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汽水魚(魚類)

登録日:2017/08/31 Thu 13:23:00
更新日:2026/08/08 Sat 21:44:33
所要時間:約40分で読めます





汽水魚とは汽水域に生息する魚類の総称である。
本項目では観賞魚として流通している種を中心に解説する。



【概要】


汽水とは、淡水以上海水未満の塩分が含まれる水のことであり、多くの場合、川や伏流水由来の淡水とからの海水が混ざった水を意味する。
「汽」の字は「水気が多い」という意味があり、海水より水分が多い(≒同じ体積ならば汽水の方が塩分が少ない)というニュアンスである。
英語ではBrackish-waterという。Brackishは「塩気がある」という意味。余談だが、英語で淡水はFresh-waterというが、Brackishには「不快な、不味い」という意味もあり、対比表現となっている。
汽水が流れる場所を汽水域と言い、一般的には海に近い河口部で発達するもので、潮汐(潮の満ち引き)の影響を受けるために感潮域ともいう。
但し、絶対に海の近くにしか汽水域がないかといえばそうとも限らず、例えばカスピ海やアラル海のように内陸にある塩湖は明らかに淡水よりも塩分が高く汽水の条件を満たしている。一方で、潮汐の影響は殆どないため塩水域や鹹水域(かんすいいき)(「鹹」は塩辛い、の意味)と呼んで区別されることもある。
逆に、海の近くであっても、急勾配の川が滝に近い流れで海に直接流れ込むような状況では、汽水域が発達しない場合もある。

日本では、サロマ湖や浜名湖、干拓前の八郎潟や有明海などの干潟が有名で、南西諸島や小笠原諸島で発達するマングローブも汽水域ならではの光景である。
汽水域は潮汐によって水位と塩分が激しく変動し、干潮によって出来た浅い潮溜りでは、強い日差しによって温度が急上昇したり酸欠に陥る危険性もある。
一見すると生物にとって過酷な環境であるが、川と海の両方からミネラルやデトリタス(生物の遺骸が細かく破砕されて粒子状になったもの)などの栄養源が潤沢に供給され、潮汐による複雑な流れによって河床が抉れたり、倒木が流れ着くことで生物の住処が出来易くなり、水位が不安定であるため巨大魚や海獣が侵入することが少ないため、移動能力が低い小型の魚類や貝類、甲殻類及びその幼生たちにとっては安全な揺籠のような役割も果たしている。

本項目の趣旨から脱線するが、アサリカキシジミといった潮干狩りで採れる食用の貝も汽水域の住人(住貝?)であり、ハゼ釣りやテナガエビ釣りなどの狩猟採集本能と食欲を同時に満たす遊びも、汽水域がないと成立は難しい。
或いはヒトの生活排水も有機的且つ適量であれば、沈降した懸濁物はゴカイやエビなどが餌として食べて、それらの排泄物や死体は各種動物プランクトンや細菌類が消費して、それらの分泌物や遺骸は藻類や海草などが窒素源として利用することで浄化される。
こういったことを含めると、多くの人類が汽水域の恩恵を直接間接問わず被っていると言っても過言ではない。

原則として汽水域の生物は汽水環境に適応しており、淡水域から汽水域に進出したものもいるが、多くは海洋生物が低塩分に耐えるようになったものである。
魚類の場合、生活史の全てまたは大半を汽水域で過ごすものを「周縁性淡水魚」とも言い、海水魚が偶然に汽水域で採集記録されたものは「偶来魚(偶来性淡水魚)」と区別する場合もある。
また、生活史を通じて川と海を行き来する「通し回游魚」と呼ばれる魚種もいる。大きく分けて、サケのように川で生まれて海で性成熟するまで育ってから川に戻って産卵する「遡河回游魚」、ウナギのように海で生まれて川で性成熟するまで育ってから海に戻って産卵する「降河回游魚」、アユやヨシノボリのように川で生まれて海に降るが、変態を終えたらすぐに川に戻って成長する「両側回游魚(淡水性両側回游魚)」に区分される。これらも場合によっては汽水魚の一部として扱われることがある。

【飼育】


時間をかけて馴らせば、汽水魚を淡水で飼育する事が可能な場合もあるが、浸透圧関係を始めとして海水魚と同じ代謝系のものが多いため短命になる事が多く、況してや、観賞目的ならば、飼育魚には健康で長生きして欲しいのが飼育者としては当たり前で、汽水魚は汽水で飼育するのが妥当である
但し、後述の個別解説でも紹介するが、海洋起源のグループでも個々の種で見た場合、完全に淡水に適応して一生を淡水域で生活する純淡水魚になっている場合もある。
こうしたものを二次淡水魚と言い、フグやハゼ、レインボーフィッシュに多いが、観賞魚業界ではこれらも纏めて汽水魚として扱われがちである。
淡水域起源のグループ(一次淡水魚という)と比べると塩分への耐性が強い傾向があるが、海水に近い塩分では調子を崩すようなものもいる。
逆に、汽水環境が必須の周縁性淡水魚や偶来魚を「淡水○○」という流通名で販売されるケースも非常に多く、飼育者は事前によく調べてから飼育に臨むべきである

飼育に当たって何はともあれ必要なのは汽水だが、通常は品質が安定しており入手性も良い人工海水を飼育魚の種類や状態に応じて適度な濃度に調節して使うのが便利である。
海または汽水域から直接採取した水を用いるのは、病原体や寄生虫あるいは有害物質を水槽内に持ち込む危険性と、ストックスペースが必要な場合が多いため基本的には推奨しないが、人工海水では補きれない微量成分の補給や、プランクトンを用いた稚仔魚の育成など魅力的な要素もあり、潮通しの良い場所から採取可能で充分なストックスペースがあるか、逆に採取直後に使い切れるのであれば試してみる価値はある。
塩分のおおよその目安としては海水の15〜50%程度で、50%以上でも調子が上がらないのであれば海水魚として飼育した方が良い。
ちなみに標準的な海水の塩濃度(質量パーセント濃度)は3.4%であり、溶在している塩類の内訳は塩化ナトリウムが77.9%、塩化マグネシウムが9.6%、硫酸マグネシウムが6.1%、硫酸カルシウムが4.0%、塩化カリウムが2.9%、その他の数百種類以上の微量成分が0.3%である。人工海水も微量成分の種類(30〜50種程度に減っている)と、pH調整剤やキレート剤(水道水に含まれる塩素を無毒化する)が添加されていることを除けば、成分は概ね同じである。
海水の塩濃度を基準にすると、汽水の塩濃度は0.51〜1.7%となるが、こと汽水魚の飼育に限って言うと、元来が不安定な環境に生息するものが多いため、厳密な塩濃度を要求することはあまりなく、例えば「海水の25%」のように、海水に対して3倍の量の真水を加えて薄める、という方法でも問題はない。
なお、研究段階ではあるが海水の成分を必要最低限度に調整した「好適環境水」を用いれば淡水魚・汽水魚・海水魚を混泳させることも可能で、幾つかの水族館や水産試験場では実践例があるものの、微量元素・成分の入手や配合などが個人レベルでは難しく、個別に飼育する方が却って楽である。

流通する種の多くは西部太平洋からインド洋の熱帯・亜熱帯地域に産するもので、国でいうとベトナム・タイ・マレーシア・インドネシア・シンガポール・インドなどから輸入される。
従って、水温は25〜30℃程度とやや高めに設定すると良く、高水温寄りで代謝を高めに保つと、低塩分気味でも調子良く飼えるものが多い。
これらの魚種には日本国内でも南西諸島や小笠原諸島に在来分布しているものも少なからずおり、更には卵や幼魚が黒潮に乗って九州以北の本土沿岸に流れ着く「死滅回游」や「無効分散」が知られるものもいるため、場合によっては自家採集も可能である。

淡水と比べるとやや生物濾過が不安定になりがちで、濾過器は性能に余裕があるものを選ぶ。
淡水と違ってエアリフト式のものを使うと、飛び散った飛沫から水が蒸発して塩が析出する「塩ダレ」が起こるので、使用する場合は注意する。

淡水のアクアリウムでは水草を水質浄化・安定用に用いることが出来るが、汽水域に産する水草は少なく、藻類は一年で生活史が完結するものや、栽培そのものが難しいものが多いため、水質維持は濾過と換水に頼ることになる。
塩分が海水の10%以下の薄い汽水ならば、丈夫な水草であるセキショウモVallisneria asiaticaやオオカナダモEgeria densa、アヌビアス・ナナAnubias barteri var. nanaなどは育つため、これらを用いるのも一つの手段である。
また、貝やヨコエビ、ゴカイなどを用いて懸濁物を処理させると言う方法もあり、消費的な飼育になるものの、河口域の岸壁に大量に固着して濾過食生活を送っているマガキCrassostrea gigasを採集して水槽に投入することで、文字通り生きたフィルターとして用いる方法もある。

餌については種ごと異なるが、やや人工飼料への餌付きが悪いものが多く、餌付いても徐々に痩せてしまうことがある。
これも海水魚と同じ代謝系を持つことに由来する症状で、淡水魚は必須脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などを体内で合成できるが、海水魚は合成能が無く餌から直接摂取する必要があるため餌の種類に注意しなければならない。
これらが配合されている海水魚用の人工飼料を与えるのと同時に、クリル(オキアミ。栄養価的には冷凍のものが望ましい。乾燥タイプは保存が便利)やシーフードミックス(スーパーで売っているもので構わないので、イカ・タコ・エビ・貝がバランス良く混ざっているものを使う)、魚の切り身(イワシ・キビナゴ・アジ・サバなどが良い)やブラインシュリンプArmemia spp.やイサザアミ(ホワイトシュリンプ)Neomysis spp.など、不飽和脂肪酸が多く含まれているものを与えるのも重要である。


【個別解説】


◇ミドリフグ

学名:Dichotomyctere nigroviridis
全長:10〜15㎝
分類:フグ目フグ科

黄色みが強い黄緑色に、黒い水玉模様が特徴的なフグ。種小名も「黒と緑の」という意味である。
中国南部からインドシナ半島、マレー半島などから知られる。
汽水の熱帯魚としては最も有名なものの一つで、一般的な熱帯魚店でもホームセンターのペットコーナーでも頻繁に見かけ、価格も1匹600~800円程度から購入出来る。通常流通するのは体長が2〜3㎝ほどの幼魚であり、10㎝越えの成魚を見る機会は少ない。
活発に泳ぎ回るので、45㎝水槽以上の水槽で飼うのが望ましい。
周縁性淡水魚だが海水の25%以上の高塩分を好み、成魚は海水飼育でも問題ない。なお、ベトナムには陸封された個体群がいるとも言われており、海水の10%以下の低塩分で調子を崩さないが、完全淡水で長期飼育出来るかは不明である。
クリルやシーフードミックスにはすぐに餌付くが、人工飼料への餌付きはやや悪い。大食漢で代謝が高く痩せ易いので、餌は1日2回以上与えるのが望ましい。
フグ全般に言えることだが、伸び続ける固い歯を持つため適度に固い餌を与えることが重要。殻付きの貝を与えたりサンゴの骨格を入れる(ハムスターウサギの齧り木と同じ役割が期待出来る)ことで対策する。一方で、濾過器やヒーターのコードやチューブを噛み切ることがあるので、カバーを付けたりセパレーターで仕切ったりしてガードが必要な場合もある。
気性は荒く、同種別種問わず喧嘩が絶えない。複数飼育や別種との混泳を試みる場合、余裕のある大きな水槽を用意して隠れ家を多く作り、機敏に泳いで攻撃を躱せる魚種を選ぶと良い。トラブルを避けたいならば単独飼育が最適解。その一方で、成魚を海水魚として飼育すると、ハコフグを含めた各種海産フグやウツボの小型種、気の強いスズメダイやクマノミなどと混泳可能な場合も多く、不思議と喧嘩は少ない。
愛嬌のある顔で人馴れして、餌をねだる仕草をするようにもなり、手間は掛かるが飼育して楽しい魚である。


◇ハチノジフグ

学名:Dichotomyctere biocellatus
全長:6〜10㎝
分類:フグ目フグ科

和名と種小名(「二つの目玉模様」の意味)は背中の金色模様が「8」に見える事に由来するが、個体差も相当あるため「8」に見えない崩れたものも多い。
ミドリフグとは同属別種の関係で分布や生息環境も似るが、本種の方がやや南方系でマレー半島に多いとされる。
ミドリフグと比べて低塩分を好み、海水域では滅多に見られない。体サイズもやや小振りである。以前はミドリフグと同程度に輸入されていたが、近年は流通量がやや減少気味である。
飼育方法は、塩分をやや低めに設定する以外ミドリフグと同じで良い。
性質も個体差が激しく、大人しく混泳出来る場合もあるが、気が強いものはミドリフグ以上であり、本種とミドリフグを混泳させると、体格が優っていてもミドリフグが負けることがしばしばある。


◇ブロンズパファー(ゴールデンパファー)

学名:Auriglobus modestus
全長:11〜20㎝
分類:フグ目フグ科

目立つ斑紋が無く薄い黄緑色の金属光沢の体色、やや側扁した胴体に基底(付け根)の長い背鰭と臀鰭など、カワハギマンボウを彷彿する外見で、某熱帯魚雑誌では冗談半分に「淡水マンボウ」と称されたこともある。系統的には歴としたフグ科であることは明記しておく。
ハチノジフグと分布域は重なるが、本種は更に低塩分に適応しており、河口から300㎞以上遡った純淡水域でもしばしば見られる。
一時期はタイやマレーシアから大量に輸入されており、価格もミドリフグやハチノジフグと大差ない安価な種であったが、近年は入荷量が激減しており、価格も高騰気味である。とは言え、輸入自体はほぼ毎年有り、価格も精々3000円もあれば購入可能な場合が殆どであり、入手はそこまで難しい訳ではない。
ミドリフグやハチノジフグ以上によく泳ぎ回るので、水槽は60㎝水槽を用意し、レイアウトは最小限にする。
基本的には弱アルカリ性の純淡水で飼育可能だが、調子が悪い時は海水の10〜20%を目安に塩分を加えるのも良い。
餌はミドリフグと同じで良いが、本種の場合、自然下では貝類を殻ごと噛み砕いて食べることが多いとされ、飼育下では歯が伸び過ぎることがある。アサリやシジミ、タニシなどを殻ごと与える(寄生虫の観点から冷凍したものが望ましい)と同時に、場合によってはニッパーで歯を切る必要がある。
性質については個体差が激しく、特に問題なく同種別種問わず混泳出来るものもいれば、非常に気性が荒く、片っ端から同居した魚を追い回して噛みつくものまでいる。概して成魚になると気性が荒くなる傾向があり、顎の力も強いので単独飼育が無難である。


◇その他の汽水フグ

学名:Tetraodontidae/Diodontidae
全長:8〜50㎝
分類:フグ目フグ科/ハリセンボン科

前述の3種以外にも、汽水域で見られるフグには様々な種がおり、観賞魚として輸入されるものもいる。

インドトパーズパファーDichotomyctere fluviatilisはミドリフグやハチノジフグと同属別種関係にある。
ミドリフグのような黒い水玉模様が側面に入り、ハチノジフグに似た大きな黒斑が背中に入る。成魚は全長20㎝に達し、各鰭が朱色からオレンジ色に染まるのも特徴的である。
インドやスリランカ、バングラデシュなどの南アジアに分布している。
昭和40年代から流通しており、古い図鑑では本種の学名がミドリフグに宛てられていたり、マミズフグの和名が付けられていることもある。なお、種小名は「川に棲む」という意味である。
飼育は60㎝水槽以上の容量が必要な以外ミドリフグと同様で、一時的には淡水域に侵入するが、純淡水での長期飼育はほぼ不可能な種であり、汽水または海水環境が必須である。汽水フグとしては温和な種で、多少の咬み傷を許すのであれば複数飼育や別種との混泳も可能である。
やはり同属別種関係にあるものにはレッドラインパファーD. erythrotaeniaがいる。
ニューギニア島を中心としたインドネシアが産地で、背面は緑みがかかる灰褐色で体側に橙色の純条が走る。全長は7㎝前後でミドリフグとほぼ同じ方法で飼育可能であり観賞魚として魅力的だが、2020年以降の流通は途絶えている。

オキナワフグChelonodontops patoca(Chelonodon kappa)も比較的ポピュラーな汽水フグである。観賞魚業界ではパトカパファーの名称でも知られる。
灰色の地色に白い水玉模様が散在し、背面には太い黒横帯が3〜4本ほど入る。
和名に違わず、沖縄諸島や八重山諸島の河口域ではかなりの普通種である。尤も、日本固有種ではなく西部太平洋からインド洋にかけての熱帯・亜熱帯地域広域から知られおり、稀に無効分散個体が四国や本州でも記録されることさえある。
砂地の場所を中心に、マングローブの細流や感潮域直上の淡水域でも見ることが出来る。日中は活発に泳ぎ回り、夜間は砂に体を半分近く埋めて眠っている。
国内採集個体の他、台湾やフィリピン、インドネシアなどからも入荷する。時には海水魚として流通することもある。
飼育はインドトパーズパファーと基本的には同じだが、全長は30㎝に達する上に活発に泳ぎ回るため、90㎝以上の水槽で飼育するのが望ましい。また、砂に潜って休む習性があるため、体高の半分以上の厚さに底砂を敷き、なおかつ、水槽内のレイアウトはシンプルにすると良い。自然下では幼魚は群れていることが多いが、成魚になると縄張りを持つため複数飼育には注意する。

同じく、無効分散で黒潮に乗って日本に流れ着くものにはモヨウフグ属Arothronがいる。
汽水域で見かけるものには乳白色から灰褐色の地色に細い黒縦条が多数入るスジモヨウフグA. manilensis、灰褐色で目立つ斑紋が無く黒く縁取られた黄色の尾鰭を持つカスミフグA. immaculatus、焦茶色の地色に背面には水玉模様を呈し腹面には湾曲する縦条を走るサザナミフグA. hispidusなどがいる。
いずれの種も西部太平洋からインド洋の広域に産し、成魚はサンゴ礁や岩礁海岸に棲むが、幼魚や未成魚は河口域やマングローブで生育する。
どの種も最大全長は40㎝を超え、20㎝を超えた辺りからは海水魚として飼育すべき魚種であるという点は注意する。

温帯域にも汽水フグはおり、代表的な種はクサフグTakifugu alboplumbeusである。
全長は最大で25㎝だが多くは15㎝程度であり、和名に違わず背面は草色から深緑の地色に黄色の小斑が多数入り、胸鰭基部後方と背鰭基部に大きな黒斑が入る。虹彩が朱色から臙脂色に染まるのも特徴的と言える。
北海道南部から本州・四国・九州の全域と佐渡島や対馬などの近隣離島、朝鮮半島や台湾などから知られる。
通常は沿岸の砂浜や岩礁域で見られるが、低塩分に強い耐性があり水温が高い夏場には河口から20㎞も遡った完全な淡水域で見られることもある。淡水域に侵入するのは体表の寄生虫や細菌類を浸透圧で弱らせて除去するためだとも言われている。
防波堤での釣りや磯遊びでタモ網を用いて簡単に採集出来るが、游泳力はかなり強いため、水槽は最低でも60㎝、可能ならば90㎝以上のなるべく大きなものを用意する。その他飼育はオキナワフグに概ね準ずる。
近い種には茶褐色の地色に黒褐色の不規則な斑点が入るヒガンフグT. pardalisがおり、汽水域で採集されることもあるが本種ほどの低塩分には適応しておらず、海水魚として扱うべきである。

東シナ海沿岸にはクサフグの同属別種のメフグT. obscurusやメガネフグT. ocellatusがいる。
どちらの種も黄色系の縁取りを持つ眼状紋を胸鰭基部後方と背鰭基部に持つが、メフグは通常全長30㎝前後で最大で50㎝に達し、背面は暗い紫褐色にクリーム色の不規則小斑が入り、眼状紋の縁取りがやや不明瞭である。
一方のメガネフグは最大全長は25㎝以下で、背面は銀白色に近い無地で、眼状紋の縁取りが明確で色調もオレンジ色に近く、胸鰭基部後方のものは背面で繋がった一つの斑紋になっているという点で識別出来る。
メフグは遡河回游魚でもあり、産卵は河口から2000㎞以上遡った黄河や長江の中流域で行われ、生後1〜2年ほど純淡水域で生活した後に海に降るが、陸封された個体群も存在するとされる。食用魚としての需要もあり、川で見られるこの種こそが「河豚」の字の由来となったとされている。
00年代頃には少数ながら定期的な流通があったが、10年代後半からは殆ど輸入されておらず、入手困難な点は残念である。

