イハナシの魔女

登録日:2023/04/30 Sun 05:05:04
更新日:2025/01/08 Wed 10:29:15
所要時間:約 9 分で読めます







このちっぽけな島が

俺たちの生きていく島だ。








イハナシの魔女』(The witch of the Ihanashi)とは、同人サークル・フラガリア制作のADV。
コミックマーケット100にて頒布。
2022年8月20日にDL版が、Steam/BOOTH/DLsiteにて発売。
2023年4月28日にCS版が、Nintendo Switch、PlayStation5/PlayStation4Xbox Series X|S/Xbox OneにてKEMCOより発売。



■概要

処女作である『カガミハラ/ジャスティス』*1に続く、フラガリア制作ADV2作目。
C99にて体験版、C100にて完成版が頒布された。
頒布されたパケ版と一部DL版には設定資料集が付属しており、また各主要キャラクターの準後日談&サブキャラのイラストが載ったAppend版がC101にて冊子で頒布。
後のCS版では設定資料集に加えて、Append版が電子書籍形式で収録されている。
なお体験版ではボイスがなく本編もボイスなしの予定だったが、後に方針転換があり完成版はボイス付きになっている。


前作『カガミハラ/ジャスティス』が、学園ヒーローものに見せかけて学生運動、難民、反戦を描いた作品にだったのに対し、
今作は沖縄の離島を舞台にした王道のボーイミーツガール
親を亡くし親族からも騙され捨てられた平凡な少年と、ある目的でやって来た異国の少女の、
異邦の地での出会いと謎、そして見知らぬ土地で生きていく苦難と青春が描かれている。
また今作では舞台である沖縄の文化がストーリーに深く関わっており、沖縄の風土や伝統を下地にした伝奇物というのも特徴の一つになっている。

内容は『プロローグ』『アカリ編』『保険販売員編』 『リルゥ編』の全4章。
体験版は『アカリ編』までが収録。
選択肢はあるがストーリーに影響するものは無く、上記の順番で作中の時系列が進んでおり各章終了ごとに次の章が解放される。
イベントCGは全部で10枚、スチルを加えても11枚と少なめだが、0から徐々に生きていくための場所や繋がりを作っていく様や、現在でも残る奇妙な風習とそれらを取り仕切る名家や島の謎、
それらの苦難に翻弄されながらも前に進もうとする少年少女のストーリーは評判が良く、INDIE Live Expo Awards 2022にノミネートにされ、ユーザーが選ぶDLsiteアワード2022ではゲーム部門にて受賞を果たした。
またCS版発売にあたっては本作をプレイしたKEMCOのADVチームが移植をフラガリアに名乗り出ており、その流れで発売が実現している。


なおコミケ頒布版およびPC版は動画サイトで配信することが可能にはなっているが、配信で作品の全貌が明らかになってしまうため、配信の際にはなるべく視聴者の皆様に作品の購入を勧めてもらうと助かるとのこと。
CS版ではKEMCOからネタバレに関するガイドラインが設けられており、撮影や動画配信などをする際にはこれに従ってほしいことが呼びかけられている。
+ CS版に関しては
『アカリ編』クリアまで。『保険販売員編』以降の撮影・配信はNG。
またINDEXやCG GALLERY、特定条件下で解放されるEXTRA内のコンテンツ等、保険販売員編以降のあらすじやCGが含まれる部分についてもNG。
たぶん本体機能にちゃんと制限をかけてある…はず

  • テーマソング「さゆらぎ」作編曲/作詞:高城みよ ボーカル:ひさしろ 



■ストーリー

幼い頃に両親を亡くした「西銘光」は、高校一年生の春、育ての親である叔母から祖父の家で暮らすよう言い渡される。
1人フェリーに乗って向かったのは人口1000人にも満たない沖縄の離島「渡夜時島」。

不安を胸に祖父の家を訪ねるも、祖父は海外へ移住してしまっていた。
事情を尋ねるべく叔母に連絡を取るが音信不通。転校先の高校にも西銘光という生徒は在籍していないと告げられる。

