スピナー(僕のヒーローアカデミア)

登録日:2021/01/31 Sun 06:27:11
更新日:2024/10/20 Sun 14:24:51
所要時間:約 4 分で読めます





守るという行為に対価が発生した時点で ヒーローはヒーローでなくなった

これがステインのご教示!!


スピナーとは漫画『僕のヒーローアカデミア』の登場人物。

CV:岩崎了

+ ●目次

◆概要

敵連合』に所属するトカゲのような風貌をした男。髪色はピンク。
異形型の個性に対し差別意識がある地方の出身らしく、それ故に自身の容姿で虐められ、引き籠っていた経緯を持つ。*1
そのため敵味方問わず自身の事を「トカゲ」と言われると怒る。
本名「伊口(いぐち)秀一(しゅういち)」。

引き籠っていた際にはゲームばかりしており、中でも「グランドセフトオート」のヘビープレイヤーらしい。
運転もゲーム内で学んだらしく、作中ではトラックなどの運転を担当している……のだが所詮ゲームで得た知識のため運転技術はお察しであり、酔いやすい荼毘からは文句を言われている。
死柄木とはゲーマー同士、それなりに馬が合うらしい。
その姿が原因で虐められ、リアルで友人を持てなかったスピナーにとって、自分の姿を気にすることなく共通の趣味で盛り上がれる死柄木は唯一無二の存在として友情、或いは敬愛を抱いていた。

戦闘の際は多数の刃物を用いており、初登場の際には多数のナイフを組み合わせた大剣「スーパーナイフナイフソード」を振るっていた。
因みにこのスーパーナイフナイフソードは「刃物をいっぱいつけて欲しい」という注文の末に出来上がった品で、要は単なるこけおどしでしかない。
だがこれを描いていたアシスタントが「描く手間がかかりすぎる」と青ざめたことにより、早々に出久に蹴り崩されることになったという。スピナーェ……。

◆人物

連合一のステイン信奉者であり、目元をマスクで覆う、戦闘では刃物を用いるなどステインを意識している点が多い。
連合の作戦最中にもあくまで「ステインの意思にそぐうか否か」が彼の判断基準であり、そのためステインが認めた出久が狙われた際には彼を助けたことも。
しかしそれ故に連合の中で最も自我を確立できていない存在でもあり、自他共に認める「半端者」。
連合に参加したのも、ステイン逮捕のニュースを受けての熱に当てられたからであり、その勢いに乗っかっただけである。

上記の経歴通り、犯罪や裏の世界とは縁のない人生であったせいか、性格面では連合の中でも一番一般人に近い感性の持ち主である。
はっきり言えば、能力面も含めて突出したものはない。
暇なニートにありがちな自慰的な筋トレの影響からか相当な重量ではある刃物の塊を振り回すだけの腕力はあり、ステイン被れ故らしきナイフ投げ等も器用にこなせる。
設定資料集の限りでも、個性を抜いた身体能力に限れば、鍛えているプロヒーローに見劣りしないものはあり、そこいらの無名ヴィラン程度であれば複数人をさしたる苦もなく同時に相手取ってのける。
だが、裏を返せばそれが限界。
自身の個性が戦闘向きではない所為もあって、敵連合という粒揃いの異常者集団の中では戦闘力に関しては下の方で、心身共にある意味浮いてる存在ともとれるだろう。

逆に言うと、我の強さが弱く常識がある分、集団としての在り様を冷静かつ客観的に視点を持っており、
「敵連合」という組織に対しての現状について死柄木に問いかける等、他のメンバーには出来ない意見を忌憚なく述べる事が出来る。
また「敵連合」という組織、そして死柄木個人に対する忠誠心はかなり強く、
上記の経歴と能力でありながらも敵連合の仲間からは自分達の一員だとしっかり認められているという点も特筆に値するだろう。
コンプレスは「一番死柄木を慕っていた」と語っており、今となっては連合の中で一番の死柄木の忠臣と言える存在である。

個性:「ヤモリ」

ヤモリの能力を得る異形型の個性。
しかし、出来ることは精々「壁に張り付ける程度」でしかなく、壁のない戦闘では全く役に立たない。
逆に住宅街など壁の多い場所での戦闘ならば行動範囲は広がるが、どちらかと言えば潜入などの方に適した個性である。

トカゲ系統の個性を持つ伊口家の中でも弱めの個性とされている。
また、全体的に凶悪な個性が多い敵連合でも見劣りしてしまう感は否めず、マンダレイから「個性を使っていない」と評される事もあった。




◆来歴

林間合宿襲撃編にて初登場。
開闢行動隊として参加、マグネと組んでプロヒーローのマンダレイと戦闘を行う。
途中マンダレイのテレパシーによる色仕掛けに動揺したり、マグネに狙われた出久を「ステインがヒーローとして認めた者だから」と助けたりと開闢行動隊としては異質な面を見せていたがその際に隙を見せ、マンダレイに蹴り飛ばされて拘束されてしまう。
しかし黒霧の助けによって窮地を脱し、無事に帰還。以降も敵連合として行動する。