これまで紹介したのは全てフグ科の魚種であるが、全身が棘に覆われていることで有名なハリセンボン科にも汽水で見られるものがいる。
大西洋産のウェブバールフィッシュChilomycterus antillarumやストライプドバールフィッシュC. schoepfiiの幼魚や未成魚は河口域の藻場やマングローブ、潟湖などでもしばしば見られ、特にウェブバールフィッシュは低塩分にある程度耐性があるため成魚でも海水の50%の塩分で長期飼育可能である。惜しむらくは入荷は決して多いとは言えず、入手はかなり困難である。
なお、日本のハリセンボンDiodon holocanthusも四国や南西諸島で偶来魚として河川からの記録があるが、低塩分で長期飼育可能であるかは不明である。


◇アベニーパファー

学名:Carinotetraodon travancoricus
全長:2〜3㎝
分類:フグ目フグ科

「アベニー」とは人名で、フグ目研究の世界的権威であった魚類学者の阿部宗明(あべときはる)(1911-1996)博士に由来するとされる。
インド南部及びスリランカに生息する純淡水魚で、フグ目最小の種の一つである。銀杏色のベースカラーに光沢のある藍色の斑紋が複雑に入り乱れる。
採集個体・ブリード個体の両方が頻繁に流通し、ミドリフグ以上に見かける機会が多い。
小さな魚であるため、水質管理に注意すれば30㎝水槽程度でもペアで飼育出来る。単独であれば容量5ℓ以下のキューブ水槽でも問題ない
塩分は全く不用で、水質管理は普通の淡水の熱帯魚となんら変わりない。強いて言えば極端に古く酸性化が進んだ水は避けた方が良い。
餌は冷凍アカムシやクリルが良く、人工飼料にはかなり餌付き辛い。水草水槽で「湧く」サカマキガイPhysa acutaを積極的に食べるため、掃除屋として水槽に入れるのも手だが、柔らかい水草なども齧られてしまい、当然ながらインドヒラマキガイIndoplanorbis exustusやイシマキガイClithon retropictusとの相性は最悪。同じようにエビ類も餌食となってしまう。
混泳は可能だが、やはり気性はそれなりに荒く、グラミーやエンゼルフィッシュ、改良品種のグッピーのように鰭が長くゆったりと泳ぐタイプの魚は恰好のターゲットになる。ラスボラやダニオのように機敏に泳ぐタイプの魚でさえ、鰭が多少痛むのは避けられない。
フグとしては繁殖が容易な方で、成熟した雄は目の後方に深い皺が入ることや各鰭が黄色みが強くなることで区別可能。ペアの相性さえ良ければ、ウィローモスVesicularia sp.を入れておくことで、卵を産み付けてくれる。そのままにしておくと親が卵や稚魚を食べてしまうので、産卵後は隔離が必要となる。孵化した稚魚はブラインシュリンプ幼生で育てることが出来る。

よく似た種にイミタートル(イミテイター)C. imitatorがいる。
インドのカルナータカ州のみに産し、アベニーパッファーと比べてベースカラーの黄色みが強く、斑紋が小さいか殆どないことで区別出来る。ごく稀にアベニーパッファーの「混じり」で輸入されることがある。


◇レッドアイパファー(アカメフグ)

学名:Carinotetraodon lorteti
全長:5㎝
分類:フグ目フグ科

虹彩が赤いことが英名や和名の由来であるが、標準和名のアカメフグTakifugu chrysopsは日本近海から朝鮮半島沿岸に産する全く別の海産フグであることに注意したい(和名の異物同名(ホモニム)と言う)。
フグとしては側扁傾向がある体型で背中がやや盛り上がる(属名は「畝のあるフグ」という意味で、この体型に由来する)。背面には雲状の不規則斑が入るが、成熟個体はやや不鮮明で、両眼から背鰭方向に向かって三角形または台形の大きな黒褐色の斑紋を呈する。この斑紋は雄では特に目立つが、雌でも小さいながらも見られる。また、雄は腹面の一部も赤く染まり、尾鰭が青くなり縁辺が白くなる。
インドシナ半島からマレー半島の広域及びスマトラ島北部から知られる。
淡水フグとしては昭和40年代から知られている「古株」の種の一つであり、かつては採集個体・ブリード個体が少量ながら定期的に流通していたが、近年は殆ど見られなくなってしまい、後述する近縁種の方が眼にすることが多い。
飼育はアベニーパファーに準じるが、水質の急変に弱いところがあるため、ペア飼育でも40㎝水槽以上の容量を用意して水質の安定を図り、一度に大量の換水を行うのは避ける。前述のように成熟個体の雌雄判別は比較的簡単であるため、ペアリングさえ上手くいけば繁殖も狙える。

本属には先に紹介したアベニーパファーとイミタートル、本種の他に3種、計6種が知られており、全種が観賞魚として日本で流通例がある。
レッドアイレッドテールパファー(レッドテールアカメフグ)C. irrubescoは全長5㎝未満でやや細身の体型であり、成熟した雄は尾鰭と背鰭、背鰭基底付近がワインレッドに染まる。
ボルネオ島西カリマンタン州やスマトラ島南部に分布し、近年はレッドアイパファーに代わって輸入されることが多く、ブリード個体も流通している。ブリード個体は人工飼料に餌付き済みのものが多く飼い易いフグと言える。
ボルネオレッドアイパファー(ボルネオアカメフグ)C. borneensisはレッドアイパファーに似るが最大全長は7㎝に達する。斑紋は雲状というよりは稲妻状でジグザグであり、雄成魚の斑紋はほぼ全て消失し、雌成魚の頭部の斑紋が比較的大きいことも特徴である。
ボルネオ島サラワク州の内陸部広域から知られており、稀に輸入される。
ストライプドレッドアイパファー(ゼブラパファー、サリバトールアカメフグ)C. salivatorは全長5㎝前後で、吻部から尾柄までの体側にやや斜行する横帯が多数入る。尾鰭や背鰭は余り色付かないか、多少黄色みが入る程度である。
ボルネオ島サラワク州南西部の更にごく一部、クチン省とサマラハン省の沿岸部近くのみから知られている種である。本属では最も入手が難しい種であり、野外採集個体は10年に1度程度しか出回らないが、ドイツやオランダ、日本でのブリード個体が稀に流通することがある。


◇テトラオドン・リネアートゥス(ファハカ)

学名:Tetraodon lineatus
全長:30〜50㎝
分類:フグ目フグ科

ナイル川からニジェール川、セネガル川などアフリカ大陸中央に広く分布する産の純淡水魚のフグ。同物異名(シノニム)であるTetraodon fahakaに由来するファハカという通称も有名。「線がある」という意味の種小名の通り、黄緑色の地色に朱色の縦条が走る。
「四枚の歯」を意味し、この種が基準となっているTetraodon属は、二名法学名を提唱したカール・フォン・リンネが記載した属であり、のみならずフグ科の基準属でもある。スペルが多少異なるが、フグ毒のテトロドトキシン(Tetrodotoxin)の名前も本属に由来する。また、古くは熱帯地域の淡水・汽水フグの多くの種を含んだ属だったが、現在はアフリカ産の6種のみが有効とされる。
近年はブリード個体が比較的コンスタントに流通して1000円前後で入手可能な場合さえあるが、最終的は90㎝水槽、出来れば120㎝水槽を用意する必要があり、気性も荒く顎の力も強いため混泳には向かない。
その点が対処出来るならば、体質的に丈夫で餌は何でもよく食べて成長も早く、人にも馴れ易く良いペットフィッシュになる。

近い仲間にはムブT. mbuがいる。
コンゴ川やタンガニーカ湖など東アフリカに分布し、最大全長が75㎝と一回り以上大きくなり、虫食い状の複雑な模様を持ち、尾鰭が長い。
同じく純淡水魚だがリネアートゥスと比べて飼育水の酸性化に弱く、ミネラルの要求量も多いとされる。濾過器にサンゴ砂やカキ殻などを仕込んで飼育水をアルカリ性に保ち、10%海水程度の薄い汽水で飼育するのも効果的である。


◇テトラオドン・ミウルス(ナイルフグ)

学名:Tetraodon miurus
全長:10〜15㎝
分類:フグ目フグ科

コンゴ川とその支流に産するフグで、ナイルフグの流通名があるがナイル川には分布していない。実は英語でNile puffesは前述のリネアートゥスを指し、本種の英名はCongo pufferやPotato pufferである。かつてアフリカ産の熱帯魚は日本に直輸入されることが少なく、イギリスやドイツ、オランダやベルギーなどを中継して流通ことが普通で、その際にヨーロッパのストック場で名前を取り違えたことに由来するらしい。
赤煉瓦のような体色のものが多いが、黄土色や橙色、茶褐色のものまでおり、非常に細かい網目模様や斑紋が入るものも珍しくないため、カラーバリエーションはかなり豊富と言える。
流通自体は昭和50年代頃からあるが、あまり大量輸入される魚ではなく、年に1〜2回ほど纏まった数が入荷する程度であり、価格も現在は1万円近くするなどやや高価である。
あまり泳ぎ回らないため45㎝水槽でも終生飼育出来る。
砂を集めに敷くと、砂に潜って眼と口先だけを出して獲物を待ち伏せする様子が観察出来て、個体の状態も落ち着くが、厚く砂を敷き過ぎると底の方に嫌気層が出来て水質が悪化しかねないので、個体のサイズを見計らって適切な量にしたい。この性質上、水草との相性も悪く、レイアウトに使うならば浮草タイプのものにするか流木に活着させる。
水流がある環境を好むため、追加でエアレーションを行うか小さな水中ポンプで水を動かすと良い。高水温にもやや弱いため、水温は28℃を超えないように注意したい。
塩分は全く不要で、水質はやや硬度を高めにするように意識して、中性から弱アルカリ性を保つ。
餌は飼育当初は餌金やメダカ、各種川エビなどの活き餌を与えた方が良く、慣れれば魚の切り身やクリルなども食べるようになる。人工飼料には中々餌付かないが、ピンセット越しに与えると食べることもあり、魚の切り身の中に人工飼料を仕込んで与えるという方法もある。待ち伏せ型であるため、フグとしては珍しいことに給餌は毎日行う必要がなく、充分に成長したものについては週に1回程度でも問題ない。
混泳は同種別種問わず避けた方が良い。

同所的に分布して似た生態を持つものにデュボワイ(ドゥボイシィ)T. duboisiがいる。
地色が灰褐色で、やや不規則な茶褐色斑が密に入ることで亀甲模様に似たパターンを呈する。全長は10㎝ほどで待ち伏せ型で獲物を狙うが、エビや小魚などの小さな獲物は自ら追いかけて捕えることもある。ミウスルよりは活発なので餌切れに注意する以外はほぼ同じ方法で飼育出来る。


◇その他の淡水フグ

学名:Tetraodontidae
全長:7〜40㎝
分類:フグ目フグ科

汽水フグと同様に淡水フグにも様々な種がおり、観賞魚として根強い人気がある。

淡水フグの代表格であるTetraodon属の残る2種、ショウテデニィT. schoutedeniとプストゥラートゥス(パストゥレイタス・クロスリバーパファー)T. pustulatusも量は多くないものの日本国内で流通することがある。
ショウテデニィはコンゴ川下流産で、黄褐色の地色に大きな黒い水玉模様がやや密に入り、後述するメコンフグ類とも似た印象がある。全長は10㎝以下で属内の最小種である。游泳性と底生性のほぼ中間の性質を持つ。この属では最も温和な種であり、複数飼育や別種との混泳が可能な場合がある。
プストゥラートゥスは西アフリカのクロス川周辺から知られ、リネアートゥスに似た姿であるが、縦条の代わりに黒い縁取りのある煉瓦色ないしは朱色の眼状紋が入る。最大全長は36㎝とされ、やや小さいリネアートゥスという印象であり、飼育方法もほぼ同じである。

古くから知られるものには南米淡水フグColomesus asellusがいる。
全長は最大15㎝だが通常は10㎝以下。黄緑色の地色に両眼から尾柄にかけての背面に太く黒い横帯が5本入る。吻の下方に微細な皮弁が生える。
その名の通り、アマゾン水系のブラジル・ペルー・コロンビア広域から知られている。長らく南米大陸では唯一の純淡水産のフグとされてきたが、2013年にトカンチンス川産の個体群が別種C. tocantinensisとして記載されている。なお、C. tocantinensisは最大全長は4㎝程度の小型種で、日本へは未入荷だとされる。
10年代初頭まではコンスタントな入荷があり入手も容易だったが、近年は流通量が激減しており、年に1〜2回入荷すれば良い方で入手にはやや手間がかかるようになった。
45㎝水槽以上の容量が必要な以外はアベニーパッファーと同じ方法で飼育可能である。性質もフグとしては比較的温和であり、同種の複数飼育や別種との混泳も可能である。
この属にはもう1種、クロオビフグC. psittacusがいる。
全長は40㎝に達し、背面の地色は灰色を帯びており黒横帯は6本入ること、吻の下方に皮弁が無いなどの点で区別可能である。
この種もごく稀に入荷するが塩分は必須であり、海水の30〜50%の塩分で飼育する必要があり、海水魚としても飼育可能。

汽水フグと同様に、淡水フグも東南アジアでの多様性が高い。
代表的なものはPao属で、インドシナ半島からマレー半島に掛けて15種以上が知られており、特にメコンフグと総称される黄緑色から黄土色の地色に黒から焦茶色の小斑点(種によっては体幹の後半部に赤い眼状斑がある)が密に入るものは、昭和50年代には既に日本に輸入されていた。
互いに似た姿のものが多く、近年は流通量が減ってはいるが、専門店を丹念に探せば、P. cochinchinensis、P. fangi、P. leiurus、P. turgidusなどが入手可能である。
多くの種は全長10㎝前後(P. leiurusは20㎝に達する)だが、やや游泳性が高く、60㎝水槽以上の用意して水流をある程度つけると良い。また、P. leiurusやP. turdusは水温が安定した大規模河川の深場に多いとされ、27℃以上の高温では調子を崩しがちなので夏場は管理に注意する。餌は活きた小魚やエビを好み、冷凍アカムシやクリルもよく食べるが人工飼料にはなかなか餌付かない。やや飼育管理に手間は掛かるグループであるが、個人での繁殖例もあるため上級者のアクアリストには是非とも挑戦して貰いたい。

他に比較的流通量が多いPao属には、背中が瘤のように盛り上がる独特の体型を持ち、腹側に大きな眼状斑が目立つインドシナレオパードパッファー(スマトラパファー・マレーフグ)P. palembangensisや、ミウルスに酷似するが両眼から背鰭方向にV字の斑紋を呈するスバッティ(ブタガオフグ・ヤカンフグ)P. suvattiがいる。
この2種は游泳性が低く待ち伏せ型で獲物を狙うタイプであるため、ミウルスとほぼ同じ方法で飼育出来る。インドシナレオパードパファーはそこまででもないが、スバッティはミウルス以上に気性が荒く、複数飼育や混泳が不可なのは勿論のこと、歯が鋭いためメンテナンス中も注意した方が良い。
更に外見が変わっている種には、体表に細かい皮弁が多数発達するヘアリーパファー(ケフグ)P. baileyiがいる。
長らく幻の魚と呼ばれるいたが、2004年頃から纏まった流通が始まり、現在も不定期且つ少量だが入荷はある。性質的にはメコンフグ類とスバッティの中間と言える。

インドエメラルドパファーLeiodon cuticutiaも比較的入手し易い種である。
インドトパーズパファーに名前は似るが全く別の種である。全長は最大10㎝で多くは7㎝以下、背面には黄緑色の光沢の強い雲状斑が入り、背鰭と臀鰭を結ぶラインの中間地点からやや前方に明確な黒色斑が入る。虹彩が赤いことや尾鰭が黄色みを帯びる点も特徴的である。
インドからマレー半島にかけて分布する。
基本的には純淡水で飼育可能だがあまり酸性化した水は好まない。輸入直後で調子を崩している場合は海水の10%程度の薄い汽水で飼育するのも良い。それ以外は概ねレッドアイパファーに準じた方法で飼育可能である。
この種も個人レベルでの繁殖例が多い種であり、水草の葉や平たい石の上に粘着性のある卵を産み付けて、雄が卵保護をするという習性が知られている。
同属別種にはL. dapsilisが知られている。オーストラリア北部に固有でマングローブに棲む汽水産の種とされており、日本に輸入されたことはないと思われる。


◇ブラキッシュウォーターフロッグフィッシュ(ピエロカエルアンコウ)

学名:Antenarius biocellatus
全長:12〜20㎝
分類:アンコウ目カエルアンコウ科

背鰭が変化した誘因突起と擬餌状体で魚やエビをおびき寄せ食べ、泳ぐのは苦手で足のように変化した胸鰭で海底を歩く珍魚の筆頭格で知られるカエルアンコウにして、更に唯一、汽水域及び淡水域から知られるのが本種である。
岩やカイメンに擬態しているため、同一種内でも体色の変異は多く、黒から茶褐色、オレンジ色や黄色や紅色までと様々なバリエーションがあるが、共通すると特徴として、第2背鰭の中央辺りに眼状紋があること、第1背鰭第2棘条が円錐形になっていること、眼に過眼線が走ることなどが挙げられる。和名は円錐形の棘条と過眼線をピエロの帽子とメイクに見立てたものである。
記載自体はフランスの大博物学者のジョルジュ-キュビエによって1817年に行われており、存在自体は古くから知られていたが、2012年に沖縄県で初採集され、その後の追加記録を纏めて2022年に日本記録種として報告された。
カエルアンコウは卵を筏のような卵嚢を伴う卵塊として産卵するため、それらが黒潮に乗って南西諸島に流れ着いて育ったものと考えられている。日本で定着して再生産を行なっているかは判然としないが、狙って採集出来るほどの個体はいないらしい。
一方で、日本の観賞魚業界に紹介されたのは2015年頃であった。インドネシアから輸入されるが、流れが強い深い川にいて採集が困難とのことで、流通初期には10万円を超える価格で取引されたこともあった。近年はやや価格は下がったものの、2万円以下ということは滅多に無く、流通自体も年に1回あれば良い方であり、入手のハードルはやや高い。
また、水族館やアクアリストの諸報告からすると、生理的な寿命が3年程度と推定されており、この手の底生魚としては長くないため、あまりに大きな個体は寿命が迫っている可能性があることにも留意した方が良い。
非常に個性的で魅力溢れる魚であるが、注意事項が複数あり、飼育はやや難しい部類である。
激しく動き回る魚ではないので60㎝水槽から飼育可能。
海水の10〜25%程度の塩分が必要で、全くの淡水では調子を崩すが、完全な海水でも上手く飼育出来ないらしい。そして、汽水魚としては硝酸の蓄積に弱くアンモニアの排出量も多いため、強力な濾過器と定期的な換水は必須。游泳力がほぼ無いため強い水流はストレスになるが、全く水流が流れないと倒れてしまい、後述の食滞の予防にもなるため、適度な流れを作りつつ、レイアウトを工夫して避難場所も設けると良い。
余程長く問屋やショップで飼い慣らされた個体でなければは活き餌が必須で、可能ならばボラやハゼ、スジエビなどの汽水産の小動物をメインに与えたい。但し、この種に限った話ではないが、カエルアンコウは餌を与えたら与えただけ食べてしまい、食滞を起こして頓死することが稀ではないため、餌の与え過ぎには要注意。常に活き餌を入れっぱなしにするのは避ける。ピンセットから餌を摂るように慣れる個体もいて、その場合はクリルや魚の切り身を与えることも出来る。
肋骨が無く胃が大きく膨らむ性質を持ち、自分自身と同サイズぐらいの魚でも、無理やり飲み込んでしまうことがあるため、複数飼育や混泳についても基本的に推奨しない。


◇レッドスキャット(クロホシマンジュウダイ)

