SCP-2047

登録日:2018/10/29 Mon 00:07:20
更新日:2024/03/24 Sun 19:47:48
所要時間:約 9 分で読めます






SCP-2047は、海外のシェアワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつ。
項目名は『Collaboration (共動)』
オブジェクトクラスはKeter。



概要

SCP-2047は直径40cmの中空の鉄球である。
モノ系SCiPらしく安定の破壊耐性を持っており、表面には未知の言語でメッセージが書かれている。
スキャンの結果、内部は空洞であり中に謎の機構が入ってることがわかったものの、それ以上の詳細については案の定わかっていない。



2047の主な特性はこれだけなのだが、どうもこいつ「イベント2047-A」と呼称されるある現象と密接に関わっているらしい。
というかメタ的には恐らくイベントの原因そのものだと考えられる。

オブジェクトクラスからも分かるとおり、こいつのヤバさはイベント2047-Aにある。
このイベントは現在までに1度しか発生していないものの、その規模と影響が尋常ではない。
具体的には直接K-クラスシナリオに繋がりかねないレベルである。
それほどの影響をもたらす現象とはどんなものなのか。簡潔に言おう。



地球と外宇宙の別の惑星の位置が、瞬時に入れ替わる現象である。




イベントログ

ことの始まりは1973年7月13日の0時ごろ、ほぼ日付の変わり目に起きた。
地球がもといた惑星系から瞬時に消滅し、新たな恒星系の軌道上に再出現したのである。



当然周囲に存在する惑星も恒星もなにもかも違う。
人類はイベントに気づくこともなく即座にサヨナラ!……とはならなかった。
どうやら別の星系のハビタブルゾーン*1の領域内にちょうど出現したらしい。マジかよ。
更に都合の良いことに月とよく似た衛星まであったため、地軸のブレや隕石の衝突なども全く起こらなかった。
なんとこれほど大規模な現象に遭遇しながらも、地球には特に何の被害もなかったのである。



しかし人間社会への影響はそうもいかない。イベント発生から2週間の内に全世界に情報が広まってしまった。
なんせ夜空の景色が丸ごと変わってしまったのである。財団が何をしたところで到底隠蔽など間に合うはずもない。
当然世界各地で大混乱が発生した。宗教施設は人々でごった返し、それ以外の人はこぞって無神論者となり、デモや抗議がそこら中で勃発した。
おまけにこの状況でアメリカとソ連と中国は新天地の宇宙開発で激しい競争をおっ始めやがった。

財団はなんとか社会の崩壊を防ぐため尽力していたようだが、流石に手も費用も足りなすぎる。
そっちに金がかかりすぎて肝心の収容活動に問題が生じ始める有様だった。



SCP-2047自体はイベント発生前の時点で既に確保されていたが、世界が世紀末状態に陥りかけているこのタイミングで謎の無線信号を発信し始めた。
最初こそ2047に記されているものと同様の謎言語だったのが、12時間を経て徐々に英語に変化し、最終的に完全な意思疎通が可能となった。地味に恐るべき学習速度である。
どうやら無線を送ってきたのはある異星文明、通称 「シータ-c」 という連中であり、イベントを起こしたのもこいつららしい。
何でもこの惑星取り替えっこ現象は連中の「星間交換プログラム」とやらの一環だそうだ。
当然ながら財団も急にそんなこと言われて「はいそうですか」と納得する訳がなく、元に戻すよう要求したのだが……


シータ-c
( ´,_ゝ`)「え?やだよ。」


と拒否された。
あくまで元に戻せないのではなく戻せる上での言い分らしい。
というかそれだけ発展した技術を持っているなら事前に警告くらいできたはずだが、後述の内容から考えると妨害を避けるため意図的に送らなかった可能性がある。



