SCP-1501-JP

登録日:2017/04/02 (日) 15:21:45
更新日:2019/10/14 Mon 10:52:53
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人類は恐怖から逃げ隠れしていた時代に逆戻りしてはならない。


SCP-1501-JPとは、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)。
オブジェクトクラスは堂々のKeter

JPのコードが示す通り、日本支部で生まれたSCPであり、SCP-1000-JPのナンバーを巡る「1000JPコンテスト」の出展作品でもある。
よってテーマは「日本」。




概要

コイツが何かというと、日本人の女性にのみ、不定期に発生する現実改変である。
ただし、規模は日本全土と恐ろしく広いが、改変の内容は途轍もなく小さい。
というのは改変によって生じる現象と言うのが、日本標準時における午前0時から翌日の午前0時までの間に一度、最大で1400人を超える女性が同時刻に出産する、というものなのである。

しかもこの現象は、生まれが日本であり、日本人の血を引いているのなら国内外を問わず発生し、その規模を把握することは困難を極める。財団の観測によれば「1日に1度」という原則は決して破られていないが、

  • 午後11時29分にSCP-1501-JPが発生し、その59分後である翌日の午前0時28分にSCP-1501-JPが発生した
  • 午前1時11分にSCP-1501-JPが発生し、その40時間41分後である翌日の午後5時52分にSCP-1501-JPが発生した

といった事例は多く報告されている。
現実改変という都合上、妊娠中の女性に発生するのか、女性であればいいのかは不明。ただ、大ざっぱな仮説として「妊娠・出産が可能な女性」が改変のターゲットになっていると仮説が立てられている。
つまり、子どもあるいは老人に対しては基本的に起こらない、ということだ。起こったら色々大変過ぎる。


この影響を受けた女性は、そのすべてが、以前から妊娠していたという認識を持つ。本人のみならず周囲の人間や、関係する全ての記録もそれを裏付けることになり、妊娠・出産のプロセスにも全く異常性は存在しない。
そのため、発生の瞬間を捕捉することは実質的に不可能とされている。一応、そのタイミングをたまたまとらえた記録もあるのだが、普通の出産であり異常性は認められなかった。


つまるところこのオブジェクトの起こす現実改変は、不特定多数の女性が、同じタイミングで出産するように、妊娠しているという事実を作り上げることにある。
女性自身に対してはこれだけだが、生まれてくる子供はどうなのか?


財団のやり方に沿うならば、この子供たちは「SCP-1501-JP-1」とナンバリングされるはずだが、それは行われていない。
子供たちの持つ異常性は、この現実改変によって他の子供たちと全く同じタイミングでこの世に生を受けた、ということを除けば何一つ存在しない。
ただ一つ、異常と言えなくもない部分を挙げるとするならば、確率論的に一人はいるはずの、先天性の疾病や何らかの障害を持った子供が存在せず、全員が至って健康に生まれてくることである。
多胎児で生まれてくる例はあるが、元々妊娠していたのがこのSCP-1501-JPによって増えたのか、多胎児を妊娠しているという事実自体が作られたのかは不明となっている。

財団も当初はこの子供たちが異常性を受け継いでいると疑っていたが、入念な調査の結果、出生タイミング以外にはなんの異常性もなかったことと、SCP-1501-JPの発生頻度と規模が尋常ではないこと、その全容の把握が実質不可能であることから、子供たちの収容や終了処分は行わず、戸籍を記録するのみにとどめられている。


しかし、この子供たちも全員が全員、一般人と同じではない。
確率にして1/5000というものだが、SCP-1501-JP-1と指定される、正体不明の父親を持つ子供が生まれてくるのである。これは、DNA検査の結果判明した事実であり、共通しているのは出生タイミングの他、母親が出産時点で配偶者や交際相手を持たない、シングルマザーであることが挙げられる。
父親とされるSCP-1501-JPの容姿については証言ごとに食い違いがあり、一貫性は認められていない。

周辺調査も行われたが、追えるのは母親の足跡のみで、父親については正体不明だった。

さて、この謎の父親の血を引く子供たちだが、実は成長するにつれて、それぞれ得意な分野を持つようになり、かつその分野で大成するという共通項を持つ。
彼ら彼女らの子孫にもこれらの「才能」は受け継がれていくが、それが発揮される可能性は一般人の範疇である。


そしてこの現象、財団内部にも当然のように起こっている。というか、発見のきっかけが財団内部である。
現実改変能力を持った別のSCPオブジェクトの研究をしていた霧崎博士は、その影響を受けないように研究時、10基のスクラントン現実錨により現実改変の影響から保護されていた。

