石刈アリエ

登録日:2017/12/16 Sat 22:31:50
更新日:2025/01/17 Fri 20:06:50
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「あなたの話、もっと聞かせて!」

「こんなの最高すぎる……!!」


石刈アリエとは、『ウルトラマンジード』に登場するキャラクターである。

演:小林涼子

【人物像】

とある山中に仕事場を持ち、自分が興味を持ったあらゆる事件について調べ書籍にしているフリーの美人ノンフィクションライター。

この手のジャーナリストと言えば、ウルトラシリーズのファンならあの人の皮をかぶったハイエナを思い浮かべるかもしれないが、
彼女は己の身を投げうってでもひたすらに真実を追求し、さらに取材対象に対しても、
無理な取材をせず、取材対象のプライバシーや名誉を守る約束をするといった最大限の配慮を施すなど、マスコミとしての中立性と善意を持って活動している。
ウルトラマンオーブ』のSSPや『ウルトラマンガイア』のKCBに近いかもしれない。

しかし、その行動理念はあくまでも「自分が真実を知りたいから」というものでしかなく、
後述する伏井出ケイに対しても、彼が指名手配犯であるにもかかわらず警察に引き渡さず匿いながら取材を続けるという、
中立的ともとれるが、自らの目的のためなら手段を選ばない自分本位な面もある。

ヒルカワのような悪辣な人間でもなければ、SSPのメンバーのような大義名分があるわけでもない、
ウルトラシリーズに登場するジャーナリストの中でも非常に異色なキャラクターである。


【伏井出ケイとの邂逅】


初登場は第18話「夢を継ぐ者」。
編集者殺人事件の容疑で指名手配されていた伏井出ケイのことを本にしようと取材を続けていたところ、記憶をなくした伏井出ケイと遭遇。
ケイを追っていたリクたちから彼を助けた後、自分の仕事場に匿うようになる。
殺人犯として追われているケイに対して決して無理に取材を続けることはなく、本を出した後もケイを守ると語り、記憶を失ったケイの心を解きほくしていく。

「君は……、親切だ……。」
「……本を出して有名になりたいだけ。」

しかし、かつて殺された同胞の復讐のためにケイを追ってきたダダの攻撃に巻き込まれ、
そこでベリアルの僕だったことを思い出したケイ、彼が呼び出したザイゴーグとフュージョンライズしたサンダーキラー
そしてリクが変身してウルトラマンジードとなって戦う様子を目撃してしまう。

しかし、そんな目を逸らさざるを得ない現実を目の当たりにしても尚、アリエはケイに協力を求め出る。
自分の知らない世界を知っているケイは、彼女にとって冒頭のセリフ通り最高の取材対象となってしまったのである。

「震えてるぞ……。」

「……武者震いよ!だって、いい本が書けそうなんだもの!!」

「隠れ家の提供、情報の収集……。私、役に立つと思うけど……。」

「私と一緒に来て……!!」

こうして恐怖を覚えながらも、アリエは自分の夢を叶えるために、普通の人間が足を踏み入れるにはあまりにも危険すぎる世界に身を投じることとなる……。

「夢は、誰かに伝えないと消えてしまう。いい夢も、悪い夢もみんな。」
「その日、世界は再び変わり始めた。」
「それぞれの受け継いだ夢が、動き始める――――――。」



【暗躍、その末路】


こうしてケイと行動を共にするようになったアリエは、伊賀栗レイトウルトラマンゼロに変身するのを色仕掛けでやんわり阻止したり、
あらゆる情報を提供するなどケイに協力しながら取材を続けていくことになる。

しかし、ケイと行動を共にするうちに次第に彼に心酔するようになり、「真実を知って本に書きたい」という目的が、
「ケイと共に世界の終わりを見たい」という歪んだものに変化してしまう。

そして第22話「奪還」にて、エンペラ星人カプセルとダークルギエルカプセルをAIBから奪い取るべく、彼の人質を演じる。
郊外の廃工場で錆びれた鉄塔に吊るされるという危険極まりない場所に置かれるも、真実を知らないゼロにお姫様抱っこで助け出され、
カプセルを持ったモアと共に逃走。
その後ケイがフュージョンライズしたキングギャラクトロンの攻撃に巻き込まれた隙を突いて、モアからカプセルを強奪しケイに届けることに成功する。



