NORN9 ノルン+ノネット

登録日:2020/05/17 Sun 00:00:03
更新日:2024/04/08 Mon 13:02:02
所要時間:約 41分で読めます






懐かしい。でも、何かが違う――。

『NORN9 ノルン+ノネット』は2013年にオトメイトから発売された乙女ゲーム
対応ハードはPSP。愛称はそのままノルン。

舞台は1919年の日本。明治や大正の時代を想起させる世界での、NORNという飛行船での旅を描く。船に乗った12人の少年少女の交流や集団生活が物語の主軸になっている。
時代設定は20世紀のはじまり頃と現代よりも100年ほど前であるが巨大飛行船や機械兵士などのオーバーテクノロジーが存在していたり、逆に銃が存在しなかったりと本来の大正とは違った異質な世界になっている。

あとBGM担当がFFシリーズの植松伸夫やケビン・ペンキンがいたり、背景に劇場版ポケモンを担当した秋葉みのるがいたり、オープニングが乙女ゲーム界の重鎮であるやなぎなぎだったりと何気にスタッフが豪華。

本作の最大の特徴は主人公が3人いることしかもフルボイス
比喩でもなんでもなく、「プレイヤーが操作し、攻略キャラと恋愛する」という人物が3人いる。
キャラクターも天然、ツンデレ、クーデレと結構色とりどり。
ただ攻略可能キャラは主人公によって割り振られているため、同じ攻略キャラを複数の主人公で攻略してしまってなんかNTR感が出るとかそういう事態は避けられている。オトメイトも流石に地雷様の再来は防ぎたかったようである。
主人公たちもファンから普通に人気が高い。
というかただでさえフルボイスな上に、主人公たちはそれなりに暗い悩みを抱えておりスチルでもガッツリ映っていることが多いためにやっているとたまに乙女ゲーなのかギャルゲーなのか分からなくなってくる。

全7章構成。プロローグのみ現代からタイムスリップしてしまった小学生・空汰の視点で描かれ、1章からは主人公たちに視点を移し、1章ラストで攻略対象を決めるという流れ。

2016年1月よりアニメ化された。

【あらすじ】


小学6年生の鈴原空汰は、校外学習での国会議事堂見学中、謎の声に導かれて気が付くと大正時代にタイムスリップしてしまう

途方に暮れた空汰であるが彼はそこでこはるという不思議な少女と出会う。彼女はとある船に乗るために旅をしているらしい。ついて行った空汰が目にしたのは『NORN』と呼ばれる巨大飛行船だった。

そこには10人の超能力者たちが乗りこんでいた。彼らに『NORN』へと乗るように指示したのは『世界』と呼ばれるこの世界の多くの意志の集合体とされるもの。その能力をどの国が、どのように使うのかを振り分けるために、世界の元に超能力者たちを招集させようとしているらしい。
空汰は自分のいた時代へ戻る方法を知る鍵が「世界」にあるのではないかとこはると共に「ノルン」に乗船することを決める。

そんなある日船は謎の青年・吾妻夏彦によって襲撃される。何とか追い払うことに成功するが、内側から爆破された跡が発見されたことで内通犯の存在が明らかになる。

誰が犯人かわからない状況で、事態を重く見たリーダー・結賀駆は二人一組のペアを組み、お互いを監視することを提案する。

【用語】


◆NORN
こはるたち能力者たちが旅する球体型の超巨大飛行船。内部は3層構造になっており、居住スペースや自然区域などに分かれている。自動操縦でアメリカに向かっており、新しい搭乗者を迎え入れる際や補給の際に着陸する。

◆能力者
本作のメインキャラクターである11人の超能力者たち。
自然を操る力から精神を操る力まで彼らは何かしらの能力を持っている。
今後それぞれの国に派遣され、国政によっては互いに敵になるかもしれないということから「お互いの素性・能力を詮索しない、必要以上に慣れ合わない」というルールを敷いている。守っていない奴も多いが。そんなこともあり能力を明かしているのは駆、平士、深琴の3人のみ。
また能力には適正順位があり、息をするように自然に使える者から、使うだけで疲労する者までいる。
全員日本人のため国外から戦力差が生じることを恐れられている。その軋轢を無くすため、世界が彼らをそれぞれの国に派遣することを決めた。そのため『世界』の元に向かうのが彼らの目的。
普段は班に分かれて行動している。それぞれの班は
こはる、駆、千里、正宗
深琴、朔也、一月
七海、暁人、ロン、平士
となっている。これはこのまま攻略対象の区分けにもなっている(夏彦のみ例外)。

◆世界
NORNで旅することを能力者たちに命じた存在。「多くの意志の集合体」としてこの世界に生きる者たちには広く認知されている。空汰からは「国連のようなもの」と認識されている。
正体は不明。

◆HIYOKO
NORNに住んでいる小さなヒヨコたち。高度な意思を持っているらしく、船内での能力者たちの生活の支えになっている。

◆『大正』
本作の舞台となる時代。1919年と間違いなく大正であるはずなのだが、オーバースペックが存在していたり、銃の存在が認知されていなかったり(裏で流通自体はしている)いびつなところがある。
『大正』という名前もないらしく、精神感応能力を持つ平士以外は「タイショウ」と発音する。

【登場人物】


◇主人公たち


本作の3人の主人公である少女たち。プロローグ後、プレイヤーが彼女たちのうちのひとりから選ぶというところから物語が始まる。ちなみに選ばれなかった主人公ふたりもちゃんとその後の物語に関わる。
前述のように「乗船者たちはお互いを詮索しない」というルールのため馴れ合い不要ではあるのだが、数少ない同性ということもあり困った時は相談しあうなど友情は意外と厚い。
オトメイトは2020年に主人公オンリーのコラボカフェである「オトメイトガーデン・ヒロインズコラボレーション」を開催したが、やはり3人主人公であるというのは珍しいのか、結構前の作品であるにもかかわらずトップにいたのは彼女たちであった。



