SCP-975-JP > AiliceHershey

登録日:2017/11/09 (木曜日) 19:00:00
更新日:2024/12/05 Thu 11:54:11
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SCP-975-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つであった。今この記事は作者がサイトを退会するにあたり自己削除された。
項目名は『幾度、地獄を見ようとも』。オブジェクトクラスは以前は堂々の「Keter」、現在は「Sefe」に指定されている。

SCP-975-JPは、過去に全ての電話会社において使用された形跡のない未知の電話番号だ。
現在まで四つの電話番号が財団によって確認されているが、どの番号にかけても繋がるのは【ヒーロー代行サービス】という厨二病全開…いや、現実には存在していない、謎の組織のみであった。

該当する番号に電話をかけると、若い男性の声で『自分の代わりに代行してほしい事』に関する具体的な情報や要望などを話す様に求められる。
もし、この時に述べる要望が『○○を殺して△を奪い取ってくれ』の様に明らかな犯罪行為を代行してほしいという内容だった場合、電話の相手は即座に会話を打ち切り電話を切ってしまう。

依頼内容が真っ当なものであった場合にのみ、電話の相手は最後まで依頼人の話に耳を傾けてくれるのである。

最終的に、電話の相手が依頼人の願いが叶うことを約束し、通話は終了する。


電話一本で参上いたします!

該当する番号に電話がかけられ、願いが聞き届けられてから一時間前後で謎の人物が出現することが確認されている。
その人物とは、頭にはフルフェイスタイプのヘルメットを被って青色のラバースーツを身にまとい、スーパーマンの様な真紅のマントを羽織ったいかにもスーパーヒーローの様な格好をした人物(財団ではSCP-975-JP-1と呼称)である。

…以上の説明でピンとこない方は、2006年に放映された特撮テレビドラマ、【魔法戦隊マジレンジャー】に出て来るヒーローたちの変身後の恰好を思い描いていただければだいたい合っていると思われる。
というか、筆者は元記事を読んだ瞬間にマジレンジャーが思い浮かんでしまったのであるが。

さて、SCP-975-JP-1このであるが、その風体に違わぬスーパーパワーを持っている。
翼もエンジンも使わずに空を飛び、パンチ一発で分厚いコンクリートの壁を破壊。
あらゆる攻撃手段が通用せず、無限のパワーを縦横無尽に振るうのだ。

そして、クライアントから受けた要望をどの様な形であろうが実現させ、風の様に去っていくのである。

なお、任務遂行中に妨害者が現れた場合、SCP-975-JP-1は任務を一時的に中断させ、妨害者の排除を優先させる傾向が強い。

残念だが、世間にとってはヒーローであるこの人物も、財団にとっては立派なSCiPとなってしまうため、財団は該当する電話番号が出回らない様にインターネットを監視し、もしどこかのサイトに掲載されてしまった場合は即座に削除する様に特別収容プロトコルを組み立てている。

追記・修正は、なかなか世のため人のために働けないヒーローの悲哀を…。

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力なき正義は無能であり、正義なき力は圧制である。
by ブレーズ・パスカル




この人物、確かにヒーローと呼ぶにふさわしい能力を持ち、いかにもそれっぽい行動をしているのである…が。

よく考えてみてほしい。週一でエイリアンやら妖怪やら人造人間やらが手下を率いて湧いて出てくる特撮テレビドラマの世界ならばいざ知らず、財団のある世界ではその様な非日常的な存在は全て我らが財団が受け皿となって世間から隔離しているため、呼び出されたSCP-975-JP-1が対峙する事になるのはごく普通の人間ばかりとなってしまう。

しかし、SCP-975-JP-1は相手がごく普通の人間であろうが御構い無しに、その桁外れのパワーを振るってくるのである。
その結果何が起きてしまったか、以下の記録を参照していただきたい。

