登録日:2017/4/30 (日) 22:05:00
更新日:2023/06/10 Sat 20:42:29
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計時はスポーツ競技における、所要時間を計ることである。
様々なスポーツにおいて重要な要素である時間。
その中で、陸上競技や競泳など競って勝敗を争うスポーツでは、スタートからゴールまでにかかる時間が勝敗へ直結するため、タイム計測の方法が厳しく決められている。
計時方法
計時の方法には、手動と電動の2種類がある。
最もお手軽な計時方法。
スタートの号砲を見て、ストップウォッチをスタートさせ、選手がゴールした瞬間を見てストップウォッチを止める方法である。
学校の体力
テストの50m走や1500m走もこの方法で測っている。
目で見てストップウォッチを動かすまでにはどうしても誤差が出てしまうため、現在では手動計時は公式な記録としないスポーツもある。
ちなみに、世界大会での手動計時に慣れている審判員でも、0.1秒以上の誤差が出てしまうといわれている。
また、ほとんどの競技では、一人で計測せずに複数人(大体3人)で計測することが記録公認の最低条件となっている。
最近では、号砲のスイッチとストップウォッチのスイッチをつなげてスタートだけはリンクするようにするシステムもある。
最も正確な計時方法。
号砲とゴール判定装置と時計をつなげて、それぞれの信号を受けた時刻の差を計算して所要時間を測る方法である。
人の手をかけることなく、所要時間を計測するため、より正確な時間を測ることができる。
しかし、特にゴール判定装置が高価な精密機器であるため、大体は大会でしか使わない。
陸上競技ではフライングを防ぐため、特別な装置がある。
特別な装置とピストルをつなげ、号砲から0.1秒までにスタートしたと判定されれば、フライングと判定される。
これも、数百万円もする高価な精密機械なので、全国以上の規模の大会でしか見ることはできない。
ゴール判定
ゴール判定方法は競技によって異なる。
ゴールラインに胴が通過したらゴール。
電動計時では時計につながれたカメラで1秒1000コマでゴールラインを撮影し通過したらゴール判定。
ただし、ゴール判定装置は
パソコンを何台も用意しなければならないほど大掛かりな装置であるため、道路競技では、ゼッケンや選手の体にICチップをつけて、計測装置をICチップが通過した時刻とスタート時刻の差を計算してタイム計測する。
ゴールの壁面にタッチすることでゴールとなる。
電動計時では時計につながれているタッチ板にタッチすることでゴール判定となる。
ゴールラインに前輪タイヤが触れた時がゴール。
電動計時ではゴールテープがスイッチとなったり、前ホーク部分にICチップをつけてゴール通過で計測する方法がある。
計時の結果と成績
手動でも電動でも時間を測ってそのまま結果になるのではなく、ちゃんとした処理をして正確な成績として出さなければならない。
例えば陸上競技選手が、電動計時の成績が向上したときに「1.5秒タイムがよくなった」とか言ったらにわかと言われるだろう。
トラックでのレースでは、手動計時では1/100秒で計測して、1/10秒に切り上げる。電動計時では、1/1000秒で計時して、1/100秒に切り上げる。
道路競走では、手動・電動に関係なく1/10秒を切り上げ1秒にする。
成績が同タイムであっても、明らかに到着した差(1/1000秒以上の差)があれば、違う順位として扱う。
電動計時は1/1000秒で測り、1/100秒に切り捨てる。
手動計時は1/100秒で測った結果が、成績となる。
同タイムの成績は、同順位として扱う。
トラックでは1/1000秒で計時し、ロードでは1秒で計時する。
時間の考え方
時間の計測方法も、スタートのタイミングによって2種類に分けることができる。
スタートラインを超えて、ゴールするまでの時間。
大人数で走るマラソン大会では、スタートの段階で長蛇の列になることが多く、スタートラインへ行くまでにかなりの時間を要することになってしまい、後ろからスタートした選手ほど不利になってしまう。
スタートからゴールまでの区間を走った実質的な時間で見ることができる。
しかし、スタートのタイミングが選手ごとにばらつきがあるため、着順で順位を決めることができないという側面から、公式の成績として見られないことがほとんどである。
スタートの号砲から、ゴールするまでの時間。
すべての選手が同じ条件でスタートしたことになるため、ほとんどの競技において成績として認められる方式。
50m走の謎
野球やサッカーなどの走ることが直接的な勝敗につながらないスポーツ選手の脚力をアピールするために50m走のタイムがアピールされることが結構ある。
陸上競技においては、50m走は計測機器の具合を見るための側面が強いうえ、オリンピックで採用されていないこともあり世界的にもそこまでデータはない。
しかし、
プロ野球選手やサッカー選手のタイムが50m走の日本記録はおろか
世界記録をも超えるケースが起きている。
ちなみに、50m走の日本記録は5秒75、世界記録は5秒56である。
日本記録は北京オリンピック4×100mリレーでアンカーを走り銅メダルを獲得し、100m10秒02、