この船が来てくれること、ずっと楽しみに待っていました

◆こはる
CV.藤村歩
空汰と並び最後に乗船した少女。17歳。天然担当。
船に乗るまではとある山奥で孤独に暮らしていた。どれくらい孤独だったかというと、誰にも名前を呼ばれなかったため序盤は自分の名前を思い出せなかったほど。幼いころに「旅人さん」と名乗る男と出会い、17歳になった時にとある船に乗れば孤独から逃れられると告げられていた。それが乗船した動機。
常に周囲に気にかけ寄り添おうと考えられる優しい少女。また妙に礼儀正しくいつも敬語口調で話す。人と接してこなかったせいかやや世間知らずで純真無垢であり、ちょっと天然が入っている。ただキレると怖い。駆を翻弄できる数少ない人物。
能力は『』。金属を一瞬で蒸発させたり、機械兵士軍団を壊滅させたりとアヴドゥルさんも真っ青の戦闘能力を持つ。また藤村歩が炎使いのキャラを演じることになったのか。また能力に対する適正は最も高い。あと自分(と耐火性の制服)は燃えないのでその気になればウルトラダイナマイトも出来る。ノルンの中で本気出したら一番ケンカ強いのは多分この子。本人は気が付いていないが正確には燃やしたいものだけを燃やすことができる。
しかしこの能力のために故郷では怪物扱いされ船に乗るまでずっと迫害されてきた。山奥で孤独に暮らしていたのはそのため。この迫害の記憶はこはるの中で根強く残っており、本編でも様々な場面で彼女の中でフラッシュバックしている。やたらと礼儀正しいのも「もう人に嫌われたくない」という想いゆえ。
そんなあどけない純真さと辛い過去に反し、実はメンタルは登場人物の中で最も高く安定している。作中でもあまり動じることはない。というかこんな過去を持っているのにまだ人と仲良くしようとしている時点で……。だがそのメンタルの強さから平気で自己犠牲をおこなう危ういところもある。
まるでギャルゲのヒロインのようなキャラだが、おそろしいことに彼女は乙女ゲーの主人公である。
そのメンタルの高さから、問題の多い野郎どもをしっかり攻略していってる。



私がへばってたら、みんな不安になるじゃない!

◆久我深琴
CV. 高垣彩陽
公家出身のお嬢様である18歳の少女。ツンデレ担当。公式HPでは3人の中で唯一『美少女』と言われている。
気が強く、高飛車で意地っ張りな性格。その反面高貴な育ちということもあり面倒見が良く少女たちの中では実質的なリーダー役。また船で厄介ごとが起きるとまず止めようとするのは彼女。要するに委員長気質。こはるがママなら深琴はオカン。
色々世間知らずなこはるを何かと気にかけており、逆にこはる本人には女の子らしい女の子として尊敬され懐かれていた。七海とはそこそこの期間共にいるため、気心の知れた友人。
なお絵は苦手であり、人間を描くと大体バケモノ扱いされる。そしてこれを実際に描いているのはまさかのあやひー本人*1
高い防御能力を有する『結界』を貼る能力を持っている。防御系性能であり他人を傷つける可能性が低いこと、船を守る要であることから乗船者たちの中では数少ない能力を明かしている側の人間である。硬度、範囲を高めるほどに疲労が溜まる。能力適正は8番目。
能力を持っていたことで大切に扱われ、周囲は子供から大人まで彼女のことをほめちぎり将来を期待した。彼女の高飛車な性格はここからきている。それと同時に多くの人にあがめられたことで「自分は特別な人間だから、頼れる相手はいないし、周囲の期待に応えるために誰にも頼ってはいけない」という強迫観念に憑りつかれるようになっていった。やたら意地っ張りなのも他人には頼っていけないという想いがあるから。自分にも厳しく、やりすぎではと思えるほどに自分を律している。何しろ疲労が溜まるにもかかわらず常に船全体に結界を貼っている
また自分を崇める大人しか周りにいなかったせいか、同年代の友人が朔也しかいなかった。
そんなこともあり思い込みが強く、視野が狭いため本人も自覚していないが外面に反してメンタルは極端に弱い。つまり一見大人びて強気であるが、実際は繊細で子供っぽい女の子
まるでギャルゲのヒロインのようなキャラだが、おそろしいことに彼女は(ry
メンタルの弱さもあり、こはるとは対照的に攻略キャラに攻略されている印象が強い。