インターン編では個性破壊弾奪取作戦の際にトラックの運転を担当。
警察を襲うことがステインの意思にそぐうのかどうかと悩んでいたが、死柄木に諭されて彼の指示に従う。

異能解放軍編では語り部を担当。
敵連合の中でも一歩引いた目線で面々を見続けていた。
やがて、後ろ盾と共に資金力も設備も失って、当て所も無く彷徨っては弱小チンピラ組織を潰して小銭を巻き上げる、ダレきった無為無策の夜盗崩れに甘んじていた敵連合の現状にとうとう憤りが爆発。
多くを語らない死柄木に、「リーダーとして何を目指し、組織をどう導く積りか」と懸念や憤懣をぶつけた。
だがその後、ドクターとの接触を経て死柄木が語った「全てを壊す」という荒唐無稽な野望に何かを見出し、以後は死柄木のためにと行動する。

異能解放軍との闘いである再臨祭では、戦士達にバフを付与するトランペットと彼を守る集団と交戦。彼に自身の過去を暴かれた上で「何かを成せる人間には見えない」と称される。
しかし、半端者にして他人に乗っかることしか出来ない人間であるが故に、自分が認めた人間のために行動すると決めたスピナー。
「死柄木のため」と、彼の負担を少しでも軽くしようと最大限の行動を見せて、強化された無数の戦士達を相手取って戦いを生き残って見せた。
なお、トランペットが超一級ヴィランたるリ・デストロの下に合流してしまえば、死柄木の覚醒を待たずしてトランペットの個性によってリ・デストロも大幅強化されていた恐れがあり、その場合は敵連合の敗北が確定した。
ヘイト管理によってトランペットの足止めに成功したスピナーは、地味ながらも大いに貢献していた。

そして死柄木がリ・デストロを下し、従属を宣言させた場に居合わせ、「この歪な地平線が綺麗に見えた」と改めて死柄木の野望についていくことに。
その後は超常解放戦線で開闢行動支援連隊「BROWN」の行動隊長に任命され、何万人もの部下を束ねる存在として大出世を果たした。
超常解放戦線という組織名はスピナーの発案なので、これがリ・デストロに気に入られたのが主な理由かも知れない。

自他共に認める半端者である彼が今後どのような行動を見せるのか、色んな意味で注目が集まっていた。
そんな中、遂に始まった「全面戦争編」では作戦会議のため地下の講堂にいたために直接戦闘に介入しないままギガントマキアの起動に巻き込まれ、「連合の皆を連れてこい」という死柄木の指示を受けたマキアにより他の仲間達共々その背中に乗せられる。
マキアの背中に乗りつつ死柄木の元へ向かう中、ある事情から別行動を始めたトガに対しては「勝手するのは俺たちの本領、ただし必ず戻って来い」と激励の言葉をかけて彼女を送り出した。
やがて死柄木と合流を果たすが肝心の彼は満身創痍。死柄木を抱え目覚めるよう必死に呼びかけるなど、死柄木の忠臣として行動し続けた。
しかし突如復活したベストジーニスト操るワイヤーによって死柄木やコンプレス共々捕縛された挙句絞め落とされそうになってしまう。
窮地を救ったのは自らの体を抉ってまで「圧縮」してくれたコンプレス。彼によって死柄木と共に球体の中に隔離される中、死柄木を目覚めさせようとスピナーは必死にワイヤーを解いて呼びかけ続ける。
そうこうしている間に時間稼ぎしてくれたコンプレスもミリオによって撃破され、自身の元に迫るミリオとジーニスト操るワイヤーの数々。
スピナー自身の戦闘力は高くない上に死柄木は未だ目覚めず、しかし自身の傍には守るべき主たる死柄木と、そのマフラーの中にはコンプレスによって圧縮された荼毘(とスケプティック)。ここで自分が捕まってしまえば、連合は全滅してしまうとまさに絶体絶命の状況に。

だが、スピナーには最後の「手」が残されていた。
死柄木を助けている最中、スピナーは見つけたのだ。溶けて爛れたスーツの中に、焦げてひしゃげてながらもまだ辛うじて形を保っていた、死柄木が身に着けていた唯一の「手」を。
連合の中で最も死柄木を慕い、彼を理解しようとしていたスピナーは思い出した。死柄木がこの「手」を身に着けると、怒りを湧き上がらせながらも心が落ち着くと彼自身が話していたことを。
確信があったわけではない。ただ、これが覚醒の一助になってくれればとスピナーは咄嗟にスーツの中から「手」を取り出し、一縷の望みを込めて死柄木の顔に付けた。
瞬間、強力な「電波」とそれに伴う衝撃波であらゆるものを吹き飛ばした。
スピナーは成功したのだ。死柄木の覚醒に。