学名:Scatophagus argus
全長:20〜35㎝
分類:ニザダイ目クロホシマンジュウダイ科

チョウチョウウオに近縁とされる体高の高い側扁した魚で、成魚は緑がかった銀白色に胡麻のような小黒斑が散在するという渋い美しさがあるが、幼魚は黒斑の間隔が密で、背面がオレンジ色に染まるため別ベクトルの美しさがある。
属名は「食糞者」を意味するため、しばしばネタにされるが、実際には東南アジアの水上集落で傷んだ食材や調理屑を海に捨てると、近寄って食べてくれるという精々「掃除屋」くらいの意味が拡大解釈されてしまったものらしい。因みに種小名はギリシャ神話の百目巨人アルゴスを意味し、黒斑をアルゴスの目玉に見立てたものである。
西部太平洋からインド洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しており、卵や稚仔魚は浮游生活を送りるため、黒潮に乗って日本近海にまで流れ着く無効分散魚として有名だが、近年は地球温暖化や生活・工業排水の流入による海水温の上昇により、少なくとも紀伊半島や四国近海では成魚が定着・繁殖しており、夏の終わりから秋にかけては東京湾周辺でもかなりの数の幼魚が見られる。
幼魚は流れ藻や流木の周辺で群れており、泳ぎもそれほど素早くないので、見つければタモ網で採集することも十分可能である。観賞魚としても比較的コンスタントな入荷があり、価格も800〜2000円程度で入手は容易な方である。
幼魚は60㎝水槽から飼育可能だが、それなりのサイズに育ち游泳力が強いため、成魚は90㎝水槽以上で飼育したい。
塩分の要求量は幼魚では海水の10〜25%程度、成魚は30〜50%程度で、海水でも飼育可能である。
餌は人工飼料を始めとして何でもよく食べる。自然下では藻類もかなり食べているらしく、偶にスピルリナを配合した人工飼料や冷凍のミックスベジタブルを与えると調子が良い。
成長するとやや気性が荒くなるが、素早く泳ぐ魚種や生活圏が重ならない底生魚とは混泳可能である。

近縁種として眼から尾柄にかけて黒い横帯が6本前後入る西アフリカ産のアフリカンスキャットS. tetracanthusや、顔立ちがシャープで体色がより銀色に近い東南アジア・オセアニア産のシルバースキャットSelenotoca multifasciataなどが輸入される。流通量はあまり多くないが、どちらもレッドスキャットと同じ方法で飼育可能で、アフリカンスキャットはより低塩分でも問題ない。


◇モノダクティルス(ヒメツバメウオ)

学名:Monodactylus argenteus
全長:15㎝
分類:ニザダイ目ヒメツバメウオ科

菱形に近い体型が特徴的で、この種もチョウチョウウオとの関連が示唆されている。
種小名は「銀色の」という意味で、その名の通り銀白色の体色に、背鰭と尾鰭、臀鰭がレモンイエローに染まる美麗種である。因みに、属名は「一本指」を意味し、腹鰭が痕跡的で1棘のみからなることに由来する。
卵や稚仔魚は浮游生活を送り、黒潮に乗ることもレッドスキャットと同じだが、本土近海では見かける機会は少なく、九州以北では殆ど定着していないと考えられている。南西諸島ではかなり普通で、八重山諸島では完全な淡水域である水田の用水路でも見られる。
動きは機敏でタモ網での採集は難しい。入荷量や価格はレッドスキャットと同程度で、海水魚として輸入されることもある。
飼育についても殆ど同じだが、単独ならば60㎝水槽でも相当長く飼うことが出来る。

近縁種にはモノダクティルス・セバエ(アフリカヒメツバメウオ)M. sebaeがいる。
西アフリカ原産の種で、より体高が高くなり背鰭と臀鰭とを繋げる黒横帯が特徴的である。
量は多くないが入荷自体はほぼ毎年あり、最近はブリード個体も見られる。古い水を避ければほぼ淡水で飼育可能で、塩を加える場合でも海水の10%程度で良い。


◇ニューギニアダトニオ

学名:Datnioides campbelli
全長:30〜45㎝
分類:ニザダイ目マツダイ科

絶滅危惧種のシャムタイガーD. pulcherを筆頭に、スンダランドを中心とした東南アジアが分布の中心であるダトニオにあって、オセアニアであるニューギニア島に分布するのも異質ならば、成魚は頭部が黒くなり体側の黒と黄土色の横帯が燻んだようになる体色も異様な種である。
バブル経済期とその前後数年の怪魚ブームを牽引したダトニオの中では、日本への輸入されたのが1991年と最も遅い種であった。
ニューギニア島は1963年に勃発したパプワ紛争に始まり、1975年のパプワニューギニア独立、1985年の国家非常事態宣言など、地政的な位置と多民族国家であることが災いして地域紛争が絶えず、商業ルートの開拓はおろか学術調査もままならない状態であり、この種に限らずニューギニア産の熱帯魚や爬虫類は驚くべき高額で取引されていた。当時の本種はシャムタイガーよりも高価で、120万円ほどで取引されたこともあった。現在は紛争が一段落して、比較的政情が安定しているインドネシア領のイリアンジャヤから輸入されるため、価格は5000円から1万円程度に落ち着いている。
激しく泳ぎ回る魚ではないので、よく輸入される10㎝以下の幼魚は60㎝水槽で飼育可能だが、成魚は40㎝を超えるため最低でも90㎝、可能ならば120㎝水槽で飼育したいところである。
ダトニオの中では高塩分を好み、幼魚は純淡水でも飼育可能だが、成魚は海水の25〜50%程度の塩分で飼う。
魚食性が強い肉食魚で活き餌を好むが、最終的に人工飼料に馴れる場合が多い。
気性が荒く縄張り意識が強いため、特に同種同士の混泳は難しい。

同属別種のメニーバーダトニオ(シックスバーダトニオ)D. polotaもほぼ同じ方法で飼育可能だが、より高塩分を好むため成魚は海水で飼育した方が良い。


◇レッドスナッパー(ゴマフエダイ)

学名:Lutijanus argentimaculata
全長:30〜70㎝、最大1m
分類:ニザダイ目フエダイ科

熱帯から亜熱帯の岩礁域やサンゴ礁でよく見られる中大型游泳魚のフエダイには、河口域に侵入する種も多く知られており、本種は特に低塩分に適応しており完全な淡水域にも侵入する。
成魚は茶褐色から赤褐色で目立つ斑紋はないが、幼魚は7〜8本の明確な白色の横帯を呈し、背鰭棘条・腹鰭・臀鰭棘条が朱色に染まり外縁が黒く染まる。また、眼の下にはメタリックな空色の線が走るなど、中南米のシクリッドにも遜色ない美しさがある。
本種の幼魚も黒潮に乗り、夏の終わりから初秋に掛けては関東でもしばしば記録される。房総半島や紀伊半島には少数ながら成魚が定着しているとも考えられており、南西諸島では周年見られて数も多い普通種である。幼魚はマングローブの根周りや流れが緩やかな淀みに溜まっていることが多い。寿命は非常に長くオーストラリアでは57歳の個体が知られている。
国内採集個体や、台湾やインドネシアやインドなどからの輸入個体が偶に流通する。自家採集も可能で、釣り魚としても親しまれている。
飼育は基本的にニューギニアダトニオに準じるものの、より大型の水槽が必要で、最終的には180㎝水槽でも手狭になる場合も考えられる。
塩分についても全長40㎝程度までは海水の50%程度で良いが、それ以上のサイズの個体は海水魚として飼育すべきであり、寿命も含めて水族館レベルの飼育設備を用意・維持出来る「逸般人」が飼うべき魚である。

フエダイ属では他にオキフエダイL. fulvusやナミフエダイL. rivulatus、クロホシフエダイL. russelliiやニセクロホシフエダイL. fulviflammus、ウラウチフエダイL. goldieiなどが河川から知られるが、ウラウチフエダイを除いて本種ほど低塩分には適応していない。また、クロホシフエダイとニセクロホシフエダイ以外は、全長50㎝以上(ナミフエダイとウラウチフエダイは1mに達することもある)になるため、本種と同等の飼育設備が必要である。


◇クロダイ

学名:Acanthopagrus schlegeli
全長:45〜60㎝
分類:ニザダイ目タイ科

高級食材として、或いは文化的対象として著名なマダイPagrus majorとは同科別属に当たる魚で、釣り人の間ではチヌの名前で人気がある。
北海道南部から屋久島までの日本沿岸と、朝鮮半島からベトナムにかけての東シナ海や南シナ海などから知られるが、南西諸島には分布していない。
稚魚は5〜7月頃にアマモ場で見られ、全長6㎝程度になると河川に侵入し、夏から秋にかけては淡水域まで遡上する。河口から70km以上の中流域で見つかることさえある。冬場は内湾の海水域に移動して越冬する。寿命は野外では19歳のものが知られており、飼育下では30年以上生きたものもいるなど、レッドスナッパーほどではないが、かなり長寿な魚である。
クロダイは性転換をする魚としても有名で、生後2年目の全長20㎝前後の個体は雄性先熟と言って雄として性成熟し、生後3年目の全長25㎝前後で雌に変化するものが現れ始め、生後4年目以降は殆どが雌になる。ただし、ごく一部の個体は雄と雌の両方の機能を備えたものもおり、抑も生後1年目の個体の生殖腺は卵巣と精巣の両方の特徴を併せ持つ(繁殖能力自体は無い)ため、雌雄同体の変形と見做されることもある。
日本産淡水魚や近海魚を取り扱っている店舗に入荷することもあるが、自家採集の方が入手は確実だろう。採集が容易なのはアマモ場で稚魚をタモ網で掬う方法だが、あまりに小さい個体は低塩分やスレに弱いので注意する。5㎝以上になると警戒心が強くなり、タモ網で掬うのはかなり難しくなるため釣りで狙うと良い。クロダイ専門の釣り人もいるように様々な釣り方が研究されているが、飼育用の小型の個体を釣るにはオーソドックスなウキ釣りやミャク釣りが良く、サビキ釣りにかかることもある。大型の個体ならばダンゴ釣りやルアー、フライフィッシングを選択しても良い。
言うまでもないが、タイの一族であるため肉は美味で、刺身やカルパッチョ、ソテーに唐揚げに塩焼き、ポワレにアクアパッツァに味噌汁と、様々な料理に使えるが、季節や場所によっては肉の臭みが強いこともある。
最終的に120㎝以上の水槽を用意する必要があるが、塩分や餌などの基本的な飼育はレッドスキャットに準じる。
温帯域の魚なので、関東以南の室温ならば無加温飼育も可能だが、その場合、冬季は海水で飼育した方が良い。
複数飼育や混泳は基本的には推奨しない。代わりに単独で飼育すればかなり人に馴れる。

近縁種としてはミナミクロダイA. sivicolus、キチヌ(キビレ)A. latus、オキナワキチヌA. chinshira、ナンヨウチヌA. pacificus、ヘダイRhabdosargus sarbaなどがいる。
キチヌはクロダイとほぼ同じ方法で飼育可能で海水の30%くらいの塩分でも長期飼育可能である。ミナミクロダイ・オキナワチヌ・ナンヨウチヌは冬季の保温が必要。ヘダイは藻類食が強く、成魚は海水魚として飼育した方が良い。


◇インドアンテナフィッシュ(イトヒキギス)


学名:Sillagoninopsis panijius
全長:25〜35㎝、最大44㎝
分類:ニザダイ目キス科

細身で狐顔の種が多いキス科は、日本ではシロギスSillago japonicusが砂浜での投げ釣りで親しまれ、刺身や天麩羅やフライで賞味されている。
本種はベンガル湾を中心としたインド亜大陸周辺の河口域を生息場所としており、現地では重要な食用水産資源として消費されているが、稀に観賞魚として流通することがある。
詳細は当該項目を参照。


◇淡水イシモチ(ドラムフィッシュ)

学名:Sciaenidae
全長:15~70㎝
分類:ニザダイ目ニベ科

中華料理の高級食材、或いは愛想の無い様を意味する慣用表現である「鮸膠(にべ)も無い」の語源、はたまた釣り界隈に於ける日本四大怪魚の一角であるオオニベArgyrosomus japonicusが属するグループでもあるニベ科にも汽水産や淡水産の種が知られている。
この科の特徴としては、内耳にある耳石(扁平石)が特に大きく、鮸膠の原料となる(うきぶくろ)が複雑に分岐していて、さらにその付近の筋肉が発達していて、鰾で共鳴させて鳴くことが出来るため、英名のDrumfish(太鼓魚)Croaker(ブツブツと文句を言う者)はこの特徴に由来する。日本語では耳石に由来するイシモチの通称も有名である。他に外見的な特徴としては、体は側扁型で体高は低く銀白色で細かい鱗に覆われていること、吻は余り尖らず口は下向きに付くこと、背鰭は棘条の第一背鰭と軟条の第二背鰭とは、区別は明確ながら基底は連続していること。尾鰭はは中心が尖るものが多いことなどが挙げられる。
全般的に大陸近辺の沿岸部、それも大河川の河口域近くで塩分が薄めの海水を好むものが多く、外洋域では余り見られない。日本産の種も瀬戸内海や東シナ海で比較的多いことが知られている。
観賞魚としては、東南アジア産の種と南米産の種が流通する。運動量が多く酸欠に弱いため長距離輸送が難しく、個別に梱包して輸入される影響で価格は1万円超えが普通など、高価な部類の魚である。
比較的入手し易いのは東南アジア産の種で、鰭がやや小さく黒みがかかるNibea soldadoや鰭が大きく黄色く染まるN. squamosaなどが流通している。どちらの種も自然下では40㎝以上になる。
飼育はレッドスキャットに準じるが塩分はやや薄くても良く、浮いた餌も食べるものの沈んだ餌をより好む。飼育環境に馴れると貪食なところもあるくらいで、他の底生魚の餌まで奪ってしまうのは玉に瑕か。
南米産の種としては、背面に黒色の小斑が多数入るPachyurus junkiや、前種に似るが小斑の数が少ないP. schomburgkii、体高が低く側線上に太い黒縦条が走り、後頭部に傾いた横帯が入ることで倒れた「F」の字のような模様があるP. calhamazon、破線状の縦条が頭部周辺に見られるP. paucirastrus、細かい虫喰い状の不規則斑を有するP. adspersus、薄い横帯が8~11本ほど呈するP. squamipennis、これまでの種とは属が異なり、丸みを帯びた吻に背面が藍色に染まるPlagioscion squamosissimusなどが知られており、それぞれ少ないながらも流通例がある。
東南アジア産の種と比べても淡水に適応しているものが多く、特にP. squamosissimusは河口から3000㎞上流のペルー領内のアマゾン川にも多産するので、完全な純淡水で飼育可能である。その他の種もよほど酸性に傾かなければ塩分なしの純淡水で問題ない種が多いが、P. schomburgkiiは東南アジア産の種と同等の塩分が必要で、P. squamipennisは偶来魚とされており、海水の50%以上の塩分が必要である。また、他の種が最大全長が30㎝以下で、P. calhamazonやP. squamosissimusに至っては最大でも15㎝程度とされている中、P. squamipennisは全長70㎝以上のものが記録されている点は注意したい。P. squamipennis以外の種は比較的繊細で、食が細く人工飼料に餌付き難い。単独で飼育して、冷凍アカムシや冷凍イサザアミ、或いは生きたイトミミズやゴカイ、メダカなどを与えると良い。


◇スズキ

学名:Lateolabrax japonicus
全長:50〜100㎝
分類:ホタルジャコ目スズキ科

かつて脊椎動物最大の目であり、1万種以上を擁したスズキ目の代表格…というべき魚であったが、近年スズキ目が解体・再編成されたことで、ホタルジャコ目という比較的小さいグループに含まれることになった。
詳細は当該項目を参照。
釣り魚あるいは食用魚としての需要が高く、あまり観賞用に供される魚ではない。
飼育する場合は、レッドスナッパーに概ね準じ、游泳力が強くメートル級になる魚種であるため一般的とは言い難く、代謝も高めで痩せ易いこともあって飼育はやや難しい部類である。


◇シマイサキ

学名:Rhynchopelates oxrynchus
全長:30㎝
分類:サンフィッシュ目シマイサキ科

和名にイサキと付くが、食用や釣り魚として親しまれているイサキとは別のグループの魚である。目名から察せられるように、ブルーギルやオオクチバス(ブラックバス)Micropterus nigricansに近縁であり、この他ケツギョSiniperca chuatsiなどの旧スズキ目スズキ亜目の中で淡水環境に進出した一群には、近年の諸研究で一定の類縁関係が見出されるようになった。
やや尖った顔立ちに側扁した体型、棘条がよく発達した背鰭を持つという「典型的な魚」とでも言うべき形状に、幼魚では4本、成魚では6〜7本の黒縦条を呈する。この黒縦条からスミヒキ(墨引)やスミヤキ(炭焼)の別名もある。
青森県以南の日本海、岩手県以南の太平洋及び東シナ海から知られる温帯魚で、朝鮮半島や台湾にも産するが南西諸島からの記録はない。
内湾に注ぐ河口域に多く、泥底と転石が適度に混在する場所やアマモ場で見られる。幼魚は淡水域にも入って群れを作るが、成魚は単独で転石や流木に寄り添うように泳いでいることが多い。
入手は自家採集が最も確実で、タモ網で採集可能である。また、夜間採集で寝込みを襲えば更に簡単に採れる。その場合は当然ながら懐中電灯やヘッドライトなどの何らかの光源が必須で、場所によっては夜間採集の規制がある地域もあるため、事前に下調べを怠らず地元の方との不要な軋轢は避けること。本種のみを狙って釣るのは難しいが、スズキやクロダイを狙ったサビキ釣りやミャク釣り、ルアーなどの外道としてもしばしば掛かるため、サイズや状態が適切ならば、そこから飼育しても良い。観賞魚としての流通は多くはなく、日本産淡水魚を扱っている店舗に偶に入荷する程度である。
ちなみに、鱗や骨がやや硬いものの、身は白身で臭みは少なく、刺身、塩焼き、バター焼き、味噌汁などに調理すれば普通に美味な魚である。
飼育についてはレッドスキャットとほぼ同じだが、肉食性が強く、植物質の餌は余り好まない。

南西諸島にはヨコシマイサキMesopristes cancellatusやシミズシマイサキM. iraviなどの近縁種が複数知られており、本種以上に淡水環境に適応しており低塩分で飼育可能だが、分布は限られており数も少なく入手は難しい。
また、ニューギニア島やオーストラリアからは同じく近縁種であるストライプグルンターAmniataba percoidesやスパングルパーチLeiopotherapon unicolor、カルボナンダスHephaestus carboなどが稀に輸入される。やはり低塩分で飼育可能だが、カルボナンダスはかなり気性が荒いため、複数飼育や混泳には注意する。


◇コトヒキ

学名:Terapon jarbua
全長:30㎝
分類:サンフィッシュ目シマイサキ科

シマイサキに近縁な魚で、吻はやや丸みを帯びて体高が高い。コトヒキの名は、鰾の前方に発音筋があり、鰾に共鳴させることでキュッキュッと鳴くことをから「琴弾」の意で付けられたものであるが、これは科全体の特徴でもある。体高の高さからヤカタイサキ(屋形鶏魚)、尾鰭が緩い二叉形で縦条と黒斑が入る様子を矢筈(やはず)に見立てたヤガタイサキ(矢形鶏魚)の別名もある。英名では第1背鰭に大きな黒斑が入り、背面に弧状の黒縦条が3本走る様子を的に見立てて、「Targetfish」や「Target Perch」と呼ばれる。
シマイサキと同所的に見られる場合もあるが、本種は南方系で南西諸島でも普通に見られる他、インドネシアやサモア、アンダマン諸島など中部太平洋からインド洋までと分布は広い。このため、数は少ないがインドネシアやフィリピンなどから輸入されることがある。
潮通しが良い外洋寄りの環境に多く、岩礁海岸のタイドプールでもよく見られる。その一方で本種は完全な淡水域で見られることはほぼない。
飼育もシマイサキに準じるが、本種は他の魚の鱗や鰭を齧って食べる習性があり、複数飼育や混泳には基本的に向かない。

同属別種にヒメコトヒキT. therapsがおり、性質はシマイサキに近く温和だが、より高塩分を好むため海水魚として飼育した方が無難である。


◇ジャングルパーチ(オオクチユゴイ)

学名:Kuhlia rupestris
全長:30〜45㎝
分類:サンフィッシュ目ユゴイ科

和名は「大口湯鯉」の意だが、目名を見れば判る通りシマイサキの親戚筋である。シマイサキ科と比べて尾鰭はより深く切れ込み、口もやや上向きにつくなど、より游泳性能が高いことが窺える形態を有する。
鹿児島県高知県で幼魚が採集された記録はあるが、基本的には南西諸島以南に分布し、国外では太平洋からインド洋の熱帯・亜熱帯地域に広く分布する。
純淡水性の游泳魚が少ない沖縄県では、それに近い生態的地位を獲得しており、渓流域から中流域でかなり普通に見られ、用水路にも多い。
若魚は水面近くを群をなして泳ぐが、動きは素早くタモ網で獲るのは難しい。釣りで採集するのが一番簡単で、ゲームフィッシングの対象にもなっている。南西諸島の採集個体やインドネシアからの輸入個体が偶に入荷する。
基本的にはシマイサキと同じ方法で飼育可能だが、本種の場所は周縁性淡水魚というよりは降河回遊魚に近く、古くない水であれば塩分無しで何年も飼育可能である。ただし、採集直後や冬場の低水温時、幼魚期などは水カビ病やコショウ病などが出易いため、10〜25%を目安に塩分を加えるのも良い。
幼魚は群れを作るが、成魚になると気性が荒くなるため複数飼育や混泳には注意する。