あんな風に人に想われたら、嬉しいと思う

◆不知火七海
CV.瀬戸麻沙美
由緒ある忍者の家系で生まれた16歳。クーデレ担当。
人形のように表情に乏しく寡黙な少女。感情表現が苦手であり、滅多に想いを口に出すことがない。あと感覚が若干ズレている変わり者。そのようなことから周囲には無感情だと思われがちだが、実際は繊細であり自身が心に傷を負っていることから人の心の機微に敏い一面を持つ。
料理は大好きだがヘタクソ……というか謎の薬草をはじめとして変なものを入れるため毎回材料を無駄にしてしまう。忍者食など味より栄養を考える生活をしていたためであるらしい。
忍であるために身体能力が高く、隠密行動に長けている。得物はクナイ。
能力は『記憶の消去』。消したい記憶を七海自身が把握したうえで相手の身体に触れることで発動する。無理に消すと廃人化する可能性もある。能力の適性は3番目。
幼いころからビジネスとして親に命じられるままに記憶を消していた。最初こそ人々の辛い記憶を消し感謝されていたことで力に誇りを持っていた。しかしとある少年と出会ったことで記憶を消すということが取り返しのつかない行為であることを知ってしまう。それ以来自分の力を心底恐ろしがっており、本気で嫌っている。故に自身を許されない罪人だと考えており、誰にも打ち明けられないが胸の内に暗い悩みを秘めている。
そんなこともあり「傷つける」自分とは対照的に「守る」能力を持っている深琴のことを羨ましがっており、同時に自分と違って幸せになるべき存在だと思っている。
まるでギャルゲのヒロインのような(ryというか七海みたいなのはホントにギャルゲにいそうだよな……
上ふたりに比べると、攻略しつつされつつでお互いに成長しあうようなストーリーが多い。


「過去に行くなんて、ありえない。そんなことが起きたら世界の崩壊だよ!」
◆鈴原空汰
CV.阿部敦
『プロローグ』と『エピローグ』の主人公。天才的な科学知識を持つ12歳の少年
2015年で暮らす普通の小学生であったが、国会議事堂の見学中謎の声に導かれ、気が付くと1919年にタイムスリップしていた。その後船に乗る直前だったこはると出会い、成り行きで彼も乗船することとなる。
歳の割にはかなり頭がよく、そのためちょっとひねくれており生意気な言動が多い。ルートによっては深琴と口喧嘩になっていた。ぶっちゃけ少し年の離れた姉弟に見える。
ただ両親とはあまり一緒に暮らせなかった過去があり、生意気な言動はここから来ている。なので根は素直であり、優しくされると慣れていないためか口ごもる。しかしここらへんは普通の年頃の少年か。まあ思春期だしね。
化学や発明が大好きであり、船の仲ではよく変なモノを作っている。たまにプラズマなど絶対小学生が使わなそうなものまで扱っている。その反面非科学的なものが嫌いであり、幽霊などの類は信じていない。そのため自身がタイムスリップしたという事実にはビビり、最初は夢であると考えていた。そのうち開き直っていたが。
船の仲では最年少であるためメンバーには可愛がられている。
わけがわからぬ間に見知らぬ世界に転移し、旅をすることになるという一番主人公っぽいポジションのキャラ

◇こはるの攻略対象




もう独りじゃないよ。大丈夫だよ

◆結賀駆
CV.梶裕貴
こはるルートのメインヒーロー。18歳。
頭の回転が速くリーダーシップが高いことから18歳にして船のまとめ役をしている。
性格は明るくはきはきとした朗らかな好青年。表向きの態度は優しく紳士的なスパダリである。同時にドSな腹黒であり、千里をはじめとした船のメンバーをよく虐めている。虐めている時が一番輝いているらしい。周囲には悪気なく人を追い詰める天然Sと思われているが、実際は自覚のあるS。
内面的には自分すら利用対象と思えるような能率主義者。腹黒要素も船という閉鎖空間のヘイトを自分に集めていざこざが起きないため意図的にやっている。また千里をいじめるのも「ひきこもりをやめて欲しい」という彼と暁人なりの優しさである。
だがこはるのような純真故にいたずらに引っかからず、むしろまっすぐ受け止めるような人間には弱く、ペースを乱されている。というか怒ると怖い彼女の尻に敷かれているような節がある。駆もこはるのことは大好きであるらしく一月の策略で彼女を寝取られたと騙された時には本気でショックを受けていた。
偽悪的にふるまっているがそれ自体に疲れを感じており、そのため周囲に敵愾心を持たれることを嫌って敵に対しては容赦ない態度を取る。そのために自分に対して素直に好意と憧れを抱くこはるをかけがえのない存在だと思っている
能力は『』を操る力。能力の適性は6番目。元からある植物を成長させたり、何もないところから緑と生やしたりと汎用性は高い。縛る、編んでネットに出来るということからツタを好んで使っている。本人も使い慣れているということから船の中でもケンカは強い部類。事実駆ルートのクライマックスでは森の中の戦いということもあり無双状態だった。本気で戦って勝てるのは炎で一気に焼き尽くすこはるくらい。
耳飾りは義父の形見であるらしく宝物であるらしい。だがロン曰くこれは危険なものらしく……。



心配なんて、するはずありません

◆市ノ瀬千里
CV.下野紘
小柄な16歳の少年。頬には謎の痣のような文様がある*2
性格は暗くネガティブでさらに人間不信。船での慣れない人間生活に疲れを感じておりいつも部屋に引きこもっている。そのため滅多に会議や食事など人の集まる場には殆ど出てこない。あと引きこもりであるため体力のないもやし。
能力の適性が極端に低く、そのため故郷の村では期待されたにもかかわらず応えられなかったため、冷たく扱われてきたのがこの性格の原因であるらしい。千里なりに周囲に応えたいと考えており、ネガティブさはその裏返し
いつも同じ班の駆にいじめられておりそのため鬱屈とした日々を過ごしている。そしていつも呪詛の言葉を吐き続けている。ただ前述のように駆の行動は基本的に千里のことを思ってのことであり、本人も遠回しにだがなんとなくそれを分かっている。まあ駆も趣味と実益を兼ねているためやり過ぎるときもあるが。ルートによっては暁人に部屋のドアを破壊される。
口数は少ないがネガティブなことに関しては妙にボキャブラリーが豊富でさらに早口になる。中の人がすごく頑張っている場面でもある。
水が好きであり、たまに部屋から出ると船内の池で水浴びをしている。
また手先が器用なため木彫りを趣味にしている。だが恨みが原動力であるためいつも禍々しいものばかり彫っている。



