汽水魚(魚類)

登録日:2017/08/31 Thu 13:23:00
更新日:2025/07/13 Sun 11:53:35NEW!
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汽水魚とは汽水域に生息する魚類の総称である。
本項目では鑑賞魚として流通している種を中心に解説する。



【概要】


汽水とは、や伏流水由来の淡水とからの海水が混ざった水をいう。
「汽」の字は「水気が多い」という意味があり、海水よりは水気が多い(≒同じ体積ならば汽水の方が塩分が少ない)というニュアンスである。
英語ではBrackish-waterという。Brackishは「塩気がある」という意味。余談だが、英語で淡水はFresh-waterというが、Brackishには「不快な、不味い」という意味もあり、対比表現となっている。
汽水が流れる場所を汽水域と言い、一般的には海に近い河口部で発達するもので、潮汐の影響を受けるために感潮域ともいう。
但し、絶対に海の近くにしか汽水域がないかといえばそうとも限らず、内陸にある塩湖、例えばカスピ海やアラル海は明らかに淡水よりも塩分が多く、汽水の条件を満たしている。一方で潮汐の影響は殆どないため、区別するために塩水域や鹹水域(「鹹」は塩辛い、の意味)と呼ばれることがある。
逆に、海の近くであっても、急勾配の川が滝に近い流れで海に直接流れ込むような状況では、汽水域が発達しない場合もある。

日本では、サロマ湖や浜名湖、干拓前の八郎潟や有明海などの干潟が有名で、南西諸島や小笠原諸島で見られる樹木のマングローブも汽水域ならではの光景である。
汽水域は満潮・干潮によって水位と塩分が激しく変動し、干出した場所では強い日差しで温度が急上昇したり、浅い潮溜まりに閉じ込められた場合は酸欠の危険もある。
一見すると生物にとって過酷な環境であるが、川と海の両方からミネラルやデトリタス(生物の遺骸が細かく破砕されて粒子状になったもの)などの栄養源が潤沢に供給され、潮汐による複雑な流れで河床が抉れたり、倒木が流れ着くことで生物の住処が出来やすくなり、水位が不安定であるため巨大魚や海獣が侵入することが少なく、移動能力が低い小型の魚類や貝類、甲殻類及びその幼生たちにとっては安全な揺籠のような役割を果たしている。前述の条件をクリア出来れば、定住するメリットもまた大きいのである。

本項目の趣旨から脱線するが、アサリやカキ、シジミといった潮干狩りで取れる食用の貝も汽水域の住人(住貝?)であり、ハゼ釣りやテナガエビ釣りなど、狩猟採集本能と食欲を同時に満たす遊びも汽水域がないと成立しない事柄である。
或いはヒトの生活排水も有機的且つ適量であれば、沈降した懸濁物はゴカイやエビなどが餌として食べて、それらの排泄物や死体は各種動物プランクトンや細菌類が消費して、それらの分泌物や遺骸は藻類や海草などが窒素源として利用することで軈て浄化される。
こういったことを含めると、多くの人類が汽水域の恩恵を直接間接問わず被っていると思っても過言ではない。

原則として汽水域の生物は汽水環境に適応しており、淡水域から汽水域に進出したものもいるが、多くは海洋生物が低塩分に耐えるようになったものである。
魚類の場合、生活史の全てまたは大半を汽水域で過ごすものを「周縁性淡水魚」とも言い、海水魚が偶然に汽水域で採集記録されたものは「偶来魚(偶来性淡水魚)」と区別する場合もある。
また、生活史を通じて川と海を行き来する、「通し回游魚」と呼ばれる魚種もいる。大きく分けて、サケのように川で生まれて海で性成熟するまで育ってから川に戻って産卵する「遡河回游魚」、ウナギのように海で生まれて川で性成熟するまで育ってから海に戻って産卵する「降河回游魚」、アユやヨシノボリのように川で生まれて海に降るが、変態を終えたらすぐに川に戻って成長する「両側回游魚(淡水性両側回游魚)」に区分される。これらも場合によっては汽水魚の一部として扱われることがある。

【飼育】

時間をかけて慣せば、汽水魚を淡水で飼育する事が可能な場合もあるが、浸透圧関係を始めとして、海水魚と同じ代謝系のものが多いため短命になる事が多く、況してや鑑賞目的ならば、飼育魚には健康で長生きして欲しいのが飼育者としては当たり前であり、汽水魚は汽水で飼育するのが妥当である
但し、後述の個別解説でも紹介するが、海洋起源のグループでも個々の種で見た場合、完全に淡水に適応して一生を淡水域で生活する純淡水魚になっている場合もある。
こうしたものを二次性淡水魚と言い、フグやハゼ、レインボーフィッシュに多いが、鑑賞魚業界ではこれらも纏めて汽水魚として扱われがちである。
淡水域起源のグループ(一次性淡水魚という)と比べると塩分への耐性が強い傾向があるが、海水に近い塩分では調子を崩すようなものもいる。
逆に、汽水環境が必須の周縁性淡水魚や偶来性淡水魚を「淡水○○」という流通名で販売されるケースも非常に多く、飼育者は事前によく調べてから飼育に臨むべきである。