光は叔母一家に捨てられたのだ。
途方に暮れた彼は夜のサトウキビ畑をさまよう。
そこで不思議な衣装に身を包んだ少女「リルゥ」に出会った。

自活力皆無の元高校一年生の光。
日本の常識をまるで介さないリルゥ。

2人は協力し合って小さな島で暮らしていく。
しかし、リルゥには渡夜時島へとやって来た目的があり……。

(公式サイトSTORYより)



■単語

  • 渡夜時島(とよときじま)
沖縄本島の西に位置する、那覇からフェリーを2回乗る必要がある距離にある離島。
南北に細長い形をしており、北と南の山に挟まれるように集落が存在している。
港がある西側はビルがあるくらいには栄えているが、チェーン店は見る影もなく個人商店が点在している。

他の島からはよそ者に厳しいと評判であり、よそ者排斥運動をしている老人会があるくらいにはよそ者に厳しい島。
というより那覇から離れすぎていて観光地化もされてないので、そもそも観光客が来るような島でもないという最果ての地。
大里家という神職の名家が島内で力を持っており、閉鎖的な環境もあって古くからのしきたりが今でも強い影響力を持っている。

モデルは沖縄の渡名喜島*2


  • 大里家
渡夜時島で一番古い名家。
島内での影響力は絶大で村長よりも発言力があり、500年近く島の中で頂点に立っている。

琉球神道で『神女』と呼ばれる神職を輩出する家系で、その中でも位の高い神職である『祝女』の家系。
また琉球王族の血縁も引いているため、王朝から更に特別な固有名『キミナライ』を神職に与えられている。
渡夜時島の北の山はすべて大里家の私有地であり、邸宅の他に祭場や御嶽などが各所に点在している。

  • 神女(カンジュナ)
琉球神道における神職。
階級があり、階級が高くなると神を憑依させる異能を持つとされる。
神が憑依した神女は神そのものとして崇められるようになり、それ故に信仰の中では絶対の存在として扱われる。

  • 祝女(ノロ)
神女の階級における、高級神女の位。
祝女は琉球王国が認めた家系でしかなれず、どんなに成果や功績を挙げてもこの位になることはできない。
就任にも、王朝の許可が必要だったほどの高い位だった。
琉球神道の最高位から4番目の地位にあり、領地を持つ地方大名のような地位。

祝女は神を憑依できる神女のため、神そのものとして扱われる位にあたる。
そのため大里家はこの神様を輩出する家として島内で絶対の力を持っており、
本家の祝女が『キミナライ様』と呼ばれ、分家の祝女がその補佐に当たっている。




■登場人物

  • 西銘 光(にしめ・ひかる)
主人公。
親を亡くし叔母夫婦の下で暮らしていたが、ある日突然沖縄の祖父の家で暮らすように言い渡され、
遠路遥々行ってみるも祖父の家はもぬけの殻であり、そこで叔母一家に捨てられたことに気づいた不幸すぎる16歳。
そのまま沖縄の離島に着の身着のまま放り出されて途方に暮れていたところ、異邦人の少女・リルゥと出会う。
ほけっとした表情と、『琉球王国』とプリントされた黄色のダサTが特徴。

渡夜時島に来るまでは年相応の日々を送っており、そのため生活能力はあまり高くなく良くも悪くも普通の少年。
本来なら高校へ通っているはずだったが彼を捨てた叔母一家が沖縄の高校への編入手続きをしておらず、元居た高校にも退学届けを出していたため、最終学歴・中卒のフリーターになってしまった。
頼れる人も居ないどん底に近い境遇の中、同じく宿無しで島内を彷徨っていたリルゥと知り合い協力。
サバイバル生活を始める、サトウキビ刈り取りのバイト、祖父の家への転居、砂糖精製工場での日雇いの仕事、料金を支払い止まっていた電気・水道・ガスを復旧させる等々を少しずつこなし、
島社会に戸惑いながらも『人らしい生活』を得るために基盤を固めていく。

