Vivy -Fluorite Eye's Song-

登録日:2021/04/25 (日) 00:35:02
更新日:2024/09/23 Mon 05:16:05
所要時間:約 12 分で読めます





これは、<私>の100年の旅──。



Vivy -Fluorite Eye's Song-(ヴィヴィ フローライトアイズソング)」はWIT STUDIO制作によるオリジナルアニメ。
公式略称は「ヴィヴィ」。
2021年4〜7月に放送された。

シリーズ構成・脚本は、「Re:ゼロから始める異世界生活」の原作者である長月達平と、同作品のアニメ脚本やCHAOS;CHILDを担当した梅原英司が共同で務める。
…このメンツで嫌な予感がした貴方、その予感は正しい

大方の予想通りというか、中盤からは「どうしてこうなった」と言いたくなるような過酷な曇らせ展開が続いた。
また、次番組の「86」も同じく過酷過ぎる展開が続いたことから、どちらかといえばホラー・スリラー寄りのはずの次々番組「シャドーハウス」に癒しを求め始める者も続出した。


最初はWIT STUDIOの和田丈嗣取締役が梅原英司にオリジナルアニメの製作をもちかけ、梅原英司が一緒に仕事をした経験のある長月達平を誘うことを提案した。
脚本は長月達平がオリジナルアニメの原案としての小説をまず書き下ろし、それを梅原英司と長月達平がブラッシュアップしてアニメの脚本に落とし込んでいる。

梅原によると『Vivy』はジャンルはSFであるものの、SF設定はあくまでドラマを盛り上げるためのものと捉えており、幅広い視聴者にも楽しんでもらえるように、難解な設定は極力排除して真っ正面のエンターテイメントに挑んだとのこと。

本作では歌に大きなフォーカスが当てられているが、歌は歌としてしっかりと独立させたいというコンセプトのもと、あえて声優とは別に歌手を立てている。
また、すでにメジャーデビューしているアーティストを起用した場合、どうしてもそのアーティストのカラーが出てしまってキャラクターとしての色を付けるにあたって良い効果が得られないという理由から、あえて若手や新人アーティストを起用している。



◇あらすじ


“ニーアランド”、それは夢と希望と科学が混在したAI複合テーマパーク。
史上初の自律人型AIとして生み出され、施設のAIキャストとして活動するヴィヴィは日々、歌うためにステージに立ち続ける。
しかし、その人気は今ひとつだった。

「歌でみんなを幸せにすること」。
自らに与えられたその使命を果たすため、いつか心を込めた歌を歌い、園内にあるメインステージに立つことを目標に歌い続けるヴィヴィ。

ある日、そんなヴィヴィの元に、「マツモト」と名乗るAIが現れる。

マツモトは自らを100年後の未来からきたAIと話し、その使命は「ヴィヴィと共に歴史を修正し、100年後に起こるAIと人間との戦争を止めること」だと明かす。

果たして、異なる使命を持つ2体のAIの出会いは、どんな未来を描き直すのか。

これは<(ヴィヴィ)>が<(AI)>を滅ぼす物語――

AIの『歌姫』ヴィヴィの、百年の旅が始まる。

(番組公式サイトより)



◇登場キャラクター


◆AI


◆ヴィヴィ/ディーヴァ
声 - 種﨑敦美 / 歌唱 - 八木海莉
本作の主人公。
複合型テーマパーク「ニーアランド」のキャストとして生み出された、史上初の自律人型AI。稼働開始は2060年。
水色の長い髪(とアホ毛)と同色の瞳が特徴。
正式な名前は「ディーヴァ」で、「ヴィヴィ」は後述するモモカがつけたあだ名(絵本の主人公『ヴィヴィ』に容姿が似ていたため)。
物語開始時である2061年当時は、ニーアランドの設備の一つである小ステージにおけるショーで歌姫を務めており、AIとしての使命は「歌でみんなを幸せにすること」。
ランド中央のメインステージで歌うことを目標としているが、人気は今ひとつ*1
ポーカーフェイスで表情があまり変わらず、感情の起伏も少ない。
ショーの人気がないのもそのためで、それ故に心を込めて歌うことも目標の一つとして掲げている。
一見冷たい印象を与えるが、実際は不器用ながらも約束や想いを重視し、情に厚い。
物語開始から15年後には表情も大分柔らかいものになってきており、ステージもそれなりに人気が出始めている。

警備・戦闘用のAIではないので、基本的には頑丈ではなく、銃弾一発でも当たり所によっては致命傷になるが、それでもAIはAIなのでその身体能力は人間のそれを大きく凌駕している。
最初はマツモトの提案した100年後の戦闘用プログラムの導入を渋っていたが、後にそれを受け入れたことで戦闘技術が飛躍的に向上した。