飼育に当たって、何はともあれ必要なのは汽水だが、通常は品質が安定しており入手性も良い人工海水を、飼育魚の種類や状態に応じて適度な濃度に調節して使うのが便利である。
海または汽水域から直接採取した水を用いるのは、病原体や寄生虫あるいは有害物質を水槽内に持ち込む危険性と、ストックスペースが必要な場合が多いため、基本的には推奨しないが、人工海水では補きれない微量成分の補給や、プランクトンを用いた稚仔魚の育成など魅力的な要素もあり、潮通しの良い場所から採取可能で、充分なストックスペースがあるか、逆に採取直後に使い切れるのであれば試してみる価値はある。
塩分のおおよその目安としては海水の20〜50%程度で、50%以上でも調子が上がらないのであれば、海水魚として飼育した方が良い。

流通する種の多くは西部太平洋からインド洋の熱帯または亜熱帯海域に産するもので、国でいうとベトナム・タイ・マレーシア・インドネシア・シンガポール・インド辺りから輸入されるものが多く、水温は25〜30℃程度とやや高めに設定すると良い。
高水温寄りで代謝を高めに保つと、概して低塩分気味でも調子良く飼える。

淡水と比べるとやや生物濾過が不安定になりがちで、濾過器は性能に余裕があるものを選ぶ。
淡水と違ってエアリフト式のものを使うと、飛び散った飛沫から水が蒸発して塩が析出する「塩ダレ」が起こるので、使用する場合は注意する。

餌については種ごと異なるが、やや人工飼料への餌付きが悪いものが多く、餌付いても徐々に痩せてしまうことがある。
これも海水魚と同じ代謝系を持つことに由来する症状で、淡水魚はDHAやEPAなどの高度不飽和脂肪酸を体内で合成できるが、海水魚は合成能がなく直接に餌から取り込む必要があり、餌の種類に注意しなければならない。
海水魚用の人工飼料を与えるのと同時に、クリル(栄養価的には冷凍のものが望ましい。乾燥タイプは保存が便利)やシーフードミックス(スーパーで売っているもので構わないので、イカ・タコ・エビ・貝がバランス良く混ざっているものを使う)、魚の切り身(イワシ・キビナゴ・アジ・サバなどが良い)やブラインシュリンプなど、高度不飽和脂肪酸が多く含まれているものを与えるのも重要である。


【個別解説】


◇ミドリフグ

学名:Dichotomyctere nigroviridis
全長:10〜15㎝
分類:フグ目フグ科

黄色みが強い黄緑色に、黒い水玉模様が特徴的なフグ。
中国南部からインドシナ半島、マレー半島やスリランカなどから知られる。
汽水の熱帯魚としては最も有名ものの一つで、一般的な熱帯魚店でもホームセンターのペットコーナーでも頻繁に見かける。
通常流通するのは体長が2〜3㎝ほどの幼魚であり、10㎝越えの成魚を見る機会は意外と少ない。
活発に泳ぎ回るので45㎝水槽以上の容量のある水槽で飼うと良い。
周縁性淡水魚だが高塩分を好み、成魚は海水飼育でも問題ない。海水魚として飼育すると、海水のフグやハコフグの仲間、小型の各種ウツボなどと混泳することも可能で、不思議と喧嘩は少ない。
クリルやシーフードミックスにはすぐに餌付くが、人工飼料への餌付きはやや悪い。大食漢で代謝が高く痩せ易いので、餌は1日2回以上与えるのが望ましい。
フグ全般に言えることだが、伸び続ける固い歯を持つため適度に固い餌を与えることが重要。殻付きの貝を与えたり珊瑚の骨格を入れる(ハムスターやウサギの齧り木と同じ役割が期待出来る)ことで対策する。一方で、濾過器やヒーターのコードやチューブを噛み切ることがあるので、カバーを付けたりセパレーターで仕切ったりしてガードを要する場合もある。
気性は荒く、同種別種問わずで喧嘩が絶えない。複数飼育や別種との混泳を試みる場合、余裕のある大きな水槽を用意して隠れ家を多く作り、機敏に泳いで攻撃を躱せる魚種を選ぶと良い。トラブルを避けたいならば単独飼育が最適解。
愛嬌のある顔で人慣れもして餌をねだる仕草をするようにもなり、手間は掛かるが飼育して楽しい魚である。


◇ハチノジフグ

学名:Dichotomyctere biocellatus
全長:6〜10㎝
分類:フグ目フグ科

和名と種小名(二つの目玉模様、の意味)は背中の金色模様が「8」に見える事に由来するが、個体差も相当あるため「8」に見えない崩れたものも多い。
ミドリフグとは同属別種の関係で分布や生息環境も似るが、本種の方がやや南方系(ミドリフグはインドシナ半島が分布の中心で、ハチノジフグはマレー半島に多いとされる)で、ミドリフグと比べて低塩分を好み、海水域では滅多に見られない。体サイズもやや小振りである。以前はミドリフグと同程度に輸入されていたが、近年は流通量がやや減少気味である。
飼育方法はミドリフグと同じで良い。
性質も個体差が激しく、大人しく混泳出来る場合もあるが、気が強いものはミドリフグ以上であり、本種とミドリフグを混泳させると、体格が優っていてもミドリフグが負けることがしばしばある。


