シャドーハウス

登録日:2020/04/04 (土) 02:06:23
更新日:2020/05/25 Mon 12:05:42
所要時間:約 8 分で読めます





「シャドーハウス」とは、「となりのヤングジャンプ」にて連載されている漫画作品。
作者は二人組の漫画家・ソウマトウ。今流行りのWEB連載であるため、最新話は無料で読むことができる。
フルカラー版とモノクロ版が同時連載という一風変わった作品であるが、作品の性質上、フルカラー版を読むことを推奨。


この作品、ほかの漫画同様に公式のアオリ文句が存在するのだが、その文言はというと、なんと「類似作品不在」。
作者が「小説の組み方をもとに作話した」と語る通りの特徴的な話運びをしているほか、
ゴスロリと日常百合とファンタジーとミステリーとアクションとディストピアとスリラーを全部のっけた、異彩を放つ作風である。
あえてジャンルを言うなら「ミステリーアクション」が近いだろうか。

そして、もう一つの大きな特徴として、この漫画の登場人物は大きく2種類に分けられる。
"顔をもたない"貴族である「シャドー」、そのシャドー達に一人ずつ配され、その「顔」を代わりに演じる命を背負う召使い「生き人形」
この二者は例外なく二人一組で行動し、そして全員が二人一組。話の本筋だけでなく、各ペアの関わり合いもまたこの物語の見どころだろう。

顔を持たない「シャドー」は言葉通り顔がなく、結果登場キャラの半数は顔が黒ベタ塗りだけ*1という見た目にも特異な作品。


あらすじ


来客のない奇妙な館。
ここには貴族の真似事をする『シャドー一族』が住んでいた。
影のような容姿をしているが故に、顔が見えない不可思議な一族。
そこで彼らは、『顔』の代わりとして『生き人形』を従えることにした。
その一族が住む屋敷こそが、“シャドーハウス” である。

生き人形の少女エミリコとその主でありシャドー一族の少女ケイト・シャドーもまた、“シャドーハウス” に住まう二人。
まだ成人の儀を迎えていない彼女達は自室を出ることを禁じられていたが、
時がたち、その資質を試される成人の儀ーー通称「お披露目」の日がやってくる。
様々な試練を乗り越え、無事に「成人」を迎えた二人だが、同時に“シャドーハウス”の異常な実情を目の当たりにすることとなる……。


登場人物


エミリコ
本作の主人公その1。ケイトに仕える生き人形の少女。
好奇心旺盛で底抜けに明るいお人好し。若干ぽんこつの気はあるものの、誰にでも友好的に接する。主人のケイトをはじめ、その明るさに元気づけられる者は多い。
学はあまりないらしく、文字もうまく読めないが、一方で身体が丈夫。
飲まず食わずで雑用をしてぶっ倒れるほどケイトが大好きで、逆にケイトから心配されることも少なくない。


ケイト・シャドー
本作の主人公その2。エミリコの主。ほかのシャドー同様全身がシルエットのように真っ黒なため、表情を読み取ることができない。
そんな彼女の代わりに笑ったり泣いたりして表情を再現するのがエミリコ達生き人形の仕事。
エミリコとは対照的に知的で落ち着いた才女だが、若干内気で気難しいところもある。
エミリコのことは大事にしており、主人でありながら逆にエミリコに対して世話を焼くことが多い。
生き人形を自らの一部として扱うシャドー一族において、生き人形の個性を尊重する珍しい人物。
エミリコに「エミリコ」とまったく語感の異なる名前を付けたのもそれに由来してのこと。



ルウ
ルイーズに仕える生き人形の少女。顔立ちの整った美少女だが、口数が少なく無表情のことが多い。
主人・ルイーズに一から十まで従うことが自らの役目だと信じており、それゆえか自分で判断することが苦手。……と本人は語るが、実はけっこうしっかり者で優れた観察力の持ち主。
本作における「理想的な生き人形」とは彼女のような存在を指し、周囲からは模範的な存在として見られている。


ルイーズ・シャドー
ルウの主。ケイト同様「お披露目」が済んでいない。
おしゃべりで遠慮をしない、若干ナルシスト気味な人物。本人は気づいていないが、無意識に棘のある発言をして敵を作ることが多い。
自身の生き人形・ルウのことを心底愛しており、ていねいに扱う。が、彼女が愛するのは「ルウの顔」「ルウの声」であってルウ本人ではないため、顔以外が傷ついても無関心。
本人曰く「『顔』に性格があるの?」とのことで、その関係はさながらお人形とそれで遊ぶ少女である。
彼女のすすは「柔らかく、手触りがいい」らしい。


ショーン
ジョンに仕える生き人形の少年。冷静で正義感の強い性格だが、一方で頑固かつ生真面目な堅物でもある。
眼鏡が無ければ生活に支障が出るほどの近眼で、それを案じた主人・ジョンに眼鏡をするよう指示されるも「見た目をあなたに合わせるのが仕事なので拒否します(意訳)」と突っぱねるあたりにその気質が表れている。
下手に常識人なせいで奔放なエミリコやジョンに振り回されることの多い苦労人。