『世界』に命じられただけの旅だが……仲良くしていこう

◆遠矢正宗
CV.佐藤拓也
船のサブリーダーである24歳の青年。
面倒見が良くしっかりとしたお兄さん気質。船ではこはると並ぶ根っからの善人。駆がまとめ役なら正宗はストッパー役。駆がアレなので有事を除けば船の秩序を守っているのは彼である
しかしどこか不器用で要領が悪いところがあるためいつも貧乏くじを引かされる。苦労人気質である。駆と対照的に嘘をつくのが苦手であり、そのために真意をバレて自分が責められるという理不尽な目に遭うことも。ケンカを仲裁すると何故か最終的には正宗が一番ひどい目に遭っているのがお約束。しかしそれでも船のために頑張るのが正宗のいいところ。最近は駆の過剰な千里いじめに頭を悩ませている。
また船でのそんな風な役割から『世界』との通信役をしている。だが『世界』は滅多に返事をしないため、船のメンバーと『世界』の間で板挟みとなって苦しんでいる中間管理職タイプである。やっぱりどこまでも苦労人。
読書家であり知識が豊富。そのため世間の事情に疎いこはるに勉強を教えている。本人曰く文系であるとか。また本を読むときには眼鏡をかける。
アルコールが一切効かないのだが、その反面何故か砂糖で酔っぱらってしまうという謎の体質である。そのため甘いものは苦手としている。さらに酔っぱらうと高圧的でドSな性格に変貌する。こはるは本気で泣きかけた。
嫌われているわけではないのだが、何とも言えない髪形や、ルートでの酔っぱらってこはるの唇を無理矢理奪うというあんまりなシーンから毎回人気投票では票が伸び悩んでいる。
色々な意味でサブキャラの方が似合っていると言われる人。
船のメンバーに対して何かを隠しているようだが……。

◇深琴の攻略対象



俺は終わらせる――このくだらない輪廻を

◆吾妻夏彦
CV.小野大輔
深琴ルートのメインヒーロー。22歳。
攻略対象唯一の非乗船メンバーである外部の人間。襲撃犯の正体であり、とある理由から乗船者の命を狙っている。このルートでは深琴が彼らに誘拐されたことで船を降り、夏彦たちと行動を共にすることとなる。
性格は冷静・クールを超えてかなりの無愛想。どんな状況でもどんな相手でも常に落ち着いた態度を崩すことがない。だが根の部分は自身の強い信念のために行動できる熱血漢であり、自分の夢のために諦めることなく戦っている。……メインキャラの中でもっとも無理難題に挑んでいるのは彼な気がする。
またシャイなだけで優しい人間であり、泣きかけていた深琴を案じ、わざわざ作ったヒヨコさん型ロボットを介して励ましの言葉をかけていた。また誘拐されたことで深琴にヤケを起こし「私は熱々のものしか食べたくない」と言い出した時には、それを素直に信じその後の食べ物は全て熱々にしていた。
オタ気質であり好きなものに対しては子供のように素直で純粋な一面を持つ。あと若干早口になる。ちなみに好きなものは発明と天体観測。科学についての造詣は深くAI付きの召使いロボットから飛行艇まで大体作れる。なおそれを深琴に解説するときはやたらと嬉しそうに、かつ誇らしげに語っていた。天体についても博識であり特に星座について詳しい。叶わないと知りながらも月に行くことを密かな夢としている。深琴が初めて夏彦と天体観測をした際は、彼の知識量の多さに軽く引いていた。要するに好きなものに対しては一途。かなりのロマンチストでもある。実際夏彦ルート終盤では聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなことを素面で深琴に囁き続けていた。深琴にはスルーされたが。もしかしたら七海以上にクーデレ。
船に召集されなかったので当然彼は能力者ではない。しかし銃の使い手であり(この『大正』には銃が存在しない)、それゆえの初見殺しっぷりや技量の高さで乗船者たちを苦しめることとなる。また飛行艇を操る技量も高い。
人気投票によると彼が1番人気であるらしい。



僕は……あの子の涙だけは見たくないんだ

◆二条朔也
CV.斎賀みつき
由緒ある二条家の御曹司であり、深琴の幼馴染。彼女のひとつ上である19歳。深琴と同じく公式で美青年扱いされている。
物腰穏やかで滅多に声を荒げることのない温厚な青年。駆、正宗に次いで船の秩序を守ろうとしており、船の中では正宗に次ぐ常識人枠。
趣味は当たらない占いとくだらないなぞなぞ。本人は大好きらしく周りを巻き込んでやろうとするが、大体仲間たちに止められている。
深琴の実質的な保護者役であり特に彼女の精神的な面をフォローしている。いろいろ脆い深琴が今まで生きてこれたのは彼のおかげだが過保護すぎたせいで彼女に友達を作れないタカピーになってることについては頭を悩ませている。そのため深琴に女友達が出来た時には感涙のあまり泣いていた
そんな紳士的な一面に反し、本人も「ドロドロしている」と自覚している通り深琴に対する執着心と嫉妬心が異様に高い。そのため彼女に害する者や、嫌う相手については容赦なくキツイ言葉をぶつけてくる。特に夏彦ルートの夏彦に対しては辺りがキツイ。客観的にみると彼の気持ちはむしろ真っ当だが。また誰にでも穏やかなのは事実だが、実は深琴以外の主人公には僅かだが態度が違っている (それでも十分優しい)。このように深琴への愛はヤンデレの域に達している。……というか朔也にとって彼女は神のようなものであるらしい。だが深琴とは仲良しだがどこかよそよそしいところがある。
しかし本人は大人なのである程度は分別を付けており、例えば深琴にエロいことばかり言っている一月に対しては制裁を加えつつも、彼の本質をなんとなくは理解しているので本気で嫌ってはいない。ルートによっては盟友とも言える間柄となる。
アニメではルート統合の被害者となった。アニメ朔也はマジで夏彦を殴っていい。
ところでこのゲーム、なんでショタが男性声優で19歳の青年が女性声優なんだ?