◇アベニーパファー

学名:Carinotetraodon travancoricus
全長:2〜3㎝
分類:フグ目フグ科

「アベニー」とは人名で、フグ目研究の世界的権威であった魚類学者の阿部宗明(あべ・ときはる 1911-1996)博士に由来するとされる。
インド南部及びスリランカに生息する純淡水魚で、フグ目最小の種の一つである。銀杏色のベースカラーに光沢のある藍色の斑紋が複雑に入り乱れる。
採集物・ブリード物の両方が頻繁に流通し、ミドリフグ以上に見かける機会が多い。
小さな魚であるため、水質管理に注意すれば30㎝水槽程度でもペアで飼育出来る。単独であれば容量5ℓ以下のキューブ水槽でも問題ない
塩分は全く不用で、水質管理は普通の淡水の熱帯魚となんら変わりない。強いて言えば極端に古く酸性化が進んだ水は避けた方が良い。
餌は冷凍アカムシやクリルが良く、人工飼料にはかなり餌付き辛い。水草水槽で「湧く」サカマキガイやモノアラガイなどを積極的に食べるため、掃除屋として水槽に入れるのも手だが、柔らかい水草なども齧られてしまい、当然ながらインドヒラマキガイやイシマキガイとの相性は最悪。
混泳は可能だが、やはり気性はそれなりに荒く、グラミーやエンゼルフィッシュ、改良品種のグッピーのように鰭が長くゆったりと泳ぐタイプの魚は恰好の餌食となる。ラスボラやダニオのように機敏に泳ぐタイプの魚でさえ、鰭が多少痛むのは避けられない。
フグとしては繁殖が容易な方で、成熟した雄は目の後方に深い皺が入ることや各鰭が黄色みが強くなることで区別可能。ペアの相性さえ良ければ、ウィローモスを入れておくことで、卵を産み付けてくれる。そのままにしておくと親が卵や稚魚を食べてしまうので、産卵後は隔離が必要となる。孵化した稚魚はブラインシュリンプ幼生で育てることが出来る。
よく似た種にカリノテトラオドン・イミタートルC. imitatorがいる。インドのカルナータカ州のみに産し、アベニーパッファーと比べてベースカラーの黄色みが強く、斑紋が小さいか殆どないことで区別出来る。ごく稀にアベニーパッファーの「混じり」で輸入されることがある。


◇テトラオドン・リネアートゥス(ファハカ)

学名:Tetraodon lineatus
全長:30〜50㎝
分類:フグ目フグ科

ナイル川からニジェール川、セネガル川などアフリカ大陸中央に広く分布する産の純淡水魚のフグ。シノニムであるTetraodon fahakaに由来する、ファハカという通称も有名。種小名(線がある、の意味)の通り、朱色の縦条が走る。
「四枚の歯」を意味し、この種が基準となっているTetraodon属は、二名法学名を提唱したカール・フォン・リンネが記載した属であり、のみならずフグ科の基準属でもある。スペルが多少異なるが、フグ毒のテトロドトキシン(Tetrodotoxin)の名前も、これに由来する。
近年はブリード物が比較的コンスタントに流通するため、かなり安価で入手も手軽であるが、最終的は90㎝水槽、出来れば120㎝水槽を用意する必要があり、気性も荒く顎の力も強いため混泳には向かない。
その点が対処出来るならば、体質的に丈夫で餌はなんでもよく食べて成長も早く、慣れ易く良いペットフィッシュになる。
近い仲間にはテトラオドン・ムブT. mbuがいる。
コンゴ川やタンガニーカ湖など東アフリカに分布し、最大全長が75㎝と一回り以上大きくなり、虫食い状の複雑な模様を持ち、尾鰭が長い。同じく純淡水魚だがリネアートゥスと比べて飼育水の酸性化に弱く、ミネラルの要求量も多いとされる。濾過器に珊瑚砂やカキ殻などを仕込んで飼育水をアルカリ性に保ち、10%海水程度の薄い汽水で飼育するのも効果的である。


◇レッドスキャット(クロホシマンジュウダイ)

学名:Scatophagus argus
全長:20〜35㎝
分類:ニザダイ目クロホシマンジュウダイ科

チョウチョウウオに近縁とされる体高の高い側扁した魚で、成魚は緑がかった銀白色に胡麻のような小黒斑が散在するという渋い美しさがあるが、幼魚は黒斑の間隔が密で、背面がオレンジ色に染まるなど、別ベクトルの美しさがある。
属名は「食糞者」を意味するため、しばしばネタにされるが、実際には東南アジアの水上集落で傷んだ食材や調理屑を海に捨てると、近寄って食べてくれるという精々「掃除屋」くらいの意味が拡大解釈されてしまったものらしい。因みに種小名はギリシャ神話の百目巨人アルゴスを意味し、黒斑をアルゴスの目玉に見立てたものである。
西部太平洋からインド洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しており、卵や稚仔魚は浮游生活を送り、黒潮に乗って日本近海にまで流れ着く。いわゆる「死滅回游」「無効分散」と呼ばれる現象だが、近年の地球温暖化や生活・工業排水の流入による海水温の上昇により、少なくとも紀伊半島や四国近海では成魚が定着・繁殖しており、夏の終わりから秋にかけては東京湾周辺でもかなりの数の幼魚が見られる。
幼魚は流れ藻や流木の周辺で群れており、泳ぎもそれほど素早くないので、見つければタモ網で採集することも十分可能である。鑑賞魚としても比較的コンスタントな入荷があり、入手は容易な方である。
幼魚は60㎝水槽から飼育可能だが、それなりのサイズに育ち游泳力が強いため、成魚は90㎝水槽以上で飼育したい。
塩分の要求量は幼魚では海水の10〜25%程度、成魚は30〜50%程度で、海水でも飼育可能である。
餌は人工飼料を始めとして、何でも良く食べる。自然下では藻類もかなり食べているらしく、偶にスピルリナを配合した人工飼料や冷凍のミックスベジタブルを与えると調子が良い。
成長するとやや気性が荒くなるが、素早く泳ぐ魚種や生活圏が重ならない底生魚とは混泳可能である。
近縁種として眼から尾柄にかけて黒い横帯が6本前後入る西アフリカ産のアフリカンスキャットS. tetracanthusや、顔立ちがシャープで体色がより銀色に近い東南アジア・オセアニア産のシルバースキャットSelenotoca multifasciataなどが輸入される。流通量はあまり多くないが、どちらもレッドスキャットと同じ方法で飼育可能で、アフリカンスキャットはより低塩分でも問題ない。