ジョン・シャドー
ショーンの主。ケイト同様「お披露目」が済んでいない。
自由奔放で強引で、突拍子もない行動が目立つ変わり者。
ケイト同様生き人形自身の意思を尊重する稀少な人物だが、ショーンよりも彼のほうが個性的なため、むしろショーンを振り回したり付き合わせたりするほうが多い。
「お披露目」中にケイトに一目惚れし、いきなり現れて「婚約者になれ」と求めて以降、たびたびケイトに求婚するようになった(無理強いはしてない。一応)。
ちなみに「顔」がないシャドーに一目惚れというのもおかしい話だが、本人曰く内面に惹かれたらしい。
彼のすすは「固くてゴワゴワしている」とケイトからは不評だった。


リッキー
パトリックに仕える生き人形の少年。
高圧的で口が悪く、鼻にかけるような言動が目立つ嫌なヤツ。見た目も相まってどこぞのライバルを彷彿とさせる人物だが、その態度はパトリックに合わせてやっているフシがある。
主人であるパトリックには非常に忠実でひたすら真摯に仕えるが、パトリックよりもリッキーのほうが要領がよく頭も回るため、主人が考えてないことまで先読みして気を遣うこともしばしば。
気が付いたらパトリックを引っ張って行動してました、なんてパターンも多い。
ショーンとは犬猿の仲。


パトリック・シャドー
リッキーの主。ケイト同様「お披露目」が済んでいない。
リッキー同様高圧的で何かと見下すような物言いをするが、パトリック自身はリッキー以上に繊細で傷つきやすいガラスハートの持ち主で、いわゆる虚勢を張るタイプ。前述の通りリッキーの方が頭が回るため、自身に気を遣うリッキーに乗っかって空気を読むシーンが多い。
ヘタレ気味な性格だが決して悪人ではなく、召使いのリッキーに頭を下げて頼み込むなど、彼なりに筋を通すシーンもきちんとある。
彼のすすは「砂のようにきめ細かい」のが特徴。


ラム
シャーリーに仕える生き人形の少女。
非常に憶病で喋るのが苦手な人物。要領も悪く周囲からは無能呼ばわりされており、虐めも受けている。リボンをつけた左手の人指し指をラミーと名付けて、自問自答をする癖がある。
仕事の要領は悪いが、実は完全記憶能力の持ち主で見たものを忘れることがない。またそのおかげか、計算が非常に得意。


シャーリー・シャドー
ラムの主。ケイト同様「お披露目」が済んでいない。
無口どころか作中で一言もしゃべっていない謎めいたシャドー。
召使いであるラムとも会話をしたことがない上に感情表現もゼロ。さらには身の回りの世話さえ必要としないなどコミュニケーションの取りようがない人物で、ラムからは「感情が読み取れない」と怯えられていた。
「ラム」という名前さえ、シャーリーが喋らないのでラム自身が勝手に名乗っているだけ。
ラムと同じように左手にリボンを付けている。


ミア
サラに仕える生き人形。髪型は肩に掛かるくらいの灰色のセミロングで、毛先がウェーブしている。瞳は緑色。
住んでいるのは、ケイトの部屋の真上。(サラの部屋がケイトの部屋の一つ上であるため)
性格は陽気で、エミリコの面倒をよく見ている。
お風呂好きであることを伺わせる台詞が時々あり、エミリコと一緒に入った時も気持ちよさそうにしていた。
生まれつき文字が読めるなど、自身曰く『優秀』。ただ、それが故にサラから過剰な期待をかけられている。
要領の良さは折り紙つきで、エミリコやローズマリーに助け舟を出す描写が度々ある。
笑い声は「うふふ」。これはサラも同じである。


サラ・シャドー
ミアの主。黄色いワンピースを着ている。
性格はミアとは正反対で、マリーローズから「棘だらけのアザミのようなサラ」と呼ばれている。初対面のケイトに対し『出来損ないのシャドー』、エミリコに対し『失敗作』と言い放った。
ミアのことは優秀だと認めているものの、星つきになりたいがあまりにきつくあたっており、体罰を加えている描写もある。
自己愛が強い者同士、通じるものがあるのかルイーズを気に入っており、よく一緒にいる。


ローズマリー
マリーローズに仕える生き人形の少女。
穏やかな気質でのほほんとした雰囲気の人物で、話すときはたいてい語尾が「○○ねぇ」「○○よぉ」と間延びする。
生まれて初めて部屋の外に出たエミリコをサポートする先輩的存在だが、どういうわけか何かと酷い目に遭う。


