やばたにえん酸

登録日:2023/04/19 Wed 18:20:28
更新日:2023/12/27 Wed 20:32:03
所要時間:約10分で読めます





危機的状況ガールの未来に新たな暗雲立ち込める。
ちょっぴり酸っぱい脱出惨劇。

概要

2021年7月21日よりAndroid/iOsで配信された有料アプリゲーム。
約10か月後の22年5月26日からはNintendo Switch版が配信され、その際に短編追加シナリオ『田中追憶編』が収録。当然ながらCERO-Z
後のアップデートでアプリ版にも追憶編が追加された。田中追憶編については後述。

ドット絵で描かれる残虐表現と難解なストーリーに定評のある『やばたにえん』シリーズ第三弾。
シリーズの時系列としては無印『やばたにえん』の後となるが、無印の悪改修(別の世界線?)である第4作『やばたにの裏面』からは繋がらないという位置づけ。
従来通り、建物内に囚われた(一部例外アリ)今にも死にそうな目に合っている8人の女性を救出して脱出を目指すのが目的。
今作の舞台となるのは「アガツマファーマの社屋」。
過去作の舞台であるモンゴメリー邸やブレア邸と比べると、階層が非常に多く縦に長い構造となっている上に、仕掛けを作動させると建物の中心部が上下しフロア構造が大きく変わるのが特徴。
これによって複雑極まりないマップ構造を把握することが非常に困難となっており、ノーヒントでのクリアはシリーズ最高難易度とも一部では評されている。

シリーズ恒例のヒント機能は抽象的すぎるメッセージボックスから、銀剥がしの要領でこすると図解するシステムに変わった。

以下、ネタバレ注意。

登場人物

A.KAKO

「めんどくせぇなー…」
シリーズ皆勤賞の黒髪セーラー少女。本名は加古東海(かこ・あずみ)。何故か常に眠たそうな顔をしている。
社屋内を隈なく調べてもどこにもいない。それもそのはず、今回の彼女は一言で言うならオチ担当である。

思わず笑ってしまうこと間違いなしの初見殺しだが、居場所さえわかってしまえば2回目以降の救出は一番簡単。

裏設定では『初代』でモンゴメリー邸から脱出後、片足を失ったTANAKAの治療のためにJ.BLAIR(ジャック)と別行動し、TANAKAをアガツマファーマまで運んだとのこと。

K.UTSUNOMIYA

「いい加減にして…」
宇都宮桂子(うつのみや・けいこ)。赤いロングヘアが特徴。熊本出身*1
後述するK.YAGAMIの先輩アイドルで、新人アイドルであったYAGAMIを優しく導いた良き先輩。
そんな彼女は何故か八階西側のシャワールームにて両腕を鎖に繋がれている。
屋上には強酸が入ったプールがあり、バルブを捻ろうものなら彼女の頭上から酸のシャワーを全身に浴びることになるタイトル回収。

彼女を救うためには金鍵を使ってチェーンカッターを手に入れる必要があるが、割と近い所にあるので手順を間違えなければ救出は容易。
実は酸を浴びても直ぐには死なず、酸が全部なくなるまでは耐えてくれる。
ただしその場合、アイドルにとっての命である顔は爛れ、髪はところどころ抜け落ちた痛々しい姿になってしまう。特定のエンディングのためには敢えて酸を浴びせる必要がある。
「お化粧しなきゃ…」

自身の人気が伸び悩む一方、後輩のYAGAMIは順調に人気を伸ばして売れっ子アイドルへと登り詰めていった。
YAGAMI自身は(内情を知らずか)UTSUNOMIYAのことを今でも尊敬しており、UTSUNOMIYAも彼女の才能と可愛い顔に嫉妬しつつも完全には嫌いにはなれなかった模様。*2

R.AKUTSU

「ちょっと漏らした…」
飽津ルミ(あくつ・るみ)。亜麻色の髪とジト目の女性。前髪のせいで+▵+に見えなくもない。下記のGRANDLADYとは友人。
五階の手術台のようなところに座らされている。
頭上は吹き抜けになっており、何故か壁に柄の長いハサミが突き刺さっている。もし上の階から誰かがハサミを落とそうものなら、真下にいる彼女は無事では済まないだろう。
…あと、彼女の背後の壁には剝き出しのコイルがあるが、何故こんなところにあるのだろうか?
バッテリーが取り外されているので触れても大丈夫だが、電流が流れたらどうなることやら…
彼女が座らされていた椅子をよく見るとシミが出来ている。