◇モノダクティルス(ヒメツバメウオ)

学名:Monodactylus argenteus
全長:15㎝
分類:ニザダイ目ヒメツバメウオ科

菱形に近い体型が特徴的で、この種もチョウチョウウオとの関連が示唆されている。
種小名は「銀色の」という意味で、その名の通り銀白色の体色に、背鰭と尾鰭、臀鰭がレモンイエローに染まる美麗種である。因みに属名は「一本指」を意味し、腹鰭が痕跡的で1棘のみからなるこてに由来する。
卵や稚仔魚は浮游生活を送り、黒潮に乗ることもレッドスキャットと同じだが、本土近海では見かける機会は少なく、九州以北では殆ど定着していないと考えられている。南西諸島ではかなり普通で、八重山諸島では完全な淡水域である水田の用水路でも見られる。
動きはかなり機敏で、タモ網での採集は難しい。入荷量もレッドスキャットと同程度で、海水魚として輸入されることもある。
飼育についてはレッドスキャットと殆ど同じだが、単独ならば60㎝水槽でも相当長く飼うことが出来る。
近縁種として、より体高が高くなり背鰭と臀鰭とを繋げる黒横帯が特徴的な西アフリカ産のモノダクティルス・セバエ(アフリカヒメツバメウオ)M. sebaeがいる。量は多くないが入荷自体はほぼ毎年ある。古い水を避ければほぼ淡水で飼育可能で、塩を加える場合でも海水の10%程度で良い


◇ニューギニアダトニオイデス

学名:Datnioides campbelli
全長:30〜45㎝
分類:ニザダイ目マツダイ科

絶滅危惧種のシャムタイガーを筆頭に、スンダランドを中心とした東南アジアが分布の中心であるダトニオイデスにあって、オセアニアであるニューギニア島に分布するのも異質ならば、成魚は頭部が黒くなり体側の黒と黄土色の横帯が燻んだようになる体色も異様な種である。
80年代後半から90年代前半の怪魚ブームを牽引したダトニオイデスの中では、日本への輸入されたのが1992年以降と最も遅い種であった。ニューギニア島は1963年に勃発したパプワ紛争に始まり、1975年のパプワニューギニア独立、1985年の国家非常事態宣言など、地政的な位置と多民族国家であることが災いして地域紛争が絶えず、商業ルートの開拓はおろか学術調査もままならない状態であり、この種に限らずニューギニア産の熱帯魚や爬虫類は驚くべき高額で取引されていた(当時はシャムタイガーよりも高く、120万円ほどなったことも)。現在は紛争が一段落して、比較的政情が安定しているインドネシア領のイリアンジャヤから輸入されるため、価格は落ち着いている。
激しく泳ぎ回る魚ではないので、よく輸入される10㎝以下の幼魚は60㎝水槽で飼育可能だが、成魚は40㎝を超えるため最低でも90㎝、可能ならば120㎝水槽で飼育したいところである。
ダトニオイデスの中では高塩分を好み、幼魚は純淡水でも飼育可能だが、成魚は海水の25〜50%程度の塩分で飼う。
魚食性が強い肉食魚で活き餌を好むが、最終的に人工飼料に慣れる場合が多い。
気性が荒く縄張り意識が強いため、特に同種同士の混泳は難しい。
同属別種のメニーバーダトニオイデス(シックスバーダトニオイデス)もほぼ同じ方法で飼育可能だが、より高塩分を好むため成魚は海水で飼育した方が良い。


◇スズキ

学名:Lateolabrax japonicus
全長:50〜100㎝
分類:ホタルジャコ目スズキ科

かつて脊椎動物最大の目であり、1万種以上を擁したスズキ目の代表格…というべき魚であったが、近年スズキ目が解体・再編成されたことで、ホタルジャコ目という比較的小さいグループに含まれることになった。
詳細は当該項目を参照。
釣り魚ないしは食用魚としての需要が高く、あまり鑑賞用に供される魚ではない。
飼育する場合、游泳力が強くメートル級になる魚種という時点で一般的とは言い難く、代謝も高めで痩せ易いこともあって飼育は難しい部類である。


