杉元佐一

登録日:2022/07/19 Tue 01:35:26
更新日:2025/03/06 Thu 17:18:31
所要時間:約 8 分で読めます







殺してみろッ!

俺は不死身の杉元だ!!



杉元(スギモト)佐一(サイチ)は、『ゴールデンカムイ』の主人公。

CV:小林親弘
演:山﨑賢人


日露戦争上がりの元・陸軍軍人で、戦場ではその鬼神のような戦いぶりと、瀕死の重傷を負っても持ち直す異常な回復力により、銃剣でも機関銃でも砲弾でも殺せない「不死身の杉元」と呼ばれた。
それを証明するように顔と体中には数えきれないほどの傷跡が残っている。
本来なら勲章を貰えるほどの戦いぶりだったが、気に入らない上官を半殺しにして無しになってしまったらしい。
なお、殺した人間の事は顔まで全て覚えているとのこと。殺した事に後悔はないが、せめて覚えていてやるのが供養と思っている様子。

除隊した今も基本的に軍服と軍帽姿で、マフラーを巻いているのが特徴。
軍帽は風呂の時でも取らず(初期は取っていた)、常に軍帽を被ったままでいる。

顔は傷だらけなので分かりづらいが、かなりの美形で、過去には令嬢から本気で求婚されたこともあるが、住む世界が違うと断った。
本編中でもヒグマに引っかかれて隠し包丁を入れた焼きナスみたいな状態になるなど顔に傷を負うこともあり、
杉元本人は今更傷が増えるのは気にしていないが、アシリパさんが傷が残らないようにアイヌ式の治療をしているため、顔に傷が増える事はない。

ちょっと乙女趣味な所があり、恋のお話に「トゥクン……」ってなったり、少女雑誌を読んでいたりする。お手玉も上手いらしい。
可愛い動物も好きで、アシリパさんが可愛い動物でも容赦なく食用にする姿を切なそうな顔で眺める事もしばしば。

冒頭の「俺は不死身の杉元だ」という言葉は、窮地に陥った時に自分を鼓舞するためによく言う言葉で、
元は結核にかかった父が「自分も結核にかかる前に家を出ろ」と諭された時、父を見捨てることは出来なかった杉元が「俺は不死身だ!!」と言い聞かせ、自分もかかるかもしれないという恐怖に立ち向かっていた事から来ている。
この時父から「自分のために生きるのは悪い事ではない。自分が幸せに生きられる場所を探しに行きなさい」とも言われ、後述する事情で故郷にも帰れなくなったことから「自分が幸せになれる場所」を求めている。

このことからもわかる通り思いやりが強く、かなり年下のアシパのことも恩義からさん付けし、本人の自由意思を重んじる紳士的な性格だが、
反面で「自由意思に従えば危険には遭いたくないはずで、危険に飛び込むのはそう誘導されているから」という先入観を持っているきらいがあり白石に苦言を呈されたこともある。
軍に入隊する前に同年代の花沢勇作にもそうした問いを発しているので、子供相手とか戦場での経験以前に元々の性分のようである。

戦場で学んだ死なないコツは「殺されない事」であるとし、敵と判断した相手は殺される前に容赦なく殺す。
一瞬前まで談笑していた相手でも不審な所を見せればすぐにスイッチを切り替えて殺しにかかるため、読者からは「キリングマシーン」などと呼ばれている。
杉元に優しみを感じるのはその後殺される前振りと言っても過言ではない。ただし、あくまで敵に対して豹変するだけでその時の優しさ自体は本心である。
アシリパさんを人質に取ったり危ない目に遭わせた奴には特に容赦がなくなる。

近接戦闘では無類の強さを誇る一方、射撃の腕はいまいちで、よく尾形に馬鹿にされている。
愛用している三十年式歩兵銃も専ら射撃ではなく銃剣を取り付けて使っている。

戦死した幼馴染で親友の寅次に妻の梅子の事を託されたため、除隊後は梅子の眼の手術代を稼ぐために北海道へ砂金掘りに来ていたが、
そんな時に刺青の囚人の一人である後藤のおっさんから、アイヌが集めた金塊と、その在処を示した刺青を彫られた囚人たちの話を聞き、
偶然出会ったアイヌの少女・アシリパと共に第七師団や囚人たちが狙う金塊の争奪戦へと加わる事になる。

