スズキ目 Perciformes

登録日:2010/10/03 Sun 14:43:29
更新日:2025/08/04 Mon 09:02:20
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スズキ目 Perciformesとは魚類分類学上の1グループで、このスズキ目に属する魚種は10000種を越えており、脊椎動物中では最大の目と言われいる。
全ての魚類の種数が27000種ほどなので、四割弱の魚類がこの目に分類されることになる。


【かつての分類】


通常、背鰭、臀鰭、腹鰭に棘をもち上顎に伸出出来る機能が発達しており鰾は無気管鰾であるという共有派生形質を持つ、棘鰭上目の下位に位置する。

スズキ目は上記の他に条件があるが如何せん生態的にも形態的にも変化に富んでおり、総括するのが難しいが、特に次に挙げる特徴を持つ魚をスズキ目としている。

1)腹鰭が有る場合は胸位かそれより前にあり、1棘5軟条以下である

2)尾鰭の主鰭条は17本以下

3)上顎の縁は前上顎骨で縁取られている

4)頭蓋骨の眼孔蝶形骨と肩骨の中烏口骨は無い

5)その他亜科はそれぞれに概要を設ける


実際(5)は丸投げである。事実としてこの仲間は大分類群で、しかも多種多様に分化しているため多くの問題点が指摘され、議論されている。

代表的な亜目、科

(1)スズキ亜目Percoidei
2900種近くの魚が属し、スズキ目の中でも最大の分類群である。以下に代表的な科を紹介する。

(1-1)ハタ科
サクラダイ、マハタ、キジハタ、クエ等が属する。

(1-2)サンフッシュ科
多くの種が産卵時に営巣をする。
オオクチバス、ブルーギルなど。

(1-3)キス科
シロギス、アオギスなど。

(1-4)キツネアマダイ科
海底に穴を掘って埋没生活をする仲間がいる。
アカアマダイ、キツネアマダイ、キアマダイ等。

(1-5)コバンザメ科
コバンザメは厳密にはいわゆる鮫ではなく普通の魚である。サメなどの大型魚に吸着生活をする。コバンザメ、クロコバンザメ等。

(1-6)スギ科
世界で一種のみ。
姿はコバンザメににている。成長が早く沖縄では養殖が行われる。

(1-7)シイラ科
シイラ、エビスシイラ。
英名dolphinはイルカdolphinと混同されやすい(名前かえろ)。

(1-8)アジ科
背鰭、臀鰭後方に小離鰭をもつ種がある。マアジ、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、ヒラアジ等馴染みの深い魚が属している。

(1-9)チョウチョウウオ科
体は著しく側偏、背鰭は1鰭。
チョウチョウウオ、フエヤッコダイ等。

(1-10)イシダイ科
イシダイ、イシガキダイ等。

(1-11)スズキ科
以前はペルキクティス科やモロネ科に含まれていた。
スズキ(魚類)等。

2)ベラ亜目Labroidei
雄雌で色彩が異なったり雄先熟の性転換をする種が多い。
キュウセン、ホンベラ、コブダイ、ブダイ、アオブダイ、ハゲブダイ等。

3)ギンポ亜目Blennioidei
イソギンポ、ナベカ、ニジギンポ、カエルウオ等。

4)ハゼ亜目Gobioidei
2000種を越す大分類群で日本産は350種ほど。

(4-1)ハゼ科
ムツゴロウ、トビハゼ、等のオキスデルシス亜科。ネジリンボウ、ドロメ、チチブ、シロウオ等がいる。

5)ニザダイ亜目Acanthuroidei
上顎は殆ど伸出不可能、体は極端に側偏。
アマシイラ、ニザダイ、ナンヨウハギ、ツノダシ。

6)サバ亜目Scombroidei
タチウオ科サバカツオマグロの仲間、サワラ類、カジキ類、カマス科等がいるがカマス科とカジキ類をサバ亜目に位置付けるには疑問の意見もある。

7)タイワンドジョウ亜目Channoidei
空気呼吸のできる上鰓気管をもつ、鰭に棘がない。
タイワンドジョウ、カムルチー等。

先に記述したが、現在でもスズキ目の分類は変還しており遺伝子情報などから分類を試みたり、従来通り形態形質により分類してみたりと、一定していない。
さらに現在では別の目である。
カサゴ目、フグ目、カレイ目などもスズキ目に亜目として含めてしまえ!
といった話しもあり(特にカサゴ目は目自体の単系統性が疑われ、空中分解状態)、まさにスズキ目は分類のカオスと呼べる状態となった。