◇シマイサキ

学名:Rhynchopelates oxrynchus
全長:30㎝
分類:サンフィッシュ目シマイサキ科

和名にイサキと付くが、食用や釣り魚として親しまれているイサキとは別のグループの魚である。目名から察せられるように、ブルーギルやオオクチバス(ブラックバス)、ケツギョなど旧スズキ目スズキ亜目の中で淡水環境に進出した一群には、近年の諸研究で一定の類縁関係が見出されており、本種もその一つである。
やや尖った顔立ちに側扁した体型、棘条がよく発達した背鰭を持つという「典型的な魚」とでも言うべき形状に、幼魚では4本、成魚では6〜7本の黒縦条を呈する。この黒縦条からスミヒキ(墨引)の別名もある。
青森県以南の日本海、岩手県以南の太平洋及び東シナ海から知られる温帯魚で、朝鮮半島や台湾にも産するが南西諸島からの記録はない。
入手は自家採集が最も確実で、内湾に注ぐ泥底と転石が適度に混在するような河口域やアマモ場で見られる。幼魚は淡水域にも入って群れを作るが、成魚は単独で転石や流木に寄り添うように泳いでいることが多い。夜間に寝込みを襲えば、意外なほど簡単にタモ網で掬えるが、当然ながら懐中電灯なりヘッドライトなりの何らかの光源が必須で、場所によっては夜間採集の規制がある地域もあるため、事前に下調べを怠らず、地元の方との不要な軋轢は避けること。本種のみを狙って釣るのは難しいが、スズキやクロダイを狙ったサビキ釣りやミャク釣り、ルアーなどの外道としてもしばしば掛かるため、サイズや状態が適切ならば、そこから飼育しても良い。鑑賞魚としての流通は多くはなく、日本産淡水魚を扱っている店舗に偶に入荷する程度である。
因みに、鱗や骨がやや硬いものの、身は白身で臭みは少なく、刺身、塩焼き、バター焼き、味噌汁などに調理すれば普通に美味な魚である。
飼育についてはクロホシマンジュウダイとほぼ同じだが、肉食性が強く、植物質の餌は余り好まない。
南西諸島にはヨコシマイサキやシミズシマイサキなどの近縁種が複数知られており、本種以上に淡水環境に適応しており低塩分で飼育可能だが、分布は限られており数も少なく、入手は難しい。また、ニューギニア島やオーストラリアからは同じく近縁種であるストライプグルンターやスパングルドパーチ、カルボナンダスなどが稀に輸入される。やはり低塩分で飼育可能だが、カルボナンダスはかなり気性が荒いため、複数飼育や混泳には注意する。


◇コトヒキ

学名:Terapon jarbua
全長:30㎝
分類:サンフィッシュ目シマイサキ科

シマイサキに近縁な魚で、吻はやや丸みを帯びて体高が高い。コトヒキの名は、鰾の前方に発音筋があり、鰾に共鳴させることでキュッキュッと鳴くことをから「琴弾」の意で付けられたものであるが、これは科全体の特徴でもある。体高の高さからヤカタイサキ(屋形鶏魚)、尾鰭が緩い二叉形で縦条と黒斑が入る様子を矢筈(やはず)に見立てたヤガタイサキ(矢形鶏魚)の別名もある。英名では第1背鰭に大きな黒斑が入り、背面に弧状の黒縦条が3本走る様子を的に見立てて、「Targetfish」や「Target Perch」と呼ばれる。
シマイサキと同所的に見られる場所も少なくないが、本種は南方系で南西諸島でも普通に見られる他、インドネシアやサモア、アンダマン諸島など中部太平洋からインド洋までと分布は広い。このため、シマイサキとは異なり少ないながらもインドネシア辺りから鑑賞魚として輸入されることがある。
シマイサキと比べてやや潮通しが良い外洋寄りの環境に多く、岩礁海岸のタイドプールでもよく見られる。また、シマイサキほどは低塩分を好まず、淡水域で見られることは殆どない。
飼育もシマイサキに準じるが、本種は他の魚の鱗や鰭を齧って食べる習性があり、複数飼育や混泳には基本的に向かない。
同属別種にヒメコトヒキがおり、性質はシマイサキに近く温和だが、より高塩分を好むため海水魚として飼育した方が無難である。


◇ジャングルパーチ(オオクチユゴイ)

学名:Kuhlia rupestris
全長:30〜45㎝
分類:サンフィッシュ目ユゴイ科

和名は「大口湯鯉」の意だが、目名を見れば判る通りシマイサキの親戚筋である。シマイサキ科と比べて尾鰭はより深く切れ込み、口もやや上向きにつくなど、より游泳性能が高いことが窺える形態を持つ。
鹿児島県や高知県で幼魚が採集された記録はあるが、基本的には南西諸島に分布し、国外では太平洋からインド洋の熱帯・亜熱帯地域に広く分布する。
純淡水魚が少ない沖縄県では、それに近い生態的地位を獲得しており、渓流域から中流域でかなり普通に見られ、用水路にも多い。若魚は水面近くを群をなして泳ぐが、動きはかなり素早くタモ網で獲るのはかなり難しい。釣りで採集するのが一番簡単で、ゲームフィッシングの対象にもなっている。南西諸島の採集物やインドネシアからの輸入品が偶に入荷する。
基本的にはシマイサキと同じ方法で飼育可能だが、本種の場所は周縁性淡水魚というよりは降側回遊魚に近く、古くない水であれば塩分無しで何年も飼育可能である。ただし、採集直後や冬場の低水温時、幼魚期などは水カビ病やコショウ病などが出易いため、10〜25%を目安に塩分を加えるのも良い。
幼魚は群れを作るが、成魚になると気性が荒くなるため複数飼育や混泳には注意する。
同じように飼えるものにはユゴイやギンユゴイがいる。


