旧I水門の霊/月蝕尽絶黒阿修羅

登録日:2021/09/15 (水) 03:47:40
更新日:2025/05/03 Sat 15:24:54
所要時間:約 4 分で読めます






おかあさん……いっぱい……。

みんな……にくだんご……。



概要

『旧I水門の霊』とは『ダークギャザリング』に登場する幽霊

CV:織田(おだ)碧葉(あおば)

東京都のSランクの心霊スポット『旧I水門』をテリトリーとする少年の悪霊。
風貌は血涙に加え口・鼻からも血を垂れ流し、上半身に無数の刺し傷が残るボロボロの少年。
年齢は不明ながら、「漢字が書けない」「夜宵(9歳)「あの子」呼ばわりされる」等から、かなり幼いことが予想されていた。
後に作者の質問回答によると、1988年4月20日~1992年7月10日。享年4歳。106㎝。A型。

義母に虐待され、最期は旧I水門で滅多刺しにされ殺された挙句、遺体を解体され水門に捨てられたことで義母への憎悪に染まり、悪霊化。
慢性的な飢餓に苛まれてしまっている上に目に映る全ての者が義母に見えてしまい、どれが義母か分からないため憎悪のままに義母に見える人を手当たり次第に殺しまくるようになってしまう。
しかし本当の義母を殺害できていないため、成仏はできていない。
エネルギーを多大に消耗すると、飢餓や憎悪も薄まるのかようやく義母以外の者を正常に目視出来るようになるが、これもあくまで一時的なものでしかない。


劇中では手始めに「スケッチブックの呪い」で闍彌巫子を一蹴し、戦闘形態に移行した段階で魄啜繚乱弟切花魁と衝突。
パワーでは花魁を上回るも、手数の差と回復力の差で押され、最後は多重呪詛により極限まで衰弱したところでライオンのぬいぐるみに封印された。
無関係な人間を殺し続けたという点では許されないが、その境遇から情状酌量の余地があると判断され、比較的温情ある封印となった。
その際、「味方と思われなくても敵ではない事」の証明として、夜宵からスケッチブックを返却されている。

また……みんな……おかあさんにみえちゃう……まえに……。

封印後は夜宵から『月蝕(げっしょく)尽絶(じんぜつ)黒阿修羅(くろあしゅら)』の諱を与えられた。解放のための言霊は()たして」
封印後も全て義母に見えるという欠点は変わらなかったため、特定の香水の匂いを「味方」と覚えさせることで敵味方識別を可能にした。
これにより、事前に香水を身にかける手間こそあるものの、味方への被害なく使役できるようになった。


性格

一人称は「僕」
憎悪に染まった悪霊と化してしまったが、本来の性格は歳相応に純真。
絵を描くのが趣味のようだが幼いためあまり絵は上手くない。
感性も外見相応で、夜宵とのデザイン談義の果てに決まった『殲』のビジュアルに無邪気に喜ぶ可愛らしい一面も見せる。

一応封印前の段階でも理性的な部分はあり、日中は姿を隠しているが夕暮れになると活動を開始し始め、夜になるまでは殺戮を行おうとはしない最低限の分別は持っていた。
封印後は義母への憎悪を除けばかなり温厚になっており、出来る限り自分の呪いを周囲に振り撒きたくない想いから降霊には気乗りしていなかった様子も見受けられる。
事実、夜宵は京都心霊スポット巡り2日目の時点で、過渡期の御霊や千魂華厳自刃童子と同様に、厳重な封印が施されてないぬいぐるみのまま持ち歩いている。
自らを封印した夜宵達には非常に友好的で、シシムラ様との戦いで降霊に乗り気になったのも「僕が我慢をやめたらお姉ちゃんは助かる……?」という仲間への気遣いによるところが大きい。

なお単行本おまけによると夜宵と少年霊との『殲』のデザイン会議は難航したようで、
70回に及ぶ少年霊側からの描き直しリテイクの末に現在のビジュアルを少年霊が気に入り現在の姿になったという。


過去

父子家庭で生れ父と二人だけで生活していた。
そんなある日、父親が新しい母親と再婚したのだが、この女はとんでもない外道であり、父がいない時は少年を虐待していた。
暴力は当たり前で、それどころか少年をベランダに押し出し食事を満足に与えなかった。
少年は父を悲しませたくないため、自分と義母を「仲良し」と偽り虐待を誰にも伝えなかった。