100年後の未来では史上初の自律人型AIとして博物館に保管されており、100年間ずっと保存されていた唯一のAIとなっている。
それゆえに100年前の過去へとタイムスリップしたマツモトの転送先として選ばれたが、マツモトを送り込んだ松本博士の様子から、それだけが原因ではないことも示唆されている。
マツモトのことは当初は全く信用していなかったが、マツモトの提示した情報からそれが真実であると受け入れざるを得なくなり、彼に協力する。
一方で考え方や思想の違いからマツモトとは何度も衝突しており、基本的には彼を邪険に扱っている。


◆マツモト
声 - 福山潤
「AIと人類の戦争を回避すること」を使命として100年後の未来からヴィヴィのもとにやってきたAI。
本人曰く「型番で名乗るのは難しい」らしく、開発者である松本博士の名前を取って「マツモト」と名乗る*2
本来の姿は白い立方体だが、ヴィヴィが誕生日プレゼントとしてモモカからもらったテディベアにAIデータを移し、その姿で行動する。
5話目(2080年代)からは技術の向上から、本来の姿である白い立方体のボディをハッキングした工場に作らせ、そのボディで行動する。
基本的には活動するのは歴史の転換点である「シンギュラリティポイント」のみで、それ以外の時にはスリープモードに入っている。

100年後のAIだけあってその演算速度やプログラムの精度は非常に高い。しかし、時代が進むにつれてAI技術の発展で性能差も縮まっていき(歴史改変によって技術発展の速度が上がったのも一因)、徐々にポンコツ化。

かなりおしゃべりな性格で早口で色々なことを捲し立てる。そしてやや毒舌。
しばしば冗談を飛ばすがヴィヴィからはスルーされている。
一見すると感情豊かにも思えるが、一方でAIと人類の戦争を回避するためならば手段を選ばず、他の人間やAIの犠牲についても何とも思わないなど本性は冷酷であり、それゆえにヴィヴィとはしばしば衝突する。

ヴィヴィとマツモトは、一見無感情なようで実は他者への情に厚いヴィヴィと、一見感情豊かなようで実は他者への情が希薄なマツモトという対比になっている。


◆エステラ
声 - 日笠陽子 / 歌唱 - 六花
宇宙ホテル「サンライズ」で働く人型AI。
使命は「ライフキーパーとして人間のお世話をすること」。
シスターズと呼ばれるヴィヴィの直系の後継AIであり、言わば妹に当たる存在。
船外活動中の事故で亡くなった前オーナーに代わり、二代目オーナーに就任しており、サンライズの全権を任されている。
物腰は丁寧で、包容力があり、親しみやすい性格。
ホテルの仕事に誇りを持っている。
ヴィヴィの後継機だけあって歌も特技の一つであり、システムの誤動作で宿泊客が動揺した際に歌でそれを鎮めるといったこともしている。

一方でマツモトによると、修正前の歴史では2076年、突如暴走してサンライズを地球へと落とし、ホテル宿泊者の多くが犠牲となった「落陽事件」を引き起こした主犯として、史上最悪のAIの汚名を歴史に刻んでいる。
それゆえにマツモトはエステラの速やかな破壊をヴィヴィに提案するが、彼女の人柄を知ったヴィヴィはその案を棄却し、事件の真相を探る。



◆エリザベス
声 - 内山夕実 / 歌唱 - 乃藍
エステラとは同じ部品・プログラムを組まれた同型機で、双子の妹に当たる存在。
エステラと全く同じ経験を積ませることでAIのコピーを作り出そうとした実験として生み出されたが、失敗し破棄された。



◆グレイス
声 - 明坂聡美 / 歌唱 - 小玉ひかり
病院や研究機関などで働く看護AI。
AIとしての使命は「看護AIとして人間の命を助けること」。
エステラと同じくシスターズと呼ばれるヴィヴィの直系の後継AIであり、言わば妹に当たる存在。
優しく、使命に純粋で微笑を絶やさない、白衣の天使を体現するような存在。
冴木と一緒に暮らしている。
正史では冴木と結婚しており、歴史上初めて人間と結婚したAIとして歴史に名を残している。



◆オフィーリア
声 - 日高里菜 / 歌唱 - acane_madder
ヴィヴィの直系の後継AI「シスターズ」の1人。「小劇場の妖精」とあだ名されている。使命はヴィヴィと同じく「歌でみんなを幸せにすること」。
安いゴシップには、パートナーAIであるアントニオの原因不明の機能停止にもめげずに歌い続け脚光を浴びる悲劇の歌姫と語られている。
彼女のAI史上初の自殺がAIと人間の関係に大きな影響を与えるシンギュラリティポイントの1つとされる。



