SCP-1452-JP

登録日:2020/07/10 Fri 15:12:56
更新日:2020/08/13 Thu 21:26:47NEW!
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SCP-1452-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「Drip Drat Drinker」。
オブジェクトクラスは「Safe」。

日本支部で行われたジャムコン2019Aグループ提出作品で、第4位となった作品である(優勝作品はSCP-1595-JP)。
ジャムコン2019は3つのグループに分かれて開催されたが、そのうちAグループのテーマは「ダークメルヘン」。

概要

まずこのオブジェクトが何か、というとコーヒードリッパーである。 ただし異次元に繋がっている (以下異次元をSCP-1452-JP-Aと呼称)。
……さらっととんでもない性質を持っているが、まあ使わない限り特に異常性はないので、Safeである( 安全とは言っていない )。

元々はフリーマーケットサイトに出品されていた「コーヒー淹れても水しか出てこないコーヒードリッパー」としてAnomalousアイテム登録されていたのだが、詳しい調査の結果かなりヤバい代物であることが明らかになった。
ドリッパー単体では特に異常性はないが、フィルターを載せて液体を通すと、 内部を通った液体がSCP-1452-JP-Aに転送され、下からはなぜか水だけが出てくる
ちなみにコーヒードリッパーではあるが、コーヒー以外の水溶液でも同様。というか、 フィルターを通りさえすれば個体でもOK

ぶっちゃけこのオブジェクトはオブジェクトそのものの性質がどうこうというよりも付随する探査記録がメインの報告書である。
そしてその探査記録がかなり複雑で難解であるため、一読した限りでは意味を読み取るのは困難だろう。
以下に考察を載せるが、それが正しいかどうかも、そもそも正解が用意されているのかも定かではない。

実験記録

まずは、この異次元コーヒードリッパーの回収及び実験の記録を紹介する。

日時 イベント
2017/4/6 民間人によりSCP-1452-JPが出品される。
2017/4/7 財団がSCP-1452-JPを補足。回収作戦の実施。
2017/4/9 SCP-1452-JPに設置されたコーヒーフィルターを通過したコーヒーがほぼ純粋な水に変換されていることが実験により実証される。Anomalousアイテムとして登録される。
2017/9/22 ろ過能力に関する調査プロジェクトが開始される。
2017/10/2 コーヒー以外の水溶液に対しても同様の効果が実証される。
2017/11/8 水溶液の通過中の質量変動から水溶液がろ過の最中に異空間に転送されている可能性が提唱される。
2017/11/20 異空間転送説がほぼ確定的な事実として認められる。転送用ポータルに関する研究の開始。ろ過実験の対象拡大。
2017/12/10 いくつかの化学物質のろ過実験のあと、突如フィルター下部からの物質の出現が停止する。実験計画の一旦凍結が決定。
2018/4/5 標準収容ロッカーに収容中であったフィルターから少量の砂糖が発生していることが発見される。実験が再開される。
2018/4/6 フィルター下部からの物質の再出現が確認される。ただし発生する物質は水から砂糖へ変化していた。発生量は上部からポータルを通過した液体とほぼ同体積である。
2018/4/7 SCP-1452-JPがSCPオブジェクトに指定される。異常性の変化を受けて水溶液による実験の停止が決定される。以降は液体としてほぼ純粋な水のみが用いられることが決定された。
2018/6/2 固体がポータルを通りSCP-1452-JP-Aに侵入するためには、フィルターの間隙を通過する際に固体の全体が液体に浸かっている必要があることが判明。
2018/6/11 SCP-1452-JP-A探査人員派遣のための巨大ペーパーフィルター作成プロジェクトが開始される。
2018/11/4 SCP-1452-JP-Aの探査が開始される(探査記録を参照)。
2019/6/30 フィルター下部から多少の不純物を伴って食塩が不定期に出現するようになる。一方でSCP-1452-JP-A内への液体流入に伴う砂糖の発生は観測されなくなる。

この実験記録で重要なのは、ドリッパー下部から出現する物体が水→砂糖→塩に変化していること。
それ以外にもいくつか重要な情報があるが、ひとまずはこれだけは押さえておいて欲しい。

探査記録

では、いよいよこの報告書のメインと言えるドリッパー内部の異次元空間(SCP-1452-JP-A)に機動部隊を送り込んだ探査記録である。
……え?ドリッパーなんてクソ小さいものにどうやって人間を突っ込むのかって?

コイツの異常性は、「フィルターをセットするとフィルターを通過した物体を異次元に放り込む」というものである。
だったらどうするのか?

