登録日:2017/08/03 Thu 23:40:00
更新日:2025/04/19 Sat 00:55:54
所要時間:約 33 分で読めます
おや 反応が消えていますね
おめでとうナナチ…ついに成し遂げたんですね
あなたには沢山のお礼が言いたい
是非とも また会いたいですね
「
メイドインアビス」の登場人物であり、作中世界における生ける伝説の探窟家
「白笛」の一人。
二つ名は
『黎明卿』『新しきボンドルド』。
初登場は3巻第20話から。
◆概要
『深界』五層「なきがらの海」にある拠点「前線基地」に居を構える科学者にして探窟家。
いつも前面に紫色の光が灯った細い縦スリットが一本入った黒い金属製のフルフェイスの仮面を被っており、素顔は不明。
首から下も無骨な黒いパワードスーツを着こんでおり、体格以外その身体的特徴を窺い知ることは出来ない。
ちなみに映画の等身大パネルを参考にすると身長は180cm台後半くらい。
ビジュアルだけ見れば人間というより
ロボットの類である。
ダフトパンクにちょっと似てる。
ちなみに
子供持ち。
そして『メイドインアビス』を読む読者に強烈な陰鬱さと度し難いインパクトを植えつけた元凶の1人。
◆人物
上記の通り非常に非常に怪しい出で立ちだが、基本的には物腰が穏やかで腰の低い紳士的な人物。
一人称は「私」で、「~です」「~ます」口調。
他者への情や愛も深く、分け隔てなく他者に愛を注ぐ慈善家としての顔も持つ。
性格も非常にポジティブで、落ち込んだり声を荒らげたりする姿は一切見せない。
口癖として驚いたり感心すると「おや」という感動詞を漏らし、場合によっては「おやおや」「おやおやおやおや」と重ねたりもする。
また、賞賛すべきことがあれば、それが子供であろうと見下したりすることはなく、素直に「素晴らしい」と褒め称える。
探窟家としての彼は10年ほどで
- それまで不可侵だったルートの開拓
- アビス深層での活動拠点の確保
- アビスから襲い来る甚大な数の羽虫の殲滅
- アビス各層の上昇負荷の正確な症状の検証及び基準の制定・確立
など、前代未聞の偉業をいくつも成し遂げ、人類のアビス攻略を一気に推し進めた正真正銘の偉人でもある。
作中におけるアビスに関わる人類の進歩と発展の最大の功労者と言っても過言ではない。
ちなみに、リコが劇中で食べていた
カロリーメイトのような栄養食「行動食4号」を発明したのもこの人である。
精神の歪み
愛を尊ぶ博愛主義者的な性格は紛れもなく本物であるが、その本性は端的に言ってしまえば狂科学者。
「アビスの全てを解明し人類の新たな夜明けを見る」と、掲げる目的や行動指針“だけ”を見ればものすごーくポジティブで夢や希望に溢れた人物。
ただアビスの研究に励んでいるだけならいいのだが、ボンドルドの場合、
アビスの謎の解明に役立つならばどんなことでも躊躇いなく実行する。どれほど残虐な、非人道的な所業であろうと、実行する。
作中で確認できるだけで
- 国家機密漏洩(推測)
- 環境破壊
- 違法薬物実験
- 死体損壊(というか被験者を生きたまま解体しているのでバラバラ殺人に近い)
- 人間の洗脳&奴隷化
- 誘拐及び軟禁
- 詐欺
と、捕まればそれこそ極刑待ったなしクラスの犯罪行為を働いており、実際外国から指名手配され追われている身でもある。
しかし彼を追った賞金稼ぎが軒並み行方不明になっている事、白笛という肩書き、そして何より滞在している場所が場所なので、事実上放置されている状況にある。
直接描写されたものだと、
等、枚挙にいとまがない。
また、実験の過程で被験者が苦痛を味わって死ぬことを逃げられない状況になってから明言するなどサイコパス的な感性も持ち、倫理観は完全に破綻している。
なお、その被験者のひとり=ナナチはこのことがきっかけで深いトラウマを負っているのだが、当のボンドルドはナナチに「かわいいですね」「是非また私のところに来てください」と言って手厚く可愛がるなど、どこか矛盾した言動も散見される。
また、この命をあまりにも軽く扱う姿勢は他人のみならず自身の命も対象内。
自分の命すらまるで消費物であるかのように扱うその姿勢は常人には理解することすらおこがましい。
そもそも場の空気を読めてないような描写があり、ボンドルドに激怒したレグが発した「何者だ」という発言を額面通り受け取り「私はボンドルド……」と自己紹介を始める、レグを傷つけてナナチの逆鱗に触れた際には謝るどころか「元には戻せませんが可愛く繕ってあげます」とズレた内容の代案を出す、など、どこか頓珍漢なやりとりも散見される。
そもそも彼の二つ名「黎明卿」がそのなりふり構わぬスタンスで古き良き伝統や探窟家の夢、浪漫、誇りを丸ごと踏みにじりつつ人類の発展と夜明けを齎してきたことに由来するので、彼に配慮なんぞを求めるのがどだい無理な話ではある。
そして何より厄介なのが、ボンドルドは先に挙げたような行為をほぼ善意で行っているということ。上で挙げられていた物騒な行為、全てがである。
知的好奇心を満たすという欲望こそあるが、基本的に
- 人類を滅ぼす
- 世界を征服する
- 絶大な権力や富を得たい
等、そういった腹黒い野望や俗な野心はない。それどころか、彼個人はむしろ自身の研究で誰かが幸せになることを望んでいる節すらある。いや、ホントかよ・・・。
ボンドルドに怯えるナナチを研究所に呼び戻そうとした時の誘い文句が脅迫でも懇願でもなく「“もっと”楽しいことが待っていますよ」だったり、人体実験を行って殺した相手に、謝罪ではなく“自身に協力してくれた”ことへの感謝を述べていたりするシーンがその象徴だろう。
そもそも劇中描写だけを取り上げてもボンドルドは何だかんだ結果そのものは出しており、彼のおかげで何とかなっていたりする場面は少なくない。
特にリコに関しては後述の白笛の仕組みと祭壇の「白笛がなければ先に進めない」という点から、ボンドルドが生贄を用意していなければ人殺しに走っていたか冒険をあきらめていたおぞましい可能性を考えなければならない立場である。
ページ冒頭の台詞は、ナナチが、死にたくても死ねない「成れ果て」となった親友ミーティを断腸の思いでレグに殺してもらうことを決断し、親友との別れの哀しみに慟哭しているシーンの直後に言い放った台詞にである。
「親友を楽にしてあげたい」という願いだけを見て、それまでの過程を一切顧みないボンドルドの歪みを表す象徴的な発言。
あたかもナナチの理解者であるかのように振舞うが、ナナチとミーティがこのような目に遭ったそもそもの原因は、ボンドルドが二人を騙して人体実験を行ったからである。
誰に対してもこのような態度なので、作中人物からの評価は
- 筋金入りのろくでなし
- ゲス外道
- イカれ外道
- 奈落に怪物がいるとするなら恐らくああいうのを言うんだ
と散々である。当の本人は気にしていないが。
読者からの評価はだいたいこの記事のタグの通り。
家族とは血の繋がりのみを言うのでしょうか?