◇淡水ハオコゼ

学名:Neovespicula deprerssifrons
全長:5〜8㎝
分類:ペルカ目フサカサゴ科

日本にも産するハオコゼの近縁種であり、赤や薄桃色の斑模様のハオコゼに対して、本種は黒と焦茶色の斑模様に頭部の正中がクリーム色とシックな色合いである。
比較的コンスタントに輸入されているため入手は容易で、価格も安価である。
文献上は10㎝近くになるともされるが非常に成長が遅く、単独飼育ならば30㎝水槽でも相当長い期間飼育可能で、複数飼育する場合でも40㎝水槽を用意出来れば良い。
塩分はやや高めの方が調子が良く、海水の20%以下にはならないように注意する。
人工飼料には餌付きにくく、冷凍餌や生餌を中心に与える必要がある。特に輸入直後は餌付きが悪いことが少なくないため、生きたブラインシュリンプやイサザアミを用意した方が良い。
背鰭に毒を持つため、他の魚からは襲われにくいものの、動きはゆっくりで餌を食べ損ねることや、無毒な尾鰭を齧られることがあるため他種との混泳には注意する。同種同士では多少の小競り合い程度で、大きな問題になることは少ない。
近い仲間には八重山諸島などからも記録があるアゴヒゲオコゼやヒゲソリオコゼがいるが、非常に珍しい種であり滅多に流通しない。


◇淡水ギンポ

学名:Blenniidae
全長:5〜10㎝
分類:ギンポ目イソギンポ科

淡水ギンポと呼ばれる種には複数の種がおり、ここではイソギンポ科ナベカ属Omobranchus spp.に分類されるものを扱う。
まず、上位分類のイソギンポ科だが、江戸前の天麩羅で有名なギンポPholis neblosaとは全くの別物である。ギンポはペルカ目ニシキギンポ科に分類され、系統的にはダンゴウオ科やフサカサゴ科などに近く、一方のイソギンポ科はスズメダイ科などに近縁とされる。ニシキギンポ科は世界で15種程度が知られる小さなグループで、北方系で岩礁域や砂泥底に棲む。イソギンポ科は世界で400種以上が記載されているかなり大きなグループで、熱帯・亜熱帯海域で多様性が高く、岩礁域や珊瑚礁で見られるものが多い。
両者とも側扁した平たい体に基底(付け根)が長い背鰭と臀鰭を持ち、卵を保護する性質を持つなどの共通点はあるが、多くは収斂進化の結果として見做されており、形態や生態が異なる点も多い(例えばニシキギンポ科は体が細長くウナギ体型で、尾鰭も小さく口や歯も小さいが、イソギンポ科はシルエットはハゼに近く、尾鰭の発達は悪くなく口は大きく犬歯状の牙が発達するものが少なくないなど)。
そのイソギンポ科で、特に河川へと進出したグループがナベカ属から複数知られている。個々の種に共通する特徴は少ないが、頭部周辺に細い横帯を呈するものが多い。
鑑賞魚として流通が比較的多いのは、O. zebraとO. smithiである。どちらも分布は概ね同じで、インド亜大陸周辺からマレー半島やインドシナ半島、インドネシアやフィリピンなどに分布しており、これらの国から時折輸入される。
O. zebraは頭部の横帯が太く4〜5本ほど有り、胸鰭の基部に黒い斑紋が目立つ。躯幹の模様は斑点状で、背鰭と腹鰭を繋げることはない。O. smithiは頭部の横帯が細く3本ほど有り、後頭部にC字型のメタリックな青い斑紋も呈する。躯幹の模様は太い帯状で、背鰭と腹鰭を繋げている。O. zebraはインドゼブラブレニー、O. smithiはピカソフェイスブレニーの名前で流通することが多いが、頭部・躯幹部の特徴と学名とが微妙にずれている(特にO. zebra)影響か、逆の名前で流通していたり、単に「淡水ギンポ」の名前で2種が混ざった状態で売られていることもある。更に、この2種と比べると入荷量はかなり少ないが、日本でも八重山諸島などで見られるカワギンポO. feroxが混じることがある。カワギンポは頭部に目立った斑紋を持たず、背鰭の鰭条数が少し多い(O. zebraとO. smithiは30〜33で、カワギンポは32〜35)。生態はどの種も大同小異で、マングローブを流れる泥深い水路でよく見られる。
飼育は40㎝水槽から可能で、水質管理に自信があるならば30㎝水槽でも飼える。
シェルターとして枝状の流木(灰汁が抜け切ったもの)やカキ殻、フジツボの殻などを入れると雰囲気が出るが、あまり複雑にし過ぎると姿を滅多に見せなくなるので注意する。
塩分の要求量は幼魚では海水の10〜25%程度、成魚は30〜50%程度で良い。
餌はクリルやシーフードを好むが、人工飼料にも餌付く。自然下どは藻類も結構食べているらしいので、スピルリナを配合した人工飼料を試してみるのも良い。
テリトリー意識がかなり強く、ペア以外の混泳は難しい。特に生活圏が重なるハゼやオコゼ、カレイなどとの相性は最悪である。気が強いのでそこそこ体格差がある魚とでも渡り合えるので、上層生きたを泳ぐ頑健な魚種とならば可能である。
東京湾以南の本州・四国・九州には同属別種のトサカギンポやイダテンギンポが知られており、同じ方法で飼育可能である。


◇淡水シタビラメ

学名:
全長:
分類:アジ目ササウシノシタ科・ウシノシタ科


◇ホグチョッカー(北米淡水カレイ)

