山田線(JR東日本)

登録日:2015/12/28 (月) 16:30:00
更新日:2024/04/01 Mon 20:29:27
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山田線(やまだせん)は、盛岡駅と宮古駅を結ぶJR東日本の鉄道路線である。
走っている地域が全く異なるが、同じく山田線を名乗る近鉄山田線については該当項目を参照。

○線路概要

元々この路線は、鉄道敷設法が公布された明治25年の時点で実は既に計画されていた。
しかし、北上山地を越える為、当時の技術では不可能であり、実際に建設されたのは大正時代に入ってからである。
(これには当時首相であった地元岩手出身の原敬の影響が大きいとされている)
当然の事ながら、盛岡~宮古間を通す事には大反対が起きた(移管された宮古~釜石間は兎も角…)。
これに関しては現在も間違った俗説が広まっているが、正しくはこういう事を言われたという。

元田肇前鉄道大臣(当時)
『貴族院の中村是公の如きは、
「盛岡より山田に至る間はボウボウたる原野にして猿住める国なり、国家は巨費を投じて猿を乗せんとするや」
と極端な反対をなせり、余はこれに答えて大森林や鉱山の天与の宝庫である、なんの不利なるや、と反論したのである。』

現代語訳
「中村是公は「盛岡~山田なんて未開の原野で猿が住んでいる所だ、国は大金をかけて猿を乗せるつもりか?」
と強く反対したが私は豊かな森や鉱山が眠る宝の山だ、一体何の問題がある?、と反論した」

こんな反対を押し切り開通した山田線だったが、意外にも戦前は満員で座ることができず、立ちっぱなしだった事もあったらしい。
これには当時、岩手県北部における唯一の海岸部と内陸を結ぶ路線であった事が挙げられる。
ところが、終戦後の1946年にアイオン台風によって大きな被害を受け8年間も不通となってしまった。
その間にGHQは同じく難工事区間で山で東西分断されていた釜石線の全線開通を命じ、釜石線完成後は輸送路線としての山田線の地位は大きく低下する事になる。
その後も東日本大震災を始め、多くの災害の被害をモロに受ける羽目になり、今やご覧の有様となり、並行する国道を走る急行バスに完全に負けている状態である。

そして東日本大震災によって不通となった宮古~釜石間はBRTでの復旧も議論されたが
  • 元々民間のバス路線があり経営を圧迫する
  • BRT化してダイヤ本数が増えても所要時間は鉄道時代と変わらない
  • そもそも鉄道でなければ断る
と地元から難色を示されてしまい断念する事となった。
その結果、山田線を挟んで南北に分かれていた三陸鉄道に路線ごと譲渡する事で合意。
宮古~釜石間の復旧費用はJR東日本:地元が2:1で負担する事となった。
宮古~釜石間は2019年3月全線復旧し、三陸鉄道リアス線の一部として三陸鉄道に移管された。

◎運行車両

キハ110系…全線で運行。
快速「リアス」もこれを使用。

HB-E300系「リゾートあすなろ」…土休日に臨時快速「さんりくトレイン宮古」などで運用につく。

◎運行形態

震災前までは宮古駅を境に運転系統が分断され、全線を運行する列車はなかった。
震災後は宮古~釜石間は不通になっており、復旧後は三陸鉄道に譲渡された為、割愛する。
なお、列車運行上は釜石線に合わせてあるために盛岡方面の列車が下り、宮古方面の列車が上りとなる。
本項目でもそれに倣って記述する。

・盛岡~上米内

運行は1~3時間に1本で1日7往復しかない。
実はこれでも区間運行がある分だけ、この路線の中では一番恵まれていたりする…。

・上米内~川内

超閑散区間。
区間全体の運行本数は全然直通の1日4往復しかない…。
しかもこの4往復の内、下り1本、上り2本が快速「リアス」となっている…。
なお、リアスが停車しない松草は1日下り3本、上り2本しか列車が停車しない…。

松草駅の時刻表
宮古方面 盛岡方面
7 30
8 24
17 24
18 49
19 41

日本でも兵庫県のどっかの路線の土日ダイヤ並の芸術的な悲惨さがお分かり頂けただろうか?