走り幅跳びで8m13cmの記録を持つ、朝原宣治選手が60mを走った時に
スタートから50mのタイムを記録したものである。
50m走の記録を公表している
プロ野球・サッカー選手と、日本記録・世界記録を比較してみると…
ロッテ・早川大輔 5秒3
世界記録:5秒56
DeNA・
多村仁志 5秒6
楽天・森谷昭仁 5秒65
カープ・赤松真人 5秒67
ロッテ・加藤翔平 5秒68
西武・柴田博之 5秒7
巨人・脇谷亮太 5秒7
日ハム・大累進 5秒7
パウリ・
宮市亮 5秒7
盛岡・松本憲 5秒7
富山・池端陽介 5秒7
福岡・木原正和 5秒7
徳島・杉本恵太 5秒7
浦和・坪井慶介 5秒7
阪神・
鳥谷敬 5秒75
日本記録:5秒75(朝原宣治)
といった次第で、陸上でオリンピックを狙える選手が山ほどいることになってしまう。
これは「人気のある野球・サッカーには陸上界より才能のある選手が集まっている」…という訳ではなく、日本記録よりも速いタイムが出るのはいくつかのからくりがある。
上記の通り電動計時は非常に大掛かりで高価な装置が必要なため、プロ野球・プロサッカー球団といえどもおいそれと購入できるものではない。
このため上記の記録は手動計時によるものと考えられるが、同じ選手の手動計時と電動計時を比較すると、
一般的に手動計時のほうがタイムが短くなる。
100m、200m走の手動記録は、ストップウォッチの結果から1/10秒に切り上げたうえで0.24秒加算すると電動計時の成績とほぼ同じになる。
また、スタートとゴールが同じ
400mでもストップウォッチの結果から1/10秒に切り上げたうえで0.14秒加算して電動計時の成績とほぼ同じになる。
このことを考えると、50m走では0.19秒程度を加算しなければならないことがわかる。
100mを10秒8で走る
長友佑都選手を例に挙げる。
仮に、静止した状態でスタートし、陸上競技のルールにのっとって手動計時したとして考える。
手動計時では0.24秒加算して公式の記録となるため、公式での記録は11秒04と同じ扱いとなる。
したがって、長友選手は11秒を切っていない可能性が高いことになる。
陸上競技ではピストルから閃光が出た時をスタートとして、選手の胴がゴールラインを通過してゴールとなるのが正確な計り方である。
しかし、スタートの音をスタートとすると、音は光より遅れて伝わり、その分スタートが本来よりも遅れるため、記録が短くなってしまうことがほとんどである。
また、上記の通りタイムは末端の数値を切り上げるのが正式な計算法であるが、四捨五入して切り捨てていることも考えられる。
陸上競技では、スタートと同時に10秒間で風速を測定し、追い風で秒速2.0mより速い風が吹いていたら、その記録は公式で認められない参考記録扱いとなる。
風が吹いていないときと、2.0mの追い風が吹いていたときの100mのタイムでは、0.16秒影響することが分かっている。
手動計時の場合であるとそもそも風速を測っていないケースがほとんどなので、風による影響の考えられていないタイムが記録として出ていることになる。
ちなみに日本記録の5秒75は室内で60mを走った時の記録なので、無風の時の記録と同じように考えることができる。
御存知の通り、陸上競技ではスタート時には静止しており、号砲と共に走り出す。
これに対し、スタートまでにある程度加速したうえでスタートラインを通過して走るという加速走という走り方がある。
100m走でトップスピードに乗るのはスタートから30m~50m地点であるとされているため、スタートラインより手前から加速して50mのタイムを測れば静止状態から測るより良いタイムが出る事になる。
野球・サッカーでは加速走で50mを計測することが多く、50mのほぼすべての区間がトップスピードに乗っていることになる。
コレに対し陸上競技における50m走はトップスピードに乗る区間は多くても20m弱くらいなので、日本記録よりも速いタイムが出るという訳である。
ちなみに、人類最速の男ことウサイン・ボルト選手が100mで9秒58をマークしたとき、前半の50mは5秒47、後半の50mは4秒11で走っていたといわれている。
また、リオ・デジャネイロ五輪で4×100mRの3走を走った桐生祥秀選手も高校2年の時のインターハイ100mの決勝では、前半を5秒68、後半を4秒77で走って4位に入賞している。
上に挙げた野球選手やサッカー選手の記録が加速走であったと仮定すると、一番速いとされている平川選手でも1秒以上の差をボルトにつけられているうえに、全国大会レベルの高校生よりも遅いということになる。
また、50m加速走のタイムと、100mのタイムの関係の表も出ており、一番速い平川選手の記録が加速走のものと仮定すると、100mでは11秒60台に相当するものであり、この成績は男子でいうと中学1年生の全国レベル、女子でいうと日本選手権に入賞する程度の成績に相当する。
国際陸上競技連盟の公式ルールによると、100mなどの短距離走では、世界記録は電動計時によるものしか認めていない。
ということを最後に挙げておく。
スタートからゴールまでをストップウォッチで測って誤差を0.14秒以内におさめたかたは追記・修正よろしくお願いします。
- 時計に見えた -- 名無しさん (2018-08-17 21:19:42)
最終更新:2023年06月10日 20:42