マリーローズ・シャドー
ローズマリーの主。「お披露目」は通過済み。
タカラジェンヌの男役じみた服装が特徴的なシャドーで、立ち居振る舞いや喋り方も男性的。基本的に明るく親切だが、胸倉をつかまれて凄まれても鷹揚としているなど、どこか浮世離れした人物である。
ケイトらを花にたとえて呼んだり、踊りながら現れたりするなど芝居がかったクセの強い言動が目立つため、彼女だけやたら印象に残った人もいるのではないだろうか。
生き人形のローズマリーとは頻繁に社交ダンスを踊っており、ローズマリーが女パート、マリーローズが男パートを担当する。


バービー
バーバラに仕える生き人形の少女。
エミリコをはじめとする生き人形たちのリーダーで、いつもハンドベルを携帯している。
口が悪く、さらには殴る蹴るの実力行使に走ることも少なくない暴力的な人物。
そのため、他の生き人形からは非常に恐れられている。
が、組織をまとめるリーダーとしての手腕は本物。トラブルが起きたときには混乱する生き人形たちを一人でまとめてみせ、居合わせたシャドーにさえ「私たちの出番はなさそう」と言わしめた。
主であるバーバラにさえ暴言を吐くこともあるが、それは彼女なりに主を案じてのこと。


バーバラ・シャドー
バービーの主。
ケイト達が住まう『シャドーハウス・子どもたちの棟』を取りまとめるシャドーで、いわゆる生徒会長的ポジション。
言動こそ丁寧だが彼女もバービー同様厳格な性格のため、他のシャドーからは敬遠され気味。
生き人形・バービーとの関係は、主従というより軍曹と副官のそれに近い。



用語解説


生き人形

シャドーのリーダーである「おじい様」によって命を吹き込んで生み出された生きた人形。見た目は人間そのもので、「生き」人形であるゆえお腹も空くし怪我をすれば血も出る。
通常は召使いとして『シャドー一族』の者一人につき一体ずつ配される。
仕事はシャドーの身の回りの世話のほか、自分の主人となるシャドーの『顔』を代わりに表現する役目、部屋にたまる煤を掃除する役目を持つ。とくに前者は重要視され、「お披露目」ではこれを十全にこなせているかチェックされる。
名前は自身の主につけてもらうらしく、ほとんどの生き人形は「ルイーズ→ルウ」「パトリック→リッキー」のように自身と似た語感の名前をつけるのがセオリー。が、ケイトとエミリコのように語感の重ならない名前を付ける者もごく稀にいる。


シャドー

身体が黒く塗りつぶされたように真っ黒な色をしている人々。全身真っ黒で表情、目線、顔つきにいたるまでの一切が見えないため「顔のない一族」とも呼ばれており、それを補うために生き人形をはべらせている。
当たり前だが、見た目は真っ黒な身体と服装と除けば体格から髪型まで自身の生き人形とまったく同じ。
また、一人称はかならず自身の名前になる。たとえば、ケイトなら「(ケイト)」、ジョンなら「(ジョン)」。

貴族のような服を着て、貴族らしい食事をし、貴族そのものな振る舞いをし、自分たちも貴族であると考えているが、正式に貴族として扱われているわけではないらしく、作中のモノローグでは「貴族の真似事をしている」と語られている。

異様な見た目をしているものの、身体能力や食性は普通の人間と同じ。
悪い感情を抱いたり不安になると体から煤を放出し、またそうでなくとも常に体から煤を出し続けている(このため、触るものすべてが黒く汚れてしまうらしい)ため、これを掃除することが生き人形の仕事である。
この煤は自然と出るだけではなく、意識的に出して操ることも可能なようで、この煤を操る能力は「すす能力」と呼ばれる。
徹底した階級が存在しており、特にすすを出す量とすす能力の有無が重要視される。
彼らシャドーも「お披露目」では審査の対象なのだが、シャドーの場合、審査員にしか知らされていない「ある条件」を満たす必要があるらしく……?


すす

シャドーが身体から出す物質。現実の煤とほとんど性質は同じだが、シャドーはこれを自在に放出し、操る事ができる。

また、このすすは焼いて固めることで「すす炭」という燃料を生み出すことができ、そしてこのすす炭がシャドー家の家計を支えてもいる。そのため、シャドー内ですすの放出量は地位に関わるほど重要。



シャドーハウス

シャドー家に属する者たちが住まう巨大な洋館で、本作の舞台。
シャドーのリーダーである「おじい様」とその側近達が住まう本館と、ケイトら年若いシャドーが住まう別館の2つからなり、本館は「おじい様」が、別館はバーバラが管理している。



お披露目

シャドーと生き人形にとっての成人の儀。社交パーティのような形で開かれ、参加するシャドーは貴族に相応しい資質を備えているか、生き人形はシャドーの『顔』となる役割を十分に果たせているかをチェックされる。
この「お披露目」を済ませていないシャドーは子供として扱われ、自室から外に出ることを禁じられる。
お披露目においては、毎回一組は落とすことが暗黙の了解となっているらしいが……



追記・修正はおじい様のすす入りコーヒーを飲みながらお願いします。


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