月の書(遊戯王OCG)

登録日:2025/02/09 Sun 00:12:40
更新日:2025/04/21 Mon 20:18:06
所要時間:約 8 分で読めます




《月の書》とは、遊戯王OCGに存在するカードの1つである。
初出は第2期第9弾「Pharaonic Guardian -王家の守護者-」。パッケージイラストにも描かれている。
2002年に登場した歴史あるカードの1枚である。


カードテキスト

《月の書》
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを裏側守備表示にする。

解説

「モンスター1体を裏側守備表示にする」という効果のみをもつ、シンプルな速攻魔法。
「フィールド上に裏側表示で存在するモンスター1体を選択し、表側攻撃表示にする。」という効果を持つ《太陽の書》と対をなすカードである。

遊戯王OCGでは「裏側守備表示から表側攻撃表示になることはできても、逆はできない」というルールが存在するため、
一度使ったリバースモンスターの効果をもう一度使いたい場合には重宝する。
実際このカードが登場したPharaonic Guardianは「自力で裏守備表示に戻れる効果を持つモンスター(サイクルリバースモンスター)」が初登場した弾であり、リバースモンスターも複数収録されている点からして、リバース・反転召喚時効果持ちモンスターの補助というのが、本来想定された使用方法だと思われる。


その驚異的な応用性


ところで読者諸兄はこのカードの用途をいくつ(・・・)言えるだろうか?

先のカードテキストの通り、このカードが持つ効果はたった一種類しかない。
だが、「裏側守備表示のルール上の特性」「速攻魔法としての特性」を知っていれば、その活用の幅は大きく広がる。
それらは遊戯王というゲームのルールを熟知していないとわからないものも多いので、
《月の書》の用途をいくつ知っているかが決闘者としての知識・技量を測る指標と言っても過言ではないのだ。

ここからは、その使い方について解説していくこととする。


主な使い方


その1:リバース効果の再利用

冒頭でも書いた、おそらくこのカードがデザインされた理由であろう使用法。
魔装機関車デコイチ》等のリバースモンスターは一度リバースすると自力で裏側守備表示に戻す手段がないのでリバース効果をもう使えない。
だが、このカードが手札に来ていれば話は別。
もう一度伏せることができれば、後は自分でひっくり返そうと攻撃を受けてリバースしようと効果が起動できる。


その2:「1ターンに1度」の踏み倒し

モンスターの中には、「1ターンに1度、〇〇して発動できる。××する。」といった記述を持つものがある。
パワー・ツール・ドラゴン》などがその例。
「1ターンに1度」なので一度使ったらそのターンは使用できないが、《月の書》で裏側守備表示(=非公開状態)にしてからまた表側表示にすると、もう一度効果を使うことができる。

ただし、召喚または特殊召喚したばかりのモンスターは同一ターン中の反転召喚はできないので気を付けよう。

また「このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない」と書かれている効果は、このカードで裏向きにしても再度使えるようにはならない。これは同名カードすべてにかかる制限だからである。
そういう使い方をさせないための記述とも言える。


その3:厄介なモンスター効果を封じる

遊戯王OCGにおいて、裏側守備表示のモンスターの効果は基本的に使用できない。発動する効果はその使用を宣言できず、永続効果は適用されなくなる。*1
ゆえに、厄介な効果を持つカードに《月の書》を使うことでその効果を無効にすることができる。
第2期第5期辺りでは《人造人間-サイコ・ショッカー》や《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を裏側守備表示にして処理することがしばしば見られた。特殊召喚を封じる《大天使クリスティア》も同じように対処できる。

ものによっては発動を無効にされるかもしれないが、見方を変えれば「《月の書》を囮に別のカードに使われるはずだった効果を潰した」とも言える。
例えば無効化効果を1度しか使えない《フルール・ド・バロネス》を対象に《月の書》を使った場合、バロネスが《月の書》を無効化したならそこで無効化の権利を失ってしまうし、しなければ《月の書》によって裏側守備表示にされてしまうので以降は無効化効果が使用できなくなる。
つまりどっちにしろ無効化効果を無力化することができる。
俗に「(効果を)吐かせる」と呼ばれるテクニックだが、それをカード1枚という安い消費でこなせてしまうところが《月の書》の長所である。