私はそうは考えていません。
慈しみ合う心がヒトを家族たらしめるのです。血はその助けに過ぎません。
愛です、愛ですよナナチ。それに家族とは他人同士が出会い築き上げるものなのですよ。
と語るようにたびたび「愛」を口にし、愛情表現を欠かさないのも彼の特徴。
とくに義理の娘であるプルシュカに対しては、血の繋がりなど知ったことかとばかりに深い愛情を注いでいる…が、5巻、6巻の展開を見る限り、彼のいう「愛」がまっとうな形をしていたかはかなり怪しい。
作中で彼を評する言葉の中に「得体の知れない何かが仮面被ってヒトの真似事をしている」というものがあるが、彼の本質はそれに寸分違わない。
思想や性格、掲げる目標などは非常に善良でありながら、実際の所業や行為は誰が見ても悪と呼ぶしかない外道という、2つの側面が異常に乖離していながら本人は全く気に留めていない狂人、それがボンドルドという人物である。
◆人間関係
「祈手」
ボンドルドが率いる探窟隊。隊自体を指して「祈手」と呼ぶこともあれば、そこの隊員を指して「祈手」と呼ぶこともある。
全員がボンドルドのものとは異なるデザインの仮面とスーツに身を包んでいるのが特徴で、基本的に見た目からは素顔や性別は判別困難。
ボンドルドの研究に従事する研究員、およびその研究の実験台としての側面も持ち、遺物の移植等によって人外じみた見た目になっている者もいる。
如何にも不気味な印象を受けるが性格自体ははっきりしており、
また、休暇を取って地上に帰還することもあるなど彼らなりのプライベートも存在する。63話の描写からすると、仮面を被るのは業務時間の間だけである様子。
親切にアビスについての情報を教える者もいれば、ボンドルドの狂気じみた人体実験を嬉々として行う者もいる等いろいろ居るが、全員性格の根幹は非常にシビア。目的達成のためなら躊躇なく他の探窟家を犠牲にして任務を遂行しようとする。
とはいえ他の探窟隊のメンバーが一堂に会する「合同大探窟」へも参加するなど、完全に孤立したり忌避されたりしている訳ではない。
ちなみに、白衣を着ている個体は「死装束」という戦闘に秀でたメンバー。
「ところで、ここは地上60日以上前に『禁域』に指定されているはずだが…知らずに入ってきたか いや無理もない」
CV:下山吉光
レグ達一行が初めて遭遇した白衣の祈手。4層で大繁殖していたクオンガタリの調査を行っていた。
祈手共通のフルフェイスマスクの服装だったため当初は不穏な雰囲気だったが、
本人の性格は初対面のレグに注意喚起を行ったり、彼らが落とした無尽槌を拾っていても「もう落とすな」と言ってすぐにレグに返却したり、
クオンガタリの生態を丁寧に説明するなど悪党ではない。寧ろお人好しな部類だろう。
が、同時に調査に向かわせた探窟家の帰還を待たずに、探窟家諸共クオンガタリの巣を焼き払う冷徹な一面を持つ。
ただし、これはクオンガタリが活性化寸前で、速やかに対処しなければ事態がさらに悪化することを危惧しての判断であり、
彼の判断・行為は、大局的に見れば『クオンガタリの殲滅』のために適切だったと言える。
「ハワユードコカ04」で、食事中の姿で再登場。
後述のペイジンが存命であるためトコシエコウの花畑を焼いた一件より前の時系列のはずだが、日頃から火炎放射をブチかましているのか「火炎野郎」というあだ名や「灰のギャリケー」という二つ名を付けられていた。
こちらでは合同大探窟の戦隊長に抜擢されており、その戦闘力の高さが窺える。
白衣を着た祈手。ボンドルドの信頼も厚く、白衣の下に暁に至る天蓋のフルセットを装備していた。
劇中ではリコとレグの作戦により絶命した『ボンドルド』の仮面を引き剝がして次の『ボンドルド』を務めている。
5巻終盤でレグと正面から渡り合っていたのはこの人の肉体。そして名前が明らかになったのはつくし卿のTwitter。
四本腕のパワードスーツを着込んだ祈手。
精神隷属器の管理も担当していたが、ボンドルドによってコントロールされレグ諸共道連れにする形で引き込んで実験場に引きずり込んだ。
名前が明らかになったのはつくし卿のTwitter。
「もったいねぇなぁ アビスにはうまいものがいっぱいあるのになぁ」
CV:川田紳司
「祈手」の中でも明確なキャラ個性を出してきた人物。
医学的知識に富んでいる様子が見受けられ、ボンドルドを「旦那」と呼んで気軽に接している。
上昇負荷で人格がトんだ幼いプルシュカの治療や衣食住の面倒を見ており、フランクな言動と気さくな人柄からプルシュカにも懐かれている。
ただし名前や個性が明らかになったのは彼の死後であり、彼自身はレグ達との最初の交戦であっさり死んでいる。
なお原作では分かり難かったが映画での登場時には自意識を奪われ他の多くの祈手たちと共々様子がおかしくなっており、上記の個性を見せることはなかった。
ちなみに、担当声優の川田氏はテレビアニメ版でボンドルドの集めた子供達に対する人道面への懸念を具申した人物も演じているが、彼がグェイラ自身なのかは不明(グェイラはボンドルドより長身だが、この人物は背が低いため別人か)。
黎明卿に依頼されて先述のギャリケーや他数人の月笛と共にクオンガタリ殲滅の任務に就いていた月笛の探窟家。
彼は花畑の急所となる地点に燃焼材を散布しており、クオンガタリに襲われる事なく己の任務を完遂させたが、安全圏への待避が間に合わないとギャリケーに判断され火を放たれてしまった。
炎に巻かれるか活性化したクオンガタリに頭の中を食い荒らされるか、いずれにせよ助かりはしなかったと思われる。
「ハワユードコカ04」でも登場。ハボルグが総隊長を務める合同大探窟に参加していた。
シルエットのみの登場で素顔は不明だが、ハボルグの指示に軽い口調で返事をしていた事からグェイラのような気さくな性格だったのかも知れない。
「鬱陶しいですよ チンカス」
スラージョ率いる呪詛船団が前線基地を訪れた際、ビドゥーと共に迎撃に当たった祈手。白衣を羽織っており死装束である。
初登場時、胸に微かな膨らみがあるように描かれている事から女性ではないかと思われていた。
再登場時は呪詛船団の料理番、ネヨーゼルを伴い深界六層を行軍しており、この時は胸の膨らみがハッキリ描かれたのとネヨーゼルから「ちゃん」付けで呼ばれていた事から女性である事が確定した。女体ボンドルドになっていた可能性すらあった
