闇の訪れ(遊戯王OCG)

登録日:2021/09/01 Wed 00:00:00
更新日:2025/03/07 Fri 20:07:43
所要時間:約 8 分で読めます




闇の訪れ
通常魔法
手札を2枚捨てる。表側表示のモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。
※2017年のエラッタ以前は「裏側守備表示にする」は「表示形式はそのままで裏側表示にする」であった


概要

《闇の訪れ》とは遊戯王OCGの1枚。
初出はMagic Ruler -魔法の支配者-。
手札2枚をコスト に、フィールドの表側表示モンスターを裏側守備表示に変更する効果を持つ。


……テキストを一読した時点で分かるだろうが、ものすごく使いにくい。


「モンスターを裏側守備表示にする」効果自体は、色々な事に応用できる。

例えばモンスターを裏側表示にすることで、そのモンスターの効果の発動や適用を封じることが出来る(ただしダブルコストモンスターなどの例外はあり)。

また裏側守備表示の状態ではレベルやステータス、属性・種族などが一切不明のモンスターとして扱うため、S召喚・X召喚・L召喚の素材にできない(儀式召喚・融合召喚は可能)。
なお、L召喚については「モンスター〇体(以上)」が召喚条件なら使えそうに見えるが、「表側表示のモンスターしか素材にできない」と言う基本制約がある為、裏側表示のモンスターは使用する事が出来ない。

その他にも召喚情報の一部を消失させる(蘇生制限のリセットに応用可能)、発動制限の一部を一時的な裏側守備表示化で踏み倒す、リバース効果の再利用など、色々な芸当が可能。

……なのだが、そのために 手札2枚を失うのは現在の環境下では多くの場合ソースの浪費になってしまう
なお、手札を捨てるのはコストなので暗黒界などと併用することは出来ない。

しかも、裏側守備表示にするだけならば、以下のような魔法カード達が存在する。

月の書
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを裏側守備表示にする。

皆既日食の書
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズに、
相手フィールドの裏側守備表示モンスターを全て表側守備表示にし、
その後、この効果で表側守備表示にしたモンスターの数だけ相手はデッキからドローする。

皆既月蝕の書
速攻魔法
(1):手札を1枚捨て、フィールドの表側表示モンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスターを裏側守備表示にする。

月の書》はノーコスト、《皆既日食の書》はデメリットがあるが全モンスターを裏側守備表示にでき、《皆既月食の書》は手札コスト1枚で一度に2体を裏側守備表示にでき、なおかつどれも速攻魔法(フリーチェーン)のため、これらの方が《闇の訪れ》よりも圧倒的に使いやすい。

一応これら3枚と違って通常魔法であるため、セットしたターンでも発動できる点を《メタモルポット》や《手札抹殺》などと併用した【デッキ破壊1キル】で生かす、《D-HERO ダイヤモンドガイ》でコストを踏み倒しつつモンスターの裏守備化の効果を確約させた状態で相手に対して牽制をする、手札を捨てるのならいっそ全て捨てると言った形で半ばヤケクソ気味に《連続魔法》で効果を重ねがけするなどの差別化は一応可能。
あまり見かけることは無いが、速攻魔法メタにも引っかからない。

だが相手のモンスターの裏守備化に限れば通常魔法でもコストなしかつ追加効果のある《森のざわめき》がある為、やはりこのカード自身の独自性はリバース効果の再利用などでしか見いだせないのが悲しい所である。

ただ、自分の《メタモルポット》の裏表を何度も入れ替える【デッキ破壊1キル】だと裏にするカードの頭数稼ぎにお呼びがかかる事も。
全捨て5枚ドローのブン回し力恐るべし。

ラッシュデュエルでもこの効果でカード化されている。
最初のパックである「デッキ改造パック 超速のラッシュロード!!」から登場している最古参のカード。
ドローフェイズ時に手札が5枚になる関係で発動自体はOCGに比べれば発動しやすさはよくなっており、
《魔将ヤメルーラ》などの表側表示で存在する限り有効な効果への対策には役立つなどの面もあるものの、やはりより手軽に使えるライバルが多い為か、有用性の面では微妙な状態になっている。
特に表示形式変更による戦闘補助をするだけなら、ノーコストの『攻撃』封じも登場してしまっているのも痛い所。
発動しやすいとはいえ裏側守備表示にするためだけにカードを3枚も使ってしまうのは重く、あまり使われてはいない。