梅子とは幼馴染で、元は相思相愛の仲だったが、杉元の家は結核が蔓延して村八分にされ、家族が全員死んだことで杉元は自ら家を焼き村を出ていった。
その際、梅子には「連れて行って」と懇願されたが、自分も結核に感染しているかもしれないと考えた杉元は梅子を連れて行かず、本当は感染していない事が分かって自分が戻るまで待っていてほしいという思いも伝えなかった。
そして杉元が村に帰ってきたちょうどその日、梅子と寅次は祝言を上げていたのだった。
そのため、杉元は金塊を求める理由を問われた際には「惚れた女のため」と答えている。
なお、杉元は一度寅次の指の骨を届けに梅子の元を訪れたのだが、目が悪くなっている梅子は(佐一ではないかと思って家から出てきながら)戦争帰りで死臭の染みついた杉元が誰だか分らなかった。
その事は杉元に「もう梅ちゃんの知る俺はこの世にいないのだろうか」という不安を覚えさせることになった。

その後も戦場での記憶のフラッシュバックに悩まされており、「戦争に行く前の自分」に戻れない事に苦しんでいる。
アシリパはその苦しみを知り、旅が終わったら故郷で干し柿(後述)を食べさせ、昔の杉元に戻したいと思っている。
また、寅次を死なせてしまった事などに責任を感じており、後にアシリパを敵に攫われた時には自分を「役立たず」と責める事もあった。

囚人を探す傍ら、アシリパのアイヌ式の狩りにも付き合っており、北海道の珍味を食べつくす勢いで色んな物を食べている。
しかしアシリパは脳みそとか目玉とかのゲテモノ系もどんどん勧めてくるため、断り切れない杉元は毎回珍妙な顔になりながら脳みそを食べるのだった。

好物は干し柿。故郷の名物であったが、日露戦争後は北海道に来たため(北海道には柿の木がない)食べていない。
一度故郷に帰った時も梅子の言葉のショックで逃げるように故郷を後にしたため食べる事はなかった。
あと脳みそも食べさせられる内に気に入ったのか好物になっている。

名前の由来は作者の野田サトルの曽祖父。実際に第七師団歩兵27連隊乗馬隊に所属し、日露戦争に出征したらしい。
ただし名前だけで人物像は全くの別人との事。不死身の逸話もありはするそうだが、むしろこの人と比較されることが多い気がする。


〇関連人物

  • アシリパ
共に金塊を探す相棒。
一度はアシリパを危険に巻き込む事を嫌い、彼女を置いて行こうとした事もあったが、その結果第七師団に捕まったところを助けられてしまい、思いっきりストゥ(制裁棒)でぶん殴られる羽目になった。
金塊を探し求める中、彼女の父であるウイルクが娘に背負わせようとしているものを知り、対面した時には「どうしてあの子を巻き込んだ!」と怒りを露わにしている。
そんな感じで中盤くらいまではアシリパを子供扱いしていたが、離れ離れになり、自分のいない間に成長したアシリパを見たことでアシリパが自分の意思で選ぶ道を信じる事を決める。

  • 白石由竹
旅の仲間の一人。
アシリパを除けば一番信頼を置いている仲間であり、第七師団に白石が捕まった時、全員が「まあ、いいか…」と見捨てる流れになった時も杉元だけは助ける事を主張した。
自分に何かあった時はアシリパさんの事を託せる男とも思っており、杉元とアシリパが一時離れ離れになった時は白石は後を託された者としてアシリパの傍にいた。
そのため、アシリパが旅の中で成長する姿も見てきたため、再会してもアシリパを子供扱いし、すれ違ったままでいる杉元を𠮟りつけた。

因縁の宿敵。
初めて会った時に殺し合いを演じたことに始まり、その後彼が鶴見中尉を裏切って行動を共にするようになってからも「一度裏切った奴はまた裏切る」と全く信用していなかった。
案の定と言うべきか網走監獄で頭を撃ち抜かれた(咄嗟にのっぺらぼうの体を盾にしたため、頭の端に当たり、脳みそが欠けるに留まった)ことで、その確執は決定的なものとなり、「必ずぶっ殺す」と杉元に決意させる。