痛みも悲しみもない……何もかもが思い通りになる優しい夢

◆加賀見一月
CV.遊佐浩二
色町で育ってきた23歳の青年。
軽薄でスケベな遊び人。お調子者でありいつもエロいことばっかり言っている。生活態度もだらしなく、夜中まで遊んだり二日酔いになっていたりする。深琴のことは「お嬢さん」と呼びふしだらなことばかりを吹き込んでいる。そして朔也から手厳しい制裁を食らう。最近はこはるにも変なことを吹き込んで駆に怒られているらしい。こはるが乗船した時に「女の子が増える」と喜んでいたのは彼であった。……本作がCERO:Cになったのの4割くらいはコイツのせい。
平士とは仲が良く『平』と呼んでいる。七海、平士を交えてよく徹夜でトランプ勝負をしているらしい。
本質的にはかなり大人であり人の心の機微に鋭い。周囲の人間が傷ついていれば、そのことをそれとなく感じ取って言葉をかけてやろうとする面倒見のいい人間。船の中では最も要領がよく世渡りの上手い大人である。。一見軽薄だがその実大人びているという意味では深琴とは正反対の人物。
深琴にちょっかいをかけるのも、無理しているのに気が付いていない彼女を一月なりに心配し、何とか気を休めさせたいという想いからである。また七海も心に闇を抱えていることをそれとなく感じておりよく話しかけている。
スタッフ曰く弱い部分含めて深琴の全てを尊重するのが朔也で、弱い部分を成長させたいと考えるのが一月。
このような性質になったのは色町で育ち現実のシビアな面ばかりを見てきたため。同時に普通とはかけはなれた生活をしてきたため家族にあこがれを持つ。
ただ変なところで沸点が低く、船内で偶に喧嘩沙汰を起こしている。
既に亡くなってしまったが姉がいるらしい。


◇七海の攻略対象



何してんだよ……! てめえは!

◆宿吏暁人
CV.杉山紀彰
七海ルートのメインヒーロー。不良っぽい18歳。
怒りっぽく粗暴で常に不機嫌そうな顔をしているガラの悪い少年。敵愾心がやたらと強く、周囲にからかわれたりバカにされたりすることを嫌う。船内で乱闘騒ぎを起こしたり、命令無視をしたりするのは彼が一番多いらしい。しかもケンカは結構強い。その外面から空汰からはヤンキー扱いされていた。
しかし言動は至って真面目であり、毎朝5時に起きて朝食の下ごしらえをし、時間が余れば体を鍛え、日中は作業をして9時には寝るというマジメ君。メンバーが船できちんと暮らせているのは彼の働きのおかげである。というかキレっぽいことを除けばメンバーいちの常識人。キレるのも大体相手が悪いことが多い。そもそも暁人のチームが何考えているかわからない七海、いつもやかましい平士、何事にも無関心なロンと変人しかいないのが悪い。
料理が得意であり、船での料理は大体彼が担当している。彼が作るご飯からは母の味がすると好評。レパートリーは和食からお菓子まで幅広い。何故か料理当番でもないのにキッチンにいるなど料理は趣味の領域になっている。最近は漬物をつくっているらしい。
仲間にも平時は当たりが強いが、こはるや平士など裏表無い好意をぶつけてくる相手には弱い。そういう相手にはデレる。つまりめんどくさいツンデレ。また根は純粋であり、頼まれたことを断れなかったり相手が困っていれば不器用ながらも手を差し伸べようとしたりする優しさを持つ。こはるが悩んでいるところに偶然出くわし、静かに話を聞いてやり何も言わずに温かい飲み物を注いでやる様はただのオカンである船のママ枠その2。
何故か鳥が大の苦手。船内のヒヨコさんにも怯えており、場合によっては気絶する。
七海に対して異様なまでの敵意を向けているようだが……。



……さあ、これならどうだろう。逃げれるかな?

◆室星ロン
CV.杉田智和
胸元をだらしなく開き、サングラスをかけ、背もやたら高いというどっからどう見ても怪しいあんちゃん。サングラスをかけているため表情が見えにくく、何を考えているのかわからないため正直かなりうさんくさい。船最年長の25歳。
そんな外見に反して案外気さくであり、誰にでも優しく接する。船での生活に慣れない空汰に対して、最初に温かい言葉をかけたのも彼であった。
その実何事にもめんどくさがりで適当な生き方をしている人間。いつも班の作業には参加せず、どこかで寝てばかりいる。めんどくさがりで趣味もなく何にも執着しようとしない虚無的な内面を持つ。気さくな性格もめんどくさがり故にゴタゴタを起こさないように適当に気のいい言葉を言っているだけである。空汰を励ましたのもあの状況で好まれるであろう言葉を適当に言ったに過ぎない。何事にも適当で罪の意識を持たないという七海と対照的な人物。
その性格から人付き合いは少ないが、大人組で飲み会をしているらしく正宗、一月とはそこそこ縁があるらしい。「名前を覚えない奴には飲ませられない」と言われたのでふたりの名前だけは渋々覚えている。
そのKYさからとんでもない発言でも平気で出来る男であり、特に女性関係についての発言はセクハラを超えてただのクズ。一応純真無垢設定のこはるに対して「名前を覚えなくてもやることはやれる」とまで言いやがった。お前本当に乙女ゲームの攻略対象か?