義母は少年を虐待するだけに留まらず間男と浮気しており、少年をベランダに押し出し部屋で致しまくる始末。
当然そんなことをしていれば父親に気付かれない訳がない。
運悪く浮気の真っ最中に父親は帰宅し間男と口論。喧嘩の末に間男に殺される

父親の遺体は風呂場で解体され肉団子にされた
ベランダにいて幼かった少年は父親が何をされているか分からず、餓死寸前だったこともあり義母に捨ててくるように言われた肉団子を食べてしまう。

さらに義母は間男を殺害し、少年は怖くて逃げだしたが水門で義母に捕まってしまう。
そして包丁で滅多刺しにされて殺されたあげく肉団子にされ、水門に捨てられた。

幽霊となった少年は自分が食べた肉団子の正体に気付き、父親への懺悔と義母への凄まじい憎悪で悪霊化してしまった――

おかあさん、ゆるさない。

おかあさんがいっぱいいます。
いままでおかあさんじゃなかったひとがおかあさんにみえます。どうしよう。

みんな、にくだんごにしよう。

以後、少年は螢多朗に「理解や同情を求めるのではない、純粋で無差別な憎悪の発露」と形容される負の感情のまま、水門の地縛霊となって殺戮と捕食を繰り返すようになる。


能力

大まかな能力は下記の通りだが、これ以外にも
  • 念動力で夥しい数の手を具現化して標的を捕らえたり、首を絞めて首吊りを起こさせる
  • 水門周辺の水位を増大させ念動力の腕で動きを封じた相手を溺れさせる
  • 分霊を利用して生前の家の浴室を模した極小サイズの異界を作って標的を閉じ込め殺害する
といった芸当も扱える強豪。
加えて日中であっても気配を隠し、空気中の水分と光の屈折を利用して、霊感の有無に関わらず目視可能かつ非常に精巧な「生前の自分そっくりの虚像」を物理的に作り出して他者を欺く。
この状態は形態分類において「第一形態『(じょう)』」に該当する。

封印前の段階ですら「Sランクの中でも群を抜いて強い」と称されただけの格を持ち、現在登場している数多の悪霊の中でも頭ひとつ抜けて多芸。
中でも光の屈折を利用した虚像の作成や、分霊を利用した極小規模の幽世の形成といった小技は少年霊しか行っていない。
能力的にも境遇的にも殉国禁獄鬼軍曹は天敵だが、鬼軍曹は子供に手出し出来ない善霊のため少年とのバトルでは使われなかった。

封印後はスケッチブックによる筆談での意思疎通に成功し、元から理性的だったこともあり夜宵から戦術や敵味方の識別法等の入れ知恵を受け入れて成長。
結果、能力のコントロールが利くうえに封印前より格段に強力な、卒業生含む手持ち最強のSランクを超える悪霊と夜宵が太鼓判を押す存在に至った。

スケッチブックの呪い

攻撃と捕食がワンセットになった呪い。少年を象徴する霊現象。
スケッチブックに描かれた対象の体を黒く塗りつぶすことで、対応する部位が球状に削り取られてその質量が同量の肉団子に変換。
その為無闇に突っ込むと少年霊の思う壺となる恐ろしい技で、熟練の霊媒師でさえ殺せる。
少年霊は手元のタッパーに出現した肉団子を捕食することで、傷を癒すだけでなく自己強化も出来る。
簡潔に言えば、HP回復&能力強化アイテム生成とセットの遠隔即死攻撃
単純な攻撃力で見れば、遅効性の『首を切断する呪い』がメインの千魂華厳自刃童子の上位互換である。
また「描く」と書いたが厳密には「念じることで標的の姿をスケッチブック上に転写する」といった方が正しく、手を動かさずとも絵が描かれ呪殺が成立する仕組み。
なので速効性も高く、スケッチブックに描かれてさえいれば一度に大多数の標的を纏めて呪殺する真似もできる。

『身代わり』という防御手段が使えない悪霊達にとっては特効とも言える性能を持ち、
呪いの起点であるスケッチブックを少年の手から落とすなどして対処しないかぎり解呪はされず、『卒業生』ですらワンサイドゲームで終わらせられる凶悪さを持つ。
作中ではテレビ出演していた有名霊能力者(ちゃんとした実力者)でも手も足も出させず瞬殺した。