その4:永続効果や耐性の無効化

上記3で「裏側守備表示のモンスターの効果は基本的に使用できない」と書いたがこれは耐性系の効果であっても例外ではない

相手の効果では破壊されない」とか「攻撃力3000以下のモンスターが発動した効果を受けない」とか、あと「破壊される場合、代わりにX素材を一つ取り除くことができる」といったものでも、裏側守備表示にされてしまえば意味のないテキストと化す。

なので、《月の書》で裏側にしてやれば赤子の手をひねるように粉砕することができる。
……念の為注記しておくが、この手段で相手を突破するにはまず《月の書》の効果が通らなければいけないというのは忘れてはならないポイント。

「(魔法カードの)効果を受けない」モンスターには《月の書》を撃っても何も起こらないし、「効果の対象にならない」と記載されたモンスターにはそもそも撃てない。ルール上決して裏側守備表示になることがないLモンスターやトークンも「対象にならない」と同様で、《月の書》の対象とすること自体ができない。

また、耐性であっても「戦闘で破壊されない」に限ってはこの法則の例外となるので注意。戦闘の際にはリバースされるので、表側になって耐性が復活するからである。


その5:このターンに出したモンスターの効果を封印する

上記3の応用系。
遊戯王OCGには、「召喚・反転召喚・特殊召喚されたモンスターと攻撃宣言を行なったモンスターは、そのターンの間表示形式を変更できない*2」というルールがある。
このため、出てきたばかりのモンスターを《月の書》で裏側守備表示にしてやると、発動・適用するはずだった効果を使えないままターンを終わるか、そのモンスターを放棄せざるを得なくなるのだ。
2011年には優先権のルールが「召喚後に起動効果を発動する場合、一度優先権を放棄しなければならない」となったことで妨害としてさらに使いやすくなったのも追い風である。

むろん、次のターンに反転召喚すればまた効果を使えるようにはなるのだが、高速化した2025年の遊戯王OCGにおいては「たった1ターン動けない」だけでも致命的なリスク。
その間に制圧やワンターンキルを狙えてしまうデッキも跋扈する環境においては、時間稼ぎにも大きな意味があるのだ。


その6:このターンに出したモンスターをシンクロ素材・エクシーズ素材・リンク素材に使えなくする

S召喚X召喚L召喚をする際、その素材は「自分フィールドの表側表示モンスター」でなければならない。
つまりごく一部の例外*3を除き裏側守備表示モンスターではダメ。
複数ターンをまたいで存在しているモンスターならともかく、それがこのターンに出したモンスターだった場合表示形式を変更できないので、そうなれば素材にすること自体を断念せねばならない。

察しのいい人なら勘付くかもしれないが、この「その6」を実行したとき、同時に「その3」と「その4」と「その5」も成立している。
つまり《月の書》は、発動可能な状況なら「このターンに出したモンスターの効果を封じ、攻撃も禁じ、さらにS召喚とX召喚とL召喚の素材にすることもできなくする」効果を持つ超凶悪な妨害カードへと早変わりするのである。

ちなみに、融合素材、およびアドバンス召喚と儀式召喚のリリースに使う場合、表示形式の影響を受けない。
とはいえ「裏側守備表示の相手モンスターを融合召喚の素材にすることはできない」というルールは存在するため、《超融合》が怖い……という場合は前もって自分のモンスターを裏側守備表示にしておくのもテクニックとしてはあり。


その7:攻撃のストップ

攻撃宣言時、攻撃宣言をしたモンスターに《月の書》を使うことで攻撃をキャンセルできる。

前述の通り、裏側守備表示になったモンスターはそのターン中の反転召喚ができないので、次の自分のターンでの戦闘破壊も狙いやすい。

その8:装備カードなどとの関係断絶

裏側守備表示モンスターには原則として装備カードを装備できない。また、装備した後に装備モンスターが裏側守備表示になった場合、装備されていた装備カードは対象不在扱いで破壊される。
このため、装備モンスターを《月の書》で裏側守備表示にすることで、結果的に装備カードを潰すことができる。
アニメでは『遊戯王ZEXAL』において天城カイトがこの目的で使用し、装備カードで固めた相手の守りを崩した。

また、装備カードだけでなくモンスターに乗ったカウンターも裏側表示にする事で全て引き剝がす事ができる。
魔導戦士 ブレイカー》などカウンターを使って効果を発動するモンスターや【エーリアン】などのこちらのモンスターにカウンターを乗せる戦術のメタとしても使え得る。
カウンターと装備カードの両方を使う《ヴァレルロード・S・ドラゴン》相手に効果が通った場合はその全ての効果を失う事となる。