また仮面のバイザーを上げて素顔を晒しているが、ショートカットでボーイッシュな美形。
性格はドライで毒舌家だが、ボンドルドの事を「ボンドル殿」と呼んだりネヨーゼルに関する祈手内での情報共有をド忘れするなどやや天然な所もある。
探窟家としての情熱は失っていないらしく、六層の探窟を「ネヨーゼルがいなければ楽しい」と言い、探窟家の見果てぬ夢である深界七層も見てみたいと熱っぽく語っている。
CV:下山吉光
第四層でタマウガチに襲われていた人。
劇中でボンドルドと関わるシーンは無いが、後に原作者・つくし卿の口から実は彼も「祈手」の一人であることが語られた。
この時は休みの日だったので仮面をつけていなかったらしい。
レグが火葬砲を使って彼を助けたことでボンドルドに火葬砲の存在を知られてしまったのが、レグが「前線基地」につくなり(ボンドルドに腕のことを何も話していないのに)腕を切られた遠因だとか。
何気に「ハワユードコカ04」にも登場しており、ギャリケーや他の祈手と共に食事をしていた。
ちなみに担当声優の下山氏は映画版で上記のギャリケーも演じている。
ボンドルドが率いる探窟隊「祈手」のうち、単純作業を担当する裏方。
「栄養剤だけで毎日毎日長時間働いててえらい(プルシュカ談)」「糞便を垂れ流して単純作業を繰り返している(レグ談)」とどう見ても人間扱いされておらず、
彼ら自身も頭が(穴が開いていると言っていいレベルで)異様に凹んでおり、首に乱雑に管が突き刺さっているなど、まともな人間とは思えない醜怪なビジュアルをしている。
人語も介さないらしい。
映画には登場せず。
同じく白笛の探窟家・ライザの娘。この作品の主人公。
恐ろしいことにリコもボンドルドと同類の狂人であることが示唆されており、ボンドルドも自身の意図を見抜いた彼女を「君はこちら側の存在かもしれませんね」と評している。
ボンドルドと違って人間性はまっとうだが、実際、彼女も意識のないレグに焼けた石炭を食わせたり高圧電流を流したり、さらにはナイフで腕を切ろうとしたりと、やっていること自体はボンドルドと大差なかったりする。
念のためもう一度言っておくが、この作品の主人公である。
レグ
他の相手と同様、腰の低い態度で接するが、レグを傷つけられて激怒するナナチに「君のお人形だったんですね」と言うあたり明らかに「ヒト」として見てはおらず、「弄りがい
(物理)のあるオモチャ」「解体して研究してみたいサンプル」ぐらいにしか見ていないことが窺える。
ボンドルドがアビスに連れてきた子供のうちの一人。
他の子供と同じように過酷な実験に利用されたが、その中で奇跡的に「祝福」なるものを獲得し生き残った貴重なサンプル。また、彼の人体実験手術の助手でもある。
ボンドルド自身はナナチのことを「貴重な協力者」と称して非常に大事にしており、彼女(?)のことを丁重に扱うだけでなく、その身を案じてもいる。
……が、ナナチからは自分達を酷い目に遭わせた狂人として激しく嫌われており、その関係性は若干すれ違っている。
プルシュカ
「前線基地」に住むボンドルドの娘。ボンドルドを「パパ」と呼んで慕っている。
帽子の中に飼っている不思議な動物「メイナストイリム」こと「メイニャ」(CV:原奈津子)と共に暮らしている。
銀髪で目は赤く、5層の呪いの後遺症で前髪が渦を巻いたようになっているのが特徴。
性格はあのボンドルドに育てられたとは思えないほど非常に活発で明るく無邪気。
アビスで生まれ育ったために地上に出たことはなく、人付き合いもボンドルドと「祈手」だけであったため人見知りを拗らせていたのか、
最初は無愛想だったものの、
リコたちと打ち解けてからは本来の性格である無邪気さをあらわにする。
冒険に対し非常に希望を抱き、尊敬する父と一緒に冒険をしたいと考える一方でボンドルドの残酷な所業や経歴については一切知らされていない。
なおペットのメイニャだが、本来の名前は『変化の子』という意味。
メイニャを父から渡される前に「イリム」という少女がボンドルドに呼び出されており、そのことを踏まえるとメイニャの正体は動物へと改造された人間という説が存在する(なお、イリムの担当声優はメイニャと同じ原奈津子氏である)。
ちなみにねんどろいど化されたがなんとカートリッジバージョン付きという一粒で二度おいしい仕様だった。人の心?知らない子ですね。
◆戦闘力
どこにも行ったりなんかしません。あなたの愛があれば、私は不滅です
探窟家の頂点である白笛だけあり戦闘力は一級品。
全身のパワードスーツに無数に搭載した遺物の力とそれらを的確に運用できる冷静で優れた頭脳、豊富な経験から来る対応力はずば抜けて高い。
一方で、ボンドルドが死ぬとその度に「祈手」が新たなボンドルドを名乗り、あたかも不死身ともとれる態度を取る。
そのカラクリは特級遺物『精神隷属器』によるもの。
そもそもオリジナルのボンドルドの肉体は既に死亡しており、現在『ボンドルド』を名乗って活動しているのは、配下の「祈手」達。
彼らは皆『精神隷属機』の力によってオリジナルの意識を植え付けられた「ボンドルドの複製品」へと改造されており、全員が『ボンドルド』の分身でありバックアップとしての役目を担っている。
祈手達はいわゆるP2Pシステムのように『ボンドルド』の意識を"同期"しているため、
仮にあの縦線仮面を被った個体が死んでも『ボンドルド』が消えることはなく、別の「祈手」の肉体を借りることで容易に復活できる。
すなわち、探掘隊「祈手」それ自体がボンドルドという一つの群れであり、またボンドルドとは祈手間で共有される概念そのものとでも言うべき存在になる。
この性質のため、「祈手」が一人残らず死亡し切らない限り、『ボンドルド』という存在を完全に滅ぼすことは不可能。
この仮面は祈手とリーダーたる『ボンドルド』を区別するシンボルであると同時に、娘であるプルシュカに自身が父親であると刷り込ませる目印にもなっている。
祈手は基本的に個々の意思を持って動いているが、ボンドルドの意思で遠隔操縦(生コメンタリー上映会の解説では「オートボンドルド」や「並列ボンドルド」と呼称)することもできる。が、この時は操られる側の祈手の上からボンドルドの意識を被せて全知覚情報を同期する為、同期ラグで祈手の動作や思考が緩慢になるというデメリットがあるが、ボンドルドはこの状態の祈手の知覚をリアルタイムで全て取得できるメリットもある。