好き、めちゃくちゃ好き

◆乙丸平士
CV.吉野裕行
活発で明るい19歳の青年。
裏表のなく人懐っこい性格から誰とでもすぐに仲良くなれる。いつも賑やかで子供っぽく、いきなり変なことをおっぱじめたりする。七海とは一緒に訳の分からない料理を作っている。そのため周囲からは歳の割に幼いと思われている。年上には「さん」付けするこはるにすら「平士くん」と呼ばれる辺りアレである。
子どもっぽいが内面的には実直であり、誰かを元気づけることに関しては彼が一番長けている。素直で裏表がないゆえに、ストレートに人を助けようと考えて行動できるらしい。ただ裏表なく実直すぎるために、時には暴走してしまう危うさも兼ねている。実際バッドエンドルートではヤンデレ化して七海を殺しかけた
能力は『精神感応』。要するにテレパシー。自分の想いを広範囲に伝えることが出来るため、船ではサイレンとかアナウンスの役割をしている。気が高ぶると勝手に能力が発動して自分の想いが伝わってしまうという損なところがある。適正は7番目。
他人に感情が伝わるため出来るだけネガティブなことは考えないようにしているらしい。
こんな性格であるために船内での友人は多い。うっとうしいと思っている奴も多いが。特に七海、一月と仲が良くトランプ対決をしている。だがいっつも負ける癖に負けを認めずリベンジを繰り返し一月を辟易させる。七海のことは妹のように大切にしており、彼女自身感情表現が苦手なため言葉にしなくても気持ちを汲んでくれる平士に感謝している。また七海は主人公の中で唯一赤いスカーフではなく黒ネクタイを身につけているが、それをプレゼントしたのは彼。
孤児であり昔は旅芸人の一座で暮らしていた。その時の経験から篠笛がプロレベルで得意。
彼もまた普通の家族にあこがれを持っており、一月と仲が良いのはその点でシンパシーを感じたためらしい。


◇サブキャラクター


◆滝島雪
CV.市来光弘
夏彦の部下であり相棒。お調子者でありよくくだらないことを言って夏彦に怒られている。
ドMの変態であり他人に蔑まれるために嫌がらせをするという訳の分からない性癖を持つ。特に女の子から蔑まれるのが大好きであるらしい。純真無垢と優しさの塊であるこはるすら「気持ち悪い」と言ってしまった数少ない存在である。
本人は『セツ』ではなく『ユキ』と呼ばれる方が好きらしい。


◆結賀史狼(旅人さん)
CV.浜田賢二
能力者達の前に度々現れる謎の男。ある人物と深い関わりがあり、特定のルートでその正体が明かされる。
こはるを育て、船に乗るように導いた『旅人さん』の正体でもある。
死んだはずの駆の義父と同姓同名であるようだが……。


◆アイオン
CV.やなぎなぎ
空汰を本作の時代へと導いた謎の少女。
本編には時たま登場するが、正体は謎に包まれている。空汰にどこか執着を見せているように見えるが……。
声優は本作のオープニングも務めるやなぎなぎ。
世界の正体は彼女である。

【世界の真実】


【KOTYとして】


残念な話だがクソゲーオブザイヤー2013乙女ゲーム部門次点受賞作品
キャラクターや設定などは間違いなく乙女ゲームの中でも高水準。BGMやグラフィックも高く評価されている。その反面、シナリオに関しては問題点があると指摘されている。


KOTYで特に指摘されたのは風呂敷が畳めないどころか思いっきりぶん投げてしまっていること
まあそもそもとして本作は話の進みがやたらと遅く、襲撃犯の正体や世界の真実などには触れずひたすらイチャついているだけと言われた。
そして最終章となる7章で初めてリセットや世界の真実などカロリーの高い話をされて、実際リセットするかどうか決めつつラスボスを倒してエピローグを迎えるという畳み切れていないものになっている。打ち切られたのか、なんか制作側で何かがあったのかと心配になる本スレ民もいた。

話のまとめ方としても、ラスボスが話の裏側で唐突に暗殺されていたことが説明されるだけの駆ルート、ラスボスからこはるを救ったと思ったらいつの間にかリセットについて触れなくなった千里ルート、駆が洗脳され行方不明になったまま終わる夏彦ルート、野郎の心の傷を癒したと思ったらその後のラスボス戦がモノローグで終わる暁人ルート、そもそもリセットに辿り着かず話がわき道にそれたまま戻ってこない正宗、一月、ロン、平士ルートと説明不足な点が残り消化不良になるものが多いと言われた。
一応他のルートと合わせてやると説明される部分もあるのだが*3ひとつのルートとして見るとモヤモヤのある謎が多く残されてしまう。自身のルートなのに能力・生い立ちを語ってくれない正宗が代表的。
全ルート終わってからも明かされてないなどがかなりある。


恋愛過程についても結構指摘され、「どこで相手に惚れたのかが分からない……」とか「お互い監視するためなのに惚れやすすぎないか」とかよく言われた。特に言われたのは唐突にデレた暁人とロンのルートか。
乙女ゲーム部門は特殊ルールとして「乙女ゲームとして成立しているか?(恋愛過程がちゃんとあるか?)」というものがあるためこの点も結構論じられた。