その9:各種状態のリセット

たとえば、フィールドに表側表示で居るモンスターに対してなんらかの効果がかかっているとする。
フィールドに存在する限り攻撃力が1900になる」とか「効果は無効になる」とか、「別のカードAがフィールドから離れた時に破壊される」とか。

実はそれらの効果は、裏側守備表示になるとリセットされてしまうのだ。
理屈としては「1ターンに1度」と同じで、「裏側守備表示になったそのモンスター、元のモンスターと同じかどうか判別つかないよね?どれがどれか区別つかないんだから、『このターンに効果を使った』とか『効果が無効になってる』とかいう情報を持つことができないよね?」というロジックである。
これを利用することで、こちらにとって不都合な効果を打ち消したり、逆に相手の有利な効果をなかったことにしたりできる。

特に素材にしたモンスターのステータスや数発動した効果で攻撃力が大きく変動する攻撃力?のモンスターに《月の書》が直撃した場合、そのあと表側表示になっても攻撃力は元に戻らない。
それまで払ってきたライフやコストはオシャカである。悔しいでしょうねぇwww
魔砲戦機ダルマ・カルマ》の項での説明がわかりやすいが、「この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される」カードと組み合わせてコンボすることもできる。*4

コントロール奪取した(された)モンスターに対する挙動はカードによって変わる。
後述の「勘違いしやすい裁定」を参照のこと。


その10:表側表示・攻撃表示のモンスターに及ぶ効果の回避

破壊輪
通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手ターンに、相手LPの数値以下の攻撃力を持つ相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターを破壊し、自分はそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。
その後、自分が受けたダメージと同じ数値分のダメージを相手に与える。

遊戯王OCGにおける効果テキストは基本、上記のように、発動条件適用される効果が分けて記載されているのが特徴。
だが、例に挙げたこのカード、適用される効果の側で「表側表示モンスター」であることを指定している。
つまり、これより後にチェーンして《月の書》を撃って「その表側表示モンスター」が不在となった場合、その後の効果処理はキャンセルされる。

「表側表示の」と明記されていなくても、効果処理時に表側でないと分からない情報を参照する効果も同じように回避できる。例えば攻撃力を参照する《爆撃獣ファイヤ・ボンバー》や《黒い旋風》などが該当する。

攻撃表示でもなくなるため、攻撃表示のモンスターに及ぶ相手の効果から自分のモンスター1体を守ることもできる。
単純な除去系カードであればかつてならば《聖なるバリア −ミラーフォース−》、12期現在では《ライトニング・ストーム》が主なケース。
奈落の落とし穴》は効果処理時にも破壊するモンスターの攻撃力を参照するテキストのため、こちらも除去から守ることができる。

なお、発動条件で表側表示を指定しているかどうかはこの法則に関係ないので注意。
参照するのは、あくまでも適用される効果側にこの系統の記述があるかどうかである。

その11:発動した効果の無効化からの防護

その10から発展したテクニックで、《月の書》は速攻魔法なので、たとえば表側表示のカードの効果を無効化する《無限泡影》で相手から効果を無効にされそうな場合、それにチェーンして《無限泡影》を受けるモンスターを裏側守備表示にすれば効果が無効にならずそのまま適用できる
裏側守備表示の時にできないのはあくまで「プレイヤーがそのモンスターの効果を発動させること」。すでに発動している効果なら、裏側守備表示になろうとフィールドを離れようと無効になどならないのだ。

関連して表側表示に対する永続効果を回避しつつ効果を通す事にも使える。有名なのが表側表示のモンスターの効果を無効化する《スキルドレイン》対策。
《スキルドレイン》下でも効果発動は可能であることを利用して効果発動→発動した自分のカードに《月の書》とすることで効果処理時に裏守備となっているため《スキルドレイン》をすり抜けて効果を通すことが出来る。

そして、特筆すべきは、この発動した《月の書》に更にチェーンされてその発動効果へ効果無効を重ねられても発動した最初の効果は無効にはならないということ。
具体的なところを《スクラップ・コング》《無限泡影》を使って例えよう。