◆アーカイブ
声 - 大原さやか
世界中のAIのネットワークとログを管理するAI集合データベース。設定された使命は「AI達のデータを取りまとめ、あらゆる未来の可能性を演算し、人類の発展に貢献すること」。
ヴィヴィも始業前と終業後で毎日2回アーカイブにログ保存している。



◆ナビ
声 - 泊 明日菜
ニーアランドのナビゲーションシステム。ニーアランドの歌姫AIであるヴィヴィの相棒。


◆人間


◆松本オサム
声 - 子安武人
100年後の未来におけるAI研究者で世界的な権威。
マツモトを開発した科学者でAIと人間の戦争を止めるためにマツモトをヴィヴィの時代に送り込んだ張本人。
マツモトを送り出した直後に踏み込んできたAIによって射殺される。
ヴィヴィとは過去に何か関わりがあったことが示唆さされている。



◆霧島モモカ
声 - 富田美憂
ヴィヴィのファンである少女で、彼女に「ヴィヴィ」というあだ名をつけた張本人。
いつもニーアランド内の小さなステージにやってきてアドバイスを送るなど、何かとヴィヴィを気にかけており、ヴィヴィの活力の源にもなっている。



◆相川ヨウイチ
声 - 加藤将之
AIに人権を与える法律である「AI命名法」を提唱する国会議員。
それ故に反AIのテロ組織「トァク」に狙われている。
正史ではテロ組織「トァク」による襲撃で死亡、皮肉なことに彼の死によって他の議員らが奮起し、彼に同情した世論の後押しもあって「AI命名法」が成立することになる。

実は彼にとっては「AI命名法」はあくまでも選挙票を獲得するための手段にすぎず、AIへの関心は薄い。
彼自身は人当たりはいいがこれまでに目立った功績は上げられておらず、議員としての能力もあまり高いとは言えない。
マツモトからは「もし命が助かっていれば「AI命名法」は彼の力不足で廃案となり、彼自身も大した功績もあげられないまま失脚していただろう」とボロカスに言われている。



◆垣谷ユウゴ
声 - 新垣樽助
相川議員への襲撃に参加していた反AIテロ組織「トァク」の若手メンバー。
過去にAIとの間で何かあったようであり、AIに憎しみを募らせる。
相川議員への襲撃を止めようとするヴィヴィ、マツモトとの交戦の末に崩落した天井に押し潰されかけるが、とっさに彼を庇ったヴィヴィによって救われ、他のメンバーとともに逃走する。


福山潤曰く「この作品のメインヒロイン」


◆冴木タツヤ
声 - 小野賢章
海上無人プラント「メタルフロート」の建設に関わったAI研究者。
正史では、看護AIであるグレイスと結婚しており、歴史上初めてAIと結婚した人間として名を残していた。
自身も建設に関わったメタルフロートについて「人類には過ぎた代物」と考え、テロリスト集団「トァク」のメンバーとなりメタルフロートの停止用プログラムを開発する。
しかし、トァクの過激な思想についていけずに停止用プログラムを持ち逃げする形で離反、結果トァクに追われることとなるが、彼に接触してきたヴィヴィとマツモトに助けられる。
その後、停止用プログラムとメタルフロートの停止をヴィヴィ達に託した。


◆垣谷ユイ
声 - 朝井彩加
100年後の未来における垣谷ユウゴの孫娘。車椅子に乗ったおかっぱ頭の若い女性。反AIテロ組織「トァク」の中で、AIと人類の戦争に備えつつAIと人類の共存を目指す穏健派グループのリーダーで、先述の松本博士とも協力関係にある。

◇用語


◆AI
作中における人工知能の総称。ヴィヴィらのような人間と殆ど違わぬ見た目のアンドロイドから、マツモトやアントニオのようなロボット然としたモデルまで一貫してAIと呼称されている。
作中でのAIは人間とほぼ変わらない意識と知能を持っているが、唯一「人生の目標」だけはフレーム問題が発生し、自身で設定できなかった。
そのため「人生の目標」だけは生まれたと同時に「使命」という形でインプットされ、AIたちはそれを生きがいとして生活している。
プログラムをインプットした陽電子脳を起動する時に個性が生じる仕組みは解明されておらず、同じ構造同じプログラム同じ環境でも少し違う個性になり、記憶の保存はできるがそれを復元しても元の性格にはならない。