学名:
全長:
分類:アジ目アキルス科


◇ヌマガレイ

学名:
全長:
分類:アジ目アキルス科


◇淡水ヒラメ

学名:
全長:
分類:アジ目ヒラメ科


◇テッポウウオ

学名:Toxotes spp.
全長:15〜40㎝
分類:アジ目テッポウウオ科

その名の通り、水中から水を飛ばして水上の昆虫を狙い撃つ唯一無二の個性を持つ。
詳細は当該項目を参照。


◇バンブルビーゴビー

学名:Brachygobius doriae
全長:3㎝
分類:ハゼ目ハゼ科

汽水域に産するハゼは非常に種数が多いが、鑑賞魚として見た場合の筆頭格が本種である。英名は「マルハナバチ」、属名は「短いハゼ」を意味し、その名の通りやや寸詰まりの体に、黒と黄色とが交互に入る体色は非常に美しい。
非常に古くから知られており、昭和30年代には既に輸入販売されていた。現在もコンスタントな入荷がある。
単独であれば容量5ℓ以下のキューブ水槽でも問題なく、数匹飼う場合でも30㎝水槽程度でも十分である。
塩分は海水の15〜25%程度で良い。
冷凍餌や生餌を好むが、人工飼料にも普通に餌付く。小さな魚なので餌の大きさにだけは注意を払う。
多少の小競り合いはするものの、隠れ家を多く用意すれば複雑飼育は十分に可能で、本種を食べられないようなサイズの魚とならば混泳も可能である。
繁殖も可能で、塩分を海水の50%程度にまで上げて2週間ほど飼育した後に通常の塩分に戻すと簡単に産卵する。
孵化仔が非常に小さいため、初期飼料に苦労する
同属別種にはフレッシュウォーターバンブルビーゴビーがいる。やや流通量は少ないが、その名の通り純淡水で飼育可能で、卵もやや大きいため繁殖がより狙い易い。


◇ナイトゴビー

学名:Stigmatogobius sadanundio
全長:8〜15㎝
分類:ハゼ目ハゼ科

淡い灰色ないしはクリーム色に黒やメタリックグリーンのスポットのアクセントが美しい中型のハゼ。
ハゼとしては珍しく遊泳性で、中層付近の水中で静止している事が多い。オスは第一背鰭の鰭条が旗のように長く伸び、これを西洋騎士の兜に見立てたのが名前の由来である。
口に入る物ならば何でも食べるのがハゼであるが、ナイトゴビーもご多分に漏れず。
もちろん、小型の魚やエビとの混泳は絶対不可。他と同じ様に同種での混泳をさせるのなら隠れ家を用意しておく事。


◇アベハゼ

学名:Mugilogobius abei
全長:3〜5㎝
分類:ハゼ目ハゼ科

飼育の条件はバンブルビーゴビーに準ずるが、あらゆる汽水魚で最強クラスに丈夫な魚種であり、日本産であるため室内であれば冬季の加温さえ不用意である。


◇ミミズハゼ

学名:Luciogobius spp.
全長:3〜5㎝
分類:ハゼ目ハゼ科


◇マハゼ

学名:
全長:3〜5㎝
分類:ハゼ目ハゼ科

詳細は当該項目を参照。


◇マッドスキッパー(ミナミトビハゼ)

学名:Periophthalmus
全長:10〜15㎝
分類:ハゼ目ハゼ科

水嫌いの魚として有名。
現在も比較的コンスタントな入荷がある。
一般的な魚とはかなり異なる生態であるため、飼育に躊躇しがちだが、ポイントを押さえれば意外と飼育し易い魚でもある。
単独であれば30㎝水槽でも飼育出来る。一番簡単に飼育するには、通常より水深を減らしたアクアリウムにカメ用の浮き島を設置する方法である。見栄えを気にしないならば発泡スチロールを切ったものでも良い(剥離剤がついている場合があるので、水槽に入れる前に水洗いは必要)。脱走防止に蓋をして、隙間をウールマットやスポンジを詰めれば、後は普通の魚と同じように管理すれば良い。
こまめに水換えが出来るならば、フィルターなしで飼うことも出来る。プラケースに砂を入れて水深が1〜2㎝程度になるように汽水を入れる。そしてプラケースの下に適当なものをかませて傾斜を作ることで水場と陸地を作る。水が蒸発し易いので、数日に一回は水を全部交換する。
塩分は海水の15〜25%程度で良い。
冷凍餌や生餌を好むが、人工飼料にも普通に餌付く。慣れれば手から餌を食べるようになる。


◇ピーコックガジョン

学名:Tateurundina ocellicauda
全長:6㎝
分類:ハゼ目カワアナゴ科

ニューギニアに棲息するカワアナゴの一種で、金属光沢のある水色を基調に朱や黄色の模様が入り、宝石箱のように美しい。
成魚で5~6センチ、丈夫で非常に温和な性質で、水質にも五月蝿くなくて純淡水での飼育も可能なので飼育しやすい。
ワイルドよりもブリードの方が人慣れしやすく、慣れれば餌をねだる様になる。
繁殖も可能ではあるが、何度か繁殖させると雄が絶食の為に体力を磨り減らして☆になってしまう(オマエらも気を付ける様に)。
長く飼育を楽しみたいのであれば、単独飼育か産卵させない方が良い。


