\ r'´ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`、::. ___
l} 、:: \ヘ,___,_ ______/::.__| .|___________
|l \:: | | |、:.. |[], _ .|:[ニ]:::::
|l'-,、イ\: | | ∧,,,∧ . |::.. ヘ ̄ ̄,/:::(__)::
|l ´ヽ,ノ: | | (´・ω・`) ,l、:::  ̄ ̄::::::::::::::::
|l | :| | |,r'",´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、l:::::
|l.,\\| :| | ,' :::::... ..::ll::::
|l | :| | | :::::::... . .:::|l::::
|l__,,| :| | | ::::.... ..:::|l::::
|l ̄`~~| :| | | |l::::
|l | :| | | |l::::
|l | :| | | ''"´ |l::::
|l \\[]:| | | |l::::
|l ィ'´~ヽ | | ``' |l::::
|l-''´ヽ,/:: | | ''"´ |l::::
|l /:: | \,'´____..:::::::::::::::_`l__,イ::::
文書が閲覧可能になりました。このままお進みください。
さて。
先ほどの情報だが、全くの嘘ではないが肝心な部分を意図的に抜いている・改ざんしている。
その理由はいくつかあるが、SCPに詳しい諸兄ならば「ジュカノビッチ無双」のセンテンスでそれを理解することが出来るだろう。
アレと同じ理由である。
では、真実の情報とは何か?
まず、例のツルクサが捕食したカネ、あれの行き先は既に判明している。次に、サイト-8108における収容個体数が38で固定されているのは別の理由である。
そしてもう一つ。
例のツルクサはSCP-1259-JPではない。
例のツルクサは、SCP-1259-JPに関連してナンバリングされたオブジェクト、SCP-1259-JP-Aである。
ならば、真のSCP-1259-JPとは何なのか。
まず、オブジェクトクラスは「Uncontained」、つまり未収容。
しかし、これは財団の手を離れている、という意味ではない。実は、報告書執筆現在では、このオブジェクトはオブジェクトとして発生していないのである。
……わけがわからないだろうがもう少しおつきあい願いたい。
そりゃ、「発生すらしてないオブジェクトの報告書がどうしてあるんだ?」と思ってしまうのも無理はない。
しかし、財団はそうしなければならないのだ。
それらの情報を財団がどうやって得たのかは後で説明する。
真の概要
SCP-1259-JP。そのナンバーを与えられたオブジェクトが何かというと、公式には未発見とされている3種類のペプチドの半減期が、2040年代に6.7×10の10乗倍、つまり670億倍に増加する現象である。
これは地球全土で同時多発し、かつ永続する。
つまり、報告書執筆から30年前後あとに起きる現象系オブジェクトなのだ。
実はこのペプチドは現在の生き物の体内にも存在するが、現生の
大腸菌のみが生産能力を持つことに加え半減期が恐ろしく短く、長くとも0.001ミリ秒で既知の物質に分解されてしまう。
そのため、この現象が起きるまでに偶発的に発見される可能性はきわめて低い。
この三つのペプチド、SCP-1259-JP-1は財団の研究者が既に発見しているが、半減期が短すぎて研究できない、よってデータも不明、性質も不明、隠蔽の必要すらない、ということで
Anomalousアイテムに分類されている。
だが、今は一瞬で分解されてしまうこれらのペプチドの寿命が、ある時を境に一気に延びる。
そしてSCP-1259-JP-1は、哺乳類または鳥類に対する、不可逆のミーム汚染を引き起こす。
消化管内に存在する場合、これらのペプチドは、一般的に紙幣や硬貨の材料となる物質を消化する酵素として働く。
これにより、対象はカネを食べてエネルギーにすることが出来るようになるのだ。
ちなみに得られたデータでは、エネルギーへの変換率は金額および2040年代のある時期における相場と比例しているらしい。
脳内に存在する場合、前頭葉、視床下部および海馬に作用するホルモンとして働き、対象はカネを見ると、普通の食べ物と同程度に「食べたい」という欲求を現し、さらにカネは食べるものだという認識を得る。
つまり2040年を境に世の哺乳類と鳥類はカネを食って生きる生物になってしまうのだ。
このペプチドを生み出す大腸菌は極めて一般的に存在するため、現象発生と同時にほぼすべての哺乳類と鳥類が曝露することになる。
こうなると、本来は流通手段であるカネが食べ物になってしまい、価値観の再構築と流通の崩壊、それに伴う社会秩序の再構築……つまり、
AK-クラス:再構築シナリオを引き起こす。
だが、財団世界あるある「どうやって収容するんだシリーズ」の一つ、現象系オブジェクトだけあり、収容は著しく困難である。
しかも内容は判明しているが、それは一瞬起きて後は影響だけが永続的に残る。
手元にあるペプチドは現代では研究しようがなく、変化する原因も不明、これでは手の打ちようがない。
経緯
ところで、未来に起きるはずのこの現象の内実とその影響を、どうやって現在の財団が知り得たのか?