1.《スクラップ・コング》を召喚、召喚時に自己破壊効果が発動
2.相手が《スクラップ・コング》に《無限泡影》を発動。1を無効にしようとする
3.こちらが《月の書》で《スクラップ・コング》を裏側守備表示にする
4.相手が《スクラップ・コング》に向けて2枚目の《無限泡影》を発動する

この場合、4で発動した《無限泡影》により《スクラップ・コング》の効果はしっかり無効になる。
……のだが、その直後、3で使用した《月の書》の効果で《スクラップ・コング》が裏側守備表示になるため、「その9」の理屈により、《スクラップ・コング》の無効化状態がリセットされる
その次に2の《無限泡影》の効果が適用されるのだが、《スクラップ・コング》はもう既に裏側守備表示なので無効化が効かない。
そして最後、1の《スクラップ・コング》の効果が通常通り処理され、コングは自らの効果によって爆死する。

という感じ。わざわざ《無限泡影》2枚を使ってまで《スクラップ・コング》ごときを止めようとする奴はいない、というツッコミは無粋である
早い話が、《月の書》をチェーンのどこかに撃てさえすれば、その発動順がどこであろうと無効化効果を回避できるのだ。
相手側は止めたい効果へ複数回効果無効を重ねるのではなく、止めたい効果と《月の書》をそれぞれ止めないといけないのだ。


その12:(裏側)守備表示対策カードとの組み合わせによる除去

現代の環境では滅多に見ることはないが、「ミスティック・ソードマン」や《抹殺の使徒》、《シールドクラッシュ》といった(裏側)守備表示の除去カードを攻撃表示モンスターへ適用させることができるようになる。
『遊戯王デュエルモンスターズGX』の《岩の精霊 タイタン》が使用した際には裏側表示モンスターへ攻撃する際に攻撃力が変化する《八つ手サソリ》とのコンボを披露した。


その13:戦闘の補助

単純に、攻撃力より守備力が低い相手モンスターを守備表示にすることで、戦闘破壊しやすくする。
逆に守備力より攻撃力が低い自分モンスターを守備表示にすることで、戦闘破壊されにくくする。

攻撃力も守備力もどちらも高いモンスターというのはそう多くない。
《ヂェミナイ・エルフ》や《デーモンの召喚》など、Vol.シリーズの頃からアタッカーとして活躍しつつも、守備表示ならばリクルータークラスの攻撃力でも戦闘破壊できるモンスターはそれなりに多かった。


その14:戦闘ダメージの軽減

自分の攻撃表示モンスターがより攻撃力の高い相手モンスターに攻撃されたとき、相手モンスターに《月の書》の効果を適用できない場面でも、自分のモンスターを守備表示にすれば*5戦闘ダメージを0にできる。


その15:自分ターンならフリーチェーンで手札から発動できる

ここまでの総括と言っていい重要項目。対象にできるモンスターさえいればダメージステップ以外いつでも発動ができるため、
不意の妨害や除去からの回避、突然特殊召喚されたモンスターへの妨害、表示形式変更による戦闘補助などを完全なフリーチェーンで行えるのは2025年現在でもかなり貴重な存在である。
自分ターンなら手札からの奇襲として、伏せておけば妨害になるというマルチに使える利便性は他の速攻魔法と比較しても群を抜いて高い。


勘違いしやすい裁定

罠モンスターに《月の書》を使ったら?

罠カードとしても扱うタイプなら魔法・罠ゾーンにセット、扱わないならモンスターゾーンでセットされる。
なお、罠カードはセットされたターンには発動できないため、《月の書》でセットされたターンに再発動することはできない*6
モンスターゾーンにセットされた場合は、そのターンに特殊召喚されていないのであれば、そのターン中に反転召喚が可能。
なお、モンスターゾーンでセットした後リバースしたら、「この効果で特殊召喚したこのカードは」という効果が無効でそれ以外の情報が据え置き。
具体的なところで例を挙げると、バージェストマ罠モンスターの耐性はなくなるが、《幻影騎士団ウロング・マグネリング》の効果は保持される。


Lモンスター・トークンを対象に取れる?

Lモンスターやトークンはルール上裏側守備表示が存在しないため、いずれも対象に取ることできず発動自体が行えない。


「魔法カードの効果を受けない」モンスターを対象に取れる?