向こうの言い分はともかく財団側は説得している暇もない。
そうこうしている内にも国家間の緊張感はどんどん高まり。戦争が起こる瀬戸際まで来ていた。
本来これを解決するための国連も影響力が大きく下がり、もはや効果は微々たるものに。
先述の宇宙開発競争では中国が大きく遅れはじめ、そのせいか東南アジアへの政治的圧力が高まってきた。
これらの始末に追われた財団も(金銭的に)とうとう追い詰められ、ついにKeterクラスオブジェクトの収容にまで無視できない影響が出始めてしまった。
進退窮まった財団は、それまで却下していたシータ-cへの支援要請を実行することに。


シータ-c
( ´,_ゝ`)「え、やだy

財団
(# ゚Д゚)「こっちは滅亡しそうなくらいには被害甚大なんじゃワレェ!!」


とか言ったのかは知らないが、とにかく人類側に損害が出ていることを主張した結果、なんとかシータ-cの協力を取り付けることに成功。
さて、その後シータ-cが何をしたかというと、自身の技術と2047の中継を利用し、地球においてある種のCK-クラス 再構築シナリオを引き起こした。
どうやらこれによって局所的現実のリセットを行ったらしく、結果として地球上に存在するあらゆる天文学的データが書き換えられ、地球の日付もイベント発生時の7月13日まで逆戻りした。なおこの再構築の影響は2047を収容していたサイト-88のみ例外とされた。
つまり「元々地球はこの星系に存在していた」という歴史の修正を行ったのである。
このようなシータ-cの協力もあり、なんとか事態の収束に成功したのだった。
「一時はどうなるかと思ったが、これで安心だ」






とはいえ地球が新天地へやってきた事実は変わらないため、まずは新しい月に向けてアポロ18号が打ち上げられることになった*2
この探査機には建築資材と財団職員も載っており、月面到達と共に新しい月面サイト-190の建設が始まった。この辺りの仕事の速さは流石財団クオリティと言ったところか。
そして記事内最後のログでは、新たな惑星系調査のためにボイジャー1号が発射されている。
成すべきことはまだまだ山積みだが、ひとまずは一件落着と言っていいだろう。



宇宙の車窓から: シータ-c編

さて、ここからは一連の騒動を起こしたシータ-cとその文明についてまとめよう。
原住民からは「パイコール(Pycole)」と呼称されるシータ-cは地球型惑星で、歴史は47億年と地球より若干長いらしい。
1日の長さや重力はほぼ地球と同じだが、驚くべきことに91億4400万種もの生物が住んでいるとのこと(地球でさえ既知の生物は約175万種、未発見のものを含めても1400万種ほどであることを考えればその差は歴然である。))。
また地球では霊長類ことサルが文明を築いたが、あちらでは魚類などの水棲生物から進化した種の社会が形成されている。
よってシータ-cの支配種は体に鱗を持ちエラによる限定的な水中呼吸が可能な半水棲生物……つまりレプティリアンみたいな奴らである。



財団世界の異文明と言えば人類をめっちゃ恨んでたり虫みたいな社会を構築してたり以前の地球の支配種だったり魔法が日常と化してたりグロカルトじみた儀式をしてたりと大抵ろくでもないが、シータ-cはその中でも比較的普通で友好的な文明である。
少なくとも話が通じるだけでもマシな方だろう。
嗅覚と味覚がものすごく発達しており、特に味覚に関しては料理から宗教を確立しているくらいには相当なもの。某美食屋漫画か何か?
ただそのせいか神格などに関する信仰はほぼ存在していない。



このように割と人類に近い感性や文化を持つ連中だが、面倒なことにシータ-cの人類はどいつもこいつも旅好きの集まりらしい。
どれほどのものかはさっきやってた通り、宇宙規模で惑星ごと移動するぐらいにはすごい。
「星間交換プログラム」というのも彼らの探究心を満たすのが目的で、SCP-2047もそのために作られた装置なんだとか。
彼らは2047と同じ装置を宇宙の様々な惑星にばらまいているらしく、イベント自体は今までも何度も起こしてきたそうだ。
地球が転移後すぐに滅亡しなかったのも、環境が似通った星同士が対象となっていたためである。そこだけは微妙に親切だなおい。
どっちにしろばらまかれた側の文明にとっては傍迷惑とかいうレベルでは済まない。