同じように飼えるものにはユゴイK. marginataやトゲナガユゴイKuhlia mundaがいる。
因みに、夏場に本州沿岸でもよく見られるギンユゴイK. mugilは海水魚であるが、低塩分に耐性があり、海水の50%程度の塩分があれば長期飼育可能である。


◇淡水ハオコゼ

学名:Neovespicula deprerssifrons
全長:5〜8㎝
分類:ペルカ目フサカサゴ科

日本にも産するハオコゼの近縁種であり、赤や薄桃色の斑模様のハオコゼに対して、本種は黒と焦茶色の斑模様に頭部の正中がクリーム色とシックな色合いである。
西部太平洋からインド洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しているが、日本からの記録はない。
転石と砂泥が混じった河口域で見られ、岩の隙間や流木の割れ目に潜んでいる。
比較的コンスタントに輸入されているため入手は容易で、価格も数百円程度と安価である。
文献上は10㎝近くになるともされるが非常に成長が遅く、単独飼育ならば30㎝水槽でも相当長い期間飼育可能で、複数飼育する場合でも40㎝水槽を用意出来れば良い。
塩分はやや高めの方が調子が良く、海水の20%以下にはならないように注意する。
人工飼料には餌付きにくく、冷凍餌や生餌を中心に与える必要がある。特に輸入直後は餌付きが悪いことが少なくないため、活きたブラインシュリンプやイサザアミを用意した方が良い。
背鰭に毒を持つため、他の魚からは襲われにくいものの、動きはゆっくりで餌を食べ損ねることや、無毒な尾鰭を齧られることがあるため他種との混泳には注意する。同種同士では多少の小競り合い程度で、大きな問題になることは少ない。

近い仲間には八重山諸島などからも記録があるアゴヒゲオコゼTetraroge barbataやヒゲソリオコゼT. nigraがいるが、非常に珍しい種であり滅多に流通しない。


◇アリゲーターフィッシュ(ストライプテールアリゲーターフィッシュ・ミナミマゴチ)

学名:Platycephalus indicus
全長:30〜100㎝。
分類:ペルカ目コチ科

エイと並ぶ縦扁著しい平面魚であるコチの1種で、その名の通り、ワニのように大きな口に下顎が突出した顔も特徴的である。長らく正体不明であったが、成魚は尾鰭中央が黄色に染まること、第1背鰭前の小棘が1本であること、背鰭や胸鰭の水玉模様が明瞭なことなどから、上記の学名及び和名が適切とされる。
西部太平洋からインド洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しており、日本からも南西諸島から記録がある。観賞魚としてはインドから輸入されることがある。
比較的規模が大きい河口砂泥底で見られる。河川で見られるのは30㎝以下の若魚であることが多い。
かつてはインドアンテナフィッシュ共々、比較的コンスタントに入荷していたが、最近は数年に一度輸入されれば良い方である。
最大で1mに達するが、輸入される個体は20㎝以下の幼魚が殆どで、40㎝を超えると成長がかなり遅くなり、運動量もかなり少ない魚であるため、飼育個体のサイズに合わせて60〜120㎝水槽を用意すれば良い。
自然下では底砂に潜って獲物を待ち伏せるので、細かい砂を敷くと落ち着くが、あまり厚く敷くと汚れが溜まって逆に状態を崩すので注意する。
塩分はやや高めに設定し、幼魚では海水の20〜30%、成魚では30〜50%を目安とする。成魚は海水魚として飼育しても良い。
活きたエビや小魚を好むが、ピンセットから餌を摂るように慣らすことは可能で、クリルや魚の切り身には餌付く。人工飼料にはやや餌付き辛いが、肉食魚用のものを試してみると良い。
性質は意外と温和で、口に入らないサイズで生活圏が重ならない魚種との混泳は可能であることも多い。

日本本土で見られるマゴチP. spやイネゴチCociella crocodillaなども同様に飼育可能である。


◇ジャイアントグルーパー(タマカイ)

学名:Epinephilus lanceolatus
全長:150〜250㎝
分類:ペルカ目ハタ科

ハタ科の世界最大種。
巨大魚の項目も参照。
幼魚は汽水域に侵入し、一時的には海水の10%ほどの低塩分にも耐えるものの、最終的には海水での飼育が推奨され、その上で最大サイズは全く個人向けではない。

他のハタ科魚類としてはチャイロマルハタE. coioidesやハクテンハタE. coeruleopunctatus、シラヌイハタE. bontoidesなどが汽水域から知られている。


◇淡水ギンポ

学名:Blenniidae
全長:5〜10㎝
分類:ギンポ目イソギンポ科

淡水ギンポと呼ばれる種には複数の種がおり、ここではイソギンポ科ナベカ属Omobranchus spp.に分類されるものを扱う。
まず、上位分類のイソギンポ科だが、江戸前の天麩羅で有名なギンポPholis neblosaとは全くの別物である。ギンポはペルカ目ニシキギンポ科に分類され、系統的にはダンゴウオ科やフサカサゴ科などに近い。一方のイソギンポ科はスズメダイ科などに近縁とされる。ニシキギンポ科は世界で15種程度が知られる小さなグループで、北方系で岩礁域や砂泥底に棲む。イソギンポ科は世界で400種以上が記載されているかなり大きなグループで、熱帯・亜熱帯海域で多様性が高く、岩礁域やサンゴ礁で見られるものが多い。
両者とも側扁した平たい体に基底が長い背鰭と臀鰭を持ち、卵を保護する性質を持つなどの共通点はあるが、多くは収斂進化の結果として見做されており、形態や生態が異なる点も多い(例えばニシキギンポ科は体が細長くウナギ体型で、尾鰭も小さく口や歯も小さいが、イソギンポ科はシルエットはハゼに近く、尾鰭の発達は悪くなく口は大きく犬歯状の牙が発達するものが少なくなく、特に雄同士はこれを用いて激しく争うなどの違いがある)。
そのイソギンポ科で、特に河川へと進出したグループがナベカ属から複数知られている。個々の種に共通する特徴は少ないが、頭部周辺に細い横帯を呈するものが多い。
観賞魚として流通が比較的多いのは、O. zebraとO. smithiである。どちらも分布は概ね同じで、インド亜大陸周辺からマレー半島やインドシナ半島、インドネシアやフィリピンなどに分布しており、これらの国から時折輸入される。
O. zebraは頭部の横帯が太く4〜5本ほど有り、胸鰭の基部に黒い斑紋が目立つ。躯幹の模様は斑点状で、背鰭と腹鰭を繋げることはない。O. smithiは頭部の横帯が細く3本ほど有り、後頭部にC字型のメタリックな青い斑紋も呈する。躯幹の模様は太い帯状で、背鰭と腹鰭を繋げている。O. zebraはインドゼブラブレニー、O. smithiはピカソフェイスブレニーの名前で流通することが多いが、逆の名前で流通したり、単に「淡水ギンポ」の名前で2種が混ざった状態で売られていることもある。更に、この2種と比べると入荷量はかなり少ないが、日本でも八重山諸島などで見られるカワギンポO. feroxが混じることがある。カワギンポは頭部に目立った斑紋を持たず、背鰭の鰭条数が少し多い(O. zebraとO. smithiは30〜33で、カワギンポは32〜35)。生態はどの種も大同小異で、マングローブを流れる泥深い水路でよく見られる。
飼育は40㎝水槽から可能で、水質管理に自信があるならば30㎝水槽でも飼える。
シェルターとして枝状の流木(灰汁が抜け切ったもの)やカキ殻、フジツボ殻などを入れると雰囲気が出るが、あまり複雑にし過ぎると滅多に姿を見せなくなるので、却って観賞に難があるかも知れない。
塩分の要求量は海水の10〜30%程度。
餌はクリルやシーフードを好むが、人工飼料にも餌付く。自然下では藻類も結構食べているらしいので、スピルリナを配合した人工飼料を試してみるのも良い。
テリトリー意識がかなり強く、ペア以外の混泳は難しい。特に生活圏が重なるハゼやオコゼ、カレイなどとの相性は最悪である。気性の荒さから体格差がある魚とでも渡り合えるので、上層部を泳ぐ頑健な魚種とならば可能である。
ペアリングに成功すると、流木の影やフジツボ殻の奥に産卵することがある。雄親は孵化するまで卵保護を行う。仔魚は非常に小さい上に、海水に近い塩分が必要で育成はかなり難しい。

東京湾以南の本州・四国・九州には同属別種のトサカギンポO. fasciolatocepsやイダテンギンポO. punctatusが知られている。同じ方法で飼育可能で、海水の30%程度の塩分で、関東以南の室温ならば冬季の保温も不用である。また、岩礁海岸のタイドプールでよく見られるナベカO. elegansやクモギンポ O. loxozonusも、海産種であるが低塩分に耐性があり、海水の50%程度の塩分でも長期飼育可能である。


◇ボラ

学名:Mugil cephalus cephalus
全長:30〜60㎝
分類:ボラ目ボラ科

時に河口近くの水路や水門で犇めき合う様子がニュースやワイドショーで報道されるボラは、汽水域の游泳魚として最も身近なものの一つである。
特に標準和名ボラは北海道オホーツク海沿岸を除いた日本全国で見られ、五大陸全ての沿岸に分布するという汎存種であり、水温の高い夏場には海岸から数十㎞以上の距離がある内陸県の埼玉県岐阜県奈良県の河川からも記録されることが少なくないなど、遡上能力が高い種である。 
水産資源としても注目されており、卵巣の塩漬けを干した物である(からすみ)は高級食品として名高く、肉に関しても水域によっては臭みが出る場合もあるが、概して海域で漁獲されたものに関しては美味である。秋から冬が旬で、刺身が一番向くが、煮付けや鍋物にしても良い。また、胃が筋肉質で特に幽門部(胃の出口側)の括約筋の量が多く、その形から「算盤玉(そろばんだま)」などと呼ばれており、この部位も刺身や串焼きなどで賞味される珍味である。
身近な存在であるため、入手には自家採集が手っ取り早い。春先から幼魚が群れを作って河川を遡上し始めるので、タモ網で一網打尽にすることが出来る。但し、ボラ類全般としてスレに弱く低水温時に採集すると水カビ病が出易い面もあるので、水温がある程度高い初夏以降に多少育った個体を狙うのも良い。観賞用として販売される機会は少ないが、後述の食性に由来する掃除屋や活き餌として売られることもある。
言うまでもなく游泳力は高く、自然下では60㎝以上、飼育下でも30㎝を超えることは珍しくないため、水槽はなるべく大きいものを用意する。タモ網で採集し易い5㎝以下の幼魚でも60㎝水槽は必要で、最終的には120㎝水槽が最低ラインである。
排泄物の量がかなり多く水を汚し易いので、濾過器もなるべく強力なものが必要。上部濾過+底面濾過の併用式か、理想的にはオーバーフロータイプの大型濾過槽を用いたい。
レイアウトはシンプルなものにして、游泳空間を確保する。跳躍力も高いため必ず蓋をする。
27℃以上の高水温を保てば純淡水で飼育することも可能だが、20㎝を超えた辺りで突然死することが多々あるので、塩分は加えた方が良い。海水の15〜30%を目安として、海水で飼育することも当然可能である。関東以南の室温で海水飼育すれば無加温でも問題ないことが多い。
餌についてだが、自然下では泥を啄んでいる行動がしばしば見られ、泥の中の有機質を食べていると考えられていたが、実際は付着藻類やバイオフィルム(細菌類が集合して形成する滑りの強い膜。台所や浴室の「水垢」もバイオフィルムの一種である)を主に食べる。飼育下ではあまり選り好みせず、魚肉やシーフードミックス、人工飼料に簡単に餌付くが、常に餌を探して泳ぎ回るため、一日に複数回の給餌した方が良い。スピルリナを配合した餌やミックスベジタブルを湯掻いて潰したものなども好んで食べる。沈んだ餌が望ましいが、浮いた餌にも馴れる。
性質は汽水魚としては温和な部類で、充分な大きさの水槽と強力な濾過器があれば複数飼育は可能。寧ろ幼魚期には複数飼育の方が成長が早い。別種との混泳も同様だが、貪欲であるため繊細な魚は餌を食べ損ねたり、逆に性質がきついフエダイ類やクロダイ類には競り負けたりするので注意。

北海道を中心とした北日本や日本海側では、ボラよりもメナダChelon haematocheilusが多く見られることがある。ボラよりも細身で吻が尖り、最大で1mに達する。淡水域にはほぼ出現することはなく、ボラよりも痩せ易い。

南方系の種としてはコボラC. macrolepisやカマヒレボラMoolgarda malabaricaやオニボラEllochelon vaigiensisなどがいる。
コボラはやや寸詰まりの体型で、黒潮の影響のある地域ではボラの群に混ざって見られることがある。沖縄県ではボラ以上に数が多い普通種で、釣具屋で活き餌として売られていることもある。全長は最大でも30㎝以下であり、高水温さえ保てば丈夫で飼育にも向く。
カマヒレボラは第2背鰭と臀鰭の前縁端が尖り、尾鰭も湾入するので識別し易い。サイズや性質はコボラに似ており、入手出来れば比較的飼育し易い。
オニボラは胸鰭が黒く尾鰭が黄色いため、識別は最も容易な種である。通常は30㎝前後だが、時には50㎝近くにまで成長することがある。ボラ類としては体色が派手な部類であるため、観賞魚として流通することも少なくない。河川に侵入することもあるが偶来性が強く、塩分は海水の50%以上で飼育し、基本的には海水魚として扱った方が良い。
この他、ワニグチボラOedalechilus labiosaやセスジボラC. affinis、ヒルギメナダC. melinopterusにタイワンメナダM. seheliにナンヨウボラM. perusii様々な種がいるが、識別が難しい種も多いので割愛する。

海外産の種としてはインドヨツメボラRhinomugil corsulaが稀に流通する。
眼が上方に突き出ており、水面に落下した昆虫や小動物を群れで狙うなど、後述するヨツメウオと収斂進化した生態を持つ。インドを中心とした南アジア産であり、10㎝前後のものが入荷するが、最大では全長45㎝に達する。群れで飼育しないと上手く成長しないらしく、日本での長期飼育例は殆どない。


◇グラスフィッシュ/グラスパーチ

学名:Ambassidae
全長:4〜20㎝
分類:ボラ目タカサゴイシモチ科

Glassfish(硝子魚)の名は伊達でなく、鰭や鱗は勿論のこと、筋肉や骨までも透明な種が多いグループである。総じて、小型種になればなるほど透明感が強くなる。本項目の対象外なので詳述は避けるが、コイナマズ、ハゼなどにも「透明魚」は複数知られているが、これらにも同じ傾向がある。
オセアニアから東アフリカまで幅広く分布しており、世界からは約50種、日本からも6種が知られている。例によって主に流通するのは東南アジアや南アジアの種である。

最も一般的な種はラージグラスフィッシュParambassis siamensisであろう。透明な体を利用して蛍光色素を注射したものはカラーラージグラスの商品名でタイやインドネシア、シンガポールから頻繁に輸入される。この注射は真皮と筋肉との間に針を入れるらしく、性質的には「刺青」に近いものである。驚くべきことに、今だに1匹ずつ手作業で行われており、慣れた「職人」の手に掛かれば、1匹あたり数秒ほどで完了するという。蛍光色素は精々半年程度で分解されて色落ちしてしまい、成熟すると透明感もやや失われるが、体全体が薄いレモン色に染まり、背鰭や腹鰭の棘条が薄水色に発色するため、群泳する性質も相俟ってシックな美しさがある。流通するのは3㎝程度の幼魚だが、最大8㎝程度に成長する。
45㎝水槽から飼育可能で、塩分無しでも問題無く飼えるが、調子を崩した時は海水の10〜20%程度の塩分を加えると回復が早い。餌は何でもよく食べて人工飼料にも簡単に餌付く。
同種同士だと多少の小競り合いはするが、極端に気性が荒い訳ではなく、複数飼育や他種との混泳も充分に可能である。

インディアングラスフィッシュP. rangaも比較的見かける種である。最大7㎝程度とラージグラスフィッシュよりやや小さく、透明感も強い。成熟すると背鰭と臀鰭の外縁がエレクトリックブルーに発色し、更に雄は第一背鰭と腹鰭が黒く染まる。パキスタンやインド、スリランカやバングラデシュなどの南アジアが主要な分布域で、沖縄本島にも定着しており、インドタカサゴイシモチの和名もある。
飼育はラージグラスフィッシュと同じで良い。

グラスエンゼルGymnochanda filamentosaも古くから知られる種である。最大4㎝程度とこの科としても小型種の部類で、体の鱗を完全に欠くため、最も透明度が高い種でもある。種小名は「糸のような」の意味で、その名の通り、成熟した雄は第二背鰭と臀鰭の軟条が長く伸びて、硝子細工そのものかと思うほどに優美である。マレー半島やボルネオ島、スマトラ島などから知られる。
この種は完全な淡水性の種であり、中性から弱酸性の熟れた水を好み、水草水槽とも相性が良いが、輸入時に調子を崩しているものが多く、立ち上げにはやや苦労する。性質もやや繊細なので、同種のみで飼うか、ごく温和な種との混泳に留める。

更に美麗な種にはレッドフィングラスエンゼルG.flameaが挙げられる。グラスエンゼルの特徴に加えて、「炎のような」の意味の種小名に違わず、伸長した軟条や尾鰭が朱色になり、背面も黄色く染まるため、この科では随一の美しさを誇る。ボルネオ島中部カリマンタン州スルヤン県の更にごく一部の水系のみから知られており、流通量は非常に少ない。

少し変わったものとして、アップルヘッドグラスパーチP. pulcinellaがいる。全長は15㎝程度とやや大型で透明感も低いが、後頭部が瘤のように盛り上がる。種小名はイタリアの伝統的な仮面演劇コンメディア・デッラルテに登場する怪道化師プルチネッラに由来し、後頭部の隆起をプルチネッラが被る長い頭巾に見立てたものであり、英名でもHumphead(瘤付きの頭) Glassfishと呼ばれる(なお、アップルヘッドグラスパーチは日本の観賞魚業界が付けた流通名)。ミャンマーやタイを流れるサルウィン川とその支流などから知られており、稀に流通する。
サイズとやや性質が荒いことを除けば、ラージグラスフィッシュと同じ方法で飼育出来る。

日本からはタカサゴイシモチAmbassis urotaeniaやセスジタカサゴイシモチA. miopsなどが、黒潮の影響が強い地域の河口域で採集出来る。
スレに弱く導入直後のトリートメントには注意し、塩分は海水の25%以下にはしない方が良い。