「私、役に立つでしょ?」
「想定していたよりもずっとな……。」



驚愕するリクたちの目の前で嬉々としてケイに寄り添うアリエの姿には、
ジャーナリストとしての正気を保っていた以前の彼女の面影はもうどこにも存在しなかった。


「そろそろ認めたらどう? これはあなただけの物語じゃない。私たちの物語。
 私たち二人が、この手で、世界を終わらせる……。その瞬間を見るのが待ちきれない!」


ケイにどこまでもついていく覚悟を見せるアリエ。だが―――――――。

笑みを浮かべたケイから返ってきた返答は、自らの体を貫く漆黒の刃だった。

彼女も結局のところ、ケイにとってはただの捨て駒でしかなく、文字通り用済みとなったことで抹殺されてしまったのである。
ケイからかけられた最後の言葉は「ご苦労様」。
冷笑を浮かべたなんの感情もない一言だけだった。
彼女の死は、リクたち、特にモアの心に深い傷を残すことに……。


「結局、彼女を救うことはできなかった」
「僕たちは、伏井出ケイの手の中で踊らされていただけだった」
「ケイを匿い取材を続けていくうちに、彼女は彼に心酔してしまったのだろう」
「だが、こんな結末を、彼女は予測していなかったに違いない」


その後彼女の取材資料から、リクたちは伏井出ケイがストルム星の光を浴びるために沖縄に行ったことを知り、ケイと決着をつけるためにリクたちも沖縄に向かうことになる。



【余談】


  • 名前の由来は恐らくSFの先駆者とも称される女性作家「メアリー・シェリー」。
    刈=メリ=イシメリアリエのアナグラムと言われている。

  • ウルトラシリーズでは近年では地球人の直接的な死の描写は極力避けられており、それだけにアリエの死は多くの視聴者に衝撃を与えた。
    同じく伏井出ケイに殺害された大隅丈治はニュースで間接的に伝えられるなど配慮が施されていたこともあり、アリエの死はやはりイレギュラーな描写であると言っても過言では無いだろう。

  • 半ば自業自得とはいえ心酔していたケイに利用された挙句殺害されてしまったアリエには、オンエア後同情の声が多数寄せられた。
    一方で、ケイとの交流は初登場から退場回の間であまり掘り下げられておらず、突然「世界の終わりが見たい」という一介のライターが抱くにはあまりにも壮大すぎる野望を抱いた点に関しては少なからず脚本の不備が指摘されている。
    致命的な構成ミスでは決してないものの、もう少し彼女がケイに心酔していく様子が描かれれば視聴者の印象も変わったと考えれば少々残念なところである。


追記、修正お願いします。



























第23話「ストルムの光」にて、中城城跡との決闘でジードに敗れた伏井出ケイは崖際に倒れ伏し、
リクたちに追い詰められながらも自らの敗北を決して認めようとはしなかった。

そんな彼の前に、エンペラ星人カプセルとダークルギエルカプセルを回収する人物が現れる。

「私の息子に勝てると思ったのか?」

それはケイに殺されたはずのアリエだった。

アリエの死を目撃したリクたち、そして殺害した張本人であるケイですら驚愕する中、アリエはかつてケイが自分にしたように、腕から生やした漆黒の刃をケイの体に突き刺し、
ケイの体から彼の力の源であるストルム器官をえぐり取った。

それをやたらとエロい仕草で飲み込んだアリエ。
それと同時に、漆黒のオーラを纏いながら彼女の体から姿を現したのは――――――。

「私は常に、お前と共にいたのだよ。」
「不思議に思わなかったか?私が姿を消してからも、お前はフュージョンライズすることが出来た。」
「私がお前に力を与えていたのだ、ずっと……!!」



ウルトラマンベリアルであった。



ベリアルはロイヤルメガマスターに敗北後、器としてアリエに憑依していたのだ。
偶然を装ってケイに接触し、彼に力を与え続けていたことで、ケイはこれまでもフュージョンライズ可能だったのである。