彼女を助けるには儚鍵が必要。しかし鍵の数は非常に少ない上にどうしても足りなくなる。
そういえば彼女の近くにはヤットコで引き抜かれた金歯が置かれておりこれで金鍵を作れるが、誰か銀歯を持っていないだろうか…?

LADYとの友情は仮初。友達のふりをして近づき隙あらば彼女の失態を激写して弱みを握ろうと目論んでいる。

N.AGATSUMA

「ふんっ…」
我妻典子(あがつま・のりこ)。
若くして創業者である両親の後を継いでアガツマファーマの代表に登り詰めた女性。決して親の七光りではなく、幼少期に表彰された経歴のある天才少女。
三階西側の壁に両腕をロープで縛られ、目の前には注射針を大きくしたような先端の鋭いパイプが仕掛けられている。また、装置を作動させることで仕掛けが連動して入手できる金鍵もある。
装置はハンドル式でプレイヤーが動かさない限り彼女に突き刺さることはない。

無傷で助けるならハサミを持ってきてからロープを切ってあげればいいだけなので難しくはない。
また、救助前に装置を動かして串刺しにしても即死せず、死ぬ前にロープを切れば辛うじて生存する。真相究明のためにはこの動作が必要。
「ま、いいわ…」
ついでに彼女から流れ出た血液は、管を通って下の階に落ちるシステムになっている。何か容器があれば集められそうだ。

オリジナルの転送装置は治療費代わりにKAKOに命じて無人と化したブレア邸から盗み出した物。これを解析しアガツマ式転送装置『A.B.T.S』を設計するが、AGATSUMAの天才的頭脳をもってしても構造を6割も解析できず、『A.B.T.S』は大型コンピュータ二台を直結して漸く実用的になるものであり、オリジナルの設計者の頭脳に舌を巻いている。

E.TANAKA

「ゲロリ!」
田中エルナ。初代から皆勤賞の没落令嬢。
今作では八階東側のゾンビマシンの中に入れられており、開けて出してあげると嘔吐物をぶちまける。三作目において本当にゲロった。
ゾンビ化して自我を失っており、そのまま放置していると数十STEP後に屋上から身を投げ、敷地の鉄柵に身体を両断されてハラワタをぶちまける。
なおシステム上は死亡扱いだがゾンビ故か完全には死んでおらず、ピクピク動いている。

彼女が入れられた装置の中には試薬データも入れられており、これをコンピュータに照合することで治療薬を作って投与すれば助けられる。
ただしそのためには装置を開けて彼女を外に出さねばならず、無駄なく動く必要がある。

『初代』で失った片足の再生医療のためにAGATSUMAの治療を受けるも、一文無しだったため「(治療費は)働いて返して」と言われて人体実験させられたらしい。

K.YAGAMI

「顔面ヤバくない?」
八神恭子(やがみ・きょうこ)。初代にも登場した不眠症に悩まされるアイドル。
今作で最初に見つけることになる少女であり、四階西側の出入口で磔にされている。
彼女の頭上には巨大なブレードが設置されており、西側から外に出るための扉を開閉するスイッチと連動して動く模様。
幸いなことにここに来るまでに儚鍵は拾っているので、助けるのに苦労はしない。

当然そんなことはなく、彼女を助けるために即座に鍵を使ってしまうとどうしても後々足りなくなって助けられない女性が出てしまう。
かと言って装置を動かすと彼女が死ぬ…と思いきや、余程一瞬のことだったのか多少顔の位置がおかしくなるものの死にはしない。お前の顔面の方がヤバい。
「あれぇ?」
なので最初は装置を動かして先へ進む道を開いてから、その先で新たな鍵を見つけて彼女を助ければいい。
ただし、彼女が拘束されたまま建物全体を揺らすようなことが起きると……。


