネ』で令和以降の年代が初めて描かれた他、最終回エピローグで当時の放送時期よりも先の未来が描かれており、近代〜現代という時代設定のパターンを破る作品が出てくる可能性もあるかもしれない。

90年代から2000年代にかけては現代物の比率が高かったが、2010年以降は再び近代から始まる作品が多くなった。

ほとんどの作品は主人公が女性で、2023年現在男性主役だったのは13作品*5
最近の作品では2014年後期の『マッサン』*6と、2020年前期の『エール』(作曲家の古関裕而がモデル)、2023年前期の『らんまん』(植物学者・牧野富太郎がモデル)。


【舞台】

上記の通り日本国内で話が展開されているが、『マッサン』のようにごく稀にストーリーの一部で海外を舞台としている作品もある*7

47都道府県すべてが朝ドラの舞台に選ばれているのが大きな特徴である。2008年まで埼玉県が唯一舞台になっていなかったが、翌年放送された『つばさ』で埼玉県が舞台に抜擢され、放送開始から48年目にしてようやく全都道府県がコンプリートされた。ただし持ち回りではないため舞台の選定には偏りがあり、1981年前期に放送の『まんさくの花』以降秋田県が舞台になった作品は無く、逆に福島県は1986年前期の『はね駒』、1996年前期の『ひまわり』、2020年前期の『エール』と昭和・平成・令和と3元号にまたがって舞台となっている。
また、実在する都道府県を舞台としてもメインキャラが住んでいる市町村が架空というパターンがある。*8

実在する場所を舞台としているため、その舞台となった地域に経済効果が発生する。その作品が大きな話題を呼べばそれに比例して高い経済効果が発生し、知名度アップや聖地巡礼などでその地域は多くの恩恵を受ける。
あまちゃん』では岩手県を始めとする東北地方が空前のブームに沸いた。

また、先ほどの『マッサン』のような実在する企業の創業者の話だとその商品にも当然のように経済効果が発揮され、ニッカウヰスキーの製品が放送中に品切れが相次いだ事がある。
また、『あさが来た』では、ヒロインを演じた波瑠が後年モデルとなった大同生命のCMキャラクターに就任している。

舞台となった都道府県の数で断トツのトップは東京。その次に大阪。
これは地方に住んでいる主人公が都会に出て色々と行動を起こすという内容が多いため、多くなるのも必然と言える。
ちなみに地理的な関係か東京製作は作品の舞台が東日本のものが多く、大阪製作は作品の舞台が西日本のものが多い。

基本的に世界観は作品ごとに独立しており、明確なつながりは設定されていない。
過去の作品の小道具が流用されるなどしてメーカー・商品名が再登場する事例はいくつかある*9が、世界観としてのつながりが言及されることはほとんどない。
中には2011年後期の『カーネーション』や2021年後期の『カムカムエヴリバディ』のように連続テレビ小説シリーズが放送された世界であることが示された事例もあったりする*10
そんな中で2024年前期の『虎に翼』では前期『ブギウギ』の固有ワードである「梅丸少女歌劇団」「福来スズ子(『ブギウギ』主人公)」が登場しており、さらには『ブギウギ』のレギュラーキャラである茨田りつ子(演:菊地凛子)が同一人物設定でそのまま登場したことで話題に上った。

【キャスティング】

主役のキャスティングはオファーによるものとオーディションによるものがある。
オーディションのキャスティングは非常に倍率が高く、枠が1つしかないのに対し、応募者数が2000人を軽く超える。この事から、いかに倍率が高いのかがうかがえる。

とはいえ選ばれる役者はこれといった代表作がない全くの無名の新人からちょこちょこドラマや映画などで活躍しており知名度がそれなりにある若手まで幅広くいるので、選ばれるかどうかは本人の努力と運次第である。
選ばれる役者のジャンルも大河ドラマ同様に、本業の俳優・女優だけでなく、タレント、お笑い芸人、ミュージシャン、声優、文化人など幅広いジャンルでキャスティングされている。
大阪局制作分では地理柄なのか、吉本興業や松竹芸能所属の芸人が出演することがある。普段関西ローカルタレントとして活躍している人や吉本新喜劇の座員など、意外な人物が全国放送に登場することも。
そして見事選ばれると知名度が圧倒的に高まり、そこからさまざまな映画やドラマのオファーが来て売れっ子になる道が開けるようになるパターンが多い。
また、キャスティングによっては明らかに中の人ネタだと思わせるネタもいくつかある*11

