騎士

登録日:2018/05/03 Thu 05:48:34
更新日:2021/04/08 Thu 05:38:36
所要時間:約 4 分で読めます




騎士とは、に乗って戦うヨーロッパの重装騎兵であり、同時に貴族の階級の一つでもある。
英語では『knight(ナイト)*1』、フランス語では『chevalier(シュヴァリエ)』、ドイツ語では『ritter(リッテル)』。
日本では武士がこの階級に近い存在となる(ただし、武士の階級は親から受け継ぐ世襲制であるという違いはある)。

中国の「騎兵」は全く異なるもので、騎士や武士に相当するような概念も存在しない(戦いを生業とする貴族的階級は古代に存在したが、騎士や武士とはやはり大きく異なる)。

目次

概要

主に馬に騎乗しながら戦う者を称する貴族階級。
ただし、基本的に一般的な貴族階級(すなわち領主)とは異なり、先祖から自動的に受け継ぐものではなく、自身の才覚で勝ち取る階級である。
とはいえ、馬や鎧などの装備の維持だけでも非常に金がかかるため、中世ヨーロッパの騎士は実質的には世襲制ないし貴族からのコネで叙任するもので、
農奴や職人のような平民階級の出身者が、自分自身の能力だけで騎士になることはやはり夢物語である。

その発生初期は古代ギリシアからで、次第にヨーロッパ全域に広まり、銃器が発展するまで戦場の主力として活躍した。

なお、古代では馬に騎乗して戦う者が騎士という程度であり、富裕階級ではあったものの、この称号にそこまで特別な価値はなかったと思われる。
古代ローマでもequtas(エクタス)という騎士階級が存在したが、時を経ると共に富裕層が表立って戦うことは少なくなった。
そして法の関係もあって、『騎士』という称号は持て囃される様になっていったとされている。
この頃から必ずしも『騎士=馬に乗って戦う者』ではなくなっている。

その後は馬術と共に戦う術がゲルマン人など他民族から入ってきたこともあり、
再び『騎士』が戦場に出るようになったり、馬は移動手段程度だったりと、
戦場の様相に応じて形を変えながらも、近世まで存続していった。


いつからかは不明だが 『騎士道』 と呼ばれるモノも登場しているが、
これはキリスト教など複数の思想や国による違いなどがあるので現代では完全な理解は難しい上に、
現代で認識される騎士道のイメージを近代に作られたものと思ってほぼまちがない、
(人にもよるだろうが)ただキリスト教の影響を受けた騎士道が、ほぼ暴力にうえた蛮人であった騎士たちに、長い年月を経て、
神に仕えるのふさわしい人間であれという形で意識改革を行っていったのも事実である。
どちらかと言えば現実より創作物で目立つモノである。
「レディーファースト」など紳士の行動規範が騎士道由来であると言われている。
これもよく日本の『武士道』との違いが考察される。新渡戸稲造とか。



騎士の階級

ペイジ

「小姓」。主君に奉仕する雑用係。
大体7歳位から食事の準備など使い走りとして雑用をこなしながら、剣術やレスリングなど基礎的な技術を学んでいくことになる。

エスクワイア

もしくはスクワイア。トヨタの車種の一つである「エスクァイア」も、名前の由来はこれ。
「従騎士」。元々は英語で「盾持ち」の意味で、名前の通り正騎士について装備の持ち運びや鎧の着用の手助けなどを担当し、実際の戦場にも参加する。
順当にいけばペイジから14歳ぐらいでエクスワイアになれる。ほとんどの人間はここで終わるが。
日本で言えば足軽である。

ナイト

「正騎士」。20歳前後でようやくこれになれる。
主君から叙任の儀式を受け、忠誠を誓うことで騎士として認められる。日本で言えば侍。
この叙任の儀式だが特に目立った決まりや行う時期などの規定がなく、ある時期から肩に剣を当てる儀式、各装備に騎士の美徳をなぞらえるなどの共通項が見られる程度。
また定期的に行われるものでもない為、運が悪いと死ぬまで騎士になれなかったりしたり、また逆に戦前の景気づけであっさり騎士になれたり、
王が領主の長男を宮廷に出仕させるためにやったりと色々複雑。

騎士の装備


ソード

両刃の長剣。
騎士と言えば誰もが思い浮かべる代表的な武器で象徴でもある。
当初は片手で使うタイプが主流だったが、鎧の進化と共に片手でも両手でも使える物が増えていった*2
使用されていた当時は、特に名前はなく単に「刀剣(ソード)」と呼ばれていた。
現代では片手で使うから「片手剣」、貴族である騎士しか使わなかったことから「騎士の剣(ナイトリーソード)」という便宜上の名称がつけられていたり、
両手でも使えるタイプのモノは「ロングソード」と呼ばれてたりする。
騎士が没落しても「サーベル」として20世紀初期まで騎兵達に使われた。