追記・修正は相手の特殊召喚モンスターをこのカードで裏側守備表示にしつつ、反転召喚を無効にして墓地送りにした上でお願いします。

























ところでこのカード、上記の通り、新マスタールール開始時にエラッタを受けて現在の効果になっている。

すると当然過去には違う効果で存在していた事になるわけだが、実はその時の効果は他に類を見ない非常に変わったものだった。


その際のテキストをもう一度確認してみよう。






闇の訪れ(エラッタ前)
通常魔法
手札を2枚捨てる。
表側表示のモンスター1体を選択し、表示形式はそのままで裏側表示にする。


若干不明瞭なテキストだが、ここで言う「表示形式」とは攻撃表示・守備表示のこと。

対象が表側守備表示のモンスターならば、エラッタ後と同様、裏側守備表示にする。
だが対象が表側攻撃表示の場合は話は別で、この効果では「表示形式を変えずに」裏側表示に変更するので、対象は攻撃表示のまま裏側に、即ち裏側攻撃表示になってしまう

このような効果を持っているのは1万枚種以上のカードのある遊戯王OCGにおいても、このエラッタ前の《闇の訪れ》のみ。
このカードは「モンスターを裏側攻撃表示にすることのできる唯一のカード」として、2000年にカード化されてエラッタされるまでのおよそ17年間、遊戯王OCGの世界に存在していた。
本カードの存在意義といっても過言ではない唯一無二の効果であった。

言い換えると、このカードでその存在を維持し続けてきた「裏側攻撃表示」の概念は、エラッタに伴って事実上廃止ルールになった。
(今後、同様のルールを持つカードが出てくる可能性が完全に否定されたとは言い切れないが、その期待値は現状非常に低く、パーフェクトルールブックからは削除された用語となっている。)


裏側攻撃表示

今となっては過去の話だが、「裏側攻撃表示」の仕様についてを遊戯王wikiを主な参照先として記載する。


①:「攻撃表示のモンスターを表示形式を変えずに裏側表示にする」事でのみ成立する。

《闇の訪れ》のテキストにある通りの内容。
守備表示のモンスターを攻撃表示に変更する場合、ルール上はそのモンスターが表でも裏でも「表側攻撃表示」にすることになる為、この表示形式にはできない。またルールによるセットも裏側守備表示で行わなければならない。
理論上では「裏側攻撃表示に変更する」効果を持つカードがあれば、そちらでも裏側攻撃表示化は可能になると思われるが、当該カードが存在しない為、こちらは意味のないルールになっている。


②:効果の発動の有無は基本的に裏側守備表示と同じ状態。

裏側守備表示同様、ステータス等は非公開情報扱いなので、扱いはそれらに準ずる。
ただし、逆に効果を受ける側となると話は別。
裏側表示のカードを対象に取るカードを選ぶカードの多くは「裏側守備表示」と明記しているものが多く、除去等では《抹殺の使徒》などでしか1:1交換が出来ないなどの特徴がある為、効果に対する場持ちで言えば裏側守備表示比べると若干優っている。


③:攻撃表示だが攻撃宣言できない。

ステータスが何なのか分からないモンスターで攻撃すれば自分も相手も混乱すること間違いなしなのである意味当然の処置。
攻撃したい場合は表側攻撃表示にしてから攻撃しなければならない。
攻撃される場合もリバース扱いで表側攻撃表示にしてからダメージ計算に移る。
この時大事なのはバトルフェイズにおけるモンスターとの戦闘で裏側表示のモンスターがリバースするのは「ダメージ計算開始前」である点で、《オネスト》などの効果発動も同じタイミングで出来る。
要するに裏側攻撃表示のモンスターを相手に攻撃させても表側攻撃表示の場合と同様にそれらのカードを使って返り討ちにすることも出来る。
一見すると特に違いはなさそうだが《オネスト》などの様に特定のモンスターに対して適用する効果の場合、警戒される可能性がある為、それらを多少なりとも緩和したり奇襲性を高められるなどの運用に持ち込める。
もっとも《闇の訪れ》の場合は適用時点で相手にモンスターがバレているので実際は大きな差にはならない。


④:カードの効果によらない表示形式の変更は「表側攻撃表示」or「裏側守備表示」のどちらかを選択して実行。

モンスターの表示形式の変更はカードの効果によるものを除くと、

  • 表側攻撃表示 → 表側守備表示
  • 表側守備表示 → 表側攻撃表示
  • 裏側守備表示 → 表側攻撃表示

と言う変更パターンになっており、どの場合も変更先は1つしかないが、裏側攻撃表示の場合は2つから好きな方を選ぶことが出来る。
表側攻撃表示にする場合、モンスターの状態を表にすることで効果の発動を可能にする用途、裏側守備表示にする場合は非公開状態を維持しつつ相手からの戦闘のダメージを回避するための措置になる。