◇オレンジクロマイド


学名:Etroplus maculatus
全長:8〜12㎝
分類:カワスズメ目カワスズメ科

純淡水魚を基本とするシクリッドにあって、汽水域に生息し、且つアジア産という珍しい特徴がある。
詳細はシクリッドの項目を参照。


◇ヨツメウオ

学名:Anableps spp.
全長:20〜30㎝
分類:カダヤシ目ヨツメウオ科

断面が逆三角形型の細長い体に、丸みを帯びた大きい胸鰭と尾鰭、対照的に小さな背鰭と腹鰭と臀鰭、そして何よりも特徴的なのは背面方向に大きく突き出た眼で、生きている時は、その眼の上半分を水面から出して泳ぐ。更によく見ると瞳孔は三味線の撥のような形状で、水上にある上半分が大きく中央が細く括れていて。水中にある下半分は広がるがものの上半分より小さい。この特異な瞳孔を用いて、水上と水中の光景を個別に視覚で捉えており、徹底的に表層生活に特化した魚であると言える。
少しだけ解剖学的なことを述べると、網膜自体も水上用と水中用とで別れており、更に光は直進するため、水上用の網膜は眼球の下側、つまり水没している側にあり、逆に水中用の網膜は眼球の上側にあると言う、如何に自然界の生物が人間の想像を遥かに超えた、奇跡的な進化を遂げたのかを如実に示す好例でもある。
同属には3種が知られており、中南米の開けた河口域に産する。観賞魚として流通するのはアマゾン川河口域を分布の中心とする南米北部産のA. anablepsとされる。
前述のカエルアンコウと同じく珍魚として有名で、水族館での展示やTVの自然系ドキュメンタリーで定番種だが、観賞魚としての歴史も意外と古く、昭和40年代には既に紹介されていた。
游泳性の強い魚種なので、水槽はなるだけ大きなものを用意したい。理想は90㎝以上の水槽だが、強めの水流を作れば60㎝ワイド水槽で1ペアならば飼えなくもない。水面近くを泳ぎ続けるので水深はあまり考慮しなくて良い。開けた水面が必要だが、広い水槽ならば枝や人工水草を浮かせてシェルターを設けるのも悪くない。
塩分は必要だが、海水の5〜15%程度と低めで良く、高過ぎると調子を崩す。
餌は活き餌を好み、コオロギやクモ、エビやメダカなどを好む。冷凍アカムシや冷凍ブラインシュリンプ、クリルや肉食魚用の人工飼料などにも馴れるが、そこに沈んだ餌はほぼ食べない。
自然下では群れを作るが、成熟した雌は気性がやや荒くなるため、複数飼育の際は餌が各個体に餌が行き届いているか注意する。他の魚に対しては基本的に無関心で寧ろ打たれ弱い。温和なハゼやカレイと飼えば、沈んだ食べ残しを食べてくれるので都合が良い。
本属は卵胎生であり、成熟した雄は、臀鰭の一部がゴノポジウムと呼ばれる交接器官に変化する。この特徴は卵胎生のカダヤシ目魚類では汎く見られるが、本属は特殊でゴノポジウムが右向きにしか曲がらないも個体と左向きにしか曲がらない個体とがいる。同様に雌の生殖孔にはカバーがあり、左右のどちらかに開く構造となっている。交接の際には雌雄が並んで泳いだ後、雄が雌の下に潜り込んでゴノポジウムを左右どちらかの生殖孔に挿入することで完了する。雄と雌の左右の「利き」自体はあまり関係がないようだが「相性」はあるようで、本種の繁殖はペアリングの成功次第であると言っても過言でない。成功すれば約2ヶ月後に4〜20匹ほどの幼魚が産まれる。幼魚は生まれた直後でも4㎝以上あり、冷凍アカムシや人工飼料を食べることも出来る。


◇ブラックモーリー(コクチモーリー改良品種)

学名:Poecilia sphenops
全長:4〜8㎝
分類:カダヤシ目ポエキリア科

卵胎生のカダヤシ目魚類としてはポピュラーな観賞魚の一つである。
基本的には純淡水で問題なく飼育可能だが、本種は耐塩性が非常に高く、特に改良品種であるブラックモーリーは完全な海水で飼育することも可能である。
水質の悪化にも強く、餌は人工飼料を筆頭に何でもよく食べて飼育は容易である。
性質も温和で、小型の中層游泳魚が少ない汽水魚に於いては、混泳水槽では貴重な存在になるかも知れない。また、水槽に発生すると除去が困難な藍藻類をよく食べるため、掃除屋として水槽に入れるのも良い。
汽水で飼育しても繁殖には支障が無いため、小型の活き餌が必要となる魚種にも重宝する。

本種に近縁なグッピーP. reticulataやプラティ(サザンプラティフィッシュ) Xiphophorus maculatusも、原種は中南米の感潮域に近い下流域に産する魚種であるため、汽水での飼育が可能である。
また、インドネシアやシンガポールでブリードされたグッピーは、ミネラル分の多くpHの高い硬水で育てられたものもおり、日本の軟水でいきなり飼育すると調子を崩すこともあるため、トリートメントを兼ねた汽水飼育が有効な場合がある。


◇ニードルガー

学名:Xenentodon cancila
全長:20〜30㎝
分類:ダツ目ダツ科

ガーというと、アクアリウム界隈ではアリゲーターガーAtractosteus spatulaを筆頭に外来生物法にて愛玩飼育不可になった古代魚や、それに姿が似たカラシンのブラントノーズガーCtenolucius hujetaやハイドロシナスガーBoulengerella lateristrigaが有名だが、本種はそれらとは全く異なるダツの1種である。
尤も、GarまたはGarfishという単語はダツ目の1種であるタイセイヨウダツ(ヨーロッパダツ)Belone beloneを指す語であるため、本種の方が本来の意味でのガーに近縁である。
細身の体型で上顎・下顎共に長い。背面は光沢のある黄褐色からクリーム色で、下顎先端から眼を通って尾柄まで、体側に太い黒縦条が走る。
東南アジアから南アジアの広域から知られており、感潮域直上の淡水域で、抽水植物が繁茂する瀞場のような場所で見られることが多い。
古代魚のガーが観賞魚として殆ど流通していなかった昭和40年代から流通があり、現在も少量ながら定期的な入荷がある。
普段は水槽の隅に定位しているものの、驚いた時等に突発的に激しく泳ぐことがあり、且つ体が硬く柔軟性に欠けるため、吻をガラス面にぶつけて痛めてしまうことが多い。単独飼育でも60㎝ワイド水槽程度の底面積は確保したいところである。水深はあまり必要としないので、横から観賞することを放棄すれば、ランチュウ飼育に用いられるトロ舟で飼うのも良いかもしれない。
游泳空間を確保するため、なるべくシンプルなレイアウトで飼うべきだが、衝突を和らげるために塩分に強いバリスネリアなどをガラス面に沿って植えたり、過度な刺激を防ぐために水面にアマゾンフロッグピットLimnobium laevigatumを浮かせるのも良い。
塩分の要求量は少なく海水の10%もあれば充分で、酸性にならなければ純淡水でも飼育可能である。
餌は活き餌を好み、メダカやエビ、コオロギなどには良く反応する。クリルにも餌付き易いが、人工飼料には反応が悪い。沈んだ餌には余程飼育に慣れた個体でないと、まず食べることはない。
成熟した雄は縄張りを持つため、同種同士の混泳は雄1匹に対し、雌1〜3匹程度にする。食べ残し処理用に底生魚と混泳させたいところだが、本種は意外と口が大きく開くので、掃除屋が呑まれないように注意したい。
難易度はやや高いが繁殖を狙うことも出来る。
成熟した雄には頭頂部に赤いライン状の模様が現れることで雌雄判別は可能。また、雌の方はやや体が太くなることが多い。卵は直径4㎜ほどで透明感が高く、纏絡糸という絡みつくための糸状組織があるため、水草を入れるとそこに産卵する(有茎タイプのものを沈めておくと便利)。産卵数は20〜100で、26℃で1週間以内に孵化する。初期飼料にはブラインシュリンプを用いる。ある程度育つと餌を多量に欲しがるため、後述するバンブルビーゴビーやナイトゴビーの卵や孵化仔を与え、更に育ったものはグッピーやプラティの稚魚などを与えると成長が早い。

南米には非常に姿が似たアメリカンニードルガーPotamorrhaphis guianensisが知られる。
尾が尖り、体側の黒縦条がやや破線状になることで区別することが出来る。弱酸性のブラックウォーターの水域に棲む純淡水産の種である。入荷量はごく少なく価格は高価。

ニューギニア島やオーストラリア北部にはロングトムStrongylura krefftiという汽水産のダツがいる。
日本のダツとは同属別種であり、全長は80㎝に達するという。ごくごく稀に観賞魚として流通するが、飼育はかなり難しい。


◇デルモゲニー

学名:Dermogenys pusillus
全長:5〜7㎝
分類:ダツ目コモチサヨリ科

日本にも産するサヨリHyporhamphus sajoriに比較的近い魚種であるが、サイズは遥かに小さく体型もやや寸詰まりである。下顎先端もあまり鋭利ではない。尾鰭は湾入しない截形で、雄の臀鰭のシルエットは平行四辺形に近い。
マレー半島広域からボルネオ島やスマトラ島にかけて分布する。海に近い地域の流れが緩やかな小川や湖沼地帯に生息し、灌漑用の用水路や公園の池などかなり人の手の入った環境でも見られる。
近年は下火らしいが、タイ南部やカンボジアなどでは「闘魚」として親しまれていた歴史があり、現地の朝市や夜店の屋台などでも以前はよく売られていた。昭和30年代には既に観賞魚として日本に紹介されており、現在もコンスタントな入荷がある。よく見かけるのはゴールデンデルモゲニーと呼ばれる金粉を塗したような光沢のあるものだが、これは発光バクテリアが寄生したものとされており、飼育すると数ヶ月程度で消失し、本来の青白い体色に戻る。
飼育についてはニードルガーに準ずるが、遥かに小型なのでペアならば30㎝水槽でも飼える。
闘魚にも利用されるくらいなので、成熟した雄同士はかなり激しく争うが、水草を多めに入れて隠れ家を作ったり、逆にシンプルなレイアウトにして過密気味(60㎝水槽ならば20〜30匹程度)に収容して縄張りを作らせないという方法もある。
本種が属するコモチサヨリ科は卵胎生であり、水槽内での繁殖が狙える。雌雄判別は容易で、雄は臀鰭の前縁の鰭条が肥厚して交接器となり、その周辺が濃い赤紫色に、それより後部及び吻端が黄色く染まる。雌の臀鰭は三角形に近いシルエットで赤みは薄く、吻端は黄色くならない。体型も通常は雌の方が一回り大きく太い。交接から1ヶ月後には全長1㎝弱の稚魚を10〜30匹ほど産む。生後3日後から稚魚用の粉末飼料を与えるが、可能ならばインフゾリアを利用すると更に歩留まりが良い。グッピー用の産卵ケースに隔離して管理するのが便利だが、特大の水槽で水草をある大量に入れた状態ならば自然繁殖を狙うことも出来る。

他に流通する近縁種としてはより太い体型で各鰭や両顎が朱色に染まるセレベスハーフビークNomorhamphus liemi、各鰭の縁辺と体側に赤系の蛍光色が走るレッドラインハーフビークHemirhamphodon phaiosoma、下顎が体長の半分程度の長さがあるコモチサヨリZenarchopterus dunckeriなどがいる。
いずれの種も基本的には同じ方法で飼育可能で繁殖も狙えるが、一回り以上大きい(全長8〜15㎝)ため、単独でも45㎝水槽以上は必要である。また、それぞれの種で好む水質が異なり、セレベスハーフビークは弱アルカリ性で硝酸濃度が極めて低い純淡水かごく薄い汽水、レッドラインハーフビークは弱酸性のブラックウォーター、コモチサヨリは海水の15%以上の汽水を用いる必要がある。


◇メダカ(キタノメダカ/ミナミメダカ)

学名:Oryzias sakaizumii/Oryzias latipes
全長:2〜4㎝
分類:ダツ目メダカ科

意外と知られていないが、実はメダカは二次淡水魚であり、ダツやサヨリ、トビウオとは同目の関係にある。
故に耐塩性が高く、完全な海水でも何週間も生存出来る。自然下でも増水によって海まで流されたメダカが海岸の波打ち際を泳いでいたり、常に海水が流入する海近くの用水路や溝で一生を暮らしていることも珍しいものではない。
詳細は当該項目を参照。

普通に飼育する場合は純淡水で何ら問題なく飼えるが、敢えて汽水に順化させて、小型のグラスフィッシュやハゼと飼うのも面白い。水面近くを泳いでいることが多いのも、水槽内のスペースを有効活用出来る場合がある。また、魚食性が強い汽水魚の活き餌として使うことも出来る。

同属別種のジャワメダカO. javanicusやセレベスメダカO. celebensisなどは、感潮域に多く硬度の高い水を好むので、純淡水でも飼育可能だが、導入直後は海水の5〜10%の汽水で飼育すると調子が良い。


◇プセウドムギル・キアノドルサリス

学名:Pseudomugil cyanodorsalis
全長:約4cm
分類:トウゴロウイワシ目プセウドムギル科

目名にはイワシと付くが、背鰭は2基存在し、前方の1基にはやや未発達ながらも棘条を備え、腹鰭起点は背鰭起点より前方にあり、鱗は櫛鱗であるなど、より派生的な魚類であることが窺える。分類学上はボラやダツに近縁とされるグループである。
日本産のトウゴロウイワシ目の魚類はトウゴロウイワシHypoatherina valencienneiやムギイワシAtherion elymus、ナミノハナIso flosmarisなどのように沿岸性の海水魚であるが、目全体ではむしろ淡水や汽水に産する種が多く、特にメラノタエニア科やプセウドムギル科、テルマテリナ科やベドティア科などに属するものはレインボーフィッシュと総称され、観賞魚として流通するものがいる。その名に違わぬカラフルな色彩をしているものが多く、ネオンドワーフレインボーMelanotaenia praecox やニューギニアレインボーIriatherina werneriなどは熱帯魚店でも比較的ポピュラーである。
レインボーフィッシュはその殆どが純淡水魚であるが、本種はオーストラリア北部のマングローブの水路や潟湖などの汽水域に産する。
体型はメダカに似ており、透明感のあるレモン色を基調として、背面はメタリックブルーに染まる(種小名は「青い背中の」の意味)。背鰭と臀鰭の前方の鰭条が伸び、尾鰭を除いた各鰭の前縁が黒くなるなど、華美ではないがシックな美しさがある。
愛好家の人気は高いが、ドイツやオランダなどのブリード個体が僅かに出回る程度で流通量は非常に少なく、価格もペアで1万円近くする場合もあるなど、かなり高価である。
飼育については、塩分を海水の10〜20%程度に設定する以外は、概ねグラスフィッシュの飼育に準じる。

他のレインボーフィッシュでは、セレベスレインボーTelmatherina ladigesiやマダガスカルレインボーBedotia geayiなどは輸入直後には塩分を含む水で飼育すると調子を取り戻し易く、海水の10%以下の薄い汽水で飼い続けても良い。


◇淡水シタビラメ

学名:Cynoglossidae/Soleidae
全長:10〜30㎝
分類:アジ目ウシノシタ科・ササウシノシタ科

日本では食材として馴染みがあるシタビラメの類にも、汽水域や淡水域に進出したものがおり、フグと並んで淡水で飼えることに驚きを感じることが多い魚と言える。
ウシノシタ科は背鰭・尾鰭・臀鰭が一体化しており、尾が尖り頭が丸い。両眼は体の左側にある。口は一部の種を除いて、体の先端ではなく眼の下付近から腹側に向かって鉤状に開くが、額や吻のように見える部分は背鰭を支える骨(背鰭担鰭骨)が張り出したものであり、本来の吻がごく小さいため、このように見えるのである。胸鰭も無く、正に動物の舌(なお、科の基準属であるCynoglossusは「犬の舌」の意味で、和名もイヌノシタ属である)といった感じの外見である。
観賞魚として主に流通するのは、クリーム色で無地のC. microlepis、茶褐色の地色に焦茶色の水玉模様に近い細かい斑点が散在するC. feldmanni、茶褐色の地色に黒色の横帯が入るC. puncticepsである。いずれの種もタイやカンボジア、インドネシアなどの河口域の砂泥底から知られる。
ササウシノシタ科はウシノシタ科と比べて体の幅が広く、背鰭・尾鰭・臀鰭が一応区別出来るものが多い。両眼は体の右側にある。口は左右非対称でこそあるが、他の魚と同様に体の先端にある。胸鰭は無い種もいるが、ごく小さいものを持つものがいる。
観賞魚としては、東南アジアに広く分布し、体がやや細長く茶褐色の地色に焦茶色の不規則な斑紋が入るBrachirus panoides、メコン川から知られ、体がやや太短く雫のようなシルエットをしたB. harmandi、インドやバングラデシュなど南アジア産で、B. harmandiに似るが、地色が灰色で両眼が離れる(B. harmandiは体色はB. panoidesと同様で両眼が接している)などが比較的古くから知られている。2016年頃から流通するようになったものにはオセアニア産のニューギニア淡水カレイLeptachirus sp.がいる。尾鰭は丸みを帯びて背鰭や臀鰭と明確に区別出来て、オリーブ色がかかった茶褐色の地色に白っぽい不規則な斑紋が入る。
入荷するのは全長5〜10㎝程度の個体であり、45㎝水槽から飼育可能で、60㎝水槽であれば複数飼育も充分に可能である。
砂に潜る性質が強いため底砂を敷いて飼う。厚く敷くと老廃物が溜まって調子を崩すことが多いので、1〜2㎝程度に薄く敷くのがベスト。粒が角張っているものは好まないため、使い込んで角が取れた川砂か田砂を使うのが望ましい。従って濾過器は底面式や投げ込み式は不向きで、上部式や外部式、スポンジフィルターなどを用いると良い。飼育環境に馴れた個体ならばベアタンクで飼うことも出来るが、同時に水槽の壁面を伝って外に飛び出すこともあるため、蓋は必須で薄い隙間も塞いでおく。
ウシノシタ科の3種は塩分が必要で、海水の15〜25%ほどが適切。ササウシノシタ科の4種は純淡水で飼育可能だが、あまり古い水は好まない。
餌は冷凍アカムシや冷凍ブラインシュリンプ、冷凍イサザアミなどが適している。Brachirus属は餌付きが悪いことがあり、生きたイトミミズやゴカイを与えると良い。全長15㎝以上の個体は小魚を食べることもある。人工飼料には餌付き難いが、ニューギニア淡水カレイは肉食魚用の人工飼料を食べることがある。
ウシノシタ・ササウシノシタ同士の混泳は水質さえ合えば問題は少ない。他種との混泳は表層を泳ぐ魚とは相性が良い。中層や底層の魚の場合、貪欲な魚だと餌を奪われてがちになるので、食べられないサイズで温和な魚種に留める。
ニューギニア淡水カレイは卵胎生であり、水槽内での繁殖も望める。


◇ホッグチョーカー(ホグチョッカー・北米淡水カレイ)

学名:Trinectes maculatus
全長:18㎝
分類:アジ目アキルス科

Hogchokerは「豚の喉詰まり」の意味で、浜辺に打ち上がったこの種を野豚が食べようとしたところ、硬い鱗によって喉に閊えたという逸話によるものとされる。
観賞魚業界では産地と生態的特徴を端的に表した北米淡水カレイの名称で扱われることが多いが、この種は完全な淡水域から汽水域、水深70m以上の海底からも記録されるなど、非常に幅広い環境に順応可能で、また、系統的にはササウシノシタ科に近く、カレイ科とはやや遠縁である。体は丸みを帯びたシルエットで尾鰭は比較的大きく、背鰭・臀鰭とは明確に区別出来る。眼は体の右側にあり、胸鰭を欠く。
ボストン近郊からメキシコ湾辺りの大西洋沿岸に分布しており、ミシシッピ川流域では河口から300㎞以上遡った地点からも観察されている。
かつては毎年、春から初夏にかけて輸入されていたが、現地の自然保護政策の強化や日本国内での外来種問題などによって、北米の淡水魚の商業流通が激減しており、ここ最近は店頭で見かける機会が著しく少なくなった。
飼育はササウシノシタ科の淡水シタビラメに準じるが、本種はかなり丈夫で飼育し易い。
やや高水温には弱く、28℃以上にはならないように注意する。

南米には系統が近いCatathyridium jenynsii(旧学名はAchirus errans)やHypoclinemus mentalisなどが、南米淡水カレイや南米マルガレイの名前で流通することがある。
全長は30㎝を超えることもあり、ペルー便やコロンビア便で入荷するものは純淡水で飼育可能だが、ホッグチョーカーと比べるとやや繊細で餌付きも悪い。


