銃剣

登録日:2009/08/23 Sun 06:38:26
更新日:2025/08/30 Sat 00:38:00
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概要

銃剣とは、主にライフル銃の先端に付ける刃物

歴史

マスケット銃等の19世紀までの銃は弾込めに時間が掛かり連射が出来ないという弱点があった。
弾込め中に騎兵突撃を喰らって戦列が崩れる事も多々あり、その対策として兵が銃士の近くに配置されていた。銃士自身に槍まで持たせるのは負担が大きいというのもあったのだろう。

16世紀末フランス。バイヨンヌ(Bayonne)地方の農民同士の抗争において農民が弾切れのマスケット銃の銃口にナイフを差し込んで突撃した。
それを偶然見ていた軍人が『ライフル自体長いんだから先端に刃を付けたら槍になるんじゃね?』という考えを思い付き、軍に提案した逸話から、銃剣をバイヨネット(Bayonet)と呼ぶようになったと言われている。
その後欧州で戦列歩兵の武装としてプラグ型銃剣の運用が始まったが、銃口にそのまま差し込んでいたため射撃が行えないという欠点があった。
そこで銃口の周りにとりつけるタイプのソケット型銃剣が開発され、これが一気にメジャー化し広まることなる。
その後も銃剣は改良とともに広まっていき、銃士に十分な対騎兵近接防御能力が付与された。
そのため『別に槍兵っていらなくね?』という意見が多くを占めるようになり、槍兵が姿を消し、軍隊は銃士ばかりの編成へと変遷を遂げたのである。

銃剣突撃
読んで字のごとく銃剣装備の歩兵突撃。
戦列歩兵同士の戦闘の最終局面であり、撃ちあい続け最終的に銃剣突撃で雌雄を決した……というのは一部はあっている。
銃剣突撃が勝利の勝利の決め手になることは多かったが、銃剣同士による攻防が行われた事例は実はあまりない。
というのも、一方が銃剣突撃をした時点で相手側はビビって士気崩壊し逃げ出すことがほとんどだったのである。
実際突撃する側にも高い士気が要求される行動であり、仕掛ける側は基本的に優勢である必要があった。受ける側からすれば押されてる状況で相手が銃剣構えて全軍突撃してくればそれはもう怖いだろう。
なお森林地帯などの遭遇戦じみた状態では実際に銃剣同士による戦闘が行われたという記録は残っている。

連発銃の発達以後は戦列歩兵の消滅と共に大規模な銃剣突撃は姿を消していったが、イギリス軍などはイラクやアフガンで何度か銃剣突撃を敢行し成功している。
対テロ戦争においても銃剣突撃による士気への威力は未だに大きいのかもしれない。

銃剣の形式

プラグ型
銃口に差し込むタイプの銃剣。剣やダガーそのものに近い。
ごく最初期のものであり、初めて軍事的に使われた銃剣がこれ。
意外にも同時期の中国でも開発されており、1606年にプラグ型銃剣を使える銃器を開発したという資料が残っている。
欠点は射撃と排他であり装着する手間が必要なこと。あとやはりというかなんというかすっぽ抜けることも多かった様子。
実際1689年のキリークランキーの戦いでは近接戦になった際、マスケットにプラグ型銃剣を装着しようとした英国軍が装着している間に、マスケットを捨てて剣と斧で突撃してきたハイランダー軍に負けたりしている。
HELLSINGアンデルセン神父が投げているのはこれ。

ソケット型
プラグ型では装着の手間がかるデメリットが大きくこりゃあかんということで、セバスティアン・ル・プリストル・ド・ヴォーバンが1680年に発明したのがこのタイプ。
銃口付近に「取り付ける」タイプのもので、おそらく銃剣でもっとも有名なタイプ。以後の銃剣も装着方式で言えばこのタイプになる。
スパイク状の完全に刺突のみに特化したものが多い。
極最初期はプラグ型の時代からダガーの様な刺す事を重点に置いた刃付きの物もあったが、銃剣の基本的な目的は対騎兵防御であり基本は突きもしくは構えての槍衾であること、マスケットが前装式のため刃があると装填中に怪我をする可能性があることなどから刃のないこちら主流になった。
以降もソケット型である。