あと空汰についても色々言われた。
一応彼は『プロローグ』と『エピローグ』の主人公を担っている以上、作中でも最重要人物である。
だがその割に作中での空汰の登場シーンは極端に少ない。プロローグが終わり主人公を少女たちに移したあとは、どこで何をやっているかほとんど語られないルートによっては一切出てこないということもある
『エピローグ』が全ルート攻略後に解禁されるということもあって、空汰のことを忘れかけた人も多かったらしい。
というか『エピローグ』自体が結構ぶつ切りで終わる。

また大正時代設定も登場人物たちが殆どNORNから降りないうえ、船内はテレビに自動販売機があるハイスペックのため時代設定を扱いきれていないと指摘された。

あとはまあ……ベッドシーンの多さについても言われていた。
一応説明しておくと、ベッドシーンは乙女ゲームにおける最凶のジョーカーとされ、KOTYスレでも毎回綿密に議論される。
乙女ゲームは恋愛過程が重視されるためその果てにあるのはまあセックスなので使い方さえ間違えなければプライヤーからも好まれる。しかし突き詰めれば下ネタなので間違えると出来を揺るがしかねない地雷となる。変に生々しかったり、多かったりすると地雷になりやすいらしい。
そういう意味ではノルンのベッドシーンは悪い意味で生々しいものが多かった。
全9ルート中7ルートもあり、未遂や事後、酷い場合は最中とラインナップは多い。またベッドシーンは恋愛過程の果てだが、前述の通りノルンは恋愛過程について色々指摘されたのでKOTYスレでは「ベッドシーンより恋愛過程をしっかり描くべきではないか?」と言われていた。
特に「キスの意味すら知らない純真なこはるにベッドシーンがあるのはちょっと……」とは結構言われていた。
あと暁人くん、七海ちゃんが好きなのはわかるけどいきなり「よし、やるぞ」とか言い出さないでください。

このように乙女ゲー部門でよく指摘される要素(畳めないシナリオ・扱いきれない要素・ベッドシーン)を大体持っていることからスレでは「シナリオ型クソゲーのテンプレ」と評された。

ここまでならKOTYによくあるクソゲーである。しかしノルンにはそれだけでは終わらない点があった
それはシナリオ以外の何もかもがあまりにもハイクオリティすぎる点である

実際KOTYスレでは「面白そうな部分自体は多い」とは定期的に言われた。やたら豪華なスタッフ、大御所を集めた声優陣、高水準なイラスト、タイムスリップや超能力やオーバーテクノロジーな大正時代という面白そうなワード、個性豊かなトリプル主人公と目を引く魅力的な部分は本当に多い。
特に練られたキャラクター設定の人気は本当に高く、発売からそこそこ経った現在でも乙女ゲー系のランキングに名前が載っていることが多い(特に夏彦と暁人)。

ファン、アンチ問わず「こんなに魅力的なんだからあとはシナリオさえよければ……」と悔やむ者は多い。

このようにノミネートされても仕方がない出来ではあるのだが、だからと言って「クソゲー」の一言で切り捨てるにはあまりにも光るものが多すぎるというなんとも珍妙な作品
乙女ゲーム部門は人気と評価が離れやすいことに定評があるが、ここまで乖離しているのも稀である。
素材は良かったのだが、シナリオゲーである以上素材を生かすも殺すもシナリオ次第だったというのが大きい。

スレではその評価を「素材はいいが調理方法で台無しにした」と料理に例え『黒焦げのフォアグラ』という言い得て妙な言葉が誕生した。


そして選評では最終的に同じオトメイト作品である『しらつゆの怪』と一騎打ちになった。こちらは調理方法こそ余計なアレンジなくまともであるが、怪談ものとしては素材があまりにも貧弱すぎるということから『味のない肉じゃが』と評された。
しかし『黒焦げのフォアグラ』と『味のない肉じゃが』、どちらを大賞とするかの議論は混迷を極めた。
その後議論終盤において、混迷した根本的な問題として、両者ともにシナリオ以外の問題点がないためお互いに大賞となる決め手に欠け、クソ要素がそれぞれ素材と調理方法とベクトルが違うと指摘された。
つまりこのふたつはクソマズ料理ではあるが、料理の形骸を保っている時点でどちらも大賞の器にはなりえないと判断されたわけである。
黒焦げだとしても、味が無いとしても、ものすごくマズいというだけで決して完食できないものではないのだ
完食できる料理を大賞としていいのか? その答えは『』であった。

ここのくだりは「大賞=ゲームですらない何か」というKOTY全体の概念を料理の例えに上手く落とし込んでいるとして地味に評価が高い。

なおスレで大賞の例として挙げられたのは『タワシのコロッケ』。
食えたもんじゃないだろうし、そもそもタワシは食べ物ではない
黒焦げのフォアグラだのタワシのコロッケだのどうしてこうKOTYスレの住民は文才豊かなんだか…

ということで『黒焦げのフォアグラ』と『味のない肉じゃが』はどちらの方がマズいという明確な答えは存在せず、結局は個人の好みの範疇にしかならないという結論から両者次点賞となり、KOTY初の「大賞無し」という結果となった。


何らかの形で白黒つけることをデフォとした乙女ゲー部門では割と珍しい結末。
余談だが2009年の最終ノミネート作品『ジョーカーの国のアリス』と『断罪のマリア』はそれぞれクソ仕様とクソシナリオと全く真逆のクソ要素を持っていたため選評は難航したが、壮絶な殴り合いの末「次元が違うので優劣をつけるのは不可能」と結論付けられたため仲良くW大賞受賞という結末を迎えた。
こう書くと今回の結論かいかにレアであったか、そして2009年がいかに瘴気渦巻く魔境であったかが分かるだろう。