ナナチが劇中で言っていた「すっとろい祈手」とはこの状態のこと。
原理は異なるがナナチの視覚にもボンドルドに届く仕掛けが施されており、ナナチは知らず知らずのうちにリコ、レグそしてナナチ自身の監視役として、ボンドルドに情報を送り続けていた。
「まさかナナチの排泄まで拝むことになろうとは……興味深い」
ちなみにボンドルドは前述の通り指名手配をされ追われる身であり、その首(懸賞金)を狙う者は多く「いた」。
何故過去形なのかというと、彼を捕らえようと追いかけていった者は次々と行方不明になってしまい、その結果ボンドルドに近づこうとする者がいなくなってしまったから。
祈手の正体が気になるところだが、つくし卿曰く、(前述の賞金稼ぎ含め)自ら祈手入りを志願する者は結構多いらしい。
精神隷属器の使用も強制されるのではなく本人たちの志願である。
また作者によれば精神が狂っているため精神攻撃は無効化される模様。
使用装備
探窟・戦闘向けの祈手のためにしつらえた特注の戦闘鎧。
遺物と生物由来の繊維を複雑に組んで作られ、内部に様々な武装を内蔵する。
『ボンドルド』の意識共有を助ける仕組みも施されているが、この装備を以てしてもアビスの上昇負荷の前では無防備に等しく、別途に上昇負荷対策を講じる必要がある。
下記のカートリッジはそんな上昇負荷対策の1つである。
戦闘以外にも祈手達の役割によって様々な機能のカスタマイズや調整が施されており性能や価値はバラバラ。
中でもカートリッジを搭載したタイプは桁外れの武装を搭載した、ここ一番の勝負服ともいうべきモノである(もしかしたら肉体も含めての「勝負服」なのかもしれない)。
手甲に内蔵され高速で射出される、遺物『呪い鋼』を加工して作った矢。
元々は触れた質量に応じて上昇負荷がかかる遺物であり、この針は撃ち込んだ相手の肉体に強制的な上昇負荷を発生させる。
生コメンタリー上映会によると針は身体に刺さらず皮膚に同化する。
ただし、アビスの環境に適応した原生生物は上昇負荷の影響を受けにくいため、『呪い鋼』の餌食となるのはもっぱら人間、すなわちコイツは明確な対人用兵装である。
ボンドルドの人付き合いがうかがい知れる装備。
なお、原料となる『呪い鋼』はボンドルドの手で秘匿されている。
自身が装備する仮面の隙間から無数に照射される、高い反射性を備えたビーム。
強く標的を意識することで、たとえ標的が複数で射線が通っていなくとも標的を撃ち抜くことが可能。
逆に、斜線上に居る相手にビームが被弾していても、それが強く意識した標的でなければダメージを受けることがないのが欠点と言えば欠点か。
分かりやすく言えばホーミングレーザー。
この仮面は等級不明の遺物「光の階段」を加工したもの。
腕の装置から発射される黒い触腕。見た目的には極太の蜘蛛の糸と言った感じ。
厳密に言えばアビスの原生生物由来の加工品を装置に詰めたもので、遺物ではない。(価値としては二級遺物相当らしい)
触腕は極めて強靭で伸縮性にも富み、標的を瞬時に絡め捕ったり移動用のロープ替わりに使用できる。
ただし扱い自体は非常に難易度が高く、ボンドルドは何人もの自分を使い潰すことでようやくコントロールのコツを得た。
肘に搭載した等級不明の遺物。
肘から謎めいた高出力のレーザーの刃を形成し触れた物質を分解し消し飛ばす。
レグの「火葬砲」と同質の兵装であり、不死と化したミーティすら再生不能の傷を与えるボンドルドが持つ遺物の中でも最大火力を誇る遺物。
ビジュアル的にはビームサーベル。
欠点は極短時間しか展開できず、おまけに超高熱を発生すること。
この高熱によって他の遺物に干渉されるのを防ぐために肘側に装着されている。
ちなみにこの遺物は一切届け出を出さずボンドルドが秘匿していた代物であり、名称はボンドルド自身が考案したものである。
解説するナナチ曰く「ノリはリコと同じ」。
ボンドルドが背中に背負うアイテム。
カートリッジ自体は大きさは子供が抱えられる程度のサイズで、装備時には暁に至る天蓋の背中に装着したボンベ状の装置に装填する形をとる。
自分が受ける上昇負荷を肩代わりさせて力場が齎す『呪い』の悪影響だけをカットし、残った上澄み部分を『祝福』として装着者に還元するアイテム。
ある種のろ過装置でありこれにより深層6層の負荷すら克服できる。
おやおや レシーマが終わってしまいました
心優しい傑作の一つでした
将来の夢はお姫様だったんですよ
可愛いですね
その材料は貧民街に住んでいたり、口減らしのため身分を失った幼い子供。
製作する際は脳と脳から繋がる背骨の一部、数日間生存可能な程度の消化器官のみを残し、それ以外の部位を丁寧に生きたまま徹底的に削ぎ落して小さくしたモノを再度肉と皮で包み、カートリッジの容器を骨替わりとして詰め込むことで完成する。
当然加工中は壮絶な苦しみが発生し、おまけに中身の子供はここまで加工されてもまだ生きている。
原料の子供は一緒に封入された薬液で恍惚と恐怖を操作され、死ぬまで痛みに苦しみ続けるという。
ナナチ曰く「肉の呪い避け」。
要は装備したカートリッジ(=子供)に、自身が本来受けるべき上昇負荷を押し付けるアイテム。
中の子供が呪いを浴びて死ぬと二度と使えないために一回使いきりで、ボンドルドのものは呪いの許容限界を超えて使用済みになると順次装置から排出される仕掛けになっていた。
ただ単にカートリッジに『加工』して装備すれば効力を発揮するわけではなく、事前に肉体、特に目や耳等の感覚器官をすべて切除しておく必要があり、さらに加工されてなお使用者へ愛を向けている必要がある。
カートリッジにされた子供たちは互いに出会わないように前線基地の別々の区画で育てられており、それぞれ自分だけがボンドルドの特別な存在と思っていた。
ちなみに劇場版のボンドルド戦のBGMには、カートリッジにされた子供たちのボンドルドを応援する声が入っている。
なお、作中で「複製した自分をカートリッジにすれば良いじゃないか」とリコに指摘された際には「現在の自分(ボンドルド)の精神はヒトはおろか生物ですらないと力場に拒絶されている」と答えており、どうやら「祈手」を加工して作ったカートリッジも試したがダメだった様子。