ダガー

こちらは両刃の短剣。甲冑を着た相手にもその隙間を縫って攻撃できるため、14世紀頃から使われるようになった。
素早く鞘から抜けるため、平時の護身用としても非常に重要な武器でもあり、食器のフォーク代わりに使われることもあったらしい。
ソードと比べれば安価かつ法律で規制されにくかったため、騎士だけでなく平民も携帯した。
現代のイメージから小さい刃物の印象が強いが、当時のダガーの刃渡りは30cm~40cmが普通であり、かなり大きい。小さめの脇差くらい。

ランス

突撃槍。馬上槍。
ファンタジーでは歩兵が平然と持ち歩いているが、東洋の槍とは異なり メチャクチャ長くて重いので馬無しで使える武器ではない
後、円錐形をした「ヴァンプレイト」というランスばかりを目にするが、別にこれしか形がないわけではない。

メイス

戦棍。槌矛。\レイジャーフラーッグ コエノカーギーリー/
木製のクラブから発展した金属製の棍棒
鎧を着た騎士同士の殴り合いなら、鎧を通して打撃によるダメージを与えられるため、接近戦での主力装備だった。実はアラビア発祥の武器。
派生型として棘のついたモーニングスターも作られた。

チェーン・メイル

鎖帷子。使用されていた時代では単にメイルと呼ばれていた。
鎖を編んで作った服というべきで、プレートアーマーが登場するまで騎士に愛用された。
元々青銅器時代のオリエントで誕生しその後ケルト人に伝わり、そのケルト人と戦っていたローマ帝国でも採用された。
上にサーコートと呼ばれる服を着用することも。

グレートヘルム

大兜。チェーン・メイルと共に着用するバケツ型兜で、外を見るための細い穴が開けられている。身分を示すための装飾が施されれていることも。

プレートアーマー

15世紀半には一般的になった全身を覆う板金鎧。着る騎士の体形に合わせてオーダーメイドで作られる。総重量は 数十kg にもなる。
一応運動性を確保する工夫はされているが、ランスと同じく馬無しで使う装備ではない。
なお、生活用の平服の上にそのまま着用する物ではなく、
大半は「鎧下(ギャンベゾン・ダブレット等々)」という専用の衝撃吸収などの役割を持った服を先に着用して着込む。

シールド

。防具としてだけではなく身分証としての役割もある。ランスと共に使うために一部分が切り取られた物も作られた。

拍車

踵にある、馬の腹を蹴って指令を出す道具。「拍車をかける」の語源。
日本のファンタジーなどでは省略されがちだが、実は剣と並んで騎士を象徴する重要なアイテム。騎乗して戦う騎士の身分を最も象徴するもの。

騎士の終焉と騎兵の終焉

15世紀頃まで戦場の主役だった騎士だが、次第にその役割を失うようになっていく。
ハルバードを使うスイス傭兵やイングランドの兵などの歩兵部隊の方がより重要な役割を担うようになってきた。
(そこに至るまでの歴史的経緯が大分異なるが、日本において戦国時代に足軽が次第に重要な立場になっていった時期と一致している)
またイギリスなどで貴族の従軍義務を金銭で代行し、代わりに大規模な傭兵を雇うなど、貴族の在り方も大きく変わってきた。
貴族であり、累代の騎士でありながらも金で従軍を避けるのが一般的になってきたのだ
それでも傭兵を率いる隊長の中にはいまだ騎士位をもつものも少なくなく、名誉職としての役割は残されていた。

15世紀半ば以降の銃火器の発達によって騎兵自体の役割が変質*3すると、存在意義は大きく変質してしまった。
馬は大きく鋭い音に驚きやすく、銃の発砲煙は視界を大きくさえぎり、騎兵の移動範囲を縮めてしまう。
「銃器の音と煙と、簡単でいいから手早い障害システム*4の組み合わせで少人数での騎士・騎兵の突撃は足止め可能だ」という知見がフス戦争を切っ掛けに広まり、騎士の戦術的威力は大きくそぎ取られてしまったのである。
少人数での突撃は役割を失い、騎士は命令に従い多数で固まった突撃、騎兵の役割に変質していく。
また銃の登場により重装甲は不要となり、騎兵はより身軽に突撃するために軽装でランスとサーベルのみを武装とするようになっていく。