が、ある女性研究員が出産したという報告を受け、博士は疑問を持った。その研究員とは、博士は昨日まで何事もなく顔を合わせていたからだ。
どういうことだ、とその研究員に確認を取ったところ、彼女はその異常性を自覚しておらず、財団の記録でも4ヶ月前から妊娠を理由に休職している、となっていた。
財団の監視記録、その他財団職員の記憶でも、その研究員は半年前から妊娠を周囲に告知しており、医療機関にも当時の検査記録が残っていた。スクラントン現実性測定器を始めとした多くの事実は、霧崎博士の認識を否定していた。
しかし、件の研究員が出産したのとほぼ同時刻に916名の新生児が誕生している事、更に同様の事例が偶然では片づけられない規模で連日発生している事が判明。これに伴い調査が開始され、SCP-1501-JPとナンバリングされたこの現象系オブジェクトは、財団の認識するところとなった。

3SCP-1501-JPの発生を防止する為に医療機関各所にスクラントン現実錨を設置してはどうだ、という話もあったが、現実改変による新たな医療機関の出現とそれに伴う民間人の移動、医療機関外でのSCP-1501-JPの発生と言ったトラブルに見舞われたため計画は中止。SCP-1501-JPの封じ込めは情報の秘匿をメインとすることになった。


このオブジェクトがKeterなのは、実質的に収容不可能だからである。
根源こそ現実改変だが、起きているのは単なる妊娠と出産、人の営みの一部である。
それでも異常は異常だ、深刻な事態に繋がる前に手を打たねば、と考え、また声を上げる財団職員は少なからずいた。
だが、この現象についてはそうはいかない。
その理由について、O5-1はこう仰られている。

何故、SCP-1501-JPで発生した嬰児達に番号を割り当て、確保しないのかと疑問の声を上げる職員が居る。全ての嬰児を把握できないまでも、把握できたものを確保し、関係者に記憶処理を行う力を財団は持っている筈だと。下級職員だけでなく上級職員からも声が上がる始末なので、その理由をここに記そう。

多大な費用と労力が必要にはなるが、確かにSCP-1501-JPで誕生したと確認された全ての嬰児を確保する事は可能だ。SCP-1501-JP-1の遺伝子を有している者に関して言えば、遺伝的特徴を把握しているのでその子孫すら確保できるだろう。だが、その犠牲は余りにも大きい。一体いつからSCP-1501-JPが発生していたのかを財団は把握する事ができていないが、遥かな昔からSCP-1501-JPは繰り返されてきたのだろう。日本国民の9割はSCP-1501-JP-1の因子を少なからず有している事が判明している。そしてその9割の人間を全て確保するという提案は否決されている。

では新たに生まれてくる嬰児ならばどうか? SCP-1501-JPで発生する全ての嬰児を収容するという事は、その子孫までをも異常の延長として収容するという事に気付くべきだ。つまり先程の話に戻るな。日本人を異常オブジェクトとして収容するのか? そんな話は馬鹿げている。

それでもまだ、SCP-1501-JP-1の遺伝子を有した新生児のみを確保すれば良いだろうと言ってくる者が居る。他の人間よりも何かで成功を収める事は統計として表れているが、それが人類に対して脅威と恐怖を与えるものであるかを逆に尋ねたい。我々が確保し、収容し、保護すべき対象が何であるか、それをもう一度思い出したまえ。

確保、収容、保護。
財団職員ならば全員が肝に銘じている三つの使命だが、これらの前提にある財団の理念を忘れている者が実に多い。


人類は恐怖から逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない。


我々は異常存在の脅威と恐怖から人々を守る。その為に異常存在を確保し、収容し、保護している。
これを踏まえて、我々が収容すべき対象が何であるかを今一度確認する。それは現実改変によって人間が誕生するというSCP-1501-JPであり、この現象に関与していると思われるSCP-1501-JP-1だ。
SCP-1501-JPによって発生するホモ・サピエンスは収容対象にはなりえない。何故ならばそのホモ・サピエンスは人々にとって脅威でない事が確認されており、その誕生に関しても人々は認識していないので恐怖を抱く余地が無い。嬰児に対して番号が振られていない理由はこれで理解できただろうか。

確保、収容、保護の使命を、その前提にある理念を忘れて盲目的に実行するだけならば、それは全ての異常存在を考え無しに破壊しようとする世界オカルト連合と何も変わりはしない。財団は、異常存在を異常だからという理由だけで蒐集するコレクターでは断じてないのだ。その事を忘れないで欲しい。



SCP財団―――その理念たる異常存在の確保・収容・保護。それを知らない職員はいない。
だが、何のためにそうするのか、という根幹の部分を、何のためにSCP財団が存在するのかを忘れている職員は多い。

人の認識を超えた、異常ななにか。
その影響に立ち向かえない人々で構成された、それらの人々が当たり前だと認識している「正常な世界」を守ること。
財団は、そのために存在する。