【現在の分類】


こうしたDNA解析などによる研究の結果、従来のスズキ目は棘鰭上目の他のグループが入れ子構造のようになっており、全体を一つの目とするにはあまりにも多様性に富みすぎているため、いくつかのグループにわけられることとなった。
特にカサゴ目とトゲウオ目は解体され、カレイ目も下目の地位に引き下げられて含まれることになった。

どのグループを目にするかで研究者の間で多少の相違はあるものの、2025年現在では以下のようにグループわけがなされている。

  • ハゼ目 Gobiiformes
ハゼ科などの旧ハゼ亜目の他、ベラギンポ科、コモリウオ科、テンジクダイ科が所属。
独特な粘着質の構造を卵に持っているのが特徴。
コモリウオ科とテンジクダイ科は合わせてコモリウオ目(Kurtiformes)として分離する説もある。

  • ヨウジウオ目 Syngnathiformes
旧トゲウオ目のヨウジウオ亜目(タツノオトシゴなど)、旧カサゴ目のセミホウボウ科、旧スズキ目のヒメジ科(オジサンなど)、ネズッポ科、イナカヌメリ科が含まれる。
ヨウジウオのように管状の身体を持つものと、ヒメジのように底生生活を送るものとが存在する。

  • サバ目 Scombriformes
サバ科、タチウオ科、クロタチカマス科(バラムツなど)、イボダイ科、クロボウズギス科などが含まれる。
旧サバ亜目と旧イボダイ亜目を中心に構成されているが、カジキ類とカマス科は含まれない。

  • キノボリウオ目 Anabantiformes
キノボリウオなどのアナバス類、ライギョなどのタイワンドジョウ類、そしてナンダス類が所属。
アナバス類とタイワンドジョウ類は鰓にラビリンス器官と呼ばれる器官を持ち、これを用いて空気呼吸ができる。

  • アジ目 Carangiformes
アジ科、コバンザメ科、スギ科、シイラ科、アカメ科、テッポウウオ科など。
また、カジキ類とカマス科も属する他、旧カレイ目も下目としてここに属する。

  • シクリッド目 Cichliformes
シクリッド科、ポリディクテュス科、コノハウオ科が所属。
ポリディクテュス科とコノハウオ科はどちらも数種しかいない小さな科だが、シクリッド科は1700種以上が含まれる巨大な科である。

  • イソギンポ目 Blenniiformes
旧ギンポ亜目の他、メギス科、スズメダイ科(クマノミなど)、ウミタナゴ科、アゴアマダイ科、ウバウオ科などが所属。
ボラ目(Mugiliformes、ボラ科とタカサゴイシモチ科が所属)を含める説もある。

  • ペルカ目 Perciformes
学名上の旧スズキ目。何故和名が異なるかというと、スズキ科が含まれないから。
多くの科を含む目で、ペルカ科、ハタ科、アラ科、ノトテニア科、ハタハタ科、ゲンゲ科、ニシキギンポ科、オオカミウオ科などの他、セミホウボウ科を除く旧カサゴ目や、旧トゲウオ目のうちトゲウオ亜目が含まれる。
ぶっちゃけ旧カサゴ目の殆どがここに属するのでスズキ目がカサゴ目にすり替わっている。

  • サンフィッシュ目 Centrarchiformes
サンフィッシュ科(ブルーギルなど)、イスズミ科、メジナ科、ユゴイ科、シマイサキ科、イシダイ科、ゴンベ科、タカノハダイ科などが含まれる。
日本を含む世界の大半で見られるが、特にオーストラリアに固有種が多い。

  • ベラ目 Labriformes
かつてのベラ亜目とは様相が異なり、オニハタ科、ベラ科、イカナゴ科、ミシマオコゼ科、トラギス科などからなる。

  • ホタルジャコ目 Acropomatiformes
ハタンポ目(Pempheriformes)とも呼ばれる。ホタルジャコ科(アカムツなど)、ワニギス科、ハタンポ科、カワビシャ科、イシナギ科、ムツ科などが含まれ、スズキ科もここに属する
なので和名で「スズキ目」と呼んだ場合Perciformesではなくこちらを指すことになり得る。

  • ニザダイ目 Acanthuriformes
旧ニザダイ亜目の他、クロサギ科、キス科、ニベ科、イサキ科、ハチビキ科、フエダイ科、キツネアマダイ科、キンチャクダイ科、チョウチョウウオ科、マツダイ科、フエフキダイ科、タイ科、アカタチ科、キントキダイ科、ヒシダイ科などが所属。
アンコウ目やフグ目と近縁である。科の構成には不安定な所があり、いくつかの目にわけられる可能性もある。

勿論これらのグループわけも2025年現在での研究結果に基づくものであり、研究が進めば更に改められる可能性もある。
尚、何故かこうした新分類は日本ではなかなか浸透していない。


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最終更新:2025年08月04日 09:02