魔法カードの効果を受けない《ホルスの黒炎竜 LV6》などは、あくまでも魔法カードの効果を受けないだけであり、対象に取ることは問題なく行える。

一方で、《オベリスクの巨神兵》など「このカードを効果の対象にできない」という効果を持つモンスターに対しては、Lモンスター同様に発動自体ができない。

魔法カードをあえて墓地に送りたい時には重要なテクニックとなるので覚えておくと良いだろう。


コントロール奪取をした(された)モンスターに使ったら?

コントロール奪取をしたという情報に関しては、コントロールできる期限などで挙動が変わる。
《大捕り物》などのコントロール奪取の期限が設定されていないカードの場合は効果の関係が切れ、コントロール奪取状態が解除される*7
強奪》などの装備魔法カードは裏側守備表示になることで対象不在扱いで破壊され、「コントロールを得る」の効果も解除されて結果的にコントロール奪取は解除される。
上記2つはかつては「関係性は切れるがコントロールは奪えたまま」という裁定だったが2024年ごろに現在の処理に裁定が変更された。

一方で、《エネミーコントローラー》や《心変わり》などのコントロールの期限が設定されたカードの場合は裏側守備表示になった時点では解除されず、設定された期限*8に持ち主のフィールドに戻る。



採用率の推移

2025年現在の大会環境における《月の書》の採用率は低い

前述してきた用途は現在でも軒並み有用なものであり、非常に汎用性の高いカードであることは間違いないのだが、いかんせん「モンスター1体に干渉するだけの速攻魔法」という時点で、かなり分が悪い
「伏せたり自分のターンが来たりしないと使えないなら手札誘発で良い」だとか「それ入れるスペース使ってより安定して強固な盤面を作れるようにした方がいい」というのが現実なのである。
また、フリーチェーンでかつ「モンスター1体にしか効かない」という問題を乗り越えられる、デメリットは厳しいが踏み倒せなくもなく1枚で全モンスターを裏側守備表示にする《皆既日蝕の書》や、罠カードだが同様の役割に加えて完全耐性持ちモンスターの除去すら可能な《魔砲戦機ダルマ・カルマ》、フリーチェーンではないものの全モンスターを裏側守備表示にしてリバースまで封じる《闇の護封剣》といった対抗馬も存在する。

こう書くと箇条書きマジックで騙したようにも見えるかもしれないが、あくまでインフレに置いていかれ気味なだけであり、
全体除去カードの規制が厳しく、今ほどゲームスピードが速くなかった2005年~2015年の10年間は制限カードと準制限カードを何度も行ったり来たりしており、長きにわたってカードプールにおいて一定の存在感を示し続けた
GOLD SERIES』や『THE RARITY COLLECTION』といった「人気の高いカードを収録した再録パック」に複数回収録された経歴もそれを裏付けているだろう。
《魔砲戦機ダルマ・カルマ》は「《サンダー・ボルト》が準制限、《ブラック・ホール》が無制限」「破壊耐性・効果対象指定不可を持つカードが珍しくない」という、《月の書》登場当時からすれば考えられない程のインフレが進んだ21年も後に出現した「令和の環境に対応した新時代の全体除去カード」というべきものであり《月の書》より高性能で当然である。
《皆既日蝕の書》は登場当時(S召喚導入直後)のゲーム速度ではデメリットの踏み倒しが期待し辛く、「ドロー効果を逆手に取ったデッキ破壊」「リバースモンスターと《カオス・インフィニティ》《W星雲隕石》といった全体リバース効果を持つカードを組み合わせてリバース効果を一斉に再起動させる」「守備表示モンスターの除去カードと組み合わせる」などコンボ用カードと見做されており、大方の評価としては《月の書》の上位版という位置付けではなかった。
《闇の護封剣》は自分のターンでしか使えない永続魔法なので役割が異なり唯一性も高かった。
発動条件もデメリットもなく、攻勢でも守勢でも使用可能という多用途性を持つ《月の書》が制限指定されるのも当然というものである。
そもそも、20年以上も前に出たノーマルカードが未だに「一定の存在感を放っている」だけでもかなり凄い部類であるとご理解いただきたいところ。

N・グラン・モール》よろしく「今や最高峰のカードではなくなった」というだけで弱体化した訳ではないので、これに警戒するのを忘れた相手に突き刺さる場面もあるだろう。
主に対象無効に弱く、かつ自分フィールドのモンスターが裏守備になっても展開に問題の出ない融合・儀式・アドバンス召喚系のデッキ、例えば【ふわんだりぃず】や【粛声】が自身のモンスター保護兼妨害として採用しているケースがある。