200█年██月██日 東京都███区にて出現。これが初めてのSCP-975-JP-1の出現となる。
街中を歩いていた女学生に対し暴行を加え、女学生の持っていた口紅を奪取し飛行能力によって移動。
後の調査により、奪われた口紅は窃盗品であった事が確認されている。
200█年█月██日 東京都███区にて出現。三名の男性青年グループに暴行を加えた。
グループのリーダー格であった青年は現在も意識不明の重症を負っている。
当時、現場に居合わせた青年(グループに所属していない)の証言により、SCP-975-JP-1はその青年に対し、
「俺ってヒーローみたいだろ?」等、今後SCP-975-JP-1をヒーローであると発言して周りの人間に広めるよう強要していた事が判明している。
200█年██月█日 東京都██区にて出現。財団のフロント企業S████C████P████.██の当時副社長であった青霧氏に暴行を加え、右腕と左足を粉砕骨折させる。
青霧氏は逃亡を図ったが失敗。
その追跡過程においてSCP-975-JP-1は飛行進路上に存在した██棟のビルを素手で破壊し、更に妨害を加えた財団の機動部隊██名に対し暴行を加え負傷させた。
また、ビルの倒壊に伴い、児童一名が死亡した

はっきり言って大惨事である。
このSCP-975-JP-1なる人物は、自らがヒーローであることを宣伝する事ばかりに執心するあまり、自らのパワーが周囲にもたらす影響を考えることをまるっきり放棄してしまっているのだ。
勿論、強大な力を振るう事に対する責任だって感じていない。

要するに、こいつはスーパーヒーローの装備を身にまとった偽善者、エゴイストなのである。


正義を裁くものは

SCP-975-JP-1が正義の名の下に行った数々の破壊行為に対し、遂に堪忍袋の緒が切れた財団は、この迷惑極まりないエセヒーローを無力化することを決定した。
しかし、物理攻撃で排除しにかかる世界オカルト連合式の方法だと被害がどこまで拡大するか予測不可能であるし、それこそオカルト連合に丸投げするわけにもいかない。

そこで財団は、SCP-975-JP-1が正義の名の下に暴行を加えた被害者の家族に協力を仰ぎ、財団傘下の裁判所にSCP-975-JP-1を訴えてもらうという作戦、その名も【プロトコル・英雄裁判】を発動したのである。

まず、クライアント役である財団職員の一人、本郷博士が裁判の進行にSCP-975-JP-1の存在が必要不可欠となっていることを例の電話に告げ、SCP-975-JP-1を財団傘下の裁判所へと誘導。

法廷に現れたSCP-975-JP-1に対し、本郷博士は簡単な質問をしたいという名目で逃げ回るターゲットを捕捉するためにSCP-975-JP-1がビルをなぎ倒し、その結果、不運にもその場に居合わせてしまった児童一名が瓦礫の山に埋まって死亡した痛ましい事件を持ち出した。

何も考えていなかったSCP-975-JP-1は、あっさりとそれが事実であると認めてしまう。

それをキッカケに、かわいそうな児童の母親を原告、SCP-975-JP-1を被告とした裁判が開廷したのである。

自分が被告人となっていることを自覚していないSCP-975-JP-1は、裁判長に答弁書の内容を認めるか否かを問われて混乱してしまったが、本郷博士に「あなたのヒーローっぷりを思いっきり強調して書いた完璧な答弁書を作成してすでに提出しておきました」とおだてられ、またあっさりと答弁書の内容を認めてしまう。

…この時点でこれ以上ないほどにアンフェアであり、実際の裁判で同じことをやったら即座に強制終了間違いなしなのであるが、当のSCP-975-JP-1が問題ないと言っているのであるから、このまま裁判を進行させても問題はないのである。
そもそも、これは裁判ではなくてSCP-975-JP-1を黙らせるための作戦だし。

さて、ここで裁判はいったん休廷。
控え室でSCP-975-JP-1がくつろいでいるところを見計らい、財団は第二の矢…かつて、【ヒーロー代行サービス】に万引きで盗まれた口紅の奪還を依頼した店の主人を送り込んだ。

