白虹騎士団(電脳戦機バーチャロン)

登録日:2018/08/28 Tue 21:49:35
更新日:2024/09/08 Sun 19:45:07
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「電脳戦機バーチャロン」シリーズに登場する精鋭バーチャロイド(VR)部隊。部隊のイメージカラーは

オラトリオタングラム発売後、模型誌「電撃ホビーマガジン」で連載されたDr.ワタリこと瓦重郎(シリーズのプロデューサー)による「FRAGMENTARY PASSAGE」で初登場。

当時は小説や模型などといった外部作品でのみ登場する存在だったが、シリーズ初のコンシューマ専用タイトルである「電脳戦機バーチャロン マーズ」でついに作品内にも進出。
「バーチャロン版ミラー○ュ騎士団」などと囁かれていた設定に恥じない圧倒的な強さを見せつけ、プレイヤーに強烈な印象を残した。

ちなみにスパロボシリーズにもきっちり登場しており、これによる認知度面での恩恵も少なくないとは思われるのだが、なぜかあまり話題にされない。こんなの普通じゃ考えられない……



-【シャドウVR】-

白虹騎士団について知るには、まず前提として「シャドウVR」について知らねばならない。
なぜなら白虹騎士団、そして彼らが所属する「白壇艦隊」(ホワイト・フリート)は、シャドウVRを狩るためだけに存在する軍事組織だからである。

VRとは限定戦争用に人類社会で広く使用されている巨大ロボットだが(詳細はVRの項目を参照)、非人類起原のオーバーテクノロジーを基礎としているため、危険な欠陥のいくつかが未解決のまま運用されている。
シャドウVRが生まれる要因となるVirtual-on(バーチャロン)現象」もその一つで、VRの全機能のコアにあたる「Vクリスタル質」に因む構造的欠陥である。

Vクリスタル質には「活性状態におかれると、周囲の人間の精神と交感し、これをクリスタル内で模倣(エミュレート)する」という性質があり、パイロットはこの性質を利用してVRを操作している。
しかしこの交感が行き過ぎてしまうと、パイロットの精神が(場合によっては肉体ごと)クリスタルに閉じ込められてしまうという現象が発生する。
これがバーチャロン現象で、軽症なら短時間の意識喪失で済むが重度になると記憶を失ったり、最悪の場合精神が永遠に閉じ込められたまま帰ってこれず植物状態に…つまり事実上死んでしまうことすらある。
もちろん対策としてVコンバータの活性化に対しリミッターをかけてはいるのだが、逆に言えばその程度の対策しかなく、そのリミッターの能力すら超えて活性化してしまう事態が往々にして起こりうる。

この時点で既に相当ヤバい欠陥であるが、しかし実はこれよりさらに上がある。
バーチャロン現象の際、パイロットの憎悪、怨嗟、敵意といった負の感情、あるいはもっと深層にある混沌とした非人間性などが強く表出してしまった時、そのVRに危険な変異が起きることがあるのだ。
これが「シャドウ現象」であり、これによって変異したVRはシャドウVRと呼ばれる。もっとも、こうした通常VRの変異以外にもシャドウVRが産まれる原因はいくつかあったりする。

シャドウ化したVRは機体が黒く変色し、破壊衝動に突き動かされているかのような自律行動(暴走)状態となり、あらゆるものに対して敵意を向け、手当たり次第に攻撃してくる。
さらに厄介なことに、シャドウVRとはいわば「パイロットとVRが究極的にリンクした状態」であるため、変異前に比べて戦闘性能が劇的に向上する。
シャドウVRの「汚染度」、つまりシャドウ化の程度には個体によって差があり、汚染度の高い個体になるとその戦闘性能は最早常軌を逸した域に達する