唯一の欠点はスケッチブックが少年の手元になければ呪いが発動できず、スケッチブックを捨てさせられれば即死の呪いからは一時的に逃れられる。
物理攻撃判定なので無限修復人形の防御効果の範囲内なのも攻略時の鍵となった。

  • 第二形態『(けつ)
スケッチブックの呪いを行使する際の姿。
ビジュアルは目や口から血を垂れ流し、胸に死因となった無数の刺し傷が刻まれた痛ましい姿。
悪霊としての本領を発揮するための攻撃形態とも言え、スケッチブックの呪い以外にも念動力の手や川の水位の操作、分霊の使役など多彩な技も行使できる。
作者の解説によると念動力のよる無数の手は『救いを求める思念』の具現化とのこと。

戦闘形態化

スケッチブックを失った少年霊の本気の戦闘形態。
後の形態分類においては第三~第五形態に該当。

全身のパーツがバラバラに離れた*1のち紫に染まった念動力の手をパワードスーツの様に全身に纏い、4本の伸縮する巨腕を生かしたフィジカルファイターに変貌。
超硬度+超高速の伸縮を有する巨腕を得た結果、攻撃力の大幅な増加のみならず、握った部位を削り取り肉団子に変える能力も持ち合わせる。
反面、不可視の攻撃ではなくなったのと、腕が届くまでの距離にしか攻撃できないという欠点も生じている。

なお、戦法は変わらないもののそれぞれの形態で外観に差があるのも特徴。

  • 第三形態『(てん)
初お披露目の際の姿。
体に巻き付いた腕の形状がホースか縄のように丸くなっている。全体的に曲線で構成されつつも、巨碗の指先だけ硬質なデザイン。

  • 第四形態『(ごう)
魄啜繚乱弟切花魁の呪いを第二段階まで喰らってしまい、弱体化を補うべく周囲の浮遊霊を手当たり次第に喰らって自己強化を果たした姿。
巻きついた腕が包帯のように変化し巨腕は肘の辺りまで太く肥大化。同時に巨碗部分は全体が角ばった硬質な造形に変化している。

  • 第五形態『(こく)
魄啜繚乱弟切花魁の四肢の肉を喰らい、更なる自己強化を果たした姿。捕獲前の時の最終形態。
膝までを覆うスカートのような部位に加え、両肩には体の帯と同じ素材でできた大きく開けた口だけのある顔が追加。後に授かった名に見合う阿修羅めいた風貌となる。
また、全身が角ばったロボット寄りの造形となった。
作者の解説によると4本の腕と2対の頭は自分が助けを望んだ相手である『本当の両親』を形にした物だという。


第六形態『(しょく)

夜宵との交渉の結果会得した新たな形態。
念動力の手で自身の周囲を覆い球状の黒い外殻を形成。中に入ったまま空中に浮かび、スケッチブックの呪いによる遠隔呪殺を行う攻防一体の能力。
香水による敵味方の識別が可能となっただけでなく、水門時代と比べて格段に攻撃力が増した上に生半可な攻撃で外殻は壊せないので、味方に誤射することなく一方的に敵を皆殺しにできる。

第七形態『(せん)

上記の『蝕』も繭に過ぎない。
外殻の中でエネルギーを溜め込み、『蝕』の外殻が破られるとこの形態へと移行。第3~5形態と同じく戦闘形態の外殻を身にまとう。
『哭』の発展系とも言うべき外観だが、戦闘ロボットめいた造形になった頭部や胸部、
拳部分を除く6本腕や腹部~膝辺りなどの各所が液体金属のようになっている外殻、体の各所に走る白く輝くラインなど相違点は多い。
顔や胴体まで巨腕と同じような硬質素材になっている点に着目すると、ネクロズマめいてもいる。
ぶっちゃけ元ネタを知らずに初お披露目の見開きを見て、これが悪霊だと分かる人がいないと思う位には造形がカッコよすぎる。

パワードスーツのようだった以前までの形態とは違い、スケッチブックを持ったまま胸部外殻へロボットのように乗り込む事で、第六形態の攻防力を保持しつつ機動力も確保。
さらに外殻も液状金属のようになっていることで剛と柔を併せ持つ防御を会得した現段階における最強形態。
夜宵曰く「万物を滅する殺戮の陣」