◇ヌマガレイ

学名:Platichthys stellatus
全長:30〜50㎝、最大90㎝
分類:アジ目カレイ科

前述のホッグチョーカーと異なり、この種は正真正銘のカレイ科の魚であるが、「左ヒラメの右カレイ」の原則に反して、この種は体の左側に両眼がある「左カレイ」である。尤も、種のレベルでその特徴が完全に固定している訳でもなく、理由は不明だが日本近海に産するものに強く見られる(99%以上が「左カレイ」)性質で、一方、北太平洋の対岸に当たるサンフランシスコ近郊では、右側に両眼があるものが50%以上出現する。体の表面には鱗とは別に小さな骨板が散在し、各鰭の基底では特に発達する。背鰭・臀鰭・尾鰭には黒色の横帯が入ることから、タカノハ(鷹羽)の別名もある。
本項目では珍しい北方系の魚種で、太平洋側では霞ヶ浦以北、日本海側では若狭湾以北から知られるが、特に北海道や青森県、岩手県や秋田県には多い。河口近くの砂地の場所に多いが、成人の拳大の石が転がっているような純淡水の中流域でも見られることがある。河川や湖沼で見られるのは全長5〜20㎝程度の幼魚が多く、成長するに従って海へと降っていく。
自家採集で入手する場合、全長10㎝以下のものは砂の中に潜る性質が強いので底砂ごと掬って捕えることが出来る。全長10㎝以上のものはかなり俊敏に泳ぐため、タモ網で捕らえるのは難しく、ゴカイを餌にして投げ釣りで狙うと良い。数は少ないが、日本産淡水魚を取り合っている店舗に入荷することもある。
飼育についてはウシノシタ科の淡水シタビラメに準じるが、水槽サイズは遥かに大型のものが必要で、最終的には120㎝水槽は用意したい。
幼魚は純淡水でも飼育可能だが、20㎝を超えた状態で淡水飼育を続けると突然に水カビ病が出て死んでしまうことが多いので、海水の25〜50%程度の塩分で飼育するのが無難である。また、成魚は高水温に弱く、夏場は最低でもクーリングファン、可能ならば水槽用クーラーを準備して、水温は25℃以下にすると良い。
餌付きはかなり良く、シーフードやクリルは勿論、肉食魚用の人工飼料にも餌付き易く、馴れると水面まで上がって食べるようになる。

近い種類で、やや南方系のイシガレイP. bicoloratusも同様に飼育可能だが、ヌマガレイほどは低塩分に適応しておらず、特に成魚は海水魚として飼育した方が良い。


◇淡水ヒラメ

学名:Citharichthys uhleri
全長:15㎝
分類:アジ目ヒラメ科

シタビラメ、カレイと続いてヒラメにも汽水産のものがいる。
観賞魚業界で扱われるのは、上記の学名が宛てられる南米産の種で、「アマゾン淡水ヒラメ」「南米淡水ヒラメ」などの名で販売されている。河口域の砂地に棲み、完全な淡水域には侵入しないとされる。
あまり巨大になる種ではなく、成長も遅いので、最終的に60㎝水槽が用意できれば問題ない。
塩分は必要だが、海水の10~20%もあれば十分である。
餌は活き餌を好み、メダカは勿論、金魚も食べるようになる。クリルや人工飼料にも馴れる。
意外と活発で人に馴れ易く、入手さえ出来れば飼い易い魚と言える。

他のヒラメ科としては、セイテンビラメAsterorhombus intermediusやテンジクガレイ(和名はカレイだが歴としたヒラメ科である。こんなのばっかだな)Pseudorhombus arsiusなどが汽水域から記録されることがあるが、偶来魚であり基本的には海水魚として飼育すべき魚種である。
意外なところでは、本土近海でも見られる種ヒラメParalichthys olivaceusは、10㎝以下の幼魚はしばしば河口域に出現し、成魚も徐々に馴らせば海水の30%程度の塩分で飼育可能である。


◇テッポウウオ

学名:Toxotes spp.
全長:15〜40㎝
分類:アジ目テッポウウオ科

その名の通り、水中から水を飛ばして水上の昆虫を狙い撃つ唯一無二の個性を持つ。
詳細は当該項目を参照。


◇スレッドフィン

学名:Polynemus sp.・Polydactylus sp.
全長:15〜50㎝
分類:アジ目ツバメコノシロ科

ニシンのような銀白色の側扁形の体型を持ち、ボラに似た2基の背鰭と燕尾状の深く切れ込んだ二叉型の尾鰭、そして何より特徴的なのは、時には体長と同等かそれより長く伸びる胸鰭前方にある糸状の遊離軟条(鰭膜によって他の鰭条と繋がっていない鰭条。なお、英名Threadfinは「糸のような鰭」、属名Polynemusは「数多くの糸」、Polydactylusは「数多くの指」の意味で、いずれも遊離軟条に由来する)種によってはホウボウのように腹面方向にも伸びるものがいるなど、実に奇妙な外見を持つ魚種である。
広義の棘鰭類であることは間違いないものの、他に類する魚がいないため、長らく系統関係が不明であり、ボラ目に近縁と考えられたり、独立の目や亜目を設けられていたことさえあったが、近年の分子生物学的解析によればアジ目に含まれるとのことである。
日本産のツバメコノシロPolyd. plebeiusやナンヨウアゴナシPolyd. sexfilisは海水魚(ツバメコノシロは幼魚が偶来魚として河口域で採集されることがある)だが、熱帯や亜熱帯地域には汽水産や淡水産の種が複数おり、重要な水産資源として現地では消費されている。肉は白身で小骨も少なくスズキやタイと遜色ない美味である。どの種も概ね砂泥底の泥水域に棲み、遊離軟条は視界の悪さを補う感覚器官だと考えられている。
観賞魚としては、嘗てタイやインドネシアからはPolyn. multifilis、インドからPolyn. paradiseusが輸入されていた。
Polyn. multifilisは遊離軟条が15本あり、15フィンタイプと呼ばれていた他にミズヒキツバメコノシロの和名もある(種小名は「糸の数が多い」の意味)。遊離軟条は非常に長く、特に幼魚期には全長の2倍以上の長さがあり、成魚であっても尾柄近くまでの長さがある。一時期はこの類で最もよく熱帯魚店で見かけていたが、2019年以降流通が止まっている。
Polyn. paradiseusは遊離軟条が7本あり、7フィンタイプと呼ばれていた。種小名に由来するパラダイススレッドフィンの名も有名である(なお、この種の学名をつけたのもリンネであり、ゴクラクチョウに似たもの、という意味でparadiseus(天上の・極楽の)と付けたものとされる。日本の観賞魚業界では語順が変わってスレッドフィンパラダイスフィッシュと呼ばれることもあるが、Paradise FishはタイワンキンギョMacropodus opercularisなど全く別のキノボリウオ目ゴクラクギョ科の魚を指すのであまり適切な名称とは言えない)。名前は有名で昭和末期には日本に輸入されていたが、流通量自体はかなり少なく、特に着状態が悪い種であった。また、本種はベンガル湾やペルシャ湾などのインド洋沿岸産であるが、西部太平洋地域であるベトナム便やカンボジア便、タイ便やインドネシア便でPolyn. melanochir(種小名は「黒い手」という意味であり、胸鰭や遊離軟条が黒ずむことに因む)やPolyn. aquilonaris(種小名は「北の」の意味)などの近似種が本種の名前で輸入されていたことがあるようで、後述するが、その辺りも飼育上での妨げになったようである。いずれの種も2020年頃を境界にして流通が見られない。
2026年現在でも入荷が知られるのはシャークマウススレッドフィンPolyd. macrophtalmusである。遊離軟条が7本でPolynemusのものと比べると短く、幼魚でも全長を僅かに越える程度であり、やや下向きに伸びるのも特徴である。吻が尖って目が大きい(種小名は「大きな眼の」の意味)という点でも区別出来る。
以前は、食用に漁獲された個体の一部が観賞用に輸出されていたようで、入荷時の状態が極めて悪く、事実上飼育不可能とまで言われていた。現在に於いても長距離輸送に弱く着状態に大きく左右されるのは間違いないものの、観賞用に丁寧に採集や梱包されるようになり、飼育自体のノウハウも徐々に蓄積されたことも相俟って、容易とは言えないものの個人が数年以上飼育することも珍しくなくなってきた。
游泳力が強く代謝も高く、特徴的な遊離鰭条が傷まないように飼育個体に大してなるべく大きな水槽を用意する必要がある。よく輸入される全長5〜6㎝の個体でも最低60㎝、出来れば60㎝ワイド水槽から始めて、最終的には120㎝水槽以上の容量が欲しいところである。
レイアウトはなるべくシンプルなものにして、游泳空間を確保する。跳躍力も高く、水槽から飛び出して死んでしまうケースもあるので蓋も必須。
最大の課題は水質で、基本的には感潮域直上か純淡水域に棲むため、寧ろ濃すぎる塩分には弱ってしまうこともあるほどである。基本的には中性から弱アルカリ性の純淡水で飼育可能で、汽水を用いる場合でも海水の5〜15%程度にする。例外的にPolyn. paradiseusは河口近くの海水に近い汽水を好み、飼育する際は海水の20〜30%、もしくはそれ以上の塩分が適するとされる。
餌は沈むタイプの餌を与える。餌付きが悪い場合は釣具屋でゴカイを買って与えると良い。人工飼料にも慣れ、長く飼うと水面にまで餌を食べに上がってくる。
混泳は同種別種問わず基本的に不向きである。特に幼魚は打たれ弱く遊離軟条に何らかのものが触れるとパニックを起こして泳ぎ回って水槽のガラス面に衝突したり、遊離軟条が千切れてしまうことがある(但し、遊離軟条の再生力は高く、千切れても1週間もすれば元の長さと大差ない長さに戻ることが多い)。一方で、シャークマウススレッドフィンはPolynemus属のものと比べると打たれ強く遊離軟条も千切れにくいため、ある程度育つと温和な魚種とならば混泳出来る場合がある。


◇淡水アジ

学名:Carangidae
全長:30〜180㎝
分類:アジ目アジ科

食用魚や釣り魚としてよく知られているアジ科にも、河川に侵入するものがいる。
よく知られているのは、釣り界隈で「メッキ」や「GT」と呼ばれるロウニンアジCaranx ignobilisとその近縁種であるギンガメアジC. sexfasciatusやカスミアジC. melampygusで、特にギンガメアジは全長10㎝程度の個体は純淡水域まで遡上し、全長30㎝程度の個体までは河口域で小さな群れを作って泳いでいることが多い。
他にはイケカツオScomberoides lysanやコバンアジTrachinotus bailloniiなども河川に侵入する。イケカツオは幼魚期に他の魚の鱗や鰭を囓る習性があり、コバンアジは波打ち際のような極端な浅瀬を泳ぎ回る。
殆どの種が成魚は全長50㎝以上、ロウニンアジに至っては1.8mという記録もあるらしく、当然ながら游泳力は非常に高い。
水槽内ではそこまでのサイズに成長することはないが、まともに飼おうとするならば、レッドスナッパー以上の設備が必要であり、個人での終生飼育は極めて困難である。


◇アカメ

学名:Lates japonicus
全長:50〜180㎝
分類:アジ目アカメ科

淡水イシモチの項目で少しだけ触れた日本四大怪魚の一角である。因みに残る2種は北海道のイトウParahucho perryiと琵琶湖水系のビワコオオナマズSilurus biwaensisである。
外見はスズキに似るが体高は高く、吻から額までの輪郭がやや凹んだ曲線を描く。尾鰭の形状も異なり、スズキは緩い二叉型だが本種は扇型に近い。体色は成魚は無地で背面がやや黒い銀灰色で、幼魚は褐色の横帯や過眼線が入る。最大の特徴は和名の由来となっているルビー色の眼であるが、眼球自体に色素があるのではなく、血液が透けて見えることに拠る。また、眼球にはキンメダイBeryx splendensなどに見られるタペータムと呼ばれる薄い反射板があり、より特定のスペクトルが反射される効果がある。
日本固有種とされており、静岡県から宮崎県までの沿岸から知られ、特に高知県の浦戸湾や四万十川は産地として有名である。なお、宮崎県にも安定した個体数が現存する。その他、静岡県の浜名湖や鹿児島県の志布志湾などにも小規模の個体群が存在し、瀬戸内海からも散発的な記録があるが、南西諸島からは知られていない。
6〜9月頃に、全長1㎝ほどの幼魚が河口域のアマモ場に現れ、全長20㎝程度になるまでは感潮域最上流までの河川で過ごす。幼魚の特徴的な斑紋はアマモの影を模した擬態の一種と考えられている。夜行性で単独生活を送り、頭を水底方向に傾けて、エビやハゼなどを底生動物を食べて育つ。20㎝以上に育つと海に降り、数匹の群れで行動するようになり、魚食性が強くなる。
日本産の汽水魚では特に人気のある種であり、怪魚や珍魚、大型魚に強い熱帯魚店では扱われることも多い。宮崎県では県の条例によって指定希少野生動植物とされていて採集禁止であるため、流通するのは高知県産のものが圧倒的に多い。しかし、水槽内であっても全長50㎝を軽く超え、基本的には塩分が必須であることや、環境省レッドデータブックでは絶滅危惧IB類というニホンウナギと同レベルの絶滅危惧種であることなどを踏まえると、個人での飼育は余り勧められらない。
上記の項目を理解した上で、180㎝水槽以上の容量がある大水槽と諸設備を用意出来れば、レッドスナッパーと同じ方法で飼育することは出来る。アルカリ性の硬水で飼育すれば、塩分無しでも40㎝以上にまでは育つが、その状態から突然死することが非常に多いので、塩分は海水の25%以上で飼育する。

本種の近縁種にはシーパーチ(バラマンディ)Lates calcariferがいる。
嘗ては本種と同一種とされていたほど、形態的に酷似するが、体高がやや低く、第1背鰭や臀鰭の棘条の長さが短い点で本種と区別可能である。西部太平洋からインド洋の広域にかけて分布しており、食用や釣り魚としての需要が高く、種苗生産が盛んに行われている。その点では個人飼育向けではあるが、この種も自然下では2m近くに育ち、飼育下でも50㎝以上に容易に成長し、低塩分への耐性も低い。
同属別種で東アフリカの純淡水魚であるナイルパーチも、以前は観賞用に比較敵頻繁に流通していたが、現在は外来生物法によって特定外来生物に指定されているため、観賞目的での新規個人飼育は不可能である。


◇ベタ・マハチャイエンシス

学名:Betta mahachaiensis
全長:5〜6㎝
分類:キノボリウオ目オスプロネムス科

ベタグラミースネークヘッドが含まれるキノボリウオ目はグループ全般的に、タンニンやフミン酸、フルボ酸などの腐植成分が多量に溶け込んだ弱酸性のブラックウォーターを好む。しかし、本種はその中にあって汽水環境に適応した非常に稀有な存在である。
Betta属にあって背鰭基底が比較的長く、終点が尾柄に達するグループ(B. splendensグループ)の中では、体色の赤みが少なく、青緑の模様が入ることや、成熟した雄は尾鰭の中央が僅かに尖るピンテールになることが特徴である。
その存在自体は00年代初頭にはマニアの間では知られており、2003年頃には日本に輸入されていたが、記載されて学名がついたのは2012年のことである。
タイランド湾に面するタイのマハチャイ地区のみから知られており、感潮域の湿地に生育するニッパヤシNypa fruticansの根本周辺の水溜りに生息している。この仲間は産卵の際に水と空気と自らの粘液を混ぜた泡巣を作るが、水位の変動が激しい環境に棲む本種の場合、泡巣はダムのように貯水の機能もある。
流通は不定期かつ少量で、入手は中々難しい。
飼育自体は26〜30℃ほどの高水温を保つこと以外は非常に簡単で、塩分も必須ではない。餌も人工飼料に簡単に餌付く。
個人レベルでの繁殖も充分可能だが、普通種のベタ・スプレンデンスB. splendensとは容易に交雑してしまうため、系統維持管理には注意すること。


◇ファイヤースパイニーイール(レッドスパイニーイール)

学名:Mastacembelus erythrotaenia
全長:50〜100㎝
分類:タウナギ目トゲウナギ科

時にメートル級に達するトゲウナギ科の大型種。
詳細はトゲウナギの項目を参照。


◇パイプフィッシュ(淡水ヨウジウオ)

学名:Syngnathidae
全長:10〜40㎝
分類:ヨウジウオ目ヨウジウオ科

Pipe(煙管)や楊枝とは言い得て妙で、細長い体に骨板と呼ばれる体表面に出来た骨組織が密に組み合わさった「外骨格」を持ち、管状に伸びた口(なお、ダツの口とは違い、伸びた先端に顎関節が位置するため、口自体が長くなったというよりは、頭骨の一部が極端に伸びたというのが正しい)を持つ、特徴的な外見は一度見たら忘れないグループである。また、「首」が90°に曲って尾鰭を失ったタツノオトシゴ亜科は更に有名な存在と言える。
基本的には海水魚で、特に熱帯・亜熱帯地域のサンゴ礁や藻場といった浅い海に産するものが多いが、マングローブや河口の転石帯などの河川で見られる種も意外とおり、中には純淡水に完全に適応したものもいる。
比較的良く見られる種はテングヨウジMicrophis brachyurusである。西部太平洋・インド洋東部の広域から知られており、レッドラインパイプフィッシュの流通名でインドネシアやシンガポールなどから時折纏まって輸入される。日本からも黒潮の影響のある地域では採集可能であり、ヨシなどの抽水植物が繁茂する感潮域の川岸で小さな群れを作っていることが多く、游泳性が強めである。
イッセンヨウジM. leiaspisもテングヨウジと同所的に見られることが多いが、やや游泳力が弱い。ブラックラインパイプフィッシュの名称で流通することもあるが、単独で入荷することは少なく、この名称で別種が販売されていることも少なくない。
この類としては体が柔軟で、底砂を這うようしてゆっくりと泳ぐものもいる。代表的なのはカワヨウジHippichthys spiciferやアミメカワヨウジH. heptagonusやガンテンイシヨウジH. pencillusなどである。カワヨウジやアミメカワヨウジは体表面の骨板が良く目立つ種で、枯葉や流木が溜まっている流れが緩い場所に多い。アミメカワヨウジの方が淡水に近い場所にいる傾向がある。ガンテンイシヨウジはやや体高があり、眼点状の小斑点を多数呈する。静岡県から鹿児島県までの転石が多い河口で見られ、南西諸島以南には産しないのも特徴である。インドネシアやタイからはDoryichthys martensiiがショートノーズパイプフィッシュの名前で入荷することがあるが数は少ない。
一時期輸入されていたものには、レインボーパイプフィッシュM. deocataがいる。純淡水性でインド産の種であり、雄成魚は茶褐色から黄褐色でやや地味だが、雌成魚は黄緑の体色に正中近くに白い斑紋が入り、何より凄いのは腹面に巨大な皮褶(ひしゅう)と呼ばれる襞が発達して、そこが蛍光色の臙脂色やターコイズブルー、黒色の横帯を呈するという、サイケデリックな模様を持つ。非常に魅力的な種であるが、近年は生息環境の破壊や乱獲が祟って流通が止まってしまった。もしも流通が再開した暁には腕に覚えのあるアクアリストは国産ブリード化に挑戦して貰いたいものである。
アフリカンピグミーパイプフィッシュEnneacampus ansorgiiも純淡水で飼育可能な種である。セネガルからアンゴラまでの西アフリカが産地で、ガンビア川産の物が流通することが多い。一時期はヨーロッパや国産のブリード物が流通していたが、現在は採集物が偶に流通する程度である。これまで紹介してきた種は全長30㎝近くになるが、本種は全長10㎝程度である。体色は茶褐色のものが多いが、煉瓦色に赤く染まるものもいる。
タツノオトシゴ亜科ではクロウミウマHippocampus kudaやサンゴタツH. mohnikeiなどが汽水域に侵入するものとして知られている。この2種は偶来魚だが、南アフリカ産のH. capensisは生涯の殆どを汽水域で過ごし、時には淡水域でも見られると言う。
水槽は飼育する種や個体数に応じて40㎝〜60㎝水槽を適宜用意すれば良い。
シェルターは設けた方が良く、特にタツノオトシゴ亜科は尾を何かに引っ掛けて休息するので、枝状の流木やサンゴの骨格、イミテーションの水草などを入れる。
塩分の要求量は種によって異なるが、必要な場合でも海水の10〜30%程度で良い。
この仲間を飼育するに当たった最大の関門は給餌である。基本的には活き餌、ブラインシュリンプやイサザアミを与える必要がある。淡水産の種にはイトミミズやアカムシも有効。馴れてくると冷凍餌でも食べるようになるが、動いていないものには興味を示さないことも多いため、適量の水流を作って餌を流すと良い。イッセンヨウジやカワヨウジは抱卵しているエビから卵を盗み取って食べる行動も知られているため、抱卵したスジエビやヌマエビを飼育水槽に投入するのも一つの方法である。いずれにしても、餌自体が小さいものになりがちなので、濾過器のストレーナにはスポンジフィルターを組み合わせたり、底面濾過器で飼育するのも良い。
他の魚に対しては無害だが、餌事情を考えると貪欲なタイプの魚種との混泳には不向きである。ヨウジウオ科だけで飼育するのが良いが、前述の淡水ハオコゼや後述するバンブルビーゴビーやゴマハゼ、淡水産の種ではバディス科などと飼うことも出来る。食べ残しが出易いので「掃除屋」の貝類やエビ、ヤドカリなどとは相性が良い。
ヨウジウオ科は雌が雄の腹面に卵を産み付けて雄が卵保護を行う。ヨウジウオ亜科では腹面に保護板という簡単な板状の構造になっていることが多く、タツノオトシゴ亜科では育児囊という袋状の器官になっている。上手く飼育するとペアリングから産卵までが観察出来て、日数が経つと親のミニチュアのような稚魚が一斉に生まれる。初期飼料がやや大変だが孵化直接のブラインシュリンプやミジンコを用いると育てることが可能で、この時から冷凍コペポーダ(ケンミジンコ・カイアシ)や冷凍アカムシを刻んだものに馴らしておくと、後々の飼育が格段に楽となる。