戦場での騎兵は残ったが、特権的な武力保持者、独立独歩の存在としての騎士はきえていくことになったのだ。
(まあそれでも当分の間はよき騎兵になれるのは生まれた時から馬に親しみ、軍装を維持できる貴族だけなので、兵科の中でも特権的な地位はたもたれたのだが)
その後も、騎兵部隊は要所における重要な戦力としての地位を確保していった。
騎士であることをやめる代わりに大集団での突撃力を取り戻した騎兵たちは戦場での重要なポジションを確保し続けた。
戦場を大きく迂回し、攻撃地点を選ぶことができる騎兵の特殊性を奪うことは歩兵でも砲兵でも奪うことは出来なかったのだ。
また何度か、騎兵に銃をもたせたら倍強いのではといったアイディアも試されたが、
結果としては「便利は便利だけど、これなら普通に騎兵として突撃させた方が強いし、予算に見合っていない」とのことで
あくまで補助的な兵科としてメインにはなりえなかった。

騎兵の没落は最終的に第一次世界大戦によってもたらされた。…ほらそこ、「そんな時代まで続いたのかよ!?」とか言わない。
高度化した要塞と有刺鉄線の前にようやく騎兵はその役割を機械化部隊、戦車などに譲り渡すこととなったのだ。
塹壕程度だと騎兵は迂回してしまうため、長大化した戦線と張り巡らされた有刺鉄線そして要塞によってようやく騎兵は戦場での使命を終えたのである。

現代では、装飾的な存在としての騎士以外は残されていない。
その一方で階級としての「騎士」は何かしらの形で国家に貢献した者に与えられる称号としてイギリスやフランスなどで健在である。
この場合は、科学者などの非戦闘員であっても騎士として認められる。一種の勲章というべきものである。

騎士団


いわゆる騎士で構成された軍事集団。英語ではナイツ(knights),オーダー(Order)と呼ばれ
軍事集団をさす場合にはOrderが用いられる。
騎士の最盛期である中世においては騎士修道会が主流であった。
歴史に詳しい方には常識であるが、この時代国王や領主貴族が戦争のたびに騎士や兵士を集めるのが主流であり、常備軍的なものは存在していなかった。
そのためドイツ騎士団を除いてはイギリス騎士団、フランス騎士団と言ったものは存在しない。(これは織田武士団、武田武士団と一般的に言わないのと同じである)

なお、ジェダイ騎士団がジェダイオーダーと呼ばれるのもこのような背景があるためと思われる。


物語での騎士

宮廷文学の「騎士物語」という形で中世からフィクションが存在していた。
財産を持たず宮廷を渡り歩く騎士たち、トルバドールによって広められたもので
「騎士が貴族の女性を助けて身を立てる」「聖地に渡ってキリスト教を再興する」「ユダヤ人いじめ」などのストーリーが多かったが、
これはまさに財産を持たず明日も知れぬ宮廷を彷徨う騎士たちにとって、あこがれでもあった。
特に裕福な未亡人と結ばれるのは騎士にとって最大の栄達であった、戦場でどれだけ活躍しても土地などの資産を持たない限り騎士の末路は悲惨な物だったから…。
また騎士階級の没落に合わせて実態を失った貴族や騎士道を皮肉ったのが有名な「ドン・キホーテ」である。



近年フィクションでの騎士

ファンタジーゲームでは定番の職業の一つ。
基本的に戦士系職業としては攻撃力が低い代わりに、最高クラスの耐久力を持つのが特徴。
パーティーでは、「挑発」などの固有スキルにより、相手の攻撃を自身に引き付ける「タンク」の役割を果たすのが主な役割。
アラインメントシステムを採用しているなら、当然正義よりのアラインメントの固有職になる。

キャラクターとしては、「堅物」「真面目」と言った性格付けが一般的。
それを逆手に取った軽い性格の騎士キャラもいないわけではないが。




騎士系キャラクター

  • 「何かに騎乗する」という騎兵色としての性格が強いキャラ
  • 「鎧をまとって戦う」という重装兵としての性格が強いキャラ
に二分されがちで、両方の要素を併せ持つことも決して珍しくない。
他には主君のために戦っていることがおおよその特徴だが、史実に近いイメージだと貴族として領地経営が主目的の場合もある。

なお、どの時代の騎士をイメージしているかとかそのキャラの設定次第にもよるが、乗り物も立派な武装がなくとも騎士は成り立つ。
そのため冒険者が領主に認められて騎士になったり、逆に騎士が何らかの事情で冒険者になっていたりすることもある。


竜騎兵(ドラゴンライダー)