店主との間には、SCP-975-JP-1に関する情報を世間話のついでに引き出すよう事前に綿密な打ち合わせが行われている。

その結果、以下の様な事実が判明した。
  1. 着用しているスーツは【学園】なるヒーロー養成組織から贈られた特注品
  2. ヒーローとして活動するためには以下の【掟】を遵守することが必要
  • 必要以上の犠牲は出さない事
  • 力をふるうのは悪人のみ
  • 誰からも求められる事

これらの情報をもとに、財団はSCP-975-JP-1を追求する手立てを構築したのである。

再開された裁判では、まずは店主を証言台に上がらせてSCP-975-JP-1が独断で万引き犯に暴行を加えたことを証言してもらい、続けて本郷博士自身が証言台へ立ってSCP-975-JP-1が万引き犯として暴行した相手が実は友人の娘であったこと、その少女は通っている学校でいじめにあっており、問題の万引きもいじめの一環として強要された末の行為であったことを証言した。

以上の事実を突きつけられ、初めて動揺したSCP-975-JP-1に対し、本郷博士は冒頭陳述の場面で原告人となっていたあの女性の素性を伝え、SCP-975-JP-1の行動が無辜の命を奪っていたという事実を認識させた。

こうして、大義名分を失い崖っぷちへと追い詰められたSCP-975-JP-1に対し、本郷博士はさらなる事実を突きつけて断罪してゆくのであるが…その結末は是非とも元記事で堪能していただきたい。

取り敢えず、現在では【ヒーロー代行サービス】に電話をするとこんなメッセージが返ってくる様になってしまっている。

現在、ヒーロー代行サービスは悪の組織による攻撃を受け、機能する事が不可能となっています。
悪人のくせに正義の味方のフリをして、俺を追い詰めたあいつらを、絶対に許さない。
悪の組織に対抗するために法律の勉強が終わるまで、ヒーロー代行サービスは一時的に中止だ中止。
覚えとけよ、[数十秒に渡る罵倒]

財団が悪…というより、清濁併せ呑む組織であることは否定できないが、あれだけ世間様に迷惑をかけておいてまだヒーローに戻れると思っているこいつの精神は理解不能である。


メタ視点からの余談

因みに、SCP-975-JP-1に引導を渡した本郷博士の元ネタは、初代仮面ライダーに変身して悪と戦った本郷猛であると思われる。

財団と司法

世界を動かす力を持った超法規的な組織である財団だが、場合によっては各国の司法と関わらなければならない場面が出てきてしまう。
今回は、司法制度をうまく活用して危険極まりないSCiPを無力化することに成功したが、ときには司法が仇となって財団の運営に支障が出てしまう事も少なくない。
そして時には、SCiPに由来する異世界の司法制度すら相手にしなければならない場合も…。

SCP-535-JP(通称:がめつい葬儀人)
インターネットに廃墟探検の記事を出して人を呼び寄せ、建物内に侵入した人間を謎の葬儀場へと転送する怪現象と、入り込んだ人間にイチャモンをつけて強引に火葬してしまう異世界人と思しき葬儀屋の嫌な組み合わせ。
財団によって世間から隔離されてしまった事に腹を立て、葬儀人が自身の属する世界の裁判所に営業妨害で財団を告発してしまった事により、現在係争準備中。

SCP-848-JP(通称:正義の女神像)
Dクラスのみをピンポイントに狙い、絞首刑と寸分違わぬ状態で殺害する正義の女神像。
財団が凶悪犯を裁判なしで処刑=Dクラスとして使い潰している事に腹を立てた【反財団派】の人間が製作し、わざわざ財団施設の近辺にある大学の構内に置いていった。




追記・修正は、清く正しい理想を持った方にお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-975-JP – 幾度、地獄を見ようとも
by AiliceHershey
http://ja.scp-wiki.net/scp-975-jp(元記事削除済み)
http://ukwhatn-tp.wikidot.com/archives-aihe:scp-975-jp

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最終更新:2024年12月05日 11:54