……だが、スピナーは知らなかった。知る由もなかった。
死柄木の意識が強くなるということはその心の奥底に潜むオール・フォー・ワンの意識も強くなるということを。
これによって死柄木の意識は完全にオール・フォー・ワンに乗っ取られてしまった。
死柄木の体を乗っ取った彼は「電波」によって脳無に指示を与え、離脱のための準備を整わせる。
仲間を見捨てようとする彼にスピナーは慌てて声を掛けるも、それは自身が慕っていた死柄木ではなく悪の権化たるオール・フォー・ワン。
彼はスピナーの提言を聞くこと無く、自身とスピナーのみを回収して戦線から離脱するのだった。
(一応補足しておくと、この時マキアはあまりにも巨大すぎて運搬できず、コンプレスはミリオに捕まっていた上に距離があったことや致命傷を負っていたこと、トガに至っては別行動を取っていたためにその場にいなかったためでもある)

こうしてスピナーは生き残った仲間と共に新たに死柄木を乗っ取ったオール・フォー・ワンの下に付くことになってしまった。
だが、スピナーは納得のいかないまま、驚愕と絶望を張り付けた表情を浮かべていた。彼が忠誠を誓い、付いていくと決めたのはオール・フォー・ワンではない、死柄木なのだから。
忠誠を誓った主が他人に乗っ取られるという前代未聞の事態のまま、スピナーは流され続ける。先行きの見えない混沌たる地獄と化した物語に……。


◇ただ、死柄木のために


オール・フォー・ワンの指揮下に入った後、非協力的な荼毘とは違い、あくまで「死柄木のためになるのなら」とスピナーは護衛や死柄木の介抱など献身的に協力し続けた。
そんな彼をAFOは賞賛し、彼を「紡ぐもの(スピナー)」と称した上で今後の死柄木を支えるように言い渡される。
この時のスピナーは、治安崩壊した日本において異形種の希望の星となりつつあった。
敵連合が結成されるよりも前から日本では未だに異形種個性への差別が根強く、それらに苦しむ者も多かった。
このためヴィラン犯罪の中でも異形種による割合は相当なものであった。

そうした背景の中、ステインの意思に賛同し、異形型の個性持ちであるスピナーが連合の一員として数々の大事件を起こした。
そして全面戦争にてヒーローの脆弱性は暴かれ、嘗てステインが警鐘を鳴らした通り「本物のヒーロー」たる覚悟なきものが責任を逃れるべく次々と退職し、どんどん治安が悪化していく日本の現状。
これらから「スピナーこそステインの後継者」、「スピナーは異形種差別問題に一石を投じた英雄」だと一部の暴徒たちや異形種差別に苦しむ者たちに認識されてしまった。
加えてこれらを解放戦線の生き残りやスケプティックがあれゆる方法で喧伝、結果彼はリ・デストロに代わる新たな教祖のような存在として祭り上げられてしまったのである。
このため暴徒の中にはなんとスピナーに憧れ、彼の姿を模して暴れる人間――即ちスピナーの信奉者まで生まれ始めた。
解放戦線の生き残りや彼を慕うヴィラン、暴徒たちは次々とスピナーの元に集い、彼の命令一つで再び大戦争を起こせる存在となっていたのである。
それは嘗て自分が憧れたステインとまったく同じ流れであった。

ただ一つ違うのは、スピナー自身にはステインやリ・デストロのような信念も思想もなかったことである。
いつの間にか重大なポジションに収まっていたスピナーは「神輿が軽すぎる」と重責に耐えられない様子であったが、既に賽は投げられた後。
嘗てスピナーが「異能解放軍編」の語り部として「俺たちの物語はもう誰にも止められなくなっていた」と語っていた通り、スピナー一人では止めることも逃げることも出来なくなっていた状況だった。
勢いにただ乗っかって流された結果、今や大犯罪者として、或いはヴィランたちの希望の星としてスピナーは君臨することになってしまった。
今なお加速し続ける混沌の中、スピナーは遂に思考を放棄する。


もう考えるのはよそう

死柄木。俺はただ、お前のために――

そうさ伊口くん。誰もが誰かのヒーローになれるんだ!


覚悟もなく、ただ流れに乗っかっただけの小市民。
そんな彼に残された唯一の信念。それは忠誠を誓った主である「死柄木に尽くす」こと。
ただそれだけのためにスピナーは流されるままスケプティックから通信機を受け取り、自身に惹かれて集まった無数のヴィランに指令を下す。
この指令により、最終決戦の幕が上がるのだった――。





追記・修正は全てステインの仰る主張に沿うか否か!!

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最終更新:2024年10月20日 14:24

*1 本人曰く、殺虫剤をかけられたことがあるとのこと。

*2 全員、異形系の個性の持ち主。

*3 皮肉にも荼毘が倒されていないことは当たっていた。

*4 患者を守ろうとする医者の中には、他ならぬ異形型もいた