刃付き
19世紀ごろになると他用途でも使用されるようになっていき刃付きのものがまた出てくるようになる。
見た目はやや短めの普通の刀剣であり、穴を掘ったり切ったり死体処理だったりに使うという運用も行われ出してきた時期。
第一次世界大戦までは銃剣突撃がまだ戦略として有効だった事や、塹壕での接近戦での短剣としての役割があったため現代より刃渡りが長い物が多い。

現用
現代の銃剣で、どっちかと言えばコンバットナイフに「銃剣としても使える」機能を付与したような状態。
こうなったのはWW1前後において戦争は弾幕の時代となり銃剣突撃は重要視されず、専ら士気向上の飾り(示威効果)としての役割が主なものとなったため。
銃剣は主装備ではなくなり、形状自体もコンパクトになりワイヤーカッターなどの多目的な装備をつけるようになっている。
現代でもなんだかんだ接近戦においては有用であり、おそらく最も普及したマルチウェポンとして銃剣が装備から無くなる事は無いだろう。

現代日本における所持と値段

刃物であり武器であるため日本においての銃剣の所持は基本的に違法である。刃を潰し、装着機構を破壊した品のみが民間に許可されているといわれる。
しかし、これはあくまで流通していると言うだけであり、警察が正式にOKを出した訳ではない。
もっと言えば、銃刀法には銃剣を指す単語が無い。
武器製造法において、銃剣の製造は禁じられているが、単純所持は禁じられていない。
そのため、銃剣の不法所持で捕まる人間は刃渡りの規制で捕まる人間が多い(槍や扱いされた場合もある模様)。

銃刀法に触れない着剣装置付きナイフとしてなら合法かもね!

……と言いたいが正直な所微妙である……。
「何かを規制する法律」の運用では多々あることだが、銃刀法自体、警官の気持ちと知識で処遇が変わる事が多いので、正式な所は裁判でも起こさないとわからないだろう。

日本において万単位で売買される銃剣だが諸外国ではそんなに高くない事の方が多い。
もともと銃剣と言うのは大量生産品であり骨董価値以外に高値がつくような要素を持っていない。
だが、日本では軍ヲタという狭い市場の中でも更に一部のマニア向けアイテムなため高額で取引されるようだ。

余談

  • アンデルセン神父が持っている銃剣は、本来手で持つことを想定していない。
    ついでに言うと、普通は刃が下に曲がっているが初期は上下バラバラ。

  • 某ネタ画像サイトで、至って普通の着剣済みの銃剣の画像を張り
    「ガンブレード」
    とサブタイトルをつけた画像が投稿されていたようだ(途中で途切れていた文章からの推定だが)。
    もちろん一般名詞としてなら間違った説明はしていないが、おそらく「バヨネット」「ライフルアンドバヨネット」と言った方が伝わりやすいだろう。

  • アニヲタWikiの住人なら、某スコールガンブレードやモンハンのガンランスを思い浮かべるかもしれないが、実際に剣に銃を装着した武器は存在する。勿論試製拳銃付軍刀ではなく、ガンブレードに近い形状のもの。
    • これは銃が前込め式だった時代に海戦などで使われた武器で、弾が切れた時に剣で攻撃するためのものである。銃の装弾数が増えるに従い徐々に姿を消していった。
    • 現代ではアンティークとしてのコピー、また俗にサタデーナイトスペシャルと呼ばれる安物の銃などに同様の機構が見られる。
      日本においてはデニックスと言うスペインのメーカーが壁飾り用に出している物が一番有名か。ただしあくまでも壁飾り用である。

  • ゲームワイルドアームズ』の2や3で登場する銃剣については騎士槍(ランスではなく刀身がやけにごつい片刃の大剣みたいなもの)を合体させているとんでも銃剣である。
    かっこいいのだが、もちろん現実では重すぎるし形からしてぶん回しにくいので実用性は低い。