  • 菊田
陸軍に入るきっかけとなった人物。
東京に出てきていきなり喧嘩沙汰を起こした杉元に飯を奢り、その時受けていた任務のために杉元を花沢勇作の替え玉にして縁談を破談させる作戦を立てる。
故郷を出てからは食事に困り他人の家の野良猫の餌すら盗み食いする有り様だった杉元は、これをきっかけに飯だけは食える陸軍に入ることになり、日露戦争で活躍し「不死身の杉元」と呼ばれることになる。
この時、餞別として菊田の弟の形見である軍帽を貰い、今でも使っている。
菊田の方は杉元をのらぼう菜(野菜)から連想した「ノラ坊」という綽名で呼んでいたため
その後に名を挙げた「不死身の杉元」があの時の若者であったことは本編で対峙した時に初めて知ることとなった。
ちなみにこの件を始め、杉元は本編の前に第七師団の面々とけっこう顔を合わせているのだが、お互いその事には気が付いていない。


  • 花沢勇作
陸軍に入る間接的なきっかけとなった人物。
尾形の異母弟、日露戦争の責任者である花沢中将の嫡男にして、故人ながら第七師団サイドのキーパーソン。
兄や父よりも当時の杉元に似た風貌をしており、菊田によって令嬢とのお見合いから遠ざける替え玉に杉元が選ばれた。
後に日露戦争で連隊旗手となり、勇作に危険な戦場以外の道を選んでほしいと思っていた杉元もその死に責任を感じている節がある。
前もって勇作の写真を見ていた令嬢が杉元を見て「実際に会うと雰囲気が違う」程度の違和感で済ませる*1程度には似ていたが、
その後杉元の風貌が激変したためか本編中は言及されることはない。



以下最終回ネタバレ









































刺青の暗号を解き、金塊の場所を特定した杉元達。遂に金塊を発見したものの、同時に鶴見中尉も暗号を解いたため、第七師団との全面戦争に突入する。
杉元は戦いの中で数え切れない銃弾を身に浴び、二階堂の義足の散弾により右頬を貫通し右耳の一部が吹き飛ぶ傷を受けながらも戦い続け、ついには鶴見中尉との列車上での最後の戦いに臨み、鶴見中尉と共に暴走する列車ごと海に沈んでいった……






が、そこは流石の不死身の杉元。
最終話となる次の話では当たり前のように生還しており、二階堂に付けられた傷は顔に傷痕として残り、耳も欠けたままとなっていたものの五体満足で生き残ることとなった。
金塊はアシリパの嘆願もあり使わずに埋めたままにすることを決めたが、金塊を発見した時に少しだけポケットに入れていたため、その分を梅子に渡し、杉元は目的を果たした。

その後、久々の故郷で干し柿を食べる杉元だったが、特に何も変わりはしなかった*2
杉元は北海道での日々の中で、役目を果たすために頑張った自分を好きになることが出来、昔に戻る必要はないと今の自分を肯定する事が出来ていたのだった。

そして目的を果たし、これからどうするのかを問われた杉元は少し考え、


帝国ホテルで食えるエビフライってのが美味いんだよな……

でも都会で本当に美味いものを食べるにはカネがたくさん必要なんだよ

リスのチタタプも負けないくらい美味いし
うさぎの目玉も、塩をかけたエゾシカの脳みそも
シャチの竜田揚げもオオワシの足も
カワウソの頭も白鳥のくちばしも全部美味しかった

自分が幸せになれそうな場所をやっと見つけたんだ

故郷に帰ろう、アシリパさん


旅の中でアシリパさんが食べさせてくれた思い出の食べ物を思い出し、新しい故郷となった北海道に二人で帰る事を決めるのだった。



追記・修正すれば地獄行きだと? それなら俺は特等席だ

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最終更新:2025年03月06日 17:18

*1 他、尾形もすっかり騙され「弟」のキリングマシーン振りに話をまたがって半笑いで凍り付く

*2 先述の場面で花屋の旦那と再婚して目を治療した梅子は、傷だらけの(ついでに髪質も変わった)杉元の顔がわからなかったが、以前とは対照的に雰囲気で杉元だと気づいていたことから、杉元はもう既に戦場から解放されていたためと思われる