アニメでの活躍

アニメでも度々使用されているが、特に有名なのが上述した『遊戯王ZEXAL II』105話、カイトVSジンロン戦。

ジンロンは先攻1ターン目にして、自分の場に他のドラゴン族モンスターが存在する限り攻撃と効果の対象にならず、
相手のドラゴン族の効果を無効化する《No.46 神影龍ドラッグルーオン》と、自場の装備魔法の破壊を防ぐ《武装神竜プロテクト・ドラゴン》を並べ、
更に《武装神竜プロテクト・ドラゴン》に戦闘・効果破壊耐性を付与する装備魔法《ドラゴン・シールド》を装備させるという鉄壁の布陣を敷く。
「《武装神竜プロテクト・ドラゴン》を退かさなければ《No.46 神影龍ドラッグルーオン》は倒せない」「しかし《武装神竜プロテクト・ドラゴン》と《ドラゴン・シールド》は互いを守り合うため破壊は不可能」「《銀河眼の光子竜》の効果なら突破できるが《No.46 神影龍ドラッグルーオン》に無力化されている」というロックに対し、

「キサマは破壊不能の鉄壁を築いて俺がその前で途方に暮れる姿が見たかったのだろうが……」

「その鉄壁ごと吹き飛ばしてやる!」

ここでカイトが打ち出した対抗策がなんと《月の書》
《武装神竜プロテクト・ドラゴン》が裏守備となったことで《ドラゴン・シールド》は効果対象を失い消滅、耐性も無くした《武装神竜プロテクト・ドラゴン》は銀河眼で粉砕されたのだった。

カイトの使用法は極めて理に適った実戦的なものであり、しかも装備魔法を無理矢理剥がすという応用まで披露しているため彼のデュエリストとしての実力の高さを示す描写には違いないのだが、
105話が放送されていた当時の2013年3月のレギュレーションでは《月の書》は制限カードに指定されていた当時の一級ガチカードであり、そんなものが突然飛び出したことに視聴者からは驚愕の声が多数上がっている。


それ以前ではGXにてオージーン王子や上述した岩の精霊の方のタイタンが使用。
また直接の使用場面は無いが、《一撃必殺!居合いドロー》を使用する橘一角のデッキに《太陽の書》とセットで投入されていることが確認できる。
居合ドローの補助と思われるデッキトップ操作能力や、失敗時の再挑戦目的と思しき墓地のカードをデッキに戻す効果を持つリバースモンスター《大王目玉》《デスグレムリン》も投入されているためその補助が目的と推測される。





関連カード

「モンスターを裏側守備表示にする」というカードはそれなりに多い。
全部書くとキリがないので、ここでは似たような効果の「○○の書」のカード名を持つカードや明らかに《月の書》を意識しているカードを紹介する。

《太陽の書》
通常魔法
フィールド上に裏側表示で存在するモンスター1体を選択し、表側攻撃表示にする。

《月の書》の同期。前述した通り、《月の書》とは真逆の効果を持つ。
ただし、こちらは通常魔法であるうえ「裏側守備表示→表側攻撃表示」という動作自体にも《月の書》ほどの汎用性はない(セットしたターンでも使用できる点はコンボ的には活かしやすい)。
リバースモンスターを裏側表示で出した後、すぐに効果を発動させるのが主な使い方。
なお、英語名は《Book of Taiyou》。なぜそこだけ日本語……。


《生者の書-禁断の呪術-》
通常魔法
(1):自分の墓地のアンデット族モンスター1体と相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
その自分のアンデット族モンスターを特殊召喚する。
その相手のモンスターを除外する。

アンデット族のサポートカード。《太陽の書》と共に、《月の書》の同期。
他の書物カードとは違い、表示形式に関する効果はない名前だけの関連カードだが、イラストは似通っている。
なお、《太陽の書》と《月の書》は初登場時はノーマルだったのに対し、こちらは スーパーレア だった。


《月読命》
スピリット・効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻1100/守1400
このカードは特殊召喚できない。
(1):このカードが召喚・リバースした場合、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動する。
そのモンスターを裏側守備表示にする。
(2):このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。
このカードを持ち主の手札に戻す。
《月の書》から約1年後に登場した一枚。月を司る神様が元ネタであり、《月の書》を意識された効果となっている。
タイミングは限定されるが使いまわせる疑似《月の書》としてスピリットモンスターの中でも特に知名度が高い。
高い汎用性から一時期は禁止カードにまで上り詰めたが、環境の変化によって制限緩和され、2025年現代は無制限カードとなっている。