厳密に言うとこれら二つの変更は表側攻撃表示にするのは「反転召喚」の扱い、裏側守備表示にするのは単に守備表示に変更するだけで反転召喚扱いではないという違いがある。

⑤:カードの効果による「1ターンに1度」の表示形式の変更は原則テキストに従うが、「表示形式を変更する」とだけある場合は「裏側守備表示」に固定

恐らく最も勘違いしやすいルール。
《光の護封剣》・《太陽の書》のようにテキストに「表側にする」「表側攻撃表示にする」と明記がある場合はそちらに従い表示形式を変更する挙動となる。
しかし《ADチェンジャー》などのようにただ「表示形式を変更する」とだけある場合、前述の効果以外の変更と違い裏側守備表示に固定で変更されるという裁定になっている。

一見すると不可解な挙動だが、恐らく表側攻撃表示にするのは反転召喚であって表示形式の変更ではないという解釈をされた可能性がある。もしくはルール事務局の回答者が裏側攻撃表示に関する裁定を把握してなかった疑惑も。ルール上は殆ど存在しない扱いだから仕方ないね





エラッタによって裏側攻撃表示が実質廃止になった為、これらの考えを現在の遊戯王で使うことは出来なくなってしまったが、
その直接の原因はやはり「Lモンスターの登場」である(とされている)。エラッタの時期で察した人も多いだろう。

現在の遊戯王を知っている人なら分かるだろうが、Lモンスターには守備表示が存在しないため、
表示形式は理論上、表側攻撃表示と裏側攻撃表示のどちらかしか取れない。

ところがもしLモンスターを裏側攻撃表示にしてしまうと、裏側になったそのカードはルール上Lモンスターとしては扱われなくなる
つまり、この状態から他のカードの効果を受けることで裏側守備表示への変更が可能になってしまい、
何らかの理由(攻撃される、他のカードの効果を受ける)で表側守備表示になってしまうと、Lモンスターを守備表示で存在させることが可能になってしまう。

つまりこのカードで裏側攻撃表示に変えてしまうと、間接的にLモンスターを守備表示に変更することが可能になってしまうというアクシデントが起きてしまうため、そのような事態を防ぐために裏側攻撃表示の概念を遊戯王OCGから排除し、《闇の訪れ》本体もエラッタを受ける結果になったのだと思われる。

『Lモンスター以外の』と例外のみを排除する形でのエラッタや、裏側守備への変更カード同様に「Lモンスターを選べない」という裁定でも問題はなかったと思われるが、そこまでして裏側攻撃表示を守る意味も無く、むしろ『Lモンスターの実装を口実に、面倒臭いルールの例外を削除した』とも考えられる。
そもそも前述の通りLモンスター登場以前から裁定が混乱しており、普通にプレイしているだけでもルール解釈のトラブルが起きかねない点を踏まえると猶の事残したくも無かったであろうことは頷ける。
その他、古いカードに「Lモンスター」という単語を使用したくなかったという説もある…のだが、後のラッシュデュエルにて登場した《時の機械-タイム・マシーン》でマキシマムモンスターに関する処理がテキストに加筆されている*1ため信憑性は怪しい所である。少なくとも「裏側攻撃表示のためだけにそこまでする価値が無い」と見做された可能性は高い。




【余談】


  • 真DMのようなOCGルール非準拠のゲーム作品ではエラッタ後の様に裏側攻撃表示でカードを場に出し、攻撃する事も可能である。
    加えて、「ふせ」状態にすると効果モンスターの効果を再度使う事が出来る。このため、効果モンスターの能力を有効活用するにはほぼ必須とも言える立ち位置のカードであった。正直、エラッタが行われるまではゲーム版の方が非常に強かったと言えなくもない。

  • このカード自身は2002年に発売された「DUELIST LEGACY Volume.1」で再録された後、20年近くたった今も再録がなされていないため、エラッタ後のテキストのカードが存在しない。しかし、ラッシュデュエル側ではエラッタ後の効果で実装されているので、「エラッタ後のステータスがOCG以外で先に公開された」と言うかなり異質なエラッタ後効果のお披露目がなされたカードになっている。



追記・修正は裏側攻撃表示を遊戯王OCGの世界に復活させながらお願いします。


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最終更新:2025年03月07日 20:07

*1 要約するとマキシマムモードに対して発動した場合はマキシマムモードで蘇生できるという趣旨。マキシマム召喚後に破壊された所を蘇生してもマキシマムモードにならないのが基本ルールの為、例外的な挙動をさせるために追記されている