人間が通れる大きさの穴を開けたフィルターを作ればいいじゃない

……というわけで、強引な力業で用意された巨大コーヒーフィルター(何気に財団の能力をもってしても企画から完成まで5か月弱かかっている)をSCP-1452-JPにセットし、中に機動部隊い-32のメンバー3名を突っ込んで、水洗トイレのごとく水を流してSCP-1452-JP-Aに突入させた記録が以下である。









解説と考察

初めに断っておくが、 この考察が正しいという保証は一切ない 。そもそも「正解など存在しない」が正解である可能性もあるし。
そのため、あくまで参考程度に読んでもらえるとありがたい。また他に「こう解釈した方が妥当じゃないの?」という意見があれば是非追記して欲しい。

何が起きたのか?

とりあえず、SCP-1452-JP-A内の住人たちの言葉に嘘はない、とひとまず信じたとしてタイムライン順に起きた出来事を述べると以下の通りになる。

この世界には、「魔女」と呼ばれる存在がいて、その下に「永遠の民」と「氷糖の民」が暮らしていた。

ある日、魔女が死んだ。

「永遠の民」は「氷糖の民」の責任である、と責めて彼らに「タケサトウ」を作るように命じた。

(この辺りで機動部隊い-32がSCP-1452-JP-Aに突入)

「氷糖の民」は機動部隊が落とした銃器をコピーして量産し、「永遠の民」に反逆した。

「氷糖の民」は唯一対抗できる装備を持つ機動部隊を攻撃しようとしたので、機動部隊は鳩の助けを借りてなんとか逃げ延びた。

用語解説

  • 「永遠の民」
決して成長せず死ぬこともない民。城下町に暮らしている。

  • 「氷糖の民」
普通の人間のように成長し老いて死ぬ民。「タケサトウ」というショ糖でできた穀物から生まれる。「魔女」の館に入ることを許されていた。
銃器を(おそらく砂糖を材料に)あっさりコピーする 謎の技術力を持つ。銃そのものはコピーできたとしても、どうやって火薬などを用意したのかは不明。
人を殺傷できるほどの銃弾を飛ばすのなら、その反動にショ糖素材が耐えられるはずがないのだが……。そもそも、それでできた実体が動いたり走ったりしている時点で常識が通用するはずもないか。

  • 魔女
おそらくこの世界の神に近いだろう存在。 財団が実験で投入した毒物で死亡した と思われる。安定の財団やらかし案件
魔女の館にはSCP-1452-JPと酷似したオブジェクトが存在していたが、こちらには濃度調節目盛りがあり、発見時は最大値の1/10000になっていた。

探査記録では「鳩型実体」と呼称されている。その羽ばたきは様々なものをもたらすとか。
おそらく一番核心に近い存在でありながら一番訳が分からない存在。「彼」が何を目的に行動しているのか、がこの記録の考察におけるもっとも重要な要素だと言えるかもしれない。

  • 「祝福」「呪い」「願い」
この世界に存在するという3つのもの。このうち「願い」は鳩であるとされるが、「祝福」と「呪い」が「永遠の民」と「氷糖の民」のどちらに与えられたのかはわかっていない(少なくとも永遠の民は「自分たちが祝福された者である」と解釈している)。

SCP-1452-JP-Aから外部へと通じているもの。財団的に言えば「ポータル」か。
どうやら「永遠の民」と「氷糖の民」はこの門を通ることができないらしい。
合計3つが登場しており、永遠の民の城にあるもの、氷糖の民の村のそばのため池にあるもの、魔女の館にあるものがあったが、魔女の館のものは機動部隊がたどり着いた時点で壊れていた。


考察

まず、「魔女」の正体は恐らく普通の人間である。「氷糖の民」の「魔女は門を通って移動していた」という部分と、さらっと流しがちだが魔女の館に「写真」があることがその根拠となる。
どう見てもファンタジーなこの世界に「写真」を持ち込んだ人物……それは恐らく「SCP-1452-JP-A外部から来た普通の人間である」と解釈できないだろうか?

どのような理由で「魔女」がSCP-1452-JPの異常性に気づきその中に暮らすようになったのかは不明だが、とにかく彼女は「永遠の民」と「氷糖の民」を支配するようになる。
解釈としては「何かしら錬金術などの異能で彼らを作った」か、「最初からこの世界に彼らは存在しており、後から支配した」のどちらかだろうが、どちらなのかは不明。

魔女は川の上流(=SCP-1452-JP外部から流入した液体が最初に通る場所)に館を構えると、SCP-1452-JPに濃度調節機能を付けたものを用いて、外部から流れ込む液体(コーヒーである)を1万分の1の濃度に薄めて民に配っていた。
生活するのに大量の水を要する二つの民は魔女に従うようになる。
なお、使われた後の水は普通に「門」から排出されていたようだ。これが収用当初に出てきた「コーヒーを入れた際に出てくるほぼ純粋な水」の正体だろう。