逆に汚染度の低い個体なら一般の商用VRでもある程度の抵抗は不可能ではないが、しかしこの場合はまた別の問題が発生する。
シャドウVRには外部に対する一種の侵食作用があり、これと対峙したVRパイロットは憎悪、怨嗟、敵意、混沌といった負の感情を精神の奥底から強く引きずり出される。
そう、シャドウVRを相手にしても簡単にはやられないようなパイロットの場合、今度は逆に自身がシャドウVRへと変異してしまう危険性があるのだ。

要するにシャドウVRとは、言ってみれば「超強くて超硬くて超早いゾンビなのである。
その凄まじい戦闘力と攻撃性、ネズミ算式に増えていく性質から放置は絶対に許されない。しかし前述したように通常兵器でこれに対抗することは不可能に近い。



-【概要】-

そんなシャドウVRを迎撃、討伐するために存在するのが、企業国家「FR-08 フレッシュ・リフォー」が所有する白檀艦隊、そしてその麾下のVR部隊、白虹騎士団である。

バーチャロンシリーズの舞台となる電脳暦世界では、基本的に軍隊とは限定戦争という「ビジネス」のための営利武装団体のことを指す。
対して白檀艦隊は営利を目的とせず、純粋に任務達成のためだけ存在する組織であり、いわば本来の意味での「軍隊」に近い存在と言える。

そして地球圏最大の企業国家であるFR-08が採算度外視で予算をつぎ込んでいるだけあって、その強さはまさしく別格。
装備・人員・権限・情報など、あらゆる面で営利軍隊とは隔絶した超高レベルを誇り、規模こそ1艦隊ながら名実ともに地球圏最高の軍事力とみなされている。

特に対シャドウ任務の最前線にいる白虹騎士団の隊員、通称「白騎士」達は、元々技量・人格共に最高の人材が選抜されている上、過酷な対シャドウ戦でさらに研鑽をつんだことで、その実力はもはや「超人的」とすら称されるレベルに到達している。

また騎士団というだけあり、団員が「○○卿」という呼び方をされたり、純白のマントが制服にされていたり、普通の軍隊のような厳密な命令-服従関係があいまいだったりと、いささか時代がかった擬古的な一面も持っている。


-【保有VR】-

シャドウVR討伐と言う極めて危険かつ困難な任務に従事する白虹騎士団には、専用に開発された特殊なVRが配備されている。
確認されている機体は全てテムジン系だが、他の系列のVRを保有しているのかどうかは定かではない。

この騎士団専用VRは姿形こそ通常の商用VRと似ているが、設計段階からコストを度外視した全面的な高性能化が施されており、数値上のスペックからして全くの別物。
VRという兵器はその性質上、「コストをかけることで、際限なく性能が伸びていく」という特徴を持っている。
この為商用VRの数百倍、下手すればそれ以上のコストがかけられている騎士団専用VRの性能は、それこそ商用機とは隔絶したレベルに達している。

騎士団専用VRに共通する基本仕様としては

・「超高出力Vコンバータ」
VRの機能中枢であるVコンバータの出力は、防御力・攻撃力・機動性・索敵力など、VRの全性能にダイレクトに直結する。
騎士団専用VRのVコンバータは、厳選された高純度Vクリスタル質だけを用いた超高級専用モデルを使用しており、商用機とは比較にならないレベルの超高出力を実現している。

・「専用のコンバート形式で実体化」
VRはVコンバータ内のディスクに書き込まれた構造データを物質として実体化(リバース・コンバート)することで建造されている。
騎士団専用のVRは、商用VRでは(多分リスク/コスト的に)不可能な専用形式でコンバートがなされており、高出力Vコンバータと相まって圧倒的な基本性能をもたらしている。

・「対精神侵食機構」
シャドウVRが発する精神侵食波に取り込まれる、つまりミイラ取りがミイラになるのを避けるため、徹底したシャドウ汚染対策が施されている。

・「超贅沢な高級仕様」
機体設計自体にも、コストパフォーマンスを第一義とする商用機では絶対に採用不可能なレベルの高性能化を徹底化している。

などがある。

ちなみに配備期の型式番号は全て「VR-○○○」で統一されている。このVRとはつまりVirtua-Roidの略であり、「マスプロダクトなビジネスモデルとは違う、これこそが”本来の”バーチャロイドである」という矜持の現れである。