因みに2015年12月に起きた土砂流入により、この区間は2017年11月までの約2年間不通となっていた。
復旧はしたのだが、本当に猿しか乗らないのでは?という懸念もあり、部分廃線の可能性も決して低くない…というか高い。

・川内~宮古

全線通しの列車の他に川内~宮古間の区間列車が1.5往復あり、川内~宮古間は快速通過駅が3往復、快速停車駅は5.5往復の運行となる。
かつては茂市~宮古間に2往復区間列車が設定されていた。

◎駅一覧

盛岡…東北新幹線秋田新幹線東北本線田沢湖線花輪線IGRいわて銀河鉄道いわて銀河鉄道線乗り換え。
起点駅にして岩手県の県庁所在地・盛岡市の中心駅。

上盛岡…住宅地のど真ん中に有り、学校や周辺施設も数多くある。1日10往復も満たないローカル線の駅とは思えない周辺環境である。
今は1面1線のホームしかないが、かつては2面3線と規模が大きかった上に貨物側線もあった。

山岸…盛岡市動物公園の最寄駅。
但し徒歩で1時間20分以上掛かるので、盛岡駅からバスに乗った方が断然早い。

上米内…この駅で盛岡発の列車の半分が折り返す。交換可能。
2018年4月まで連査閉塞式の閉塞境界となっていた為、直営駅だったが、CTC導入に伴い無事無人化された。
2015年12月から2017年11月まで、ここから川内までの区間が不通となっていた。
盛岡市の駅はここまで。快速リアスもここまで各駅停車。

区界…意外にも東北地方で最も標高の高い駅で、744mの位置にある。
上米内からの駅間距離は25.7kmとJR東日本の在来線最長。また、ここからずっと宮古市内の駅である。
山の中で利用者も年間で僅か1人だったにもかかわらず、無人化するまで2面2線の交換可能な直営駅だった。有人駅だったの? は禁句
因みに2018年に無人駅となったが、2004年から2017年まで
JR東日本管内の有人駅としては最も利用客数の少ない駅
という何気に凄い記録を保持していた。
秘境感高そうに思えるが周辺は民家や道の駅がある。

松草…牛山氏の全国秘境駅ランキング77位。
停車する1日5本の列車は、朝の1往復と夕方の3本しかないため鉄道での到達難易度は高め。
特に案内のない屋根付きの階段で駅前に上がる構造になっている。

川内…この駅も直営駅だった。交換可能駅。
因みに宮城県(読み方は同じ「かわうち」)と鹿児島県(読み方は「せんだい」)にも同名の駅が存在する。

箱石…近くの国道沿いのドライブインにはタイヤで作られた牛のオブジェがある。

陸中川井…快速リアス停車駅。

腹帯…実は平津戸駅過ぎからの速度制限55が当駅手前の踏切まで続いている。

茂市…快速リアス停車駅で途中駅では最後の交換可能駅。
2014年3月31日までは廃線となった岩泉線乗り換え駅であり、その名残で2018年ダイヤ改正までは2面3線と線内では規模が大きめの駅だった。
1番線ホームは盛岡方面へは繋がらず旧岩泉線に繋がる構造のため、宮古方面への始発列車のみに使用されていた。
現在ではその1番線ホームに加え跨線橋も撤去され、駅舎もこじんまりとしたものに改築されたが、2・3番ホームを覆う屋根はそのままになっているのがかつての栄光を偲ばせる。

蟇目…「ひきめ」と読む。

花原市…読みは「けばらいち」。近くにはこの辺り随一の古刹である華厳院がある。

千徳…この辺りから宮古の市街地へ入っていく。それもあってか2020年から快速リアス停車駅となった。

宮古…三陸鉄道リアス線乗り換え。現在の終点駅。
宮古市の中心駅。この駅以南の区間は東日本大震災以来8年ぶりの復旧に合わせて、三陸鉄道に譲渡された。

廃止駅

大志田…牛山氏の全国秘境駅ランキング6位に入っていた。2016年ダイヤ改正で廃止。

浅岸…牛山氏の全国秘境駅ランキング7位に入っていた。2016年ダイヤ改正で大志田駅と共に廃止。

平津戸…牛山氏の全国秘境駅ランキング95位。
松草と同じく列車運転時間帯の関係で到達難易度は高めとなっていた。
2022年ダイヤ改正からは通年通過となり、2023年のダイヤ改正で廃止。

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最終更新:2024年04月01日 20:29