SCP-1595-JP

登録日:2020/07/09 Thu 13:36:18
更新日:2020/07/19 Sun 11:18:24
所要時間:約 11 分で読めます




SCP-1595-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「プレゼン及びターゲッティング不足」
オブジェクトクラスは「Neutralized」で、既に無力化していると思われるオブジェクトだが、無力化した経緯が経緯(後述)なので、財団は再出現の可能性を考慮して慎重に監視している。
JPのコードが示す通り日本支部の管轄にある。

概要及び無力化以前の収容プロトコル

このオブジェクトはとあるインターネット上のページである。
2014年頃に創設されたと思われるが、IPアドレスをたどる試みは失敗しており、(多分財団の権力でプロバイダに強引に働きかけて)ページを削除することも行われたが、一週間後には同様の異常性を持つサイトが確認されたため、現在は無理に削除は行わず常時監視体制を敷いている。

ではこのページが何かというと、こっくりさんである。
一般的にイメージされるこっくりさんの用紙と酷似した形式をしており、50音の表と「はい」「いいえ」が描かれている。

その上部には鳥居が描かれているが、なぜか下部の1/10しか描かれていない。1/10じゃただの二本の棒だろうによく鳥居ってわかったな
また、「寄進」「大願成就」という文字と、1,000,000のカウンターが存在するが、発見時点では100,000前後しかカウントされていなかったようだ。財団はこのカウンターが鳥居のイラストの完成度とリンクしていると推測している。

最下部にはこっくりさんのやり方(というよりこのページの説明書か)が添付されているが、一般的なこっくりさんとは少々やり方が異なる。

こっくりさんのやり方

1.お金をよういする(何円でもいい。たくさんなほど楽しいゆめが見れる)

2.このページを印さつし、とりいのところにお金をおく

3.こっくりさんをやる全員で「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」ととなえる

4.あらわれたら音がなる。音がなったら、いるかどうかを聞いて、どんなゆめを見たいかを言う
*注意*(むずかしい話になるとこっくりさんがかってに決めるのでかんたんに!)

5.こっくりさんが答えてくれたら終わり
*注意*(あぶないのですわってやろう!)

推奨年齢:中学生以下

普通のこっくりさんでは用意するお金は10円玉であることが多いが、このオブジェクトでは「いくらでもいいが、多いほど良い」と言っている。
また、「質問したら答えてくれる」ものである普通のこっくりさんと異なり、「夢を見る」ということに重点が置かれているのも特徴。

これだけなら単に「ちょっと変わったこっくりさんを紹介しているページ」というだけなのだが、そこはSCPオブジェクト。
実際にこのページを印刷して説明通りにこっくりさんを行うと、 お金を消費して本当に指定した夢を見ることができる のだ(ただし、SCP-1595-JPを印刷したもの以外だと異常性は発現しない)。

実験記録

というわけで、異常性の限界を確認するため、毎度おなじみイケニエDクラスを用いた楽しい楽しい実験の時間である。

実験者: D-2000、D-2001、D-2002
日付: 2017/10/10

目的: SCP-1595-JPを記載されている手順で実行した場合の変化を確認する。

経過: 10円を用意して実行。呼び出しを唱えた段階で僅かなヒューム値の揺れと共に狐の鳴き声が確認される。これに確認したところ、存在を肯定、事前に指定していた"楽しい夢"を見せてくれるよう依頼したところ了承。これと同時に10円が消失する。

結果: 参加した全員が即座に昏倒。意識回復措置を行ったところ、約1分で復帰。確認したところ全員が「楽しい夢を見ていたが覚えていない」と証言。推奨年齢を上回っていたが、問題なく実行可能であった。

「お金を払って指定した夢を見る」という基本的な異常性を確認。ただし、10円では夢を見られる時間は短く、覚醒後の記憶も不明瞭だった。

実験者: D-2000、D-2001、D-2002
日付: 2017/10/11

目的: 金額の差異による変化を確認する。

経過: 100円、1,000円、10,000円を用意して実行。呼び出しを唱えた段階で実験に使用した金額が高額になるほど音楽が追加され、10,000円の段階では狐の鳴き声によるフルコーラスが確認される。事前に指定していた"楽しい夢"を見せてくれるよう依頼したところ了承。これと同時に全ての金額において貨幣が消失する。