その答えは、SCP-1259-JP-A、例の支線型ツルクサにあった。
実は黒い円盤の部分に記されていた刻印は、このようなものだった。
日本生類創研 204▮年製作
そう、開発年が書かれていたのだ。これにより、このツルクサは何らかの手段で未来から送られてきたものだと判明した。
このツルクサどもの体組織には例のペプチドと酷似した構造の酵素が存在し、カネと接触してからどこかに送るまでのわずかな時間でその表面の一部を溶かし、最低限のエネルギーを得て生きている。
ところがツルクサ自身はこの酵素を生産できないため、作られた時に供給された分を貯蔵・使用している。
さらにこのツルクサ、実は硬貨に対する区別もあいまい。さすがに形が違う、穴が開いているなどであれば拒絶するが、材質が同じで形が硬貨であれば問題なく食べてしまう。
そして、ナンバリングの後に数字やアルファベットが続くのならば関連オブジェクトが存在するということ。
-1の次が-2でなく-Aならば、-Bがあるということ。
SCP-1259-JP-B、それは金色に塗装されたポリエチレンのバケツである。
ツルクサであるSCP-1259-JP-Aが食ったカネは、未知の経路を通じてこのバケツに溜め込まれるのである。
では、このバケツの在り処、すなわち金は一体どこに送られているのか?
財団が未来の情報を得た経緯は、当初SCP-1259-JPのナンバーを与えられていたこのツルクサに対する、発信器と音声記録装置を埋め込んだ偽硬貨を用いての実験で記録された音声である。
それは男性2人による会話であり、その中に「30年物の古銭だが、最近は質の悪いものばかりだ」という旨の発言が記録されていた。
どうやら2040年代には既にニッソこと日本生類創研は壊滅しており、この男性二人は元職員らしい。
未来の時代においてはカネが食べ物であるため、古銭を売って生計を立てようと、古巣の置き土産であるこのツルクサ&バケツを用いて2010年代の日本からカネを奪っていたようだ。
しれっと流されてるが、ツルクサを過去に送り込む方法があるのか未来世界……
で、この記録から、カネの行先が2040年代の日本だと感づいた日本支部だが、アメリカ支部が収容している例の首相の墓地よろしく、未来の情報が認識されるとパラドックスが起きかねない。
そのためこれらに関する情報はごくごく一部の職員にのみ明かされ、さらにこれらの情報を新しく閲覧する場合は事前と事後に反ミームを用いた記憶処理を行うことで情報を完封している。
未来からのメッセージ
これらのことを踏まえた財団日本支部は、偽硬貨に電波発信装置とデータ送受信装置を組み込んでツルクサに食わせ、未来に送り込んだ。
この目論見は当たり、未来の財団が発信された電波をキャッチして機動部隊を急行させたところ、先ほどの音声記録のものと思しき男性2人とSCP-1259-JP-Bを確保。これにより、現在と未来の財団の間で意思の疎通が可能となった。
そして、未来の時間における日本支部の暫定理事の一人は、自分たちの時代で起きている出来事を伝えるべく、10000番台のナンバーが振られている現象系オブジェクトについての情報を文書として送信。
これを受けた現在の財団は、そのオブジェクトに改めてSCP-1259-JPのナンバーを割り当て、捕捉済みのツルクサには-Aのコードを割り当てた。
その上で表向きには、ツルクサに対してSCP-1259-JPのナンバーを振り、それを前提としたニセの報告書をSCiPNETに保存したのだ。
送られてきた文書の内容は以下。
過去の財団職員諸君へ
諸君は私のことはよく知っている筈であるから、特に
自己紹介をする必要は無いだろう。