最近はメディアミックスやファンディスクが頑張ったことでシナリオの評価もかなり持ち直してきている。というより移植やファンディスクで大幅な加筆修正や補足を行った為にKOTYの評価はどこへやらといった変貌を遂げている。それ初作の段階でやってくれ。

なんだかんだで薄桜鬼ワンド、CZ、アムネ、コドリアに並ぶオトメイトの顔になりつつある……ハズ。



【派生作品】


◆NORN9 LAST ERA(PSVita:2014年4月発売)
ファンディスクその1。オトメイトのファンディスクお約束の後日譚と前日譚が収録されている。
内容は

  • 前作のエンディング後を描く『Concerto-協奏曲-』
  • 前作を攻略対象の視点で描いた『Fuga-遁走曲-』
  • 唐突に全員がちびキャラ化する合間の話を描いた『Fantasia-幻想曲-』
の3つ。
そして残念なシナリオと言われていたノルンシリーズの評価を甦らせた作品である
なんと前作で指摘された問題点・説明不足点をほぼすべて補完している。また唐突だと言われていた恋愛過程についても攻略対象の視点から描き心情を補完したことからかなり唐突さが薄れた。唐突感が強い暁人、ロンルートは本作をやった後だと「これ以上の物語過程は存在しえない」と言われるほどに綺麗に補完された。
また「まとめ方が適当」と言われていた部分についても、前作+後日談でひとつの物語として見ることによって話としてかなりまとまっているものになるという形によって前作の問題点をおさめきった。特に正宗アフターは前作の伏線をすべて回収しており評価が高い。逆に言えば前作は伏線も回収せず宙ぶらりんで終わったってことだが。
このようなことから「乙女ゲーム屈指の原作補完」と評されている。
Q「リセットが目的なら隠さず最初から能力者たちに伝えておけよ……」
Q「史狼ってなんでこはる狙ってたの?」
Q「駆ルートラストの警告音なんだったの?」
Q「暁人なんでいきなり七海許してるんだよ」
Q「正宗ルートの終わり方バッドエンド過ぎない?」
Q「結局ロンって何者だったの?」

A「つべこべ言わずLAST ERAやれ」
恐ろしいことに本作で明かされた新事実は、無印時点から布石を打たれていたもしくはファンが考察していたというものが殆どであり、後付けではないと言われている。つまり無印の段階からシナリオの問題点を解決できるカードを持っていたが使わなかったということになる。
このことで「本当に素材は優秀だった」とか「なんでこれ前作で言わなかったの!?」とか言われた。


◆NORN9 VAR COMMONS(PSVita:2014年12月発売)
無印のVita移植版。
LAST ERAから逆移入した設定や説明シーンをそこそこ増やしたことで、評価は高い。
その反面説明しすぎているせいで話の腰が折れているという指摘もある。そこらへんはバランス調整が難しいか。
例えば朔也ルートのエピローグは直前までのグダグダを忘れればすっきりとした読後感のあるものとなっているが、VAR COMMONSではそのあとにワンシーン足されている。


◆NORN9 ACT TUNE(PSVita:2016年10月発売)
ファンディスクその2。
内容は

  • 無印の幕間を描く『Memoria-メモリア-』
  • まさかのRPGパロである『Legend Of NORN』
  • まさかの学園パロである『学園ノルン』
  • 帰ってきたちびキャラ化ストーリー『Cantabile-カンタービレ-』

の4つ。おおむね評価が高い。
こはるの腹ポテも見れるよ!


◆NORN9 LOFN for Nintendo Switch(Switch:2018年8月発売)
VAR COMMONSとLAST ERAをひとつにした再移植作品。



【アニメ版】


2016年冬に「ノルン+ノネット」名義でアニメ化された。シリーズ構成は高橋ナツコ。
オープニングの「カザキリ」を歌うのはやはりやなぎなぎ氏。
ルートは駆、夏彦、暁人のルートを同時並行で行っている。なお後半はアニメオリジナル。


「ひとつのルートでは謎が多すぎて消化不良になる」と散々言われてきた本作であるが、ルートを統合して一本の話に空いていることもあり幾分かは分かりやすくなっている。
またゲームでは描きにくかった部分を描いたり、リセットに反対する理由について「今ここにある恋を否定されたくないから」と付け加えたりするなど原作の補完としてかなり頑張っている。


またオリジナル要素として能力発動の際に能力者の周りに天球儀のごとく光星が回るというやたらとかっこいい演出がある。特に第2話でのこはるの能力発動シーンはかなり気合が入っている。

あと相変わらずスタッフが妙に豪華。星空監修に大平貴之が参加しており知る人を驚かせた(世界一精密なプラネタリウムを作った人)。


その反面3つのルートを1クールでおこなうので当然かなり駆け足になっている。
特に夏彦ルートは中盤から始まっていることもあり*4、いつの間にかイチャついているようにも見える。その埋め合わせで前半は朔也ルートの流れだったこともあり朔也ファンは泣いた。というか朔也は泣いていい。
良くも悪くも原作補完向けであり、初見ではかなり見づらい。

多分シリーズの中で一番真ルートっぽい話になっている。



出典:NORN9 ノルン+ノネット アイデアファクトリー オトメイト 2013年5月30日発売

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最終更新:2024年04月08日 13:02

*1 スタッフクレジットにも載っている

*2 故郷の大人に迫害されていた時に出来たものだとファンブックで初めて明かされた

*3 というか各種メディアを見る限り「様々なルートをやることで全体を把握できる」というシナリオ構成を意図的にしている

*4 夏彦ルートは深琴がノルンとは別行動を取るがアニメではこはる、七海の視点でも同時に描くため、初っ端から行方不明にもさせられない