を装備した騎兵」という本来の意味合いで登場することはあまりない。
大抵は文字通りのドラゴンに乗った騎兵。

ペガサスライダー

ペガサスに跨った騎士。空を飛べるという強さに美しさを兼ね備えた騎士。
絵面の関係からか、竜騎兵に比べて女性率がやたら高い。

女騎士

現実では男の職業だった騎士の女性版。
プライドが非常に高い。女戦士とは違って、ちゃんとした鎧を装備していることが多い。見えないのがいいのだよ


聖騎士

親衛隊に近い意味である「パラディン」と呼ばれることも多い。
騎士の中でも高位の身分の者とされたり、何らかの栄誉によって聖騎士の称号を得たりと、同じ聖騎士でも作品によって詳細はそれぞれ異なる。
『聖』という文字が付いているため、そのまま聖なる力を持つ騎士だからということもままある。
ゲーム上での扱いも様々で、通常のナイトを上回っていたり、防御重視の前衛職だったり、回復魔法を行使できたり、
挙句の果てにはナイトをより万能的にした結果、器用万能や器用貧乏になったりしている。

暗黒騎士

高潔なる騎士がダークサイドに堕ちた姿。
聖騎士とは逆方向ではあるが、悪役になりやすい傾向から実力は聖騎士を上回ることが多い。
聖騎士とは対になるように攻撃的な能力になっていることが多く、狂戦士と区別がつきにくい状態の者も存在する。

黒騎士

まおゆうの登場人物の事…では無く、盾の紋章や鎧を黒く塗りつぶしている騎士の事。
正規の騎士では無く傭兵が騎乗して戦闘し鎧の錆止めや傷や汚れを目立ちにくくする為に黒く塗っているから便宜上こう呼ばれているケースや、
訳合って出自を隠す為に意図的にこの立場に収まっているケースもある。
作品によっては「傭兵騎士」とか「自由騎士」等と呼ばれる事もある。

強盗騎士

重武装の盗賊として農民や行商人を襲撃したり、王族や貴族の姫君を誘拐する騎士。
跡取りになれなかった騎士の次男、三男や領地の経営に失敗した貧乏領主がフェーデ(私戦)権という「勝った者は神の恩寵があった=正義」を盾に暴れ回る。
史実では、貴族のフェーデ権が認められていなかったイングランド等の地域では被害は少なかったが、認められていたフランス等では深刻な社会問題と化していた。
1~2か所の小城と数箇所の村を治めるだけのBaron(後の男爵)級の貴族にとっては、上手く迎撃出来れば勝てない相手ではないものの、
急襲される事が多いので配下の騎士や兵士を動員する前に領民や出入りの商人に危害を加えられ、自領外に逃げられると追撃出来ずと非常に厄介。
その為、近隣の領主が結束して排除に動くか、王や諸侯(伯爵級以上の大貴族)が乗り出さなければ対処は困難であった。
エルサレム王国の陥落とそれに続く第3次十字軍も、「イスラムの巡礼を攻撃するな」とのエルサレム王ボードワン4世の厳命を破った強盗騎士が
エジプト王サラディンの王妹を含む巡礼一行を虐殺した事にイスラム教徒が一致団結して激怒した事が発端である。映画キングダム・オブ・ヘブンでその大まかな経緯が描かれている。


ジェダイ

ジェダイナイトと言うと、ジェダイの中では一人前の戦士を意味する。
ライトセーバーを使うものの、この場合の「騎士」に騎兵のような意味合いはないし、鎧も着ていない。単なる称号と見るべきだろう。

ナイトガンダム

RPG(ロールプレイングゲーム)ブームに影響されて始まったシリーズ『SDガンダム外伝』の主役。
なのでこの作品における「騎士」はドラクエシリーズの「勇者」の影響が強く、先述のジェダイと同様の意味を持つ。
設定上は力も技も魔法もバランス良く修めた者に「騎士」の称号を与える、という設定になっているが、その騎士の称号を持つ者の大半は魔法を使えない場合が多い。
ちなみにアルガス騎士団では団長である「騎士」が徒歩で 「剣士」の方が騎馬隊を率いている
上位職に”バーサル騎士”という、全ての騎士の上に立つ者にラクロア王国にのみ任命権のある称号がある。
こちらは所謂パラディンに近いが、基本的に一作品に一人しか登場しない。
初代バーサル騎士ガンダムに肖り、バーサル騎士の装備は白い鎧に剣とランスの二刀流を使う者が多い。


騎士がモチーフのキャラクター、メカ


追記・修正は騎士の称号を得てからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2021年04月08日 05:38

*1 「night」(夜)と間違えやすいが、たまに創作物で両方掛けていることもある。また、騎兵は「cavalier」(キャヴァリアー)として区別されている。

*2 非常に重そうな外見をしているが、片手タイプなら約1kg強、両手用でも1.5kgに収まるように作られていた

*3 フス戦争でカトリック陣営の騎士団が連戦連敗した事例は非常にわかりやすい。

*4 槍兵の槍衾はもちろんだが、鉄装甲の馬車の連結陣地ていどでもいい。