登録日:2011/11/23 Wed 13:52:53
更新日:2025/08/06 Wed 06:44:03
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とは、カキノキ科の樹木から採れる果実の総称である。


概要

リンゴなどのように外来種が多い果物の中では珍しく日本原産で、サトウキビ伝来以前には日本人にとって貴重な甘味であった。主な名産地は和歌山県
カキノキ科の植物は日本はもとより東アジアや北アメリカ、アフリカ等の熱帯〜温帯に広く分布するが、日本の柿はカキノキ科の中でも特に食用として広く利用されていたようで、縄文・弥生時代の遺跡には普通に種の化石があるし、万葉集や記紀等の古い書物にも当たり前のように記述があるし、平城京には値札があった。
海外へは中国を伝って広まっており、英語では“persimmon”と呼ばれる。由来はネイティブアメリカンの言葉で「干し果物」(というか干しアメリカガキ)を意味する語だが、現在ではパーシモンはあちらのカキを指す単語のようで、日本の柿はそのまま「カキ」と呼ばれる。学名は「Diospyros kaki」で「神様の食べ物・カキ」を意味するが、名付けた外国人は柿にどんだけ感動してたんだ。日本にはごく普通にある果物なんだけどなぁ…。ヨーロッパではスペインでの生産が盛んで、全世界で2位の生産量を誇っている。

現在はそのままでも甘くておいしい品種が広く流通しているが、元々は渋味成分を持っている渋柿と呼ばれる柿が一般的だった。
これは、種が未熟な内に鳥などに食べられないようにするためのもの。これらは野外に干すなどして、しぶを固定してから食べられる。
こうして作られる干し柿は、柿の代表的な楽しみ方。干し柿にした場合、もともと甘い柿より渋柿の方が美味しくなるという自然のマジック。
しかも保存性も栄養価も高くなり、健康食品としてもオススメの一品。昔は薬として扱われていたこともある。
渋みが消えた甘柿は鎌倉時代の1214年(建保2年)の星宿山蓮華院王禅寺の山中(現神奈川県川崎市)にて発見された突然変異種が発端で、交配が進められながら広まっていった。

なお、柿を手間暇かけて加工したお菓子はフルーツの中でもかなり少ないが、これは柿の本来のあまりの甘さゆえに柿が古来より甘さの基準とされてきたから。
名産品としては福島県の「あんぽ柿」が有名だろうか。
近年では柿のプリンやゼリーなども出回るようになっている。
月餅を思い浮かべた人は『MASTERキートン』読者かも?

柿に含まれるタンニンにはアルコールの吸収を阻害する他、アセトアルデヒドの分解を促進させる効果もある。
つまり酔い醒ましに効くとされている。柑橘類にも同様の効果はあるが、柿のほうが効果は高い。酒に酔いやすい方は是非一口いかがだろうか。
ただし柿を食べても飲酒運転はダメ絶対!
そもそも和歌山大学で行われた実証実験でも有意差は限定的で過信はできない。

また、実以外も有効活用される。
まず木は非常に固く、茶室の炉端や茶道具、ゴルフクラブのヘッドに使われる。
葉っぱには殺菌効果があり、奈良県名物柿の葉寿司に使われる。ビタミンCが多いので茶にもなる。
そして柿渋だって渋いだけでは終わらず使い道がある。『ザ!鉄腕!DASH!!』で目にした人もいるだろう。撥水・消臭効果を持つため和傘に塗ったり、成分を石鹸などに用いたりする。
皮も餅米などと一緒に搗いて柿餅にしたり、沢庵漬けや糠漬けといった漬け物の天然甘味料として用いられたりした。
実は食べておいしく、それ以外も色々使えて便利。なんとも無駄のない植物ではないか。

その他、古来人々に親しまれてきた食材であるため、俳句の秋の季語になっているし諺や物語にもよく登場する。「桃栗三年柿八年」という諺や、童話『さるかに合戦』でもお馴染み。
また、早口言葉の最も簡単な例としても用いられる。
あのヘドが出るほど簡単なあれである。

となり゙ゅ
となりの柿はよく客喰う柿だ
となりの客はよく柿喰う客だ

……など。

柿で有名な俳句といえば、明治時代に正岡子規が詠んだ『柿くえば 鐘がなるなり 法隆寺』有名。
法隆寺の茶店で詠んだとされている。ところが実際は法隆寺ではなく、奈良市内で泊まった旅館で出された柿を食べている時に近くの東大寺の鐘の音から、今頃法隆寺の鐘も鳴っているだろうと想像しながら、詠まれたとされている。



超余談

ゴシック体など一部の活字体では「柿」と全く見分けがつかない漢字がある。携帯だと表示できない場合があるので残念ながら読み方のみを。

「こけら落とし」の「こけら」という漢字で、違いは旁の部分が縦棒が横棒から引かれているか、上まで突き抜けているか。
すなわち「亠+巾」=「市場」の「市」であるか、「一+巾」で、縦棒が横棒を貫いているかの違いである。

柿は野鳥も大好き。甘いものが大好きなヒヨドリメジロはもちろんツグミやムクドリなども好んで食べる。食べ物が少なくなる秋~冬には彼らにとっては貴重な食料となっている。
でも彼らでも渋いより甘い方が良いのは同じなので、サルやカラスなんかはちょっとかじって木から落とし、傷むのが早まるようにして甘くなった頃に食べに来ると言う。それを狙ってタヌキも木の下にいるそうな。

戦国時代の石田三成が処刑前に「喉が渇いた」として白湯を要求したが無かったので代わりに干し柿を渡された。
その際「干し柿は痰の毒。自分は痰持ちだから」と断るも、これから死ぬ人間が健康や病気を気にするのかと笑われるが「大望ある者は簡単には諦めないもの。私は再起を図っていただけだ」と言い返すというエピソードがある。
良くも悪くもプライドが高く負けず嫌い、そして真面目な彼らしい一面と言えよう。
そのせいか、石田三成をモデルとした数々のキャラは柿と結び付けられやすいが、好きか嫌いかはまちまち。

また時期は少し遡るが織田信長も干し柿が大好き。
しかも伴天連のルイス・フロイスを誘った茶席では干してあった柿をそのまま振る舞ったそうな。
茶席では作法に則った形式美を追求するのが目的であり楽しみなのだが、信長がそんな事を気にするような人間じゃない事を表すエピソードの一つである。



追記、修正、柿喰う客におながびじまず(舌噛んだ……)

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最終更新:2025年08月06日 06:44