GRANDLADY

「ありがとうね」
銀髪の女性。名前がないのではなく、LADYが名前らしい。
三階東側の窓際にて大きな壺から首だけ出している。放置していると下の階から登ってきた植物が窓から侵入し、彼女の頭を貪り食う
なぜこうなったのかというと原因はプレイヤーにあり、二階から落とした植木鉢の植物が地面に撒かれた怪しげな薬品を吸って急成長してしまい、それを伝って上の階に行く必要があるためである。

壺を叩き割るものがあればいいが、3本のロックがかけられている。ヒントは足元にある。

公式曰く、「生まれる家を間違えた、唯一の良心」とまで呼ばれている程、一癖二癖もある登場人物たちの中では珍しく裏のない善良な人物。
本人に悪意はなく皆と仲良くしたいらしいが、前述の通りAKUTSUからは内心疎まれ、TANAKAからは過去の確執が原因で嫌われている。
アガツマファーマにいたのは自ら進んで手伝いを申し出たため。
ゾンビマシンに入れられても何故かゾンビ化しなかった。AGATSUMAは「機械の故障」と判断したようだが、本当に故障なのだろうか?

KANAMORI

「お家に帰りたいの」
金森。緑髪に赤いチャイナ服という、シリーズ全体を見てもかなり独特な容姿をしている。
一階の一室に閉じ込められており、気を失っているだけで拘束などもされていないが、何故か3人いる
外見からは判別できないが、丁度近くに「気つけ薬」があるのでこれを使えば本物がわかる。外れたら事前セーブ&ロードすればいいしね

だが偽物は後々必要になる上、一度に救出できるのは一人のみ。本物にはもう少し待ってもらおう。

プロフィールは不明だが、初代に登場したSON姉妹がそれぞれ我妻家に引き取られた養子2、3号なので、彼女は最初の養子と見るのが妥当か。
あと『K-16』と怪しげな番号で呼ばれる場面もあるが…。1から15、どこ行った?


この他、アイテムスロットが満杯の時に五つ目のアイテムを取ろうとするとジャックが「もう持てないぜ」と警告してくれる。

エンディング

今作のエンディングは全4種。今作から所謂ノーマルエンドにあたる『凡庸』エンドはなくなった。
また、今作によって時系列が『滅』→『初代』→『酸』ということが明らかになった。




余談

過去シリーズでは全滅させることはできなかった*6が、今作では全員をプレイヤーの意志で殺すこともできる
その為か過去シリーズでは誰も救出していないと脱出できない仕様だったが、今作ではプレイヤー一人逃げ出すことも可能。中々シュールな光景である。


概要(田中追憶編)

やばたにえん酸のアップデートで追加されたシナリオで、初代やばたにえんから約八十年前、貴族であった田中家が没落する経緯を回想することになる。
特徴としては、姿の見えないプレイヤーキャラではなく田中という一人のキャラを操作する点と、STEPが44からスタートのカウントダウン式になっており、0になる前に目的を達成しなければならないと本シリーズでは異色のものになっている。
エンディングは一種類のみで、ゲームオーバーはConnection Lostと表記される。

登場人物(田中追憶編)

田中エルナ

主人公。このキャラを操作して、今にも処刑に掛けられそうになっている血縁者を助けるのが目的。
一度やると決めたことは兄であるミズキに止めることも難しい。
「ゲロリ!」「アツイアツイアツイ…ゲロォ!」「ヤメテトメテヤメテトメテヤメテ~

理想的な貴婦人

敵キャラその1。本シリーズでは珍しく40前半と明確な年齢が設定されている。
田中家とは昔から親交があったようでエルナのピアノ指導などもしていたようだが、田中兄妹からは恐れられている。
非常にアグレッシブでパワフルな人物。ただ走って逃げても追いつかれてしまい、首を掴んで持ち上げられた挙句、腕一本で首の骨を折って殺される
銃で撃っても「痛いじゃない」で済ませる*7、ガラスをぶち破って先回りしてくるなどどこぞのホラーゲームの追跡者のように追ってくる。
あと特徴的なのがボイス。歴代キャラと比較しても本当によく喋る。
「エルナちゃ~ん?出てらっしゃ~い?何もしないから~」「ハイっ、捕まえた(ゴキッ)」「この小娘が!」