心外ですよね。
白笛たちがそれぞれ所持する笛型のアイテム。
名前の通り「白い笛」であることは共通だが、そのデザインは持ち主によって異なる。ちなみに、ボンドルドのものは組んだ手のようなデザイン。
吹くことで特定の遺物や仕掛けを作動させる効果を持つが、実はこの笛、人間の遺体からしか産出されない。しかも笛を構成する素材である「命を響く石」の性質上、「材料にされた人間が死ぬ間際に強く親愛し信頼していた人物」にしか使えないという厄介すぎる性質を持つ。
このため、ちゃんと使える状態のものを入手するには親密な誰かに同意を得て死んでもらうしかない。
この笛の存在が、カートリッジ制作の着想の元になっている。
今のところ、作中で白笛の出自が明らかになっているのはボンドルド、リコ、ライザ。
オーゼン・スラージョ・ワクナの笛については不明である。
ボンドルドは後述のとおり『精神隷属機』での意識のコピー元になったボンドルド本人の肉体を加工したもの、
リコのものはカートリッジにされて死んだプルシュカが姿を変えたものである。
ライザは夫のトーカ……ではなく、「ドニ」という人物。古めかしい男性口調でリコにアドバイスを授けたが、それ以上のことを語ることなく黙り込んでしまったためライザとの関係性はいまだ不明である。
正式名称不明の遺物。
壊れた仮面の隙間から覗いた異形の眼球。
能力などは不明だが、のぞき穴のない仮面をつけていたところを見るに透視に近いことができるのかもしれない。
ちなみに作者インタビューによって遺物であることが判明した。
正式名称不明の遺物。
レグを容易く押さえつけ、一撃で昏倒させてしまうほどのパワーを持つ。
ボンドルドの肉体と連結しており、血も流れている。
そのため祝福を得た際にはこれにも毛が生えた。
複眼と同じく作者インタビューによって遺物であることが判明した。
正式には装備ではないが一応記載。
祝福により獣化したボンドルドの手足に生成された。
レグの肉体を容易く貫く鋭利さを持つ。
精神隷属機
自身の不死性の根幹を支える遺物。
自分の意識を他人へと植え付けることで自身を“増やす”ことができる遺物で、意識を植え付けられた者同士で互いに意識の共有が可能となる。
たとえるならば「精神のクラウドネットワーク化」に近く、この性質により『ボンドルド』はある種の群体と化しており、この遺物ある限りボンドルドが滅びることはない。
ただし人間がこの遺物による精神の増殖や融合に耐えることは出来ず、使えば精神に様々な異常をきたし、やがて意識が霧散して廃人と化す。
発症する症状は精神の混乱、複製体の裏切り、自他境界の喪失、肉体の制御不能、自意識の崩壊など。
ボンドルドの手に渡るまで何人もの所有者を転々とし、悉く発狂させ破滅に追いやってきた曰く付きの逸品。
こんな危険極まりない遺物を平然と使い、探究心と自我を保っているボンドルドの異常さが見て取れる。
が、ボンドルド自身も精神の複製を繰り返した結果半ばとはいえ破綻してしまっており、その精神性は最早「ヒトではないナニカ」になり果てている。
ボンドルド自身はそんな状況になってもまったく気にしている風には見えないが。
サイズ自体が巨大であるため持ち運びは不可能。現在は「前線基地」の奥に収納されている。
なおこの遺物は触れただけで使用法が触れた者の脳に植え付けられるため、人間はもちろん使用者が動物でも問題なく使用できる。
生コメンタリー付き上映会によるとゾアホリックには生物を引き寄せる性質もありメイニャも引き寄せられていた。
もしリコがメイニャを抱きしめていなかったら、リコにメイニャの精神が植え付けられていたかもしれない所だったという。
◆物語での活躍
20話の初登場の時点で凄惨極まりない人体実験を重ねてきたことが明らかになり、その過程でナナチの親友ミーティを生きた肉塊のようなバケモノに変えてしまったことが明かされる。
4巻で本格的に登場。
娘のプルシュカと共に三人を歓待し、「前線基地」内の宿泊用の部屋を貸し出すが、三人が寝た隙にレグを誘拐。
好奇心から部下の「祈手」に指示して彼に拷問じみた実験を行い、おまけに右腕を切り落としてしまう。
再会直後から胡散臭いとは思われていたが、この件でナナチに完全に愛想を尽かされ両者は決別。
リコ、レグ、ナナチは「前線基地」を離脱しボンドルド打倒に乗り出す。
出て行った三人を数人の「祈手」達と共に探しに行くが、そこで
リコ達のけしかけた凶暴な原生生物「カッショウガシラ」と遭遇。
連れてきていた「祈手」は全員殺され、生き残ったボンドルド自身も所持していた遺物で抵抗するが、
事前に対策を考えていた3人の連係プレーに反撃できずに追い込まれていく。
そんな中、当のボンドルドはというと狼狽えるどころか
連係攻撃で自身を着実に追い詰めてくる3人に震えるほど感激しており、
ボコボコにされながらもその相手を大喜びで称賛するという奇妙な行動に出ていた。
死の間際までも狂ったように「素晴らしい」連呼しながら息絶えた…と思われたが、
持前の不死性を利用して復活すると、娘のプルシュカの目の前で自身が健在であるとアピール。
探窟隊『祈手』は全て私ですよ
と宣言し必死の奮闘で疲労困憊したレグを驚愕させると、プルシュカを眠らせテリトリーである前線基地へと撤退。
3人のいなくなった「前線基地」では、プルシュカの体中の部位にマーキングするボンドルドの姿があった。
ええ 紅を付けたものは全て破棄してください
破棄 破棄
パパ…パパ…あたし…夜明けが…見たい…
ええ 共に夜明けを見ましょう
一緒がいい…一緒に…冒険に…
ええ いつまでも一緒ですとも
決着 『夜明け』の終わり
そして続く第5巻。
リコ等3人がボンドルドの不死性の正体に気が付き、ボンドルド打倒を真に決意し3人が乗り込んできたのを待ち受ける。
ナナチに手引きされカートリッジの存在を知ったリコと遭遇すると、娘のプルシュカをカートリッジに加工しようとしている真意を見破られ、リコから説得を受けるボンドルド。
「きちんと解放しますよ」と告げ、白笛の真実や自身の不死性の真相を悟ったリコを真摯に賞賛するも、その直後暴走し乱入したレグと交戦。
君は奇妙ですね。予備の電源まで吸い尽くしてしまうなんて
