フォト(キノの旅)

登録日:2018/01/16 Tue 04:10:06
更新日:2025/04/26 Sat 14:08:53
所要時間:約 7 分で読めます




フォトとはキノの旅に登場するメインキャラクター(主人公)の一人。

CV:水瀬いのり(新アニメ版)。

来歴

初登場は12巻とメインキャラクターたちの中では最も遅い。
それもあって、彼女が主役となるエピソード数はキノは言うに及ばず、シズ師匠と比べても非常に少ない(その代わり個々のエピソードは長めである)。

初登場のエピソード「雲の前で」は3巻に収録されたキノ視点のエピソード「雲の中で」の前日譚となっている。
この時点では名前はなく単に「奴隷」とだけ呼ばれていたばかりか、容姿についての説明もなくそもそも女性であることが明かされるのがエピソードの最後である。

元はとある宗教国家(教祖が独裁的に政治を行っている)の出身*1
両親はおらず孤児院で育っていた。
ある行商人の一団がその国を訪れた際、教団側が払う代金がわずかに不足していたらしい。
だが、取引を諦めきれなかった教団が「それなら奴隷を一人付けよう」と言い出したことで代金代わりに行商人の奴隷となる。

その後は行商人たちの奴隷として働くも、憂さ晴らしとして虐待される日々が続く。
一方で後述の本人の性格もあってか、その生活を全く苦に感じてはいなかった。
しかし、ある山の中で商人たちがキャンプを張った際彼らが食べようとしているのが「平地では食用だが、高地では草になる」野草であることに気付く。
そのことを警告しようとするが、聞き入れられず商人たちは全員が毒草を食べて全滅してしまう。
この際「もっと必死になって止めれば良かった」と自殺を選びかけるほど後悔している。
というか、毒草を食べて死のうとしていたが、虐待の一環で食事を没収されてしまい食べられなかった。これが彼女の運命を変える一度目の幸運である。

そのままなら間違いなく野垂れ死んでいたはずだが、ここで彼女に二度目の幸運が訪れる。
商人たちがトラックで運んでいた折り畳み式のモトラドの「ソウ」が彼女に助言をしたのだった。
ソウは積み荷を満載したトラックを運転して最寄りの国までたどり着くことを提案。彼女は躊躇していたが、結局その勧めに従いソウの指導の元トラックを運転して最寄りの国に向かう。

ここからが三度目の幸運であり、「全く戦闘の心得も旅の心得もない少女と単体では何もできない喋れるだけのモトラド」の一行は盗賊にも野生生物にも襲われることなく、ガソリンが切れるギリギリで近くの国にたどり着くことに成功する。
入国審査を乗り切ったソウは彼女にアドバイスする。「積み荷が元は行商人のものだと知られたら足元を見られるかもしれない。ここは嘘を吐いて自分の物だと白を切れ」と。
しかし、根がとことんまで善良な彼女はそんなことをすることができず、その国の役人に対しあったことを残らず正直に打ち明けてしまう。

そして世間知らずな少女に四度目の幸運がやってくる。なんと役人は元々このトラックの主だった商人たちを知っており、当然トラックと積み荷が少女のものではないこともわかっていた。
仮に嘘を言われていたら、厳しい取り調べなどをしなければならなかったかもしれないが、正直に事故に遭った商人たちの荷物を拾って持ってきただけなら何の問題もない、定価で取引に応じよう、と……
その国は国土面積こそ呆れるほど広いものの、文化水準はようやくラジオ放送やガソリン車が普及し始めた程度であり、荷物だけでなく商人の高性能なトラックも含めて驚くほどの高値で売れた。
さらに役人は行く当てがないならば、と少女に移住権まで認めてくれた。

……かくして少女はあれよあれよという間にその国でもトップクラスの大富豪になってしまったのだった。

全く働かなくても問題ないほどの資産を得た彼女だったが、元々の性格もあってとにかく「何もしない」ということができない性分だった。
そんな彼女にソウは商人の荷物の中で売らずにいたある荷物を手に取らせる。
それはこの国でも持っている人がほとんどいないような高性能なカメラとフィルムだった。
文化水準的になんとかフィルム程度は手に入るこの国は、驚くほど広いために国内だけで数々の雄大な景色を撮影することができる。
ソウはそんな風景をカメラに収めることを提案したのだった。