◇バンブルビーゴビー

学名:Brachygobius doriae
全長:3㎝
分類:ハゼ目オクスデルクス科

汽水域に産するハゼはオクスデルクス科を中心に非常に種数が多いが、観賞魚として見た場合の代表選手が本種である。英名は「マルハナバチ」、属名は「短いハゼ」を意味し、その名の通りやや寸詰まりの体に、黒と黄色とが交互に入る体色は非常に美しい。
非常に古くから知られており、昭和30年代には既に輸入販売されていた。現在もコンスタントな入荷がある。
単独であれば容量5ℓ以下のキューブ水槽でも問題なく、数匹飼う場合でも30㎝水槽程度でも十分である。
塩分は海水の15〜25%程度で良い。
冷凍餌や生餌を好むが、人工飼料にも普通に餌付く。小さな魚なので餌の大きさにだけは注意を払う。
多少の小競り合いはするものの、隠れ家を多く用意すれば複雑飼育は十分に可能で、本種を食べられないようなサイズの魚とならば混泳も可能である。
繁殖も可能で、塩分を海水の50%程度にまで上げて2週間ほど飼育した後に、通常飼育時の塩分に戻すことを何度か繰り返すと産卵する。
孵化仔が非常に小さいため、初期飼料に苦労する。

同属別種にはフレッシュウォーターバンブルビーゴビーB. xanthomelasがいる。
バンブルビーゴビーと比べると、黄色の透明感が強く、背鰭が黒く染まらないか、染まっても範囲が狭い。やや流通量は少ないが、その名の通り純淡水で飼育可能で、卵もやや大きいため繁殖がより狙い易い。


◇ナイトゴビー

学名:Stigmatogobius sadanundio
全長:8〜15㎝
分類:ハゼ目オクスデルクス科

淡い灰色ないしはクリーム色に黒やメタリックグリーンのスポットのアクセントが美しい中型のハゼ。
ハゼとしては珍しく遊泳性で、中層付近の水中で静止している事が多い。オスは第一背鰭の鰭条が旗のように長く伸び、これを西洋騎士の兜に見立てたのが名前の由来である。
この種もバンブルビーゴビーと同じ時代から日本で流通しており、最近は流通量自体はやや減っているものの、ほぼ毎年見られる魚種である。
飼育は45㎝以上の水槽を容易し、見合ったサイズの隠れ家を入れること以外は概ねバンブルビーゴビーと同じ方法で飼える。
成熟した雄はやや気性が荒くなるものの、全く複数飼育が不可というほどでもない。ある程度の打たれ強さがあるので、レッドスキャットやモノダクティルス、各種汽水フグとも混泳可能である。逆に繊細な魚種との混泳は避けるのが無難で、口に入るサイズの小型の魚やエビとの混泳は絶対不可。
ペアリングに成功すれば産卵までは容易だが、孵化直後の仔魚が非常に小さく、育成はバンブルビーゴビーよりもかなり難しい。インフゾリア(餌用に用いられる原生生物の総称で、特にゾウリムシやワムシ、ミドリムシなどが用いられる)を与えてもあまり効果がないため、汽水域から直接採取した微小プランクトンを豊富に含んだ飼育水が使用可能ならば育成に成功する可能性がある。


◇アベハゼ

学名:Mugilogobius abei
全長:3〜5㎝
分類:ハゼ目オクスデルクス科

ハゼとしても小型種で一見すると地味な色合いの種だが、灰色の地の色に体の前半には茶褐色の横帯、後半には同色の縦条が入り、尾鰭や背鰭は基底付近が黒く、外縁近くが黄色くなり、更に顔の周りに赤褐色の虫食状の模様が入るなど、よく観察すると複雑な色合いから構成されていることが判る。
宮城県以南の太平洋側、福井県以南の日本海側から知られており、国外では朝鮮半島や中国、台湾からも記録があるが、種子島以南な南西諸島には産しない。
汽水域の魚類の中でもかなり過酷な環境に棲む種であり、ヨシ原の中のごく小さな潮溜まりや、殆ど水がないような石や流木の下、ゴミやカキ殻の隙間などから見つかり、他の魚が好まない貧酸素環境でヘドロ臭がする泥底から見つかることもある。
通常、硬骨魚類は老廃物をアンモニアで排出するが、アンモニアは反応性が高いため魚類にとっては猛毒である。一方、本種は例外的にアンモニアを毒性が低い尿素に合成する代謝回路(オルニチン・ウレア回路)を獲得しており、水が乏しい環境への適応だと考えられている。
日本産淡水魚を積極的に扱っている店舗でも見かけることは多くないため、自家採集が主な入手方法になる。他の魚と比べると棲んでいる環境が特殊だが、干潮時に前述の環境に赴けば、ごく小さな網で掬えば良く、場合によっては素手で摘んで採集可能である。代わりに泥深い場所に行かねばならない可能性が高いので、基本的にはウェーダーを着用した上で赴き、沈み込んで足が抜けなくなったり、ゴミやカキ殻で手を切るなど、場合によっては危険な要素もあるため充分に注意する。
飼育の条件はバンブルビーゴビーに準ずるが、あらゆる汽水魚で最強クラスに丈夫な魚種である。
30㎝水槽で5匹以下の飼育数で、2週間に1回以上の水換えが出来るならば濾過器無しでも飼育可能で、室内であれば冬季の加温さえ不用、夏季に水槽が35℃になっても平気である。餌も何でもよく食べる。自然下では1年で生活史を完結させるとされるが、生理的寿命はそれより長く、上手く飼えば4年近く生きることもある。

南西諸島には同属別種のナミハゼMugilogobius chulaeやホホグロハゼMugilogobius parvusなどが知られている。
入手はやや難しいが、水温を20℃以上に保つこと以外は、本種と同じ方法で飼育可能である。


◇ミミズハゼ

学名:Luciogobius spp.
全長:4〜10㎝
分類:ハゼ目オクスデルクス科

ハゼには珍しく第一背鰭を欠き、扁平な頭部に細長い体とドジョウのような雰囲気があり、近縁種には生息環境も相俟ってミミズのように見えるものもいる。
日本を中心とした東アジア固有の属で、特に日本国内では非常に多くの種に分化している。学名が宛てられているものに限っても15種以上で、未記載種を含めれば30種以上、更にその何倍もの種数がいるのではないかとも考えられている。総じて転石混じりの河口域や伏流水が染み出す浜辺や磯に棲むが、種ごとに棲む環境が微妙に異なる。
最も普遍種なのはミミズハゼL. guttatusである。全長は6〜8㎝ほどで、背面に細かい小斑が散在する。感潮域直上の淡水域から海岸付近まで広く見られる。砂底や礫底の河川に多く、泥干潟では見かけない。干潮時は石の下に潜んでいることが多いが、カキ殻の中にいることもある。ミミズハゼは北海道から九州まで幅広く見られるが、ほぼ同じ環境で、南西諸島や黒潮の影響のある地域の場合、やや小型種のミナミヒメミミズハゼL. ryukyuensisが出ることがある。
より海に近い場所で、真水が染み出す潮溜りからは小型種のイソミミズハゼL. martelliiが見られることもある。ミミズハゼと比べると体色が暗めである。
握り拳大の転石から構成される海岸から見つかるのはオオミミズハゼL. grandisである。その名の通り、ミミズハゼ属として太く長く、全長10㎝を超えるものもいる。やや上向きについた頑丈な顎は小型魚ながらも迫力がある。
更に、オオミミズハゼが住む海岸で石の下を掘り続けて、指先くらいの粒の礫の中から見つかるものには吻が尖ったヤリミミズハゼL. platycephalusや体高が低く細長いナガミミズハゼL. elongatusがいる。地域によっては鮮やかなオレンジ色をしたダイダイイソミミズハゼL. yubaiが出るかもしれない。
更に伏流水に棲むものも複数知られている。イドミミズハゼL. pallidusは赤褐色で眼が小さい。河口近くの伏流水や井戸の中から見出されることが多い。潜在的な分布は広いと思われるが、環境自体が局所的なので絶滅が懸念される個体群も多く、環境省レッドデータブックでは準絶滅危惧種に指定されている。また、水系ごとに別種レベルで分化している可能性を提唱する研究者もいる。同様に伏流水産のネムリミミズハゼLuciogobius dormitorisは、大分県から得られたタイプ標本(学名を付ける基準となる標本。模式標本とも言う)のみが知られる稀種で、生態情報は乏しい。
更に極端なものには鍾乳洞の地下水から知られるドウクツミミズハゼLuciogobius albusがいる。眼は退化して皮膚の下に埋没している。頭部が全長の25%以上あり、ミミズハゼとしては寸詰まりな体型である。島根県長崎県の離島の鍾乳洞内の地下水から知られているが、個体数が極めてすくなく、同レッドデータブックでは絶滅危惧IA類という、絶滅危惧種でも最上級ランクに指定されている。
この属として非常に珍奇なものとしてカワリミミズハゼ Luciogobius adapelがいる。青森県のみから知られ、海底20mの砂礫中から見出されたという。この種は胸鰭と尾鰭を除く全ての鰭が消失している。胸鰭や腹鰭がないウツボ、或いはほぼ全ての鰭を欠くウミヘビタウナギなどの例はあるが、胸鰭と尾鰭だけがあるという例は全ての魚類で見ても、非常に珍しい特徴である。
あまり観賞魚として取引されるグループではないため、入手は自家採集が手っ取り早いと思われる。ミミズハゼやミナミヒメミミズハゼ、イソミミズハゼなどは干潮時に転石をひっくり返すと見つかるので手網で掬うと良い。カキ殻をタモ網に蹴り入れた後に揺すっても獲れることがある。それ以外の種は海岸の転石の下や隙間に棲むため、必要な道具はタモ網ではなくシャベルやスコップである。ひたすらに石や砂礫を掘り進めていくと採集出来るが、魚捕りというよりは土木作業に限りなく近い。遊びの要素も強いが、オオミミズハゼの場合、ゲソや魚の切り身を素手(手袋を嵌めていても良い)で握って、波打ち際の水没しかかった転石の隙間に手を突っ込むと、個体数が多い場所では1分もしない内に匂いを嗅ぎつけて掌の中に潜り込んでくるので、素早く引き上げて捕ることが出来る。
飼育はバンブルビーゴビーに準じ、アベハゼほどではないが、水温や水質の変化に強く、かなり丈夫なものが多い。
ミミズハゼやミナミヒメミミズハゼ、オオミミズハゼは馴れるとオープンなスペースに出て来るが、ナガミミズハゼなどはシェルターを設けるとほぼ人前には出てこない。底面までガラスで出来た水槽で、砂を敷かずに直接に石を入れて、水槽台の天板の一部を切り抜いて下から観察するか、鏡を斜めに立て掛けて置くのも良いかもしれない。


◇マハゼ

学名:Acanthogobius flavimanus
全長:20~30㎝
分類:ハゼ目オクスデルクス科

所謂「ダボハゼ」と呼ばれる日本の河口域では最も普通なハゼである。
詳細は当該項目を参照。
飼育自体は難しくないが、ハゼとしては大型の部類なので、60㎝水槽以上は用意したい。また、年魚であるため、あまり大きな個体は寿命が迫っていると思って良い。

飼育という観点ならば、ダボハゼの仲間であるチチブTridentiger obscurusやヌマチチブT. brevispinisは単独飼育ならば30㎝水槽を用意すれば十分で、若い個体を入手すれば2年程度は生きる。


◇マッドスキッパー(トビハゼ)

学名:Periophthalmus modestus
全長:10〜15㎝
分類:ハゼ目オクスデルクス科

属名は「縁に有る眼」の意味で、その名の通りカエルのような飛び出て互いに近接する両眼と、水が溜められように膨れた鰓の部分も合わさって、独特の愛嬌のある顔付きをしている。それだけでなく、旗のような二基の背鰭と腕のように動かせる胸鰭を持ち、その鰭で泥の表面を掻いて進み、腹鰭が変化した吸盤で垂直の杭やコンクリートでも平気で攀じ登り、危険が迫れば尾鰭で飛び跳ねて水を切るようにして逃げると言う、どことなく両棲類や爬虫類を想起させる水嫌いの魚としても有名である。
近縁種や属は、オセアニアから東南アジア、南アジアやアフリカの熱帯・亜熱帯の沿岸に多い。種トビハゼは東京湾から沖縄本島までの南西諸島と朝鮮半島南岸から南シナ海にかけて分布しており、この類では最北端に分布する種である。日本にはもう一種、ミナミトビハゼP. argentilineatusが屋久島以南の南西諸島に産し、海外では西部太平洋からインド洋の広域にかけて分布する。第1背鰭の前縁先端が尖り、背鰭縁辺に褐色横帯が入ること、体側に不規則だが明確な黒斑を呈することでトビハゼと区別可能である。
河口域の泥干潟で見られるが、ヘドロ化した場所には済まず、ヨシ原やマングローブなど塩分に強い植物の群落の縁辺や、その中を流れる水路でよく見られる。昼行性で視力も高い。ミナミトビハゼはほぼ一年中活動するが、トビハゼは深さ50㎝ほどの穴を掘って冬眠する。産卵は雄が掘ったY字型の出入り口が二つある巣穴で行われる。Yの縦棒の部分は伸びる上方向に曲がり、「J」または「し」の字のような構造になっている。先端は行き止まりで空気をトラップ出来るようになっており、この場所に雌親は卵を産み付ける。卵は水から半分出た状態で発生が進み、雄親は卵保護を行う。産卵から1週間程で孵化して、満潮の際に稚魚は巣穴の外に旅立つ。寿命は雄は1年、雌は2〜3年とされている。
日中は警戒心も強く、足場が悪いことが多いためタモ網での採集は中々難しい。見つけた瞬間に素早く網を振るうか、逆にある程度動き回らせてスタミナを切らせて、水溜りの中で休んでいるものを捕えると良いかもしれない。一方、夜間はかなり無防備で、体の半分を水溜りに漬けて休んでいるので、その気になれば素手で捕まえることも出来る。残念ながらトビハゼは日本各地で数を減らしており、環境省レッドデータブックでは準絶滅危惧種に指定されている他、東京都や三重県、大阪府などの地方レッドデータブックではより高ランクの絶滅危惧ⅠA類であるため、乱獲は厳に慎み、場合に拠っては観察だけに留めたい。
ミナミトビハゼを含めた海外産の種はコンスタントな入荷がある。マッドスキッパーの名前で複数の種が輸入されており、比較的入手し易いのは、ベトナムやマレーシアなどから輸入される全長6㎝程の小型種で薄い横帯を呈するP. variabilis、インドが主要産地で第1背鰭が赤く体側に青白い小点が入るP. novemradiatus、西アフリカ産で背鰭が青黒く全長20㎝を越える大型種のP. barbarusなどである。
時にはタイからオオトビハゼPeriophthalmodon schlosseriが輸入されることもある。目から尾柄まで走る太い黒縦縞や葡萄色の第1背鰭も特徴的だが、全長が30㎝近くになる大型種でかなりの迫力がある。
一般的な魚とはかなり異なる生態であるため、飼育に躊躇しがちだが、ポイントを押さえれば意外と飼育し易い魚でもある。
オオトビハゼやP. barbarusを除いて、単独であれば30㎝水槽でも飼育出来る。一番簡単に飼育するには、通常より水深を減らしたアクアリウムにカメ用の浮き島を設置する方法である。見栄えを気にしないならば発泡スチロールを切ったものでも良い(剥離剤がついている場合があるので、水槽に入れる前に水洗いは必要)。脱走防止に蓋をして、隙間をウールマットやスポンジを詰めれば、後は普通の魚と同じように管理すれば良い。
こまめに水換えが出来るならば、フィルター無しで飼うことも出来る。プラケースに砂を入れて水深が1〜2㎝程度になるように汽水を入れる。そしてプラケースの下に適当なものをかませて傾斜を作ることで水場と陸地を作る。水が蒸発し易いので、数日に一回は水を全部交換する。
勿論、大型の水槽に岩や流木で陸地を設けた複雑なレイアウトのアクアテラリウムで飼育しても良い。枝を水上に貼り出すようなレイアウトにすると、そこによじ登って休むこともある(更に水場にテッポウウオを泳がせると異種間での遣り取りが見られることもあって飼っていて楽しい)。
塩分は海水の15〜25%程度で良い。
冷凍餌や生餌を好むが、人工飼料にも普通に餌付く。慣れれば手から餌を食べるようになる。
同種間、特に雄同士は縄張りを持って争うため、飼育数は60㎝水槽で2~3匹程度にするか、逆に10匹以上入れて縄張りを作らせないようにする。浮島を用いた飼育の場合は、強い1匹が陸地を占領してしまうことがある。

トビハゼ属・オオトビハゼ属以外にもマッドスキッパーと呼ばれるハゼは複数いる。
代表的なものは有明海のムツゴロウBoleophthalmus pectinirostrisで、トビハゼ以上の知名度があるかも知れない。
トビハゼと異なり、泥の表面に生じる藻類が主食であるため給餌が難しい。スピルリナを配合した飼料を細かく砕いて与えてもあまり効果がなく、干潟の泥を定期的に水槽に入れると長期飼育出来るが、水質管理や観賞には難があり、抑も「新鮮な泥」の定期入手は難しい。

ホコハゼPseudapocryptes elongatusやタビラグチApocryptodon punctatus、およびその近縁種はトビハゼと同所的な環境にいるため、スレンダーマッドスキッパーやドラゴンフェイスマッドスキッパーの名前で輸入されることがある。
ホコハゼはトビハゼほど頻繁ではないが上陸することもある。タビラグチは水の外にでることはない。
こちらも長期飼育はあまり簡単ではなく、冷凍餌や付着藻類を食べるものの痩せ易く、突然死することが珍しくない。


◇レインボーゴビー(ニジイロボウズハゼ)

学名:Stiphodon ornatus
全長:5〜7㎝
分類:ハゼ目オクスデルクス科

円筒形の細身の体に丸みを帯びた顔を持つ小型種のハゼである。体色は性的二形が明確で、雄成魚は朱色や銀白色の薄い斑点がモザイクタイルの様に呈し、背鰭や尾鰭が臙脂色に染まり、吻や鰓蓋、各鰭の縁辺にメタリックなターコイズブルーが入ると言う、相当に華美な体色をしている。一方の雌成魚は緑みがあるクリーム色の地色に体側と背側にそれぞれ1対の黒縦条が入る。第1背鰭も雄は後方に伸びるが、雌は高さが低いままというのも特徴である。
インドネシアのスマトラ島に産する。本種を含めたボウズハゼ類は両側回游魚であり、若魚や成魚は小規模河川の上流域の転石帯で見られる。近縁種には垂直の滝をも平気で攀じ登るものさえいるが、本種は本流脇に出来た流れがやや緩やかな淵に多いとされる。
2000年代以降から輸入されるようになった種であり、比較的安定して入荷している。時には後述する別種が混ざって販売されていることもある。
小型種なので30㎝水槽から飼育可能であるが、餌の事情を考えるとなるべき大きな水槽を用意したい。
濾過の方式は問わないが、ある程度水流が作れるものが望ましい。レイアウトとしては川砂を敷き、扁たい石や植木鉢の欠片を入れて、個体ごとのテリトリーの基盤とさせると良い。
塩分は全く不用で、中性から弱アルカリ性の淡水で飼育出来る。あまり高過ぎる水温は好まないので、28℃を上限としておきたい。
飼育する際にネックとなるのは餌で、冷凍アカムシも食べるが、本来の主食は付着藻類である。その為、飼育水槽は日光がある程度差し込む場所に置くか、照明時間を長めにして藻類が殖え易い環境を構築しておく。観賞面以外のガラス掃除もあまりしない方が良いかも知れない。或いは、藻類増殖用の専用の水槽を用意して、定期的に飼育魚を移し替えるか藻類が生えた石や流木を飼育水槽に入れる、枯れかけた水草を与える(水草本体を食べることもあるが、付着藻類やバイオフィルム、インフゾリアを食べているとされる)。と言う方法もある。人工飼料は多少は齧るがあまり食べない。
雄同士は近縁種を含めて多少の小競り合いをするが、混泳自体は可能である。但し、飼育数を増やせば増やすほど、藻類の消費量は多くなるので、30㎝水槽で1ペア、60㎝水槽でも5匹程度にしたい。他種へは殆ど関心を向けることはなく、寧ろ打たれ弱いところがあるので混泳させる場合は、温和な魚種を少数入れるのに止める。似た様な環境に棲み、食性も同じコイ目タニノボリ科の魚と飼いたくなるが、大抵の場合、本種が競り負けることが多い。同じハゼでもヨシノボリ類との相性も良くない。
短命な種が多いハゼに於いては意外と長寿であり、単独種で飼うと10年以上生きることもある。