忘れるなかれ、財団は冷淡であっても残酷ではない。もちろんたまにバカをやらかす連中もいるし、本部の博士たちはいずれもクセモノ揃いである。
だが、ブライトクレフジェラルドギアーズコンドラキ、彼らに代表されるぶっ飛んだ連中も、究極的には「正常な世界」を続けるために働いている。

異常な存在だから収容するのではない。異常な存在から生まれたから確保するのではない。
異常な特性によって、「正常な世界」とそこに生きる人々が危険にさらされるから、そうさせないために確保し、収容し、保護するのだ。


財団は、そのためにこそ存在するのだ。













と、ここで終わっていればよかったのだが、そうも行かなかった。
日本支部のサイト-8119において、ある事件が起きたのだ。

何と、財団がこの現象の根源としてマークしていたSCP-1501-JP-1が、ある博士と接触。つまり、その博士がSCP-1501-JPに遭遇する事件が発生したのだ。
今までも財団職員に対してSCP-1501-JPが発生する事例は確認されていたが、今回問題となるのはSCP-1501-JP-1がいた場所。

何とこの男、サイト-8119に、サイト管理者として24年間も勤務していたのである。

DNA検査、身元調査、精神鑑定その他もろもろの、サイト管理者に行われたとされるあらゆる検査結果は財団の記録に残されており、その全てが問題無しという結果で記録されていた。
記録に残っているDNAはSCP-1501-JP-1本人の物であることが後の鑑定で確定され、新たに実施された身元調査においても経歴は記録として存在していた。しかし、経歴については全て架空の物であり、血縁者とされる人物も存在しない事実が判明している。
過去に行われた同様の調査を問題無く通過できた理由は不明となっている。

それ以上に問題なのは、SCP-1501-JP-1がサイト管理者として、広範囲に渡る財団の記録を閲覧していた……つまりは重大極まる機密漏えいである。
財団職員として活動していた頃のSCP-1501-JP-1の経歴は、記録の上では数多くのオブジェクトの収容に対する多大な貢献、異常性の解明に関する多くの論文、特別収容プロトコルの効率的な改定など、財団に対して多くの有益な結果をもたらしている。

しかし、SCP-1501-JP-1である人物に関する映像記録や音声記録は破損しているか、不自然なノイズ、紛失等によりその全てが不鮮明な記録となっていた。

SCP-1501-JP-1は財団から規定通りに退職したとされているが、これ以降の記録は認められず、そもそもこれらの記録がSCP-1501-JP-1の現実改変による偽りである可能性は依然として残っている。
SCP-1501-JPの発生と同時にこれらの記録が作成された、と仮定した場合、じゃあその前の、元々のサイト管理者は誰で、どこに行ったのか、という問題が出てくる。
そしてそうでなく、SCP-1501-JP-1が本当に24年間、実際にサイト管理者として財団に所属していたのであれば、現実改変能力を有する何者かが今も財団に潜んでいる可能性が否定できなくなる。


最初にこの現象を発見した、霧崎博士のコメントがこちら。

サイト8119管理者であったと記録されているSCP-1501-JP-1は、私達の記憶では誠実で優秀な人物でした。SCP-1501-JP-1に会ったと記憶している職員は大勢居ます。その全てに整合性もあります。それなのにSCP-1501-JP-1に関する記録は全てが存在しない未知の人物という結果に終わります。
私の記憶にある思い出も、現実改変による偽りかもしれないと思うと、沈んだ気持ちにならざるを得ません。財団や、果ては地球すらもSCP-1501-JP-1によって作り出された物であるという仮説を立てた方も居ますが、それが間違っている事を切に願います。

SCP-1501-JP-1の思想も、目的も、何一つ不明のままです。SCP-1501-JP-1に対抗する為にスクラントン現実錨を地球全土で発動させるという案が出されましたが、現実的ではないと却下されました。技術的には可能でも、地球全土を覆うための材料が足りないからです。

人類は、現実錨無くしては安心して暮らせないのでしょうか? 現実錨と共に無ければ、現実改変に怯えて暮らさなければならないのでしょうか? それこそ管理者の発言にある、恐怖から逃げ隠れていた時代への逆戻りとなるでしょう。
そうならない為にも、人類を脅威から保護する為にも、何としてもSCP-1501-JP-1を収容し、今あるこの現実を確保しなければなりません。


つまり、下手をするとZK-クラス:現実不全シナリオに繋がる恐れが否定できないのだ。
SCP-1501-JP-1、その目的は未だわかっていない。
この同時出産現象を、何のために、なぜ引き起こしているのか? 謎は深まるばかりである。



しかし、第四の壁の向こうに存在する我々ならば、SCP-1501-JP-1の正体を推察することが出来る。
それを示すものを、最後に述べておく。






SCP-1501-JP

イザナギの産屋




追記・修正は日本人が滅ばないように頑張る神様を応援しながらお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1501-JP - イザナギの産屋
by KirisakiMarie
http://ja.scp-wiki.net/scp-1501-jp

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