◇ニードルガー

学名:Xenentodon cancila
全長:20〜30㎝
分類:ダツ目ダツ科

ガーというと、アリゲーターガーを筆頭に外来生物法にて愛玩飼育不可になった古代魚や、それに類似したカラシン目のブラントノーズガーやハイドロシナスガーが有名だが、本種はそれらとは全く異なるダツ目の1種である。
普段は水槽の隅に定位しているものの、時に突発的に激しく泳ぐことがあり、且つ体が硬く柔軟性に欠けるため、吻をガラス面にぶつけて痛めてしまうことが多い。単独飼育でも60㎝ワイド水槽程度の低面積は確保したいところである。水深はあまり必要としないので、横から鑑賞することを放棄すれば、ランチュウ飼育に用いられるトロ舟で飼うのも良いかもしれない。
游泳空間を確保するため、なるべくシンプルなレイアウトで飼うべきだが、衝突を和らげるために塩分に強いバリスネリアなどをガラス面に沿って植えたり、過度な刺激を防ぐために水面にアマゾンフロッグピットを浮かせたりするのも良い。
塩分の要求量は少なく海水の10%もあれば充分で、酸性にならなければ純淡水でも飼育可能である。
餌は活き餌を好み、メダカやエビ、コオロギなどには良く反応する。クリルにも餌付き易いが、人工飼料には反応が悪い。沈んだ餌には余程飼育に慣れた個体でないと、まず食べることはない。
成熟した雄は縄張りを持つため、同種同士の混泳は雄1匹に対し、雌1〜3匹程度にすり。食べ残し処理用に底生魚と混泳させたいところだが、意外と口が大きく開くので、呑まれないように注意したい。


◇ライオンフィッシュ

学名:Batrachomoeus trispinosus
全長:15〜30㎝
分類:ガマアンコウ目ガマアンコウ科

Lionfishはミノカサゴの英名でもあるが、ここではガマアンコウ目に属する別の魚を指す。
日本には目レベルで産しない魚類で、インド亜大陸周辺やオセアニア、南北アメリカに産する。「ガマアンコウ」の名から察せられるように、アンコウ目と近縁と考えられていたが、DNAを調べるとアンコウ目はフグ目と姉妹群を形成する非常に派生的な魚類であるのに対し、ガマアンコウ目はタラ目やアシロ目に近い、棘鰭系魚類としてはかなり祖型的なグループであるという結果が出ており、両者は赤の他人(他魚?)ということらしい。
なんとも形容し難い外見をしており、髭のような皮弁が発達する大きな頭にやや細長い胴体、意外と大きな胸鰭に、小さいが毒を持つと背鰭という、アンコウとハゼとオコゼを足して3で割ったような姿を持つ。そして、鰾を振動させて鳴くことも出来る上、魚類の中で最も複雑な「鳴き声」を持つという不思議な魚である。
日本には少なくとも昭和40年代からは輸入されており、ほぼ毎年入荷があり、価格も割と安価である。
待ち伏せ型の捕食者で、激しく泳ぎ回る魚ではないので、よく輸入される10㎝前後の個体ならば45㎝水槽、水質管理に気を付けるならば最終的に60㎝ワイド水曜で終生飼育可能である。
塩分の要求量は高く最低でも海水の25%以上、出来れば50%は欲しいところで、成魚は海水でも飼育可能である。一方で、ベトナム産の個体群は年単位の長期間を淡水中で飼育しても異常なく成長したという話もあり、陸封型が存在するのか隠蔽種が存在するのか、非常に興味深い。また、汽水魚としてはやや高水温に弱く、28℃以上にはならないように注意する。
待ち伏せ型という捕食行動上、活き餌を好んで人工飼料には慣れ辛いが、ピンセットから餌を摂るように慣れる個体は多く、クリルや魚の切り身には餌付くことが殆どである。
縄張り意識が強くて気性は荒めで、特に底生魚は餌か喧嘩相手にしかならないと思ってよい。必然的に単独飼育が推奨される。


◇プセウドムギル・キアノドルサリス

学名:Pseudomugil cyanodorsalis
全長:約4cm
分類:トウゴロウイワシ目プセウドムギル科

トウゴロウイワシ目の魚で、イワシと名は付くが分類的にはボラに近縁。プセウドムギル科を含むいくつかの科は通称レインボーフィッシュと呼ばれ、その名に違わぬカラフルな色彩をしている。
レインボーフィッシュは純淡水に生息する種類も多いが、本種はオーストラリアの汽水域に生息する。
一応は純淡水にも耐えられるものの、汽水で飼育した方が調子が上がるとされる。
黄色を基調とした体に、背中に沿ってメタリックな青のラインが入る。
その美しさから愛好家の人気は高いが、流通は非常に少ない。


◇淡水ウツボ

学名:Muraenidae
全長:30〜400㎝
分類:ウナギ目ウツボ科

沿岸の浅海域、特に珊瑚礁が生息環境の中心であるウツボだが、10数種以上が河川からの記録がある。
多くは偶来魚であって、淡水は勿論のこと海水の50%以上の濃い汽水でも長期飼育が困難であることが多い(海水で飼育すれば、頗る丈夫なものが殆どであるが)。
その中で、数種は汽水域または淡水域を中心に生息しており、しばしば鑑賞魚として輸入される。
詳細はウツボの項目を参照。



追記・修正は水換えと餌やりの後にお願いします 。


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最終更新:2025年07月13日 11:53