SCP-2047がKeterクラスなのは、今後イベント2047-Aが発生する可能性が残っているからだろう。
シータ-cの連中はイベントによる被害などへの罪悪感はあるものの、今後も旅をやめるつもりはないようである。またいつ地球が踏み台にされるかもわかったものではない。
おまけに他の星にも2047があるなら、そこの支配種辺りが機構を解析して独自にイベントを起こすことだってありえる。そいつらがシータ-cのように話が通じる連中とは限らないのだ。



とはいえ財団は現状イベントを防ぐことができないし、発生後の対処法も充分ではないため、何かまともな対策が取れるかというと正直なところかなり厳しい。
現在は2047が何か受信したり発信したりしないように電波遮断室にぶち込んでいるものの、こちらの技術を遙かに上回る文明の産物である。
それだけでどうにかなるとは到底考えにくいだろう。



……まあとどのつまり、アレだ。



財団の明日は微妙なところである。



余談

本家記事にはもう一つ補足があり、そこにはイベント前の太陽系についての説明が書かれているのだが、そこに色々すごいことが書かれている。

1969年、米国の宇宙計画によって人類は月に降り立ちました。しかしこれにより、我々の太陽系の更なる探査は地球軌道もしくは月面から行う必要があることが明らかになりました。1972年後半にアポロ17号をもってアポロ計画が完了し、ミネルヴァ・ミッションが人類の月面における恒久的居留地建設のために実行に移されました。

いくつかの例外、1972年12月29日に発射直後に爆発した補給船ミネルヴァ18号などの例外を除けば、この計画は素晴らしい成功を収めました。もともとの計画は1973年1月、おもにミネルヴァ18号の喪失を理由として終了されました。補給ミッションのほとんどは民間業者が人材と技術を提供するようになり、ミネルヴァ基地は1973年より始まった安定と世界平和の時代における不可欠な中心的存在と見なされるようになりました。

その時点で、およそ2500名のさまざまな国籍の人々がいくつかの月面基地に居住していました。こうした成果を失った社会的衝撃は交換による宗教的分裂以上に、最終的な社会の崩壊を招いた主要な原因となりました。

以前の地球はなんと月面コロニーを既に実現していたらしい。
現在でも月面基地はさまざま課題を抱える試みであることを考えると、かつての人類は今より優れた技術レベルを有していたようだ。



ただ、少し気になるのは残されたコロニーがその後どうなったかということである、地球からの補給が途絶えたなら遅かれ早かれ壊滅しているかもしれない。
しかし、2047の特性から考えて元の月はシータ-cを回っているはずだ。普通に考えれば彼らと接触しているだろう。
ただ、そのことついて特にシータ-cからの通達とかは来ていない。いくら不親切でも一言くらいあっても良さそうなものだが……。



果たして2500人の地球人は今何をしているのだろうか?
彼らのその後についてはカノンハブ「朝までまっすぐに」にて語られることになる。



追記、修正はシータ-cにお住まいの方にお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2047 - Collaboration
by InsipidParoxysm,Doctor Cimmerian
http://www.scp-wiki.net/scp-2047
http://ja.scp-wiki.net/scp-2047

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最終更新:2024年03月24日 19:47

*1 恒星系において、惑星が生物がちょうど生息できる温度になるような恒星との距離のゾーン。生存可能領域とも呼ばれる。現在の我々の太陽系では0.97~1.37天文単位の間とされ、金星は近すぎ、火星はギリギリアウトだが、地球もあと少し近かったらアウトだった

*2 知ってる人も多いだろうが現実のアポロ計画は17号までしかない。