同属別種としてはナンヨウボウズハゼやコンテリボウズハゼなどがいる。
別属だが比較的近縁なものには種ボウズハゼやルリボウズハゼ、フデハゼやカエルハゼがいる。こちらのグループはやや肉食傾向が強く、冷凍アカムシを食べる個体が多く、プレコ用の人工飼料を、食べるものもいる。一方で非常に流れの強い場所にいるものが多く、酸欠に弱い。水槽から跳び出してしまうこともあるので、蓋は必ず付ける。

◇ ピーコックガジョン

学名:Tateurundina ocellicauda
全長:6㎝
分類:ハゼ目カワアナゴ科

体側は金属光沢のある水色を基調として、朱色から橙色の細い破線状の横帯が多数入り、腹部や各鰭の外縁が黄色く染まり、アクセント的に尾柄には黒く大きな斑紋が入るという、まるで宝石箱をひっくり返したような華美な魚である。
ニューギニア島の固有種であり、特に東側のパプアニューギニア領に多いが、インドネシアのイリアンジャヤでも見られる。熱帯雨林近辺の水草の茂った小河川や水路、池などで見られる。
比較的ポピュラーな種であり、熱帯魚店では比較的入手し易い。主に流通するのは野外採集個体だが、ブリード個体も販売されている。
純淡水魚であり、飼育についてはアベニーパファーに準じるが、本種はかなり穏和であり、成熟すると同種間で多少の小競り合いはするが、他魚には殆ど干渉しない。
ハゼとしては繁殖が比較的容易な部類である。成熟した雄は肥大が張り出して頭部が丸みを帯びて大きくなり、各鰭が一回り大きく伸長するため、区別も難しくない。ペアリングに成功すると、大きな水草の葉の裏や、植木鉢やパイプなどの陰に20〜50卵ほど産卵する。産卵後は雄が卵を保護する。産卵から1週間から10日後には孵化するため、その直前に親魚を水槽から取り出しておくと、卵や仔魚を食べられなくて済む。1シーズンに複数回産卵させることも可能だが、産卵する雌の負担は勿論のこと、卵保護時の雄は絶食状態でもあるため、互いに消耗が大きく、そのまま死んでしまうこともあるため、注意する(Wiki籠り諸君らも気を付ける様に)。

比較的近い種にはパープルスポッテッドガジョンMogurnda adspersaやカープガジョン(タナゴモドキ)Hypseleotris cyprinoides、エンパイアガジョンH. compressaなどがいる。
全長は10㎝を超え、やや希少が荒くペア以外では争うこともあるが、基本的にはピーコックガジョンと同様の方法で飼育可能で繁殖も狙える。


◇カワアナゴ/ドンコ

学名:Eleotris oxycephala/Odontobutis obscura
全長:15~30㎝
分類:ハゼ目カワアナゴ科/ドンコ科

カワアナゴとテンジクカワアナゴ、ドンコは純淡水で飼育可能だが、チチブモドキやオカメハゼなどは海水の10〜25%の塩分で飼育した方が良い。


◇マレーゴビー(マーブルゴビー)

学名:Oxyeleotris marmoratus
全長:30〜50㎝、最大80㎝
分類:ハゼ目ノコギリハゼ科

前述のドンコに似た姿をしているが、科レベルで異なり、時に全長が80㎝に達するハゼ目最大種である。
食用魚としての需要が高く、養殖された幼魚が販売されている。白変個体も知られている。
流通する個体は10㎝前後であるため、45㎝水槽から飼育可能である。全長30㎝を超えた頃から極端に成長が遅くなるのと、水量に応じて成長が緩やかになる「盆栽化」が起こりやすい魚種である。


◇クレイジーフィッシュ(ヤエヤマノコギリハゼ)

学名:Butis amboinensis
全長:8〜15㎝
分類:ハゼ目ノコギリハゼ科

クレイジーフィッシュも飼育は比較的容易だが、人工飼料にはあまり馴れない。


◇その他のハゼ・カワアナゴ

学名:
全長:
分類:ハゼ目

単発な流通になりがちなものも多いが、一定の流通量があるものもいる。

ヨシノボリ類は日本産淡水魚を扱っている店ならば在庫していることが多いグループである。種によっては自家採集での入手も可能である。基本的には純淡水で飼育可能だが、ゴクラクハゼやアヤヨシノボリなどは海水の10%程度の汽水で管理しても良い。

ヒナハゼやゴマハゼも比較的入手し易い。
海外からタスキヒナハゼやミツボシゴマハゼなでが輸入されることもある。

余り販売されていないが、タネハゼは飼育して面白いハゼと言える。


◇グロッサミア・アプリオン(マウスオールマイティ・淡水テンジクダイ)

学名:Glossamia aprion
全長:10~20㎝
分類:ハゼ目テンジクダイ科

マウスブルーダー(口内保育)として有名なテンジクダイ科は、熱帯・亜熱帯のサンゴ礁で多様性が高いグループであるが、汽水域や淡水域で見られる物ものもおり、本種はその代表主である。
2000年代には少数が流通していたが、あまり話題にならず、それから20年近く流通が無かった。2019年頃に再入荷し、その後は国産インドネシア産のブリード個体が流通するようになり、現在も数は多くないものの、店頭で見かける機会は増えた。
基本的にはグラスパーチと同様の方法で飼育可能であるが、口が非常に大きく貪欲なので、単独またはペアでの飼育が無難である。

日本からは純淡水産のテンジクダイ科は知られていないが、汽水産の種としてはアマミイシモチFibramia amboinensisやホソスジマンジュウイシモチSphaeramia orbicularisが知られる。性質はグラスフィッシュに近く、群れを作る温和な魚種であり、海水の20%以上の塩分が必要だが、丈夫で飼育し易い。


◇ライオンフィッシュ

学名:Batrachomoeus trispinosus
全長:15〜30㎝
分類:ガマアンコウ目ガマアンコウ科

Lionfishはミノカサゴの英名でもあるが、ここではガマアンコウ目に属する別の魚を指す。
日本には目レベルで産しない魚で、グループとしてはインド亜大陸周辺やオセアニア、南北アメリカに産する( B. trispinosusの分布はベトナム以南のインドシナ半島からマレー半島、フィリピンやインドネシアなどの西部太平洋の熱帯海域及びベンガル湾周辺とされる)
「ガマアンコウ」の名から察せられるように、アンコウ目と近縁と考えられていたが、DNAを調べるとアンコウ目はフグ目と姉妹群を形成する非常に派生的な魚類であるのに対し、ガマアンコウ目はタラ目やアシロ目に近い、棘鰭系魚類としてはかなり祖型的なグループであるという結果が出ており、両者は赤の他人(他魚?)ということらしい。
なんとも形容し難い外見をしており、髭のような皮弁が発達する大きな頭と不釣り合いに小さな胴体、意外と大きな胸鰭に、小さいが毒を持つと背鰭という、アンコウとハゼとオコゼを足して3で割ったような姿を持つ。そして、鰾を振動させて鳴くことも出来る上、魚類の中で最も複雑な「鳴き声」を持つという不思議な魚である。
日本には少なくとも昭和40年代からは輸入されており、ほぼ毎年入荷があり、価格も割と安価である。
待ち伏せ型の捕食者で、激しく泳ぎ回る魚ではないので、よく輸入される10㎝前後の個体ならば45㎝水槽、水質管理に気を付けるならば最終的に60㎝ワイド水曜で終生飼育可能である。
塩分の要求量は高く最低でも海水の25%以上、出来れば50%は欲しいところで、成魚は海水でも飼育可能である。一方で、ベトナム産の個体群は年単位の長期間を淡水中で飼育しても異常なく成長したという話もあり、陸封型が存在するのか隠蔽種が存在するのか、非常に興味深い。また、汽水魚としてはやや高水温に弱く、28℃以上にはならないように注意する。
待ち伏せ型という捕食行動上、活き餌を好んで人工飼料には慣れ辛いが、ピンセットから餌を摂るように慣れる個体は多く、クリルや魚の切り身には餌付くことが殆どである。
縄張り意識が強くて気性は荒めで、特に底生魚は餌か喧嘩相手にしかならないと思ってよい。必然的に単独飼育が推奨される。


◇バーボット(カワメンタイ)

学名:Lota lota
全長:30〜60㎝、最大152㎝
分類:タラ目カワメンタイ科

タラ目で唯一の淡水産の種であり、ウナギとナマズを足して二で割ったようた独特の風貌から、珍魚・怪魚・底物マニアから注目されることが少なからずある。
北緯40度以北の地域に環北極分布しており、ユーラシア大陸ではフランス以北のヨーロッパ広域からシベリアを通って中国北部、北米大陸では五大湖以北のアメリカ合衆国及びカナダのほぼ全域と、淡水魚有数の分布範囲を誇る。戦前に日本が実効支配していた満州や樺太からも知られているため、「川明太」の意の和名がつけられている。
最大全長こそメートル越えの大型魚であるが、水槽のサイズに応じてある程度成長が遅くなるため、60㎝水槽から飼育開始して、90㎝水槽でもかなり間に合うことが多い。
夜行性であり、日中は岩陰に隠れていることも多いので植木鉢やパイプでシェルターを設けると良い。
飼育する上で最大の難関は水温で、幼魚は25℃程度までならば耐えられるものの、成長に従って低水温を好むようになるため、可能ならば年間通じて15℃以下に設定したい。高性能な水槽用クーラーがほぼ必需品であり、真夏の電気代は覚悟するように。
塩分は基本的には不用だが、調子を崩した時は海水の5〜15%の塩分を加えるのも良い。
貪欲な魚であり、活き餌は勿論のこと、冷凍餌や人工飼料にも馴れ易い。まさに「鱈腹食べる」大食漢だが、水温や水質が合わないと食べた餌を吐き出して更に水質が悪化、或いは食滞を起こして死亡することがあるので、餌の与え過ぎには注意する。
複数飼育や混泳は基本的には推奨しない。


◇タンダンキャット


学名:Tandanus tandanus
全長:30〜90㎝
分類:ナマズ目ゴンズイ科

オーストラリアに産する淡水性のゴンズイ科の1種。
詳細はナマズの項目を参照。


◇サウスアメリカンシャークキャット


学名:Arius seemani
全長:30〜30㎝
分類:ナマズ目ハマギギ科

フロリダ半島から中南米に広く分布する。
汽水性のナマズでは最も知名度が高い。
詳細はタンダンキャットに同じく、ナマズの項目を参照。


◇ミルクフィッシュ(サバヒー)


学名:Chanos chanos
全長:30〜150㎝
分類:ネズミギス目サバヒー科

ボラのようにもニシンのようにも見える魚だが、ネズミギス目というマイナーな分類群に属し、科レベルの単型、即ち1属1種のみが知られている。
系統学な話をすると、硬骨魚類の一大派閥に骨鰾類と呼ばれるものがいる。コイ目・カラシン目・ナマズ目・デンキウナギ目の4目1万種以上から構成されており、脊椎骨の一部が三脚骨・挿入骨・舟状骨・結骨という四つの骨に変化したウェーバー器官(ウェーベル器官)という構造があり、それらによって鰾と内耳が連結しているという特徴がある。骨鰾類は前述のタンダンキャットやシャークキャットなどのごく一部の例外を除き、その殆どが一次性の純淡水魚である。一方で、ネズミギス目はアフリカンマッドフィッシュなどの淡水魚が多くを占める一方で、本種やネズミギスなどの海産種も含まれており、原始的(前駆的・祖型的)海洋に起源を持つ骨鰾類が淡水域に進出する途中段階のまま、形質が固定化したものと考えられており、骨鰾類に対して前骨鰾類と呼ばれている。
観賞魚としての流通は少ないが、台湾以南の東南アジアでは重要な水産資源の一つであり、日本でもカツオマグロの一本釣りや延縄漁用の活き餌として需要があるため種苗生産されていて、それらがアクアリウムの流通ルートに乗ることがある。また、海水魚用の活き餌として取り扱う専門店もある。
飼育はボラにほぼ準じ、一緒に飼うことも出来る。


◇淡水ニシン

学名:
全長:
分類:ニシン目

南米から稀にホエールテトラとして輸入されるものは、実はカタクチイワシ科の魚種である。繊細で飼い難い魚ではあるが、この種だけで管理出来るならば飼育は不可能ではない。
現地名でアッパッパーと呼ばれるハトムネヒラは輸入を切望するマニアは少なくないが、非常に輸送に弱く、日本にまで生きて到着する望みは薄い。
アフリカからは純淡水産の種であるデンティケプスが稀に入荷する。スレにやや弱いが、落ち着けば割と丈夫で、コイやカラシンなどと同じように飼うことが出来る。
日本産の種としては、サッパやコノシロが河口域に侵入する。飼育はかなり難しい。


◇淡水ウツボ


学名:Muraenidae
全長:30〜400㎝
分類:ウナギ目ウツボ科

沿岸の浅海域、特に珊瑚礁が生息環境の中心であるウツボだが、10数種以上が河川からの記録がある。
多くは偶来魚であって、淡水は勿論のこと海水の50%以上の濃い汽水でも長期飼育が困難であることが多い(海水で飼育すれば、頗る丈夫なものが殆どであるが)。
その中で、イエローフレークモレイGymnothorax tileやコクハンカワウツボG. polyuranodon、ナミダカワウツボEchidna rhodochilusなどは汽水域または淡水域を中心に生息しており、しばしば観賞魚として輸入される。
詳細はウツボの項目を参照。


◇その他の淡水/汽水のウナギ目の魚


学名:
全長:30〜200㎝
分類:ウナギ目

多くが海水魚であるウナギ目だが、淡水や汽水で見られるものも少なからずいる。

代表的なものはニホンウナギである。食用として、或いは絶滅危惧種としてのイメージが強いが、観賞・ペットとしても根強い人気があり、日本産淡水魚を扱う店舗ならば取り扱いも多い部類である。
本州以南ではオオウナギが見られることもある。特に奄美諸島以南では非常に普通種で、踝が浸かる程度のごく浅い水深の用水路に、メートル級の個体が棲んでいることも珍しくない。
詳細はウナギの項目を参照。

他に流通量が多いのはピンクイール(ムラサキハリガネウミヘビ)がいる。
インド洋から西部太平洋にかけて分布し、日本にはインドの個体が輸入されることが多い。
輸入されることの多い全長10〜20㎝程度の個体は45㎝水槽から飼育可能で、複数飼育する場合でも最終的には60㎝ワイド水槽が用意出来れ良い。
自然下ではシルト質の底砂に潜っていたり、岩の下に潜んでいるので、砂を集めに敷いたり石ややパイプを入れて何らかのシェルターを設ける。くれぐれ飼育魚が下敷きにならないように配置には注意する。
弱アルカリ性の水質を保てば、何年も塩分無しで飼育可能であるが、調子を崩した時は海水の10〜30%を目安に塩分を加えると良い。
餌は冷凍アカムシやイトミミズ、魚肉などの冷凍餌や生餌を好むが、肉食魚用の人工飼料にも餌付くことが多い。
性質は比較的大人しく、口に入らない大きさの魚とならば複数飼育や混泳は可能である。

インドから稀に流通するものに淡水ハモ・淡水アナゴがいる。前者はスズハモかその近縁種、後者はキリアナゴかその近似種と考えられている。偶来魚とされており、純淡水での飼育は無理で、汽水で飼育する場合も、海水の30〜50%もしくはそれ以上の塩分で飼うべきであり、性質もやや荒い。

近年流通が知られるものにカワウミヘビがいる。
日本でも沖縄本島などから記録があるが稀種である。
塩分を高く保つ必要がある以外はピンクイールと同じ方法で飼育可能である。


◇ターポン


学名:Megalops atlanticus
全長:150〜250㎝
分類:カライワシ目イセゴイ科

アロワナの顔付きに巨大なニシンの姿をした外見からは信じ難いが、ウナギの遠縁に当たる大型魚にして古代魚。
詳細は当該項目を参照。


◇汽水のエイ/サメ


学名:Myliobatiformes/Rhinopristiformes/Carcharhiniformes
全長:100〜800㎝
分類:トビエイ目/ノコギリエイ目/メジロザメ目

今まで解説してきた魚種は全て硬骨魚類に属するものだが、エイやサメのグループである軟骨魚類にも、汽水や淡水に産する種がいる。

最も有名なのは南米産のポタモトリゴン科に属するエイで、観賞魚業界では「淡水エイ」という独立したカテゴリーで扱われている。
詳細は古代魚の項目を参照。

一方、アカエイ科に属するエイでも、日本産のアカエイHemitrygon akajeiやツカエイPastinachus aterが汽水域にしばしば侵入する他、東南アジアからプラークラーベン(ヒマンチュラ・チャオプラヤ)Urogymnus polylepisやラフバックウィップレイ(ホワイトチップスティングレイ)Fluvitrygon kittipongi、西アフリカからはスムースフレッシュウォータースティングレイFontitrygon garouaensisなど、汽水から淡水を主な生息地とするものが複数知られている。
詳細はアカエイの項目を参照。

かつて流通したものにはオオノコギリエイPristis pristisがいる。
成魚は全長7mに達する巨大魚であり、世界各地の熱帯・亜熱帯地域に分布する。全長2m前後の未成魚までは河口域で見られる他、中米のニカラグア湖の個体群は生涯の殆どを淡水域で暮らすとも言われており、アマゾン川では河口から1000㎞近く上流で捕らえられた例もある。
昭和末期から平成初期にかけて、関西の観賞魚業者がオーストラリアやパプアニューギニアから僅かに輸入しており、200万円近い価格で販売されたことがある。現在は食用や装飾品としての乱獲や生息地の環境破壊によって、分布域の多くで絶滅または絶滅寸前となり、科の単位でワシントン条約付属書Ⅰに指定されて商取引が原則禁じられている。
2025年現在、この種はアジアアロワナのような商業繁殖が行われている訳でもないため、日本国内で個人が入手すること自体ほぼ不可能である。水族館大国である日本であっても現在展示している園館が3館程度であることを鑑みれば、飼育のハードルの高さは自明である。

エイと比べると、汽水や淡水に産するサメは少ない。
ドチザメTriakis scylliumやアカシュモクザメSphyrna lewiniが稀に汽水域で記録されるが、基本的には偶来魚である。
ごく少ない例外として、オオメジロザメCarcharhinus leucasがいる。
オオノコギリエイと同様に世界各地の熱帯・亜熱帯地域に分布し、中南米では淡水に順化した個体群が知られている。本種も絶滅危惧種であるものの、オオノコギリエイほどは危機的ではなく、分布も一回り広いため、日本でも沖縄県を中心に幼魚が河川で見られることがある。
本種もまた、全長は4mにも達し、またヒトの死亡歴もある危険な人喰いザメであるため個人での飼育は極めて難しいが、美ら海水族館では40年以上の飼育例がある他、オーストラリアのゴルフ場の池では、近くの河川の増水によって取り残された個体が17年以上生き続けたこともあった。あらゆる困難を突破した上で個人が飼育出来れば、究極の観賞魚の一つと言っても差し支えない。





追記・修正は水換えと餌やりの後にお願いします 。


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  • 汽水魚じゃなくても沿岸に住んでる海水魚なら淡水に慣らすことは出来るみたいね。そこまでする時間と理由があるかは別だけど -- 名無しさん (2025-06-21 20:11:43)
  • 汽水で厄介なのは水質緩衝材としての水草の選定がかなり限られる事かな。逆にコケとり用の巻貝(石巻貝)なんかは本来こちら側の生物なので生きが良くなる。 -- 名無しさん (2025-07-29 20:39:44)
  • 見ない間に随分と項目が充実したなぁ。あと出てないのはスレッドフィンパラダイス位か… -- 名無しさん (2025-09-29 21:14:54)
  • ↑サバヒーも -- 名無しさん (2025-09-29 21:25:51)
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最終更新:2026年08月08日 21:44