電気というより『力』を概念的に取り込んでいるのでしょうか
レグの圧倒的戦闘力にボンドルドは虎の子の装備「暁に至る天蓋」及びカートリッジフル装備で対抗するも、激闘の末に仮面がひび割れ素顔が僅かに露出することになる。
ひび割れから見えるその目は、横真一文字に開閉し、その内部に3つの瞳孔のような穴がギョロギョロと蠢く人ならざる奇怪極まりない目玉だった。
ああ なんと素晴らしい
片腕をもいでしまったことをとても悔やんでいます
その身体…是非欲しい
隠し持っていた遺物装備を全開放して自身に追い縋るレグと渡り合うもナナチの尽力もありレグは正気を取り戻し戦闘を再開。
意趣返しとばかりにレグを深層6層に引きずりこんで再開した戦いの中で、
ナナチが考案したボンドルドの突破口「カートリッジを全て使い果たさせ使用不能にする」という案を実行したレグに次第に追い詰められていき、5層目に復帰した瞬間全てのカートリッジを使い果たしてしまう。
カートリッジにより祝福を得て肉体が異形化していく中、カートリッジの原料となった子供の名を呟き続けるボンドルドだが
ああ…これが『祝福』なのですね…
ターキリ トーレイテア ノベロ…
ああ…本当に素晴らしい冒険でしたね
プルシュカ…
そもそもレグ等と再戦した時点で、既にボンドルドはプルシュカをカートリッジに加工し己に装備していた。
たしかに、きちんと『解放』はされたのだから彼の言葉に嘘はないのだが……でもやっぱり五体不満足で吐き出されるってあんまりだと思うんですよ、卿。
己の利己的な欲望で愛娘をカートリッジに加工した所業を目の当たりにし哀しみと怒りから激昂するレグに対し、ボンドルドはこれまでと同じように、平常運転のごとく「未来」しか顧みない。
…おや
おやおやおやおや 私を仕留めたいと願う君が妙なことを
さあ 次の二千年へ踏み入る準備は整いました 共に夜明けを見届けましょう
何が…夜明けだ…!
愛娘の想いを…あんな形にしていい理由など!!
あってたまるか!!!
ボンドルドとレグの死闘が激化する中、最終的にボンドルドに止めを刺したのは、自身が最初に好奇心で切断したレグの腕を構えたリコによる火葬砲の一撃。
レグに対する非道な行いの因果が回ってきたボンドルドに火葬砲が直撃し、下半身を消し飛ばされたことで遂にボンドルドは敗北した。
両陣営満身創痍の中、戦闘特化の祈手もいないこともありボンドルド側の被害は壊滅的。もはや戦闘続行は不可能。
自身の『憧れ』はここで終わりだとナナチから酷薄に告げられたボンドルドだが、それでもボンドルドは勝者であるナナチやレグ、リコを讃え賞賛。
「君たちの祈りが 自ら道を選び進もうという切なる願いが 私のそれに勝ったのです」と満足げに語り、
前途ある有望な若者が自分を踏み越え先に進み続けることが新たな自身の『憧れ』になったと感謝するほどであった。
自身と刺し違えてでも倒さんとしていたナナチの決意を聞くと、ナナチの可能性と未来が潰えなかったことに対して「実現しなくてよかった」と安堵の言葉を漏らすと、
ナナチ…さあ顔を上げて…
どうか君たちの旅路に…溢れんばかりの…呪いと祝福を…
「…うるせえよ」
偉大な探窟家の先人としてナナチに声援を送り、ボンドルドはそのまま死亡した。
この遺言じみたエールを託されたナナチは、敗北してもなおブレない姿勢のボンドルドに半ば呆れとも諦めともつかない表情を浮かべていた。
一応ボンドルドの切り札とも言える祈手を潰せたこともあってナナチの中のボンドルドとの因縁は一区切り付いた模様。「前線基地」を離れる際のナナチはすっきりした表情を浮かべている。
全ての決着がついた中、6層へ進まんとする3人が見たのは、「前線基地」で3人を見送る「祈手」達と、罅割れた仮面を被った新たな『ボンドルド』であった。
闇すらも及ばぬ深淵にその身を捧げ挑む者たちに アビスは全てを与えるといいます
生きて死ぬ
呪いと祝福のその全てを
旅路の果てに何を選び取り終わるのか
それを決められるのは 挑むものだけです
そう語って彼らを見送るボンドルドの姿は、残虐非道の狂科学者でも悪党でもなく、
危険なアビスの先へと進まんとする有望な後輩達に心からのエールを送る偉大な先輩の姿であった。
娘との関わり
上述の通りアレな人間性のボンドルドだが、引き取った際には呪いに苛まれ自我は愚か人としての見た目をかろうじて留めていた程度のプルシュカを、今のようなかわいらしい少女にまで育て上げたのもまた、ボンドルドである。
当初、部下のグェイラすら匙を投げ彼女の殺処分を提案する中、
喜びしか知らぬ者からは祈りは生まれません
生を呪う苦しみの子…君にしかできないことが必ずあります
君の名はプルシュカ。夜明けの花を意味する言葉です
そう語って彼を窘めて彼女を拾い上げ、甲斐甲斐しく衣食住を世話して育て続けるその姿は紛れもなく父親のそれ。
プルシュカのペットであるメイニャを与えたのもボンドルドである。
そして父の愛情を一心に受けたプルシュカがカートリッジと化しても尚想ったのは、「父と一緒に冒険に行きたい」。
もはや人間とは呼べない肉の塊に加工されてもなお、プルシュカから父への信頼と愛は失われていなかった。
寧ろプルシュカにとって偉大な父の足手まといにならず、父の役に立てて、父の痛みを分かち合え、そして一緒に行動し戦える「カートリッジ」という姿に喜びを見出していた節さえ見受けられた。
ただし強い祝福の力を得るためには「祝福を得る側への深い愛情」が必要になることを考えると、
プルシュカを愛情を与えて育ててた理由は単に「カートリッジの性能を強化するため」という可能性もある。
加えて彼女が常日頃「父と冒険に行きたい」と話していたから、自身と一緒に冒険するためカートリッジにしたのかもしれない。
またその前提で考えると、ボンドルド自身カートリッジの材料となった子供達の名前・性格・個性を全て暗記し、誰がどのカートリッジに入っているのかはっきり識別して大切に扱っていたことも含め、
カートリッジにされた子供たちは皆ボンドルドからプルシュカ並の愛情を与えられて世話され、子供達もプルシュカと同じようにボンドルドを慕っていた可能性も懸念される。