また外殻の一部を液体化したことで、スケッチブックの呪いを極小化した『触れると消滅する雨』という新たな呪いを得た。
これまでのスケッチブックの呪いは、
「相手を認識する」→「スケッチブックに絵が描かれる」→「呪い発動」
という工程を挟むため、ワンテンポ遅れていた。
しかし呪いを雨にする事で、テンポの遅さと攻撃範囲の狭さの克服に成功。
これに加えて通常のスケッチブックの呪いによる不可視攻撃や、外殻の巨腕による格闘攻撃&消滅握撃も支障なく繰り出せるため、従来とは段違いの攻撃力と手数を誇る。
欠点として、呪いの雨で攻撃範囲が広くなったぶん対象指定攻撃ではなくなったので、味方も呪いに巻き込んでしまう
劇中では身代わりを常に用意している夜宵たち3人に影響はなかったが、逆に言えば身代わりを持たない味方がいる際は呪いの雨が使えない。

――ここまでの戦闘力を得ていながら、黒阿修羅が乗り込んだ戦闘形態は遠隔操作で動く囮
実は乗り込んでいる黒阿修羅は見せかけだけの分霊であり、本体は安全圏に隠れて外殻を操りながら各種呪いも用いて攻撃するのだ。
さらに乗り込まずに動かせる点を活かし、油断した敵を外殻の巨腕で握り潰すという奇襲戦法にも利用できる。
もともと本体が気配を消すのが上手い点も相まって、シシムラ様ですら決着の直前まで気付かないほどの隠密性能を誇る。
だが相手の実力次第では通用せず、太歳星君には 「見える奴には力の流れが丸見えだ。もう少し隠せ」 と容易く本体の位置を見破られている。

なお潜伏方法は戦闘ごとに異なり、初お披露目のシシムラ様戦では呪いの雨で濡らした水面*2に隠れている一方、太歳星君戦では破壊され山になった『蝕』の外殻の中に終始身を潜めていた。
潜伏のバリエーションを増やす意図があるのか、水面に隠れるには条件があるのかは今のところ不明瞭な点である。*3

この形態を手に入れた結果、黒阿修羅は貞観和尚から神霊と評されるほどの領域に足を踏み込むことになった。


ステータス

レベル:60
タイプ:ゴーストエスパー

うっかりやな性格。
旧I水門でレベル60の時に出会った。
お絵かきが大好き。


余談

  • 旧I水門の元ネタは旧岩淵水門。
  • 「全てが母親の顔に見えて襲って来る」という点において、バイオハザードのクリーチャーとの類似点が見られる。
    一方でこちらは実母ではなく継母に対する憎悪で、あちらは母親の元に顔を戻したいという思慕で襲い来る点で異なっている。
  • 声優に抜擢された織田碧葉氏は、担当当時何と弱冠12歳の子役。
    知名度は低いが主にディズニー系の劇場版アニメ・洋画・海外ドラマの吹き替えを担当している。
    キャスト陣はガチの子役が演じると聞いて「許されるの?」と戦慄したという。



追記・修正はスケッチブック片手に肉団子を食べながらお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 旧I水門の霊
  • ダークギャザリング
  • 幽霊
  • 悪霊
  • 怨霊
  • 犠牲者
  • 子供
  • 復讐者
  • スケッチブック
  • 旧岩淵水門
  • 夜宵の手持ち
  • 水門
  • 肉団子
  • 月蝕尽絶黒阿修羅
  • 神霊
  • エスパー
  • ゴースト
  • カニバリズム
  • 人肉
  • 食人
  • 地縛霊
  • 織田碧葉
  • 悲しき過去
  • 被虐待児
  • 虐待
  • 加害者にして被害者
  • 形態変化
最終更新:2025年05月03日 15:24

*1 よく見るとただばらけた訳ではなく、断面同士が1本の霊力の糸で繋がり人の形は維持している。本体自ら近接戦闘を仕掛けるにあたり、身長・体格を大人に近づける意図があるのだろう。

*2 分霊だと判明してから姿を見せる本物が水面に映った逆さの状態であるほか、種明かしの回想場面を良く見ると最初は『蝕』の外殻に隠れつつ、雨で濡れた地面に爪先が沈み始めている描写がある。

*3 状況に違いはあり、シシムラ様戦では『殲』に移行後その場で雨を降らせたのに対して、太歳星君戦では『殲』になってすぐ自刃童子護衛のために太歳星君を追ってから雨を降らせた結果、『蝕』の外殻(本体)は雨の範囲外にあった。