で、コーヒードリッパーが財団に収容されてしばらく経った頃、財団はSCP-1452-JPに毒物を投入する実験を行い、その結果 魔女が死亡してしまう
「永遠の民」は、これを魔女の世話を担当していた「氷糖の民」の責任である、といちゃもんを付けて彼らをこき使うようになる。
そして、水を管理する者がいなくなったためにSCP-1452-JPから水が出てくることもなくなり、財団が実験をやめてロッカーにしまうようになったため、外部から水がもたらされることもなくなったのである。
なお、魔女の館が荒廃したのは恐らく魔女が死んで水を管理できなくなり、溢れかえった水で破壊されたものと思われる。

そしてある日、永遠の民が腹立ちまぎれに氷糖の民を 殺して門に放り込む 事案が発生。上記実験記録の「少量の砂糖が出現」の辺りである。
この新たな異常性に驚いた財団は、実験を再開。 そのためSCP-1452-JP-Aに再び水がもたらされるようになる
……つまり本来「砂糖を門に放り込む」と「水がもたらされる」の間に因果関係は何もないのだが、 たまたまの偶然でこれを結び付けた「永遠の民」が「氷糖の民」から砂糖を搾取するようになった のである。

ここからは探査記録の通りなので省略。最終的に 虐げられていた氷糖の民が水を得るために永遠の民を永遠に拷問し続けるようになり、SCP-1452-JPからは永遠の民の体液を蒸留した後に残った食塩が出現するようになった というオチである。ところで食塩に混ざっている「少量の不純物」の正体って…

残された謎

大体の起きたことは上の解釈で合っているだろうが、これでもなお疑問点は残る。
これらについて考察できる人はぜひとも挑戦してほしい。

  • 鳩の目的はなんだったのか?
やはりこれが最大の謎だろう。機動部隊の味方のようにも見えるが、その実何をやりたかったのかがよくわからない存在である。
「永遠の民」と「氷糖の民」は目的がある程度ハッキリしているため、余計に違和感が際立つ。
ただ、最後のセリフからすると、最終的に「この状況を作ること」そのものが鳩の目的であったように見える。
しかし、「魔女の願い」と「鳩の願い」は別々であるとも示唆されており、結局何が何だかよくわからない。

  • 「祝福」「呪い」「願い」の正体
「願い」が鳩なのは作中で触れられている通りだが、では二つの民のどちらに「祝福」「呪い」のどちらがもたらされたのかは明言されていない。
ただ、ディスカッションで指摘されている通り、当初「永遠の民」は「自分たちが死なないのは祝福されているからだ」と自信満々だったのに、最後には その祝福ゆえに永遠に苦しみづ付ける 羽目になっており、「祝福」と「呪い」が明らかに逆転している。

  • 魔女の写真を破ったのは誰なのか?
地味にこれも大きな謎である。作中でこのような行動を取る理由のある者が誰一人としていないのだ。
「永遠の民」と「氷糖の民」は対立こそしているものの、魔女のことは敬愛しておりわざわざこのような不敬な行動をする理由がない。
魔女本人は、ほとんど即死に近かったと思われるので、写真を二つに分けて別々の場所に置いておく余裕があったとは思えない。
唯一考えられるとすれば、何を考えているのかわからず魔女の写真に写っていた鳩だが「鳩なのに写真を破ったりできるのか?*1」という疑問があるし、そもそも写真の破片の在処に誘導するような行動すら取っている。
結局これもよくわからない、というのが結論である。

また、もう一つこの写真には疑問点がある。
写真には「魔女」と思われる女性と鳩が写っている。
しかし、探査記録3を見る限り、 館の中にカメラ及び現像に使う機器類は存在していない
もちろん、見落としていた可能性もあるが探索のプロである機動部隊がそんな目立つ証拠を見逃すだろうか?
つまり、この写真はSCP-1452-JP-A内部で撮影されたものではなく、外部から持ち込まれたものである、ということだ。
それはすなわち、 鳩もまた魔女と同じくSCP-1452-JP-A外部から来た、恐らくは同郷の存在である ということに……?


色々な意味で謎だらけの本オブジェクトだが、一番すごいのはこれがジャムコンテスト参加作品(= テーマ発表から72時間以内に完成している )という事実だろう。


「こんな解釈があるぞ」という方は追記・修正お願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1452-JP - Drip Drat Drinker
by k-cal
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1452-jp

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最終更新:2020年08月13日 21:26