結果: 参加した全員が即座に昏倒。意識回復措置を行ったところ、金額の増加に比例して回復までの時間が増加した。また、金額の増加とともに夢の記憶は鮮明になり、「近世ヨーロッパと類似した世界における狐を始めとした動物との宴会」の夢であったことが確認された。

払った金額が多ければ多いほど、長く、鮮明な夢を見られることが判明。

実験者: D-2000、D-2001、D-2002
日付: 2017/10/12

目的: 指定した夢の内容による変化を確認する。

経過: 10,000円を用意して実行。事前に指定していた"こわい夢"を見せてくれるよう依頼したところ、しばらく停止した後、危険である旨と一切の責任は取らないとの確認があり、これに了承。紙幣が消失する。

結果: 参加した全員が即座に昏倒。その後、D-2000が消失し、D-2001が心不全に起因する心原性ショックにより死亡する。D-2002は復帰するも著しい精神衰弱が見られ、PTSDの症状が確認される。のちの聞き取り調査により、「何か分からないこわいものに森の中を追いかけられ、四肢を食いつぶされる」夢を見たと証言。これ以降、恐怖を与える夢を選択することは推奨されていない。

突然ヤバ気な異常性発現 。10000円も払ったためか、 奮発してショック死するほどリアルな悪夢 を見せてくれた。明らかに過剰サービスである

実験者: D-2003、D-2004、D-2005
日付: 2017/11/15

目的: 夢の具体性を確認する。

経過: 10,000円を用意して実行。事前に指定していた"具体的な特定市町村内を散策する夢"を依頼。しばらく沈黙した後了承。紙幣が消失する。

結果: 参加した全員が即座に昏倒、約1時間で回復する。夢の内容は指定した市町村と一致するが、細部に大きな差異が確認される。一方で稲荷社周囲は完全な再現が行われていた。

先ほどの実験でDクラスを3機消費3人のDクラスが再起不能になったため、新たなDクラスを投入して実験続行。
具体的な市町村名を指定したところ、おおまかな内容は一致していたが細部が異なる形で再現された。どうやら再現能力には限界があるらしい。

実験者: D-2003、D-2004、D-2005
日付: 2017/11/15

目的: 夢の具体性を確認する。

経過: 10,000円を用意して実行。財団カバーストーリー部門によって作成されたSF作品の脚本を提示したところ静止。約3分後、紙幣が"いいえ"へ移動したのち、五十音表を用いて"ぷらんにふくまれていません"の文字列を作成。その後は反応が見られず。

結果: 紙幣及び意識の喪失は発生せず。

カラオケボックスと異なり、コイツが知りようもないことを指定した場合は再現不可能である様子。また再現不可能な場合はちゃんと返金してくれる親切仕様。
財団の機密情報などを知られる恐れはない、ということである意味安心か。


財団はこれらの実験を行った結果、SCP-1595-JP内のカウンターが消費された金額分増加し、それに伴い鳥居のイラストも復元されていることを確認。
どうも「金を集めて何かをしようとしているらしい」ということはわかったので、これ以上正体不明の異常存在に好き勝手されてもたまらない、とページそのものを削除するのではなくbotを使ってページへのアクセスを遮断する方向に収容プロトコルを変更した。






そして、2019年10月22日、 財団はSCP-1595-JPの唐突な消失を確認
その翌日、実験に参加したDクラス当てに以下の文章が添付された小包が届けられた。


稲荷クラウドサーバー設置企画にご協力頂いた皆さまへ

沢山のご支援ありがとうございました。

皆様のお力添えがありながら、目標額の約10%で最終日を迎えてしまい、ご協力頂いた皆さまには申し訳なく思っております。今回はプレゼンテーションの不足、及びターゲッティングの甘さにより残念な結果になってしまいましたが、改めて広報、企画と調整し、次の機会にぜひリベンジしたいと考えております。その際はまた、よろしくお願いいたします。

また、今回は投資型とさせていただいておりましたが、僅かばかりの返礼を行わせていただきます。

今回の企画を通じて、支援して頂いた方々の信仰を感じ、スタッフ一同も大きな励みになりました。これ以降も皆様の信仰を糧に、長らくお付き合いさせていただきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

