幾原邦彦

登録日:2017/10/07 (土) 22:20:52
更新日:2019/07/20 Sat 15:34:18
所要時間:約 5 分で読めます





幾原邦彦(いくはらくにひこ)は大阪府出身(かつては実家の徳島県出身とされていたが、実際には住んでいない)のアニメーション監督。
かつては東映動画(現・東映アニメーション)に所属していたが、1996年以降フリーの監督となった。
ファンの愛称は「イクニ」。


作風として、耽美なキャラクター、バンクの多用、シュールめいたギャグ、演劇風演出といった特徴が挙げられる。
ストーリーも、突拍子もない外連味の利いた展開から始まり、メタファーによる残酷さの表現とキャラクターの内面に関する問題へと繋がり、
心を揺さぶるクライマックスへと行きつく奇抜な構成をとる。

これには、「リアリズムよりも抽象化された画面の方がテーマが伝わる」、「シリアスな出来事を、ありのままに描くのはつまらない」という主義のため。


来歴


1985年に京都芸術短期大学を卒業後、1986年に東映動画に入社。以後佐藤順一の下でTVアニメの原画、絵コンテを担当する。
1990年の『もーれつア太郎』で初の演出を担当後、1992年の『美少女戦士セーラームーン』での演出回で高い評価を得る。
その功績あって、第2期『R』の第14話(シリーズ通算60話)からのシリーズディレクター(東映作品で言う監督のこと)に抜擢され、
同年の『劇場版R』では初の長編映画の監督を務めた。

そして、第3期『S』、第4期『SuperS』のシリーズディレクターを務めた後、温めていたオリジナルアニメの制作に着手するため、東映動画を退社。
漫画家のさいとうちほ、『S』以降共にした脚本家榎戸洋司らと組んで原作者チーム「ビーパパス」を結成する。
そして完成したのが『少女革命ウテナ』である。
TVシリーズ39話と別世界観でありながら同じメッセージを持つ劇場版を全て監督した幾原は、『セーラームーン』で片鱗を見せていた極めて高い演出力を存分に発揮。
古典的少女漫画風のキャラクターたちと演劇的な前衛演出、シュールなギャグ、メタファーに満ちた小物、意味深なアイコン。
これら見る者の感性を揺さぶる奇抜な要素の数々で、国内のみならず海外からも賞賛を受けることとなった。

だが、2000年代は新作アニメは作らず、クリエイターとしての活動は細々としたものとなった。
声優養成所・大学の講師を務めたり、お忍びでとある3DCGの制作チームに入り、表現の開発・指導を行っていた。
しかし、この期間内にも企画書の作成は行われていた。原作・オリジナル問わず何作も作っては流れの繰り返しであり、その際に「如何にファン・スポンサー達に共感してもらうか」より「自分の意識の高さ・知識量の多さ・崇高さ」を優先してしまった自分を反省することになる。

2006年にはファッション雑誌『KERA』とのコラボ企画で『ノケモノと花嫁』の原作を担当した。

そして2011年、満を持しての新作『輪るピングドラム』を製作。(原作者チーム名は「イクニチャウダー」)
『ウテナ』以上に難解なストーリーと演出、そして後半にかけての盛り上がりによってコアな人気を誇った。

その後、2015年には『ユリ熊嵐』を製作。(原作者チーム名は「イクニゴマキナコ」)今後の活動が期待される。







人物


アニメ監督だが、顔の露出の高いことで有名。
そして何故かいつも決まってグラビア風。さらに派手なファッションに身を包むビジュアル系のおじさまである。
大体、赤やピンクといった原色のシャツ(細身なのでよく似合う)に金メッシュの長髪のいでたちをしている。
『ウテナ』LD/VHSのCMで「絶対運命黙示録」とつぶやいていたことは知る人ぞ知る話だろう。
共に仕事したさいとうちほは「アニメ界の小室哲哉」、佐藤順一は「どうすれば目立つかということを色々考えていた人」と評していた。

作品に演劇の要素が強いのは、学生時代から寺山修司主宰の演劇グループ「演劇実験室◎天井桟敷」の大ファンだったことが挙げられる。
それもあって『ウテナ』の音楽に天井桟敷の作曲家J・A・シーザーを迎え、演劇で使用した合唱曲を『ウテナ』劇中の各話決闘BGMを使用している。

監督仲間の庵野秀明とは親しい間柄で、『新世紀エヴァンゲリオン』以降の庵野氏が演劇を意識した演出を使うようになったのも幾原氏の影響による。
あの綾波レイの名前「レイ」は幾原が監督した『セーラームーン』のキャラ火野レイ/セーラーマーズからとり、
葛城ミサトの前髪も月野うさぎ/セーラームーンからであり、碇シンジの声優緒方恵美は『劇場版R』の少年時代の地場衛の演技で決めるなど、高い影響を与えた。
そして渚カヲルのモデルとなったのは幾原氏だという。

なおかつて『エヴァ』のストーリー展開について談義した際(当時、庵野氏は『エヴァ』の製作進行が進まず悩み、キャラ萌えにハマるファンを嫌悪すらしていた)、以下のような進言をした。

「最終回で、綾波レイが妊娠して、腹がデカくなっているというのをやってくださいよ!」
「とにかく綾波ファンを裏切ってくれ。君達が考えている綾波レイというのは、本物じゃないんだ。本当の綾波レイは、ちゃんと妊娠して腹が…」

「ホントだったら、妊娠して腹がデカくなって子供産んだりして、年を取ったりするんだっていうのを思い知らせてやってくれ!」

これには旧劇場版で「アニメは夢であり、現実は夢の終わりだ」というメッセージを込めた(綾波レイは夢の存在)
庵野氏も「そこまでやらなくても…」とドン引きした逸話がある。
また、庵野秀明監督作品の実写『シン・ゴジラ』において蒲田でゴジラから逃げ惑うエキストラとして出演している。

『セーラームーン』、『ウテナ』でコンビを組んだ榎戸洋司とは高校時代の同級生。
当時サラリーマンだった榎戸氏を脚本の仕事に誘い、『セーラームーンS』第96話の脚本を書かせたのが彼の脚本家人生の始まりだった。
『S』で二人が担当したほとんどはウラヌス&ネプチューン回であり、ウラネプが「百合界のカリスマ」と称されるようになったのは二人のコンビの賜物と称されるほど。








参加作品


(監督作品は太字)






世界を革命可能な生存戦略を承認する追記修正をお願いします。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/