  • 銃剣は特撮作品でもしばしば登場する。
    • 例えば、『仮面ライダー剣』の仮面ライダーギャレンこと橘朔也がジャックフォームに変身する際、専用武器である醒銃ギャレンラウザーの銃口部に「ディアマンテエッジ」という小型の刃がつき接近戦およびゼロ距離射撃が可能となる。ただ、細い造形のせいで折れやすかったのか、そもそも拳銃に畳めない銃剣というデザインからか、アクション監督が「これどうやって使ったらいいんだよ…」と頭を抱えたため、銃剣はほとんど使われなかったが…
    • 魔弾戦記リュウケンドー』の魔弾銃士リュウガンオーこと不動銃四郎も意志を持つ銃・ゴウリュウガンのグリップ部から剣を展開し近接戦を行っている。
    • スーパー戦隊シリーズ』の『電磁戦隊メガレンジャー』でも、追加戦士のメガシルバーがシルバーブレイザーという銃剣を使用。ガンモードで速射しながらソードモードで斬り裂くブレイザーインパクトで邪電王国ネジレジアのネジレ獣を倒している。

  • 日本には「銃剣道」という武道があり、剣道薙刀に似た防具と木銃を使う。銃部を使った格闘は認められず、突きのみ有効。
    一方西洋では銃剣の訓練にアメフトの防具と「パジル・スティック」というどっちかというとダース・モールの訓練っぽい見た目の用具を使う。こちらは銃剣側と銃床側の違いも色だけで全体がクッションで覆われておりどこで打撃してもよい。
    • 実際、銃のストックはかなり強固に出来ているのも多く(特にバトルライフル世代の木製フィックスドストック)、立派な鈍器として扱える。
      FPSではストック殴打を使えるゲームもあるが、格闘自体がかなり当てにくいことから素手でも大ダメージ(ワンパン)に設定されていることが多く、あくまでアニメーションとしてのみの実装である。

  • 現代の軍隊では平時では銃剣には刃を付けない場合がある。
    訓練中にうっかり怪我したり、草や枝を払うときにDQN兵士がちゃんと専用の鉈を用意する手間を惜しんで銃剣で刈って破損させたり面倒なことになりうるし
    実戦で使用する可能性は限りなく低いので それらのリスクを考えて平時の訓練中から刃の付いた銃剣を与えるより
    実際に出撃する可能性が濃厚になってから銃剣にグラインダーをかけても遅くはないため。
    「銃剣に刃を付ける」が情勢がキナ臭くなったことを示す季語になりうる。


フィクションの銃剣の使い手

皆さんご存知不死身の杉元。
銃剣突撃全盛期である日露戦争にて活躍した兵士であるため当然標準装備。
数多くの敵兵のみならず羆までもを銃剣で惨殺している。
特別に銃剣の扱いに長けている訳ではなく並外れた膂力、胆力、生命力によるものだが。
なお、当然第七師団の皆さんも標準装備している。

  • 宮本麗(学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD)
槍術部所属かつ親から銃剣術を習っており、長物の扱いを得意としている。
初期は学校にあったモップの柄で戦っていたが、コンバットナイフ型銃剣付きライフルを手に入れてからはそちらをメインに使うようになった。
またコータが孝のショットガン用にバーベキューの焼き串で即席スパイク型銃剣を作るシーンがある。即席だけに「1度で壊れるかもしれない」と言っており実際1回刺しただけで折れてしまった。

『墓場島殺人事件』に登場する旧日本軍兵士の亡霊。
犯人はこの亡霊になぞらえ、ターゲットのうちの数人を銃剣を使い殺害している。

パーティキャラの一人である傭兵。
銃剣を付けたライフル銃を武器とする。
これを槍の様に使った技もあるが、本人は銃撃と術を得意とする遠距離型なので使う機会は少ないかも。

追記・修正は着剣してからお願いします。

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最終更新:2025年08月30日 00:38