初めて手に取ったカメラの技術を少女はあっという間に吸収していく。
次第に近所の人に「写真を撮ってくれないか?」と頼まれるようになり、それに快く応じるうちに「少女がやっている写真屋がある」という噂は広まっていった。
そして彼女は元々趣味に過ぎなかった写真撮影を自らの仕事とすることを選択したのであった。

いつか彼女は「フォトグラフ」を略して「フォト」と呼ばれるようになっていった。

人物

長い黒髪をサイドに流して頭の上では簪でまとめている日本的な容姿の少女。
服装は活動的な仕事をしていることもあってか、機能的かつ中性的なものを好む。

名前に関してはソウが付けた長ったらしい名前があるのだが、気に入っているのがフォト本人だけであり、誰からもフォトと呼ばれるのでソウも諦めてフォトと呼んでいる。

宗教的教育の成果か、とにかく性善説を徹底的に信じ込んでおり一種病的なレベル。
役人に荷物の所有権を認められた際も全てを寄付しようとしたほどだった(ソウに「この財産は二人の共有物だからどうやって使うかは相談して決めよう」と諭されてようやく納得している)。
宗教国家の中で育ったこともあり、常識の類はあまりない。
基本的にはソウがいなければまともな生活を送れないほどであるが、写真屋を営むうちに少しずつ社会性も身に付いている他初期に比べると大分感情が豊かになっている。

前述の経歴もあり、戦闘能力や旅の能力は絶無。マジでトラックで旅ができたのが奇跡のようなものである。
一応奴隷をやっていた経験もあり体力はそれなりにあるが。またソウの運転もちゃんとできる。

彼女が主役となるエピソードは「旅」ではなく国内で依頼される様々な写真撮影にまつわる人間模様である。
意外な結末を迎えることも多いが、多くはほっこりするようなハッピーエンドになっており少し雰囲気が異色。

「自分とエルメスが旅を続けること以外に興味のないキノ」「基本的に善人だが自分たちの命が最優先でいざとなれば非情にもなれるシズ」「自分達の欲望が最優先で他人に迷惑をかけることをなんとも思っていない師匠」という今まで視点を提供してきた他のメインキャラクターたちとは最もかけ離れたキャラクターであると言える。

なお、シズ一行とは互いに出会ったことがある。シズは環境もいいこの国への移民を希望していたのだが、結局諸事情でやっぱりその話はなかったことになってしまった。

ソウ

フォトの相棒の折り畳み式モトラド。モデルはホンダ・モトコンポ。
CV:緒方恵美。フォトのエピソードの語り手でもある。
一人称は「オレ」であり、エルメスと異なりかなり口は悪い。
またその特殊な形状からなかなか買い手がつかなかったらしく、そのことが若干コンプレックス。

だが、性格としては「ぶっきらぼうながら世話焼き」と言ったところでフォトがまともな生活を送れるようにあれこれとサポートしている。
生活面だけでなくカメラを残すことで精神面でも支えようと言うあたりが優しさである。

また、頭も回りフォトでは思いつかなかった方法で彼女を助けることも多い。

しかし前述のようにネーミングセンスはイマイチ。

物語の都合もあり、あまり自分のタイヤで走る描写がなく、他の乗り物に乗せられて運ばれるケースが多い。

余談

著者の時雨沢氏曰く、元々はメインキャラクターになる予定ではなく、「雲の前で」一回こっきりの登場人物になる予定だったらしい。
が、「車やバイクを1台買うと、乗ってる内にもう1台増やしたくなる」的な感覚であれよあれよとメインキャラクターとなったとのこと。
立ち位置的には他の面子と比べて番外すぎるため、彼女をレギュラーにするか否かは悩んで担当編集とも相談された模様。


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最終更新:2025年04月26日 14:08

*1 今のところ該当する国は他のキャラクターの視点のエピソードでも登場していない