しかし、真に恐ろしいのは我が子を親のように愛しながら殺すことのできる異常性、最初から使い潰す気なのに「必要だから」という理由で心の底からの本物の愛情を注げるところであり、ここにボンドルドの破綻ぶりが如実に現れている。
悲惨な最期を迎えたプルシュカであったが、彼女が最後の最後まで夢見たことは、
父がレグ達と仲直りし、自身と尊敬する父がレグ等3人と一緒に仲良くアビスを探索することだった。
決して叶うことのない夢であったが夢自体は貴いものであり、最後にレグ等を見送っていたボンドルドの姿を見る限り、絶対に不可能とは決して言えなかったかもしれない。
なお単行本5巻の表紙イラストはそんなプルシュカの願いを叶えたIFの光景が描かれている。表紙詐欺?知らんな
ただしこれらは全て推測の域を出ず、真相やボンドルドの真意は不明。
子供に真の愛情を注いでいたとしても、あるいはただのモルモットとしか見ていなかったとしても、ボンドルドの度し難さも狂人という評価も揺るがないことだけは事実である。
◆その後
彼(ら)自身は「
前線基地」にとどまったため以降は登場しない……かと思いきや、ちゃっかりリコに色々アビスのことを話していたらしく、
その後も行く先々でリコの回想中にアドバイザーとして登場するという嫌な形で出番を貰っている。
また、6層の
成れ果て村にもミーティを連れて訪れ交流していた事があり、それが後に一悶着起こすことになる。
何だお前。
◆余談
祝福についての考察
アビス深層では、意識そのものが大気中に「力場の流れ」として発散する性質がある。たとえば、上に意識を向ければ真上に向かう流れができる、といった具合に。
タマウガチや
ナナチのような深層の生物がこの力場を通して他人の思考を読み取ることができるのは劇中で実践していた通りであり、実際に
ナナチもそのことについて言及している。
意識がアビスの力場に作用するのならば、その力場によってもたらされる上昇負荷もまた人の意識や願いといったものに影響を受けると考えてもおかしくはないだろう。
また、
より深層の住人も「成れ果ては多かれ少なかれ『欲』に応じた姿をしている」「(ナナチは)とても強い『欲』で守られたのだろう」と、上昇負荷の本質を示唆するような発言をしている。
この仮定をもとに劇中の「祝福」について考えてみると、法則性が見えてくる。
ナナチ「やっと見つけた宝物(ミーティ)を奪わないで」
→ミーティが不死性を獲得した成れ果てになる
ミーティ「死んだらナナチのところに魂が還るように」
→ナナチが生き残り、なおかつ人間性を保持(ナナチが意識を残して生存しなければ、還る場所がなくなってしまうから。また、これが正しいとすると、死したミーティがナナチの付近に何らかの形で存在していると考えられる)
レグ「そんなに実験が大好きなら自分の身体で味わいつくしてみろ」
→その時戦闘していたボンドルドは成れ果て化せずに死亡(レグがボンドルドへ強い殺意を抱いていたから)
プルシュカ「パパとリコたちが仲直りしてほしい、みんなで一緒にまた冒険をしたい」
→リコの白笛としての機能を獲得(白笛が無ければリコは先に進めない=冒険ができないから)&ボンドルドが(冒険を出来る程度に)意識を保持したまま成れ果て化
すなわち深層の上昇負荷には「浴びた存在が本当に欲しがっていたものを与える」作用がある、と考えられるのだ。
作中で上昇負荷を克服したのはボンドルドとナナチの2名のみ。
二人とも成れ果て化自体は防げておらず獣人化していることを考えると、上昇負荷は深い愛情で「克服できる」ものではなく、「健在であることを願われる」ことで結果的に人間性の喪失を防げるものと思われる。つまり、呪いと祝福は同一のものであり、そのベクトルがどう作用するかによって呪いにも祝福にもなるのである。
もしそうだとすると、カートリッジの素体となった子供たちに深い愛情が必要とされたのは、“パパ”であるボンドルドに対するポジティブな願いを持たせる事により、子供たちを介して間接的に上昇負荷のベクトルを制御するためだったのだろう。
また、さらに下層の深界6層では「産まれながらの成れ果て」と呼ぶべき存在である「獣相」が明かされた。
この獣相が「探窟家の恥部」と呼ばれ「見つけ次第殺され存在を秘匿される」という描写とカートリッジの仕様とを併せて考えると、
カートリッジを使わずとも奈落から帰還できる可能性が浮上する。
その方法はずばり「妊娠」であり、妊娠している探窟家がその状態で層をまたぐ移動をすると、「死か人間性の喪失」の上昇負荷が胎児に押し付けられ異形の「獣相」となって生まれる代わりに、母親である探窟家は6層の上昇負荷を回避できるというもの。
子供をカートリッジに加工する過程について、切除して小さくするだけでなく「目や舌などの感覚器官は呪いの妨げになる」とわざわざ明記されている事も、胎内にいるので五感がほぼ機能しない胎児の特徴と付合する。
もしそうなのだとすると、ボンドルドはかつての探窟家たちが深層に隠してきた秘密に間接的にたどり着いたとも言えるか。
ボンドルドの白笛
つくし卿のTwitterでの解説によると、最初のボンドルドは、精神隷属機の使用によって増えて壊れた自分自身に願いを託して『命を響く石(白笛の原材料)』に姿を変えたとのこと。
つまりボンドルドは精神隷属機を使いまくって重篤な副作用を受けても自暴自棄にならず、寧ろ自我が崩壊しかけても尚アビスへの希望と夢を維持したまま、「自分のフリをしたナニモノか」に夢を託して自殺していったことを意味している。マジで何なんだお前。
娘のプルシュカもカートリッジに加工されても尚、父親であるボンドルドや親友のリコを想いながら死に白笛になったと考えるとある意味「この親にしてこの子あり」だったと言える。
劇中では使用シーンがないが、ボンドルドの白笛の『持ち主』となるのは『既に精神性がヒトではない自分自身』。
祈手たちは『ボンドルドだったもの』の精神が目覚めている時限定で白笛を使うことができるのだという。
後に明かされる事となるが、白笛となった人物はこの世から消滅するわけではなく白笛に宿る思念体として現世に留まり、その持ち主と五感を共有する形で外界を知覚するという。
そうなると、笛になったボンドルド本人も祈手の身体を通じてリコ達のことを見守っていた事になる。オリジナルである彼は三人を見てなにを思ったのであろうか……?