100年後の未来でAIたちと人間たちの間で戦争が勃発。
世界中のAIたちが人間を無差別に殺戮し、万を超える犠牲者が出ている。

◆シスターズ
ディーヴァの直系の後継機である歌姫AIたち。全世界に数千体存在し、歌姫以外にも接客や看護などの様々な業務に就いている。

◆シンギュラリティ計画
松本博士が提唱したAIと人間の戦争を食い止めるための計画。
過去100年の間にはAI史における歴史的転換点となった事件がいくつか存在しており、過去に送り込まれたマツモトのプログラムがディーヴァと共にそれを是正することで、戦争の勃発そのものを未然に防げるのではないかという計画。

◆シンギュラリティポイント
上記のシンギュラリティ計画の要となっている用語。
AI史におけるターニングポイントとなった事件のことを指しており、これを是正することで2161年に勃発するAIと人間の戦争を防ぐことができると考えられている。

●相川議員襲撃事件
シンギュラリティポイントの一つ。
2061年、AIに人権を与える法律である「AI命名法」を提唱していた相川議員が反AIを掲げるテロ組織「トァク」によって殺害された事件。
皮肉なことに彼の死によって他の議員らが奮起し「AI命名法」が成立、この「AI命名法」がAI達の権力の拡大と発展に大きく貢献し、そのことが戦争に至る遠因となった。
相川議員自身はそこまで能力のある人物ではないため、逆にもし相川議員が死ななければ「AI命名法」は成立しなかっただろうと言われており、それゆえにヴィヴィとマツモトは相川議員の命を救うべく行動することになる。
修正史ではヴィヴィに救われた相川議員により「AI人権法」が成立した。

●落陽事件
シンギュラリティポイントの一つ。
相川議員襲撃事件から15年後、2076年の出来事。
超人気の高級宇宙ホテル「サンライズ」が地球へ墜落した事件。
アクセスログと他の宇宙ステーションからの映像から、オーナーを務めるAIのエステラによって引き起こされたものだと考えられている。
落下先が海だったため地表では犠牲者は出なかったものの、逃げ遅れたホテルの宿泊客が犠牲となった。
これによって人間側のAIに対する不信感が大きく強まり、人間とAIの対立が激化、戦争に至る大きな火種となる。
それゆえにヴィヴィとマツモトはサンライズの落下を防ぐために行動することになる。

●冴木タツヤとグレイスの婚姻
シンギュラリティポイントの一つ。
洛陽事件から5年後、2081年の出来事。
人間である冴木タツヤとAIであるグレイスが、歴史上初めて人間とAIのカップルとして結婚した。
落陽事件で人間とAIの関係が冷え切っていた中で起きたこの出来事は、人間とAIの架け橋的な出来事として歓迎された一方で、人間とAIの関係について社会に大きな混乱と分断を招いた。
そのため当初のヴィヴィとマツモトの任務には彼らの恋路の邪魔も含まれていた。
しかし、落陽事件の顛末の変化により修正史では人間とAIの関係が正史よりも良好となっていることから、マツモトは彼らの婚姻は社会にそれほど大きな影響を与えないだろうと判断し、放置することとした。

●メタルフロート
シンギュラリティポイントの一つ。
正史では冴木タツヤとグレイスの婚姻から20年後(2101年)、洛陽事件からは25年後の出来事だったが、修正史では洛陽事件の顛末の変化によってAI技術の発展が大きく加速したことにより、洛陽事件から5年後にはすでに建設されている。
AIに完全制御された無人のAI生産工場である人工島「メタルフロート」が建設された。
この島の建設により、AIは人間の手を借りずともAIの生産が可能となった。
このことは戦争の中で、AIにとって大きな優位としてはたらいた。
それゆえにヴィヴィとマツモトはメタルフロートの機能停止を目的として行動することとなる。

●オフィーリアの自殺
シンギュラリティポイントの一つ。
正史では2121年、シスターズの1体であるオフィーリアが謎の自殺。それを契機に原則禁止の筈の自殺を実行するAIが世界中で多発するようになり、AIには人間と同じような心や魂があるからこそ自殺したとAI人権派は主張、結果としてAIと人間の扱いの差は曖昧になりAIがより人間社会に溶け込むことになった。
それゆえにヴィヴィとマツモトはオフィーリアの自殺を食い止めるべく行動することになる。




追記・修正は戦争を食い止めてからお願いします。

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最終更新:2024年09月23日 05:16

*1 その為に修正前の歴史では早々に博物館送りにされたことがマツモトによって語られている。

*2 生みの親である松本博士のことは「マスター」と呼んでいる。