-【メンバー】-

前述の通り、船のクルーから技士、そして勿論騎士ことVRパイロットに至るまで、金に糸目をつけず最高レベルの人材が集められている。



-【歴史】-

<OMG期>

白檀艦隊は元々ダイナテック・ノヴァ社(DN社)が「第二次Vプロジェクト(商用VRのデビューキャンペーン)」のために設立した艦隊だった。

その下に対シャドウVR部隊としての「白虹騎士団」が創設されたのはDN社の倒産後であり、年代としてはVCa1年ないしa2年だと思われる。


<オラタン期>

DN社の倒産後にFR-08が覇権を握ると、その総帥トリストラム・リフォーはVR事業に関して厳しい制限を課した。
これはリフォーが投資対象としてVRの価値を認めていなかったためだが、同時に白檀艦隊のスポンサーとしての立場もあっただろう。

しかしその結果、「表向きVR事業を抑制しておきながら、自前の白虹騎士団には超高級専用VRを用意したりって、そりゃお前ダブスタじゃねーの?」と非難の的になってしまう。

だがその後リフォーの思惑に反してVR市場は活性化し、リフォーもまたVRビジネスに積極的に参加するようになったため、地球圏ではVRの運用数が大きく増加した。
これに伴ってシャドウVRの出現数も増大したため、白虹騎士団も新型機VR-707の導入などの戦力強化が図られた。

さらにVCa4年にリフォーが暗殺されると、その後釜には騎士団団長と兼任でリリン・プラジナーが就任。
これによって白虹騎士団、また白檀艦隊の力はさらに増大し、名実ともに対シャドウ用の超精鋭部隊としての体裁を完全に整える。


<フォース期>

しかしVCa6年になると、FR-08上層部での内紛が加速し、その調停役であった総帥リリン・プラジナーを退職に追い込んでしまった。
リリンは団長の職も解任されて火星へと亡命することになり、以後団長の座は空席となる。

FR-08はこれを機に白檀艦隊への支配力を強め、それまでの
「人類の脅威であるシャドウVRを邀撃するためだけに存在する非営利組織」から、
「24時間対応でシャドウVR対策サービスを請け負う、限定戦争用のセキュリティビジネス会社」へと転換していくことになる。

騎士団はそれまでの特権的な待遇をはく奪された上、強制的に「金稼ぎのための兵士」とされたことで団員たちのモラルやモチベーションも大きく低下してしまった。
それでも多くの団員は粛々とシャドウ討伐任務を継続していたが、一部には現状に不満を抱き、騎士としての矜持を捨てて傭兵へと転向する団員が出てきた。

彼らはFR-08によって除名処置を受けたが、しかし多くはそれを見越して自分の乗機と共に出奔しており、限定戦争市場へと自らを売り込んだ。
俗に「破戒騎士」と呼ばれた彼らは、その超人的な操縦技能、並びに乗機の圧倒的な性能を活かして限定戦争で大暴れし、各方面に波紋を広げた。

<マーズ期>

しかしFR-08は彼らを抑止するどころか、むしろ自分たちも彼らに倣ってタガを外す方へと進み、それまで厳に自粛されていた「シャドウ討伐以外での白虹騎士団の使用」を徐々に躊躇しなくなっていく。

VCa8年、リリン・プラジナーがある目的の為にMARZを率いて地球圏へ帰還した時、これの行動をを妨げるべくその眼前に布陣したのはかつての古巣である白檀艦隊、そして白虹騎士団だった……




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最終更新:2024年09月08日 19:45

*1 戦闘機に例えるならミグ15とラプター以上の性能差があるはずの相手

*2 Phased Sift System。Vクリスタルの物質←→データ変換機構を使い、物体の形状を大きく変化させるシステム

*3 この会話まではむしろクリアリアはチーフを見くびっていた。