204█/11/██、SCP-1████-JPは突発的に全世界を覆った。おそらく、原因などというものは無かった。そこには、なすすべなくそれまでの「正常な生活」から引き剥がされていく人類の姿しか存在しなかった。日本支部理事会、O5評議会ですら、あれの魔の手を逃れたものはいなかった。
だが、反撃の手段が完全に失われたわけではなかった。非常に幸運なことに、私は体質上、SCP-1████-JP-1の影響を受けずに済んだ。また、他のSCiPに対応するために特別に養育されたバブルボーイたちにも、予想していた形とは違ったものの出番が与えられた。被害を受けなかった者の特徴からSCP-1████-JPの正体は即座に看破され、対処法の策定に財団の叡智が注がれた。
財団が持つ技術は30年前と比較すると大きく進歩している。████kHzの電磁波を用いた全世界的なDクラス記憶処理、遺伝子除去処理を施した生物の急速拡散による異常遺伝子の淘汰、反ミーム-抗ミームクラスター弾頭を搭載したICBMでの異常文献・異常記録の広域破壊、我々はこれらの技術をふんだんに活用することで、AK寸前だったこの騒動を完全に収容・隠蔽し切る道筋を打ち立てたのだ。
私も、もう間も無く現在の職務を降りて、元のサイト管理者に戻ることが可能になるだろう。だがそれでも、「空白」の期間は半年を数えることになった。そして我々は今になってようやく、SCP-1259-JPの起源が「空白」にあったことを知ったのだ。
諸君がSCP-1259-JPの収容、ひいてはSCP-1████-JPの収容を確実にするために必要な事実が2つある。1つは、いまサイト-8108に存在するSCP-1259-JPが全部で38個体であること。もう1つは、現時点ではこのオブジェクトに1259ではなく1████のナンバーが振られていること。
これらが極めて重要な意味を持つことは今更説明せずともよいだろう。そしてこれらは同時に、204█/05/██まではこの世界がどうにか存続することを確定させるための必要条件となるだろう。
我々が諸君に与えることが可能な「現在」は確固たる胴体だが、さらに先にある未来が、再び別の形で訪れる世界崩壊の時に切り捨てられる尾部でないと保証することは不可能だ。ゆえに我々は、近日中に諸君との交信を打ち切るべきだと考えている。我々が、そして諸君が常に脆い吊橋の上に存在していることを忘れてはならない。
確保、収容、保護。
未来の財団も決して手をこまねいてはいなかった。格段に進歩した技術を総動員してK-クラスシナリオを水際で阻止、全てを収集する道筋を確保していたのだ。
現在の特別収容プロトコルはこれらの情報に基づいて策定され、双方の財団の合意によって偽硬貨は破棄、実験に携わった機動部隊はDクラス記憶処理を施したうえで解散となった。
そして、2040年代の6月のある日が来たならば、偽の報告書は破棄され、このオブジェクトには未来におけるナンバーが割り当てられる。
来るべきその時まで、財団の戦いは続くのだ。
ちなみに
未来において、SCP-1259-JPの影響を逃れた日本支部暫定理事だが、ちゃんと署名があった。
日本支部暫定理事"金蛇"
爬虫類なら影響は受けないね、確かに。
ところで
ここまでだと、項目名の意味が分からない人が多いだろう。
何せ「金」はわかっても「地獄」の部分が、K-クラスシナリオによる常識崩壊世界にしか関連付けられない。
それには、元記事におけるミームエージェント画像に添付された、恐らくは「金蛇」からのメッセージが示している。
いわく、
彼の送って来たメッセージにより、SCP-1259-JPを完封する手順は現代において確立された。
それは同時に、現代の時間は彼の時代にはつながらなくなった。
観測されなくなった未来は、消えるのみ。
つまり、そういうことなのだ。
追記・修正は暫定理事の方にお願いします。