刀鍛冶の跡取り娘

敵キャラその2。赤い服を着た女性で、「柏木刀剣」という刀鍛冶の二代目ということで苗字は柏木らしい。
『滅』に登場したカンタービレというハサミも彼女の作品で、後年ではオークションに出品されている業物。
刀鍛冶の腕だけでなく剣の腕も相当で、正確な投げ槍、すれ違いざまに一閃し斬られたことに気付かない相手が歩き出した瞬間に漸く身体が両断されたことに気付くほど。
よく見ると右腕がないが、これは前述した理想的な貴婦人に以前負傷沙汰を起こされた際に斬り落とされたらしい。そのことで今でも貴婦人のことを強く恨んでいるそう。
LADYはよくコイツらを味方に引き入れたな…。

OLDLADY

准貴族。敵ではあるが妨害してくる敵キャラとしては出てこない。
LADY家の短命の血統を呪い、正貴族である田中家に長命の秘密が隠されていることを探り当て、上の二人を味方につけて田中家の乗っ取りを画策する。
GRANDLADYは遠い子孫。
後に復活したエルナが彼女の墓を探るが、棺桶の中に遺体がなかった。今もどこかで生きているのだろうか…?

田中家の玄関先に繋がれた番犬。元は凶暴な野犬だったが、田中ミズキを襲った際にエルナによってボコボコにされるも、可愛そうに思ったミズキが寸でのところで止めて田中家で飼うことにした。
因みに名前は「げろいむ」というらしい。*8

田中ミズキ

エルナの兄で、現田中家当主。臆病で虫も殺せない人物だが、エルナ同様芯は硬い人物。なお「デューク・クラブ」という高級クラブのマッチを隠し持っていることから、女好きだった可能性もある。

LADYたちの謀略にハマって処刑されかけている彼を救うのが目的…あれ、何故助けたミズキがエルナと同じ格好をしているのだろう。



余談(田中追憶編)

やばたにえん酸の後の「やばたに報」*10ではエルナの目撃情報に『九十六歳で死去した田中財閥最後の当主・田中エルナの若い頃に生き写し』とあるが、田中追憶編と照らし合わせると所々矛盾が散見される。

①田中兄妹生存時は兄のミズキが当主だった。
②エルナが屋敷に戻ったら待ち構えているLADYたちに殺されるので戻れるわけがない。
③エルナ(仮)は享年九十六歳とあるが、田中追憶編は初代やばたにえんから八十年前の出来事。当時のエルナが十代後半だったとすると亡くなったのはつい最近だが、エルナが蘇ったのも大体同じ時期。

これらのことから、田中家を乗っ取ったLADYたちが成り代わった、若しくは貴族のツテを使い、代わりの『田中エルナ』を用意して彼女に表向きの当主とさせたなどと考えられる。



追記・修正はおてもやんを歌いながらお願いします。

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最終更新:2023年12月27日 20:32

*1 公式Twitterに上げられたイラスト内で、絆創膏のことをリバテープと呼んでいる。

*2 アガツマファーマに付いてきたのも彼女の身を心配してのことらしい。

*3 なお作中ではゾンビ化したTANAKAを元の人間に戻しているので、彼女の研究は完成にこぎつけていると言えるだろう。

*4 エンディングでは回想の形で時系列が入れ替えられているので、初見だと若干分かり辛いものとなっている。

*5 大型コンピュータが動力として使っているのであろう赤い液体や、作中でも動作する際に必要な「関係者の血」などの要素から。

*6 『初代』はR.SONとOMIYOは殺せず、『滅』ではE.MONTGOMERYのみ特殊ゲームオーバールートでは死ぬが、いつの間にか死んでいる扱いのためプレイヤーの意志でトラップを起動して殺せるわけではない。

*7 田中が非情になり切れずに敢えて急所を外した可能性もある。

*8 田中の発していた妙な叫び声?の由来。

*9 逃げ出したというよりも、妹を逃がすため自分に注意を向けるためだろう。

*10 公式Twitterに度々上げられる、新聞形式で裏設定などが描かれているイラスト。