朝ドラのオーディションは何回でも受ける事ができ、3回目にしてようやく主役を勝ち取ったという場合もざらにある。
『まれ』の土屋太鳳のように、以前に朝ドラで脇役として出演していた役者がオーディションを再度受けて別の作品で主役になった例も存在する。

一方、オファーについてはプロデューサーや原作者がこの人が良いと思ったらそのまま選ぶといったもので、ある意味オーディションよりも難しいかもしれない。
そしてオファーで選ばれる役者についても、何年も前からドラマや映画で実績を積み、すでに知名度が高まっている若手の役者ばかりである。
その中には『ひよっこ』の有村架純のように、昔朝ドラのオーディションに受けたものの落ちて、別の役として出演していたような人もいる。

【主題歌】

朝ドラの魅力と言えば、何と言っても爽快感溢れる主題歌である。
作品の雰囲気や朝から見るという事情に考慮した結果、ゆっくり目な曲調の歌が圧倒的に多い。

ちなみに最初から主題歌を使っていたわけではなく、1作目から途中までは大河ドラマのような歌詞の無い、いわゆるインスト曲を使い続けていた。
しかし1984年に放送された『ロマンス』で初めて主題歌が起用される事になった。

それ以降はずっと前と同じようにインスト曲を使い続けていたものの、1992年に放送された『ひらり』で主題歌が復活。
これ以後は朝ドラに主題歌が根付き、様々なアーティストの歌う曲が朝ドラのオープニング曲として流れていくこととなった。
「春よ、来い」「Best Friend」「365日の紙飛行機」など、曲そのものも教科書に採用されるなどの高い評価を得たものが揃っている。

主題歌が根付いてからは、インスト曲を起用した作品はめっきり減ったものの、『あまちゃん』のようにインスト曲をオープニングテーマとした作品もごく稀ではあるが存在している。

【保存状況】

テレビの放送開始から十数年間は記録媒体に非常に高価な2インチVTRが使われていたことや、二次利用に関する著作権制度が整備されていなかった為、局側が録画したテープを消去した上で再利用したといったパターンが多かった。
その為、残念ながら初期の作品はたったの数話しか現存していない。特に『たまゆら』(1965年)、『信子とおばあちゃん』(1969年)の2作品に至ってはNHKに映像が全く残っていない。

1976年に放送された『雲のじゅうたん』が全話現存される作品の中で最も古く、それ以降の作品は録画技術が進んだので全話ちゃんと現存されているが、数話だけしか現存していない作品がごく一部存在する。
そのためNHK側は制作関係者や一般視聴者に向け、現存していない話を収めたテープの提供を呼び掛けている。




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最終更新:2025年04月04日 19:01

*1 かつてはBSプレミアムでも23時から再放送を実施していたが、2022年上期から廃止されている。

*2 ただし1981年のみ、両方の作品が東京製作局であった。

*3 作品によっては出演者が兼業する例もある。

*4 厳密には「実在の人物をベースにした架空の人物のドラマ」であり、近い名前で代用されたりあえて史実とは違う描写をしたりする事がよくある。

*5 しかもうち一つはヒロインとのW主演だったラジオ原作の『君の名は』。アニヲタ的にはてつを。

*6 ヒロイン役は朝ドラ初の外国人女性が起用されている。

*7 しかしロケ自体は海外で行っているわけではなく、日本国内の「その国っぽさが感じられそうな場所」を利用している。

*8 『あまちゃん』の岩手県・北三陸市、『ひよっこ』の茨城県・奥茨城村がその例。

*9 例としては『まんぷく』のまんぷくラーメンや、『エール』のコロンブスレコードなど。また『おむすび』では『まんぷく』と同じ「まんぷく食品」という会社の存在が示されている。」

*10 『カーネーション』は主人公・小原糸子のモデルである小篠綾子が朝ドラのファンであり、自身をモデルにした朝ドラの製作を願っていたという逸話がある。作中でそれが反映されており、最終回は『カーネーション』第1話が放送される場面で幕を閉じた。

*11 例として、『わろてんか』ではドラマ版の『釣りバカ日誌』で浜崎伝助とみち子夫妻を演じた濱田岳と広瀬アリスが次回予告の漫才を披露しており、その時のやり取りが『釣りバカ』を連想させるものになっている。