そして、ストルム器官を失ったケイを用済みと宣言し、アリエから分離したベリアルは宇宙空間に移動、
最強形態・アトロシアスとなり、宇宙を史上最大の恐怖へと陥れることになる……。



【余談2】

  • 実は第22話放送後にメイン監督である坂本浩一氏はインタビューで「アリエは今後重要なカギを握る」と語っており、
    アリエ退場後という発表時期もあり、どのような場面が描かれるか少しだけ話題になっていたが、
    まさかこのような形で再登場するとはだれも予想しておらず、視聴者を驚愕させることとなった。
    さらに前述の脚本の不備を指摘された点も、この展開への重要な伏線であることが明らかとなり、今回の展開でそのような不満はほとんど出てこなくなった。

  • そしてすべてが明らかになった後、「アリエ(Allie)」の名前の由来は上述の他に「ベリアル(Belial)」のイニシャルの並び替えという2重の意味が込められていたと考えられるようになった。
    逆に音の感じからアリエ=ベリアル説を考えていた人はアリエ退場の事実に驚いていたとか。

  • 悪のウルトラマンに憑依された女性は『ウルトラマンネクサス』に登場するトラウマメイカー、斎田リコに次いで2人目。
    最終的に死亡してしまったリコとは違い、アリエの生死は作中(並びに関連書籍など)でも明示されていないが、黒幕にいいように利用されて切り捨てられたことには変わらず、どこまでも救われない結末となってしまった。

  • この真実には(演者繋がりで)「ヒルカワポジと思ったら光彦ルートだった」などの声も出ていた。

  • 最低でも第18話でケイが記憶を取り戻した直後の時点で、
    ベリアルがアリエに憑依していたことが本編及び関係者ツイートから明らかになっており、本編でのアリエの行動のほとんどがベリアル意思に基づくものということになる。
    つまり、レイトへの色仕掛けやお姫様抱っこで助けられたシーンも……。(特に後者はゼロは勿論陛下にとってもブチギレ案件だったのでは……)
    それでも女性言葉と仕草を完璧に演じきった陛下の演技力には感服せざるを得ない。
    仮にアリエをべリアルがマインドコントロールしている状態にあり、言葉や仕草は素のアリエに依存するとしても、べリアルの意思で動きながらべリアルという顔を徹底して隠しきったことになり、やはり演技力は高いということになる。

  • 一方で、アリエから分離した後も一人称が「私」のままであるなど女性を演じた時の癖が抜けきっておらず、
    「女装癖がついてしまった」
    というあらぬ誤解を受けるネタが生まれてしまった。

  • ベリアルが人間に憑依していたという説そのものは、『︽ジード』放送開始時から既に考察されていたものである。
    しかし、その憑依先はフクイデであるという内容であり、ケイ≠ベリアルが判明して以降この考えは完全に忘れ去られることとなった。
    このような前例があったにも関わらずアリエ退場後もこのベリアル憑依説が全く触れられもしなかったのは脚本の勝利と言える。

  • 忘れられがちだが、何気にベリアル陛下初の人間体でもある(クローンに近いリクは別として)。サンダーブレスターでコンビを組んだゾフィー兄さんも大谷博士やらバレーボールチームやらサコミズ隊長と人間体は安定していないため、今後もアリエで固定されることはないとは思われるが。


  • アリエの登場は坂本の提案によるもので、シリーズ構成の乙一(安達寛高)はアリエのエピソードを執筆していない。監督の武居正能によれば、ベリアルが復活する過程として仮面で顔を隠したもう一人のリクを登場させる案も存在したが、物語に絡めにくいとの判断からアリエに変更されたと述べている。また、乙一によれば第18話以降にお遊び編が予定されていたが、アリエの登場により緊迫感を保ったままになったという。乙一は、リクに対して昭和のヒーローであるドンシャインが寄り添っているのに対し、アリエはケイに寄り添う昭和のイデオロギーを持った女と位置づけている。

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最終更新:2025年01月17日 20:06