なお、小包の中身は消失した金額の1/3程度に相当する稲荷寿司であった(稲荷寿司自体は市販品と変わりなく特に異常性はなかった)。

財団はこれをもってSCP-1595-JPが無力化したと判断。オブジェクトクラスをNeutralizedに再分類した。


解説

要はこのオブジェクトがなんだったかというと、 クラウドファンディング式こっくりさん である。また妙に現代的な……。
が、最後のメッセージの通り、 運営が下手くそ だったために破綻してしまったのだ。
そもそも最初に書いたようにこのオブジェクトはおそらく2014年から運用開始している。にも拘わらず、発見された2017年当時で集まったのはたったの10万円……。
最初から2019年で運用を終える予定だったのか、それとも財団の妨害で予定より早く終了せざるを得なかったのに誤魔化しているのかは不明だが、なんにせよこのペースでは目標額を集めるのに 30年ぐらい かかるだろう。
元々財団が妨害するまでもなく破綻する運命だったのかもしれない。
技術力だけは完璧だったのに、その運用法に致命的なミスがある、という意味ではSCP-2934などに近いものがある。

ただ、最終的には自爆ミスによる事業撤退という情けない結末を迎えた本オブジェクトだが、 よくよく考えるとかなり怖いものを孕んでいる
そもそも、この狐たちが一体何を目的として金を集めているのかが全くの謎であり、無力化したのも死んだり異常性を失ったりしたわけではなく、単に「事業破綻して撤退した」だけである。
一応、「怖い夢」を指定した時は警告してきたり、破綻した後は満額ではないが物品の形で弁済してきたりと、彼ら自身に悪意はないように見える。
しかし、 夢を見せるだけでさらっと人一人消していたり するため潜在的な危険性はかなり大きい。そもそも「彼ら」に悪意がなくても悲劇的な結末を迎える事例は(SCP界隈に限らず)佃煮にするほど世の中には溢れているのだ。
また事業破綻の主因は、財団の妨害よりも本人たちも認めている通り、そしてメタタイトル通りの「プレゼン及びターゲッティング不足」であることは明白である。
説明書きではこのオブジェクトの対象年齢は「中学生以下」とのことだが、
  • 中学生以下は自由にできる金をあまり持っていない
  • そもそも今時の小中学生にこっくりさんなんぞオワコン
……という点から、「根本的に小中学生相手にこっくりさんでクラウドファンディングという試み自体が無茶」なのである。

しかし、これが自由にできる金額の多い大人をターゲットにしていたらどうだったろうか?
というか、アニヲタ諸氏も、一度は見てみたいあんな夢こんな夢がいっぱいあるのではないだろうか?
それをみんなみんなみんな叶えてくれる、しかもたったの1万円以下で叶えてくれるとなったら……?
狐たちの目標金額は今回よりも遥かにあっさりと貯まる可能性が高いだろう。

狐たちがその辺の知恵を付けて今度はターゲットを大人に絞って再び事業展開してくる可能性は十分あるため、Neutralizedではあるが正直予断を許さない状況であると言える。

ジャムコン2019について

本オブジェクトはジャムコン2019優勝作品である。
ジャムコンとは、予告なしにテーマだけが発表され、そのテーマに沿った作品を72時間以内に投稿する、というコンテスト。
ジャムコン2019は、A、B、Cの3グループに分かれて開催され、テーマはそれぞれ「ダークメルヘン」「インターネット」「なんだか狐につままれたような……」であった。
そして本オブジェクトはこの 全グループ に参加。この三題噺のようなバラバラなテーマを繋げて見事優勝を勝ち取ったのである。

このオブジェクトは「インターネット」を舞台に、こっくりさんという「ダークメルヘン」な題材を扱いつつ、「なんだか狐につままれたような……」結末を迎える、という構成で見事にテーマに沿っている。
また、「こっくりさん」という古い都市伝説を「クラウドファンディング」という最新の要素と繋げた意外性も受けたのだろう。
上述のように最終的には気が抜けるようなオチでありながらそこはかとなく暗い余韻を残しているのも大きいかもしれない。


追記・修正お願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1595-JP - プレゼン及びターゲッティング不足
by kyougoku08
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1595-jp

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最終更新:2020年07月19日 11:18