キス(魚類)

登録日:2010/07/31(土) 22:41:51
更新日:2025/07/27 Sun 20:55:58
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スズキ目 Perciformes
スズキ亜目 Percoidei
キス科 Sillaginidae
和名
キスゴ(その他別名日本各地にあり)


キス(鱚)は、スズキ目・スズキ亜目・キス科(Sillaginidae)に分類される魚の総称で、日本では主にシロギス(Sillago japonica)を指す。
沿岸の浅い海に生息し、5属33種(おおよそ)が確認されている。
分布は南アフリカから日本~オーストラリアにかけての、インド洋から太平洋西部。

海岸付近の海底で主に暮らすが、一部の稚魚は河口~汽水域で成長。種類によっては淡水に入り込んでいることも少なくない。
産卵期である夏は沿岸まで移動してくるため、運が良ければ海底を嗅ぎまわるように泳ぐ姿を見ることができるだろう。
食性はゴカイ、エビ等の底生生物を食する肉食性。

食用や釣りの対象としてとても人気が高く、投げ釣り師の間では30cmを越える大物が憧れの的。
また、大きさにこだわらなければちょい投げでの数釣りができ、家族で楽しめる魚でもある。

身は脂肪が少ない柔白身で、刺身、塩焼き、フライ等に調理され特に天麩羅は上品な味で美味。
甘酸っぱい青春の味はしない。

漫画『釣り屋ナガレ』では主人公の放浪の旅の終結を賭けた釣り勝負でターゲットとなった。

すっきりとした美しさがあるためか、飼育する人もいる。
餌は沈むタイプの餌を与える。餌付きが悪い場合は釣具屋でゴカイを買って与えると良い。人工飼料にも慣れ、長く飼うと水面にまで餌を食べに上がったくる。

ONE PIECEに登場する魚人のキャラクター“チュウ”は鱚の魚人である。
戦い方からは鱚よりテッポウウオの魚人のようだが、見た目や名前からも分かる通り、「鱚」と「キス(接吻)」を掛けた言葉遊びだろう。



仲間

  • モトギス S. sihama
キスの中でもっとも一般的な種類。インド太平洋に生息し、南アフリカから日本~インドネシアに分布。
漁業においても重要な種で、底引き網などにかかっていることが多い。
トウゴロウイワシやサバヒーなどと混同されやすい。また、低塩分に適応していないにもかかわらずなぜか淡水域でもよくみられる。

  • シロギス
キスと言えばふつうこれを指す。北海道以南の日本沿岸~東シナ海にかけて分布。
投げ釣りのもっとも一般的なターゲットとなる。

  • アオギス S. parvisquamis
青みのつよいキスの仲間。元は日本沿岸に広く分布していたが、産卵に必要な汽水の干潟の減少に伴い急激に姿を消し、現在では九州の一部や台湾沿岸などにわずかに生息している。環境省レッドデータブックでは絶滅危惧種ⅠA類に指定。
シロギスに比べて警戒心が強く、いわゆる「脚立釣り」は元々コイツをターゲットとしたやり方。
実は一部機関で養殖にこそ成功しているのだが、野生個体との遺伝子的な差異が大きく認められたため放流は中止されている。
ちなみに味はシロギスよりうまくないとか。

  • ホシギス S. aeolus
奄美大島以南に生息する種類。死ぬと体の側面に斑点が浮かび上がる。

  • アトクギス Sillaginops macrolepis
日本では西表島の浦内川から報告された。

  • ダイオウギス
キスの中で最も大きな種類で、最大で70cmが確認されている。
オーストラリア近海に棲息しており、日本にはいない種。味が良いためオーストラリア周辺では食用として重宝されているが、反面養殖は難航している。理由としては幼少期が3~4年と長い上、飼育下でのみ発生する未知の寄生虫の問題が挙げられる。
ちなみに他のキスと異なり、軟体動物は食べない。

  • イトヒキギス Sillagoninopsis panijius
キス類の中でも極めて特徴的な形をした種類。眼が非常に小さく、背びれの一部が長く伸びている。また、他のキス種とことなり浮き袋がない。
ベンガル湾が主要産地であり、ガンジスデルタに多産する汽水魚である。
刺網や底引網漁によって大量に漁獲されており、現地では食材としてポピュラーで、フライやスープにして賞味される他、干物にして保存食に加工される場合もある。
インドやバングラデシュの人口増加に伴って、同国内での需要が常に増大しているため、食材として日本に輸入されることは殆ど無い。
一方で、1980年代頃からインドアンテナフィッシュの名称で観賞用の熱帯魚としての流通がある。流通するものは漁獲されたものの一部で、着状態があまり良くない場合もあり、スレ傷に比較的弱い割に、肌を痛めているものが多く、入荷直後に斃死することも少なくない。
スレ傷から回復すれば、飼育自体はそこまで難しいものではない。輸入されるのは10㎝以下の幼魚が多いため60㎝水槽から飼育可能で、水槽飼育では30㎝を超えることは滅多にないため、単独ならば60㎝ワイド水槽、複数飼育する場合でも90㎝水槽以上が用意出来れば良い。
塩分の要求量は幼魚では海水の10〜25%程度、成魚は30〜50%程度で、海水でも飼育可能である。
汽水魚の中ではかなり温和な性質であり、同種同士でもあまり闘争しない。テッポウウオやコモチサヨリなど、上層部を泳ぐ魚とは特に相性が良く混泳出来る。逆に言えばやや打たれ弱いので、レッドスキャットやモノダクティルス、各種汽水フグとの混泳は避けた方が無難である。



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最終更新:2025年07月27日 20:55