また、彼の白笛だが、一見すると手を組んで祈るようなデザインに見える……が、よーく見ると組まれているのは「左手と左手」。つまり、正確には祈りの手ではなく恋人繋ぎ……もとい、別の誰かと繋いだ手を模したデザイン。
なお、この笛は両手で擦ることでギロのように音がなる仕組みとなっている為、使用時に仮面を外す必要はないらしい。
それを踏まえると、レグが白笛を使わせようとしたシーン(ボンドルドの身体を潰し一息分だけ生かした状態)ではたとえ彼が協力的でも、あのボディではもう鳴らせない気がするのだが……
その他
名前が微妙に覚えづらい上に編集にボン「ボ」ルドと誤植されたため、付いたあだ名は「ボ」或いは「ボ卿」。
その他「ダフトパンク卿」「ボンカレー卿」「ボンオドリ卿」「ボンバイエ卿」「ボルボックス卿」「ボンドボンド卿」など好き勝手なあだ名が命名される中、いよいよ本編でも54話においてナナチに「ボン」と略称で呼ばれてしまった。
ボンドルドのキャラコンプセントのひとつが
「怒らないフリーザ」であり、フリーザとは「常に敬語」や「組織のトップに立つ」、「両手を広げるポーズがある」等いくつか共通する部分が見受けられる。
アニメ版ではTV第一期やその総集編劇場版でナナチの
回想シーンなどに登場し、続く第五層を舞台とする劇場版『深き魂の黎明』で遂にメインキャラクターとして本格登場を果たした。
しかし当初は総集編後編と同じ「PG12指定」だったレーティングが公開の少し前になって「R15+指定」の年齢制限付き区分に引き上げられた。
どう考えても上述した凄惨な所業をしっかり映像化したためである。
結果「R15+卿」なんて呼び名も追加されることに。
- 科学と医学の進歩の擬人化。より良いモノを得るにはモルモットが必要。普通は長い時間を掛けてたくさんの犠牲を払い進歩させるのにこの人だったモノは勝手に死ぬはずだった命を有効活用して短期間で一気に進歩させてて素晴らしいと思う。無意味に死ぬのと意味のある死どちらが人類の役に立つかと考えれば…ねぇ。しかも、自分自身まで犠牲にして貢献してるんだから“誰も真似出来ない”ね。 -- (名無しさん) 2023-04-15 21:35:53
- なんでもするセイカさん -- (名無しさん) 2023-04-30 21:57:59
- 黎明卿、何をされても同情出来ないからいくら酷い目に遭わせても問題無い枠として扱われてて笑う -- (名無しさん) 2023-05-30 14:55:12
- もしかしてメイニャって孤児の成れ果てじゃなくて孤児を○○させて○○した……ってkロロロロロロロロ -- (名無しさん) 2023-05-30 20:18:16
- 開いたらタグ欄めっっちゃくっっちゃにボリューム増えてて吹いた -- (名無しさん) 2023-05-31 20:36:43
- AIによってエアプボンドルドなるパチモンが誕生。原作者曰く「浅き魂の黎明」。上手いことを…。 -- (名無しさん) 2023-06-09 23:25:23
- 久々に見たらタグがレシートみたいな長さになってて草 -- (名無しさん) 2023-08-09 17:20:17
- タグ多いわwww -- (名無しさん) 2023-08-16 13:58:41
- おやおやの実好き -- (名無しさん) 2023-09-19 09:59:54
- 尻尾の遺物は俺もちょっと欲しい -- (名無しさん) 2023-10-13 11:26:13
- これだけ癖の強いキャラを演じきった森川さんもすげぇよほんと… -- (名無しさん) 2023-11-04 13:35:01
- 白笛項の2行目ほんとすき -- (名無しさん) 2023-11-04 14:15:29
- 善意で子供を◯す人、略して善人 -- (名無しさん) 2023-12-06 15:29:04
- 精神隷属機の項に「階層を跨ぎすぎると流石のボンドルドも危険な模様。」ってのがあるけど前後の繋がりなくない? -- (名無しさん) 2023-12-14 23:08:45
- マッドサイエンティストにも色々いるけど、その手のキャラの大半が創作意欲や知識欲や好奇心を主な動機とするのにたいし、ボ卿はアビスの探求を第一目的にしてる部分が結構独特だと思う。だから効率や目的のために人間性を踏みにじるような真似をする一方で、自分を超えて深淵を目指す後輩には背中を押すような言動もする。徹底して私心がない。 -- (名無しさん) 2024-04-28 17:13:38
- 大半のマッド系のキャラって優位だったり -- (名無しさん) 2024-08-13 16:54:43
- 途中送信した、大半のマッド系のキャラは優位なとかは口上垂れたりしておいて不利になるとビビったり命乞いしたりで小物臭がするキャラ多いんだけどこいつ自身にすら無頓着で目的のためなら文字通りなんでも犠牲に出来るからやべーくらい大物に見える -- (名無しさん) 2024-08-13 16:58:40
- 愛のある項目タグで吹いた。三重くらいの意味兼ね合わせやなw -- (名無しさん) 2024-08-25 11:11:18
- アビスの探求、もちろん好奇心もあるんだろうけど、「次の二千年」「夜明け」と言っているように2000年周期で発生している滅びを回避して人類を救うという具体的な目標があるんだよね -- (名無しさん) 2024-10-29 01:26:05
- コンパスでも平常運転なのホンマ… -- (名無しさん) 2024-10-31 19:59:27
- ボンドルドのカートリッジが次の二千年に行くための手段だとしたらボ卿は本気で倫理観とかそういう観念とか超えて世界救おうとしてたとしか思えないしそれを通常思想としてるのまさしくイカれ…アビス精神してる 白笛の中でも元々の性別が男性っぽさあるし獣相の事考えると異質 -- (名無しさん) 2024-11-10 01:25:18
- 現行人類も光合成の実験の為に「臓物抜いて葉緑素埋め込んだ生物」とか作ってるし、ぶっちゃけ対象に人間が含まれるか否かってくらいしか差がないんだよね…。そこが大きな差とも言えなくはないけど。最も人間らしいとすら思う、知識欲の権化 -- (名無しさん) 2024-11-15 11:43:42
- 5巻まで読み終えたけど果たしてこいつを上回るレベルの狂気と魅力を持ったラスボスを用意できるのかなという不安が -- (名無しさん) 2024-11-23 17:30:23
- つくし卿いわく白笛は全員ラスボスらしいのでボ卿は実質ラスボスだから -- (名無しさん) 2024-11-30 00:45:22
- タグ多すぎるので、厳選した方がいいと思います。 -- (名無しさん) 2024-12-29 01:48:26
- 胎児の話って、まだ推測の域を出てなくないか? -- (名無しさん) 2025-02-09 23:20:03
- ↑途中送信。 -- (名無しさん) 2025-02-09 23:20:40
- タグ:とんでもないやつ でワロタ。こういうシンプルなのに弱い -- (名無しさん) 2025-02-25 23:50:02
- えあぷ -- (名無しさん) 2025-04-23 18:20:37
- ↑ミスエアプの方だったらここまで人気でなかった。 -- (名無しさん) 2025-04-23 18:21:09
最終更新:2025年04月19日 00:55