《皆既日蝕の書》
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズに、相手フィールドの裏側守備表示モンスターを全て表側守備表示にし、
その後、この効果で表側守備表示にしたモンスターの数だけ相手はドローする。

THE DUELIST GENESISで登場。
フィールド全体が対象で、対象を取る効果への耐性持ちにも効くため、《月の書》以上に効果はあるが、自分フィールド上も対象であり、裏から表にした分だけ相手にドローさせるという重すぎるデメリットがある。
登場から長らくは、「そのデメリットをデッキ破壊方面で活かす」などコンボ用として使われることがほとんどであり、独自の強みはあるが扱いにくい玄人向けのカードとして認識されていた。
しかし、エンドフェイズ前に裏側表示のモンスターを処理すれば(もしくはゲームエンドに持ち込めば)デメリットを踏み倒せるため、「自分ターンで相手モンスター全てを無力化した」なら後は基本やりたい放題な現代のゲームスピードにおいて後攻向けの捲り札として再評価されることとなった。
サンダー・ボルト》や《ライトニング・ストーム》などの全体除去カードと比較すると、破壊耐性持ちや墓地効果持ちに対して刺さるのが強みである。


《皆既月蝕の書》
速攻魔法
(1):手札を1枚捨て、フィールドの表側表示モンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスターを裏側守備表示にする。

LIGHTNING OVERDRIVEで登場。
対象が2体になった代わりに、手札コストを要求。必ず2体を選ぶ必要がある点もネック。
《皆既日蝕の書》のデメリットを嫌う場合、こちらを使うこともある。
なお、日本ではノーマルだが、海外では シークレットレア(プリズマティックシークレット) にまで格上げされた。


《サン・アンド・ムーン》
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分及び相手フィールドのモンスターを1体ずつ対象として発動できる。
そのモンスターそれぞれに、その表示形式によって以下の効果を適用する。
●表側表示:裏側守備表示にする。
●裏側表示:表側守備表示にする。

《太陽の書》と《月の書》がセットになった速攻魔法。太陽と月の印字を合わせても爆発したりはしない。
モンスター1体を表側守備表示に、もう1体を裏側守備表示に……する必要はなく、必ずその時と違う表示形式に変更できる。
要は、2体を同時に裏側守備表示にしてもいいし、その逆もいいということ。
ただし、お互いのフィールドから1体ずつ選ばなければいけないという制限があるため、どちらかのフィールドが空だと使えない。
盤面をあまり動かさずゆっくりじっくり制圧していく【エルドリッチ】や、リバースに意義のある【シャドール】向けのカードだろう。
ポケモンは関係無いはず……だが「サン・アンド・ムーン」で検索するとあちらの方が多く引っかかるので検索する際には「遊戯王」などの単語を入れておこう。


《ウラの書》
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するリバース効果モンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。

アニメオリジナル表裏徳之助が使用。
通常魔法かつ対象も指定されていると、セットしたターンに使える点以外は《月の書》の完全な下位互換である。

2025年4月現在はOCG化されていない。





追記・修正は、反転召喚した《メタモルポット》を《月の書》でセットした後、もう一度反転召喚しようとしてジャッジに注意されてからお願いします。

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最終更新:2025年04月21日 20:18

*1 ただし、極まれに「裏側守備表示のこのカード」という形で使えることが明記されているものもある。2024年時点では《天照大神》や《機怪神エクスクローラー》の2枚。

*2 厳密には「変更する権利がない」。効果で表示形式を変更できるカードがあれば対策は可能。

*3 裏側表示の「ゴーストリック」モンスターをリンク素材にできる《ゴーストリック・フェスティバル》。

*4 これまた面倒なポイントだが、《カッター・シャーク》などに見られる「効果を発動できない」という表記の場合はこの方法を用いても制約を踏み倒せない。「発動できない」はモンスターではなくプレイヤーに対しての効果であるため。

*5 相手モンスターに貫通効果がない限り

*6 《王家の神殿》などの効果適用中の場合は発動可能。

*7 コントロール奪取時に付与された「攻撃できず、効果を発動できない」等の制約も解除される。

*8 上記の例ではエンドフェイズ