以前の家では邪険にされていたことを筆頭にロクな思い出が無く、そのため他者に対して臆病な面がある。
そのため対人絡みにおいては距離を取りがちであり、肝心なときに一歩を踏み出せない自他共に認めるヘタレ。
一方そんな境遇からか理不尽にはそれなりに慣れており、動かないと何も始まらない状況ということもあるが行動力そのものも結構ある。


  • リルゥ・ジャミティダ
CV:ぱるう
渡夜時島の山でハブを刈る国籍不明の女子。
褐色肌でシャーマンのような異国情緒溢れる格好をしている。
異国から来たため日本の常識を全く知らず、反対に体力やサバイバル知識が全くない光と互いを補う約束で協力関係になり、島での生活を始める。
女子から見てもグラドルと間違われるほどプローションが良いが、それとは真逆にやたらと力が強い。

最近島に来たがまともな方法で来たわけではないため、当初は島のサトウキビ畑の中に即席小屋を無断で作って生活していた。
かなり厳しい場所から訪れたらしく、島のことを「飢えている人も奴隷もいないので裕福」と評価している。
そんな土地で生きてきたため、他人を基本的に信用しておらず猜疑心や警戒心がとても強い。
一方ぶっきらぼうで感情に乏しく厳しい物言いも多いが、何だかんだで手を差し伸べてくれるなど根は優しい少女。
約束は守り、重要な場面での妥協は自他共に許さず、他人の不条理は見過ごせないなど強さと漢気にも溢れる。

実は様々な魔法が使える『魔女』であり、空を飛ぶ・手から火を出す・得体のしれないものを呼び出すなどの芸等が出来る。
日本語を流暢に喋れるのも、翻訳魔法で対応しているらしい。
何か大きな目的があって、この島に来たらしいが……。


  • 赤摘 明(あかつみ・あかり)
CV:九重なゆ
島一番の美少女(自称)15歳。
島のアイドル的な人気を持つが、実家は大里家の分家である祝女殿内であり、祝女就任に対して大きな抵抗を示している。
ロボットアニメ大好き女子。

父親が光の祖父と親しくしており、その縁でよそ者である光ともそれなりに気安く接してくれる。
島で有名な名家の娘のため、よそ者でも彼女の名前を出すとある程度信用してくれる。
その他、色々と顔が効くため年下ながらとても頼れるお方。
とある夢を持っており、家に内緒で努力を重ねる傍ら、どうにかして東京に行くことを計画している。


  • 比嘉 紬(ひが・つむぎ)
CV:ミコト
保険販売員として、渡夜時島周辺の島で働く24歳。
落ち着いていて包容力があり、人当たりも良く一見しっかりしているように見えるが、実際はポンコツ気味のダメ人間で失敗が多い。
そのため仕事が長続きせず、苦悩する日々を送っている。

色々な自己啓発本から得た教えや教訓が書かれているノートを持ち歩いており、それを読んで自分を変えようとしているものの、その内容を何でもかんでも鵜呑みにしているのでさらにズレてポンコツと化している。
基本的に穏やかな性格だが、酒癖が悪い。
地味に腕っぷしが強く、素手でサーフボードを割れる。


  • 勲茶澱 妃里子(くんさでん・きりこ)
CV:夜宵紫苑
アカリの知り合いで、金髪縦ロールでピンクのドレスの南国感ゼロの少女。
本人たち曰く間柄は『敵』らしく、家が敵同士らしい。
アカリと同じく島では有名な名家の娘で、別の島でホテルを経営していたり親族が島のフェリーを運航する海運会社を運営したりしている。
髪の毛が自慢で、お手入れなど美しく保つ努力は欠かさない。

とあるシーンでの変貌ぶりに、絶句したプレイヤー多数。


  • 兼城 丈(かねしろ・じょう)
CV:フルゴオリ
リゾートで有名な久々島在住の不良。
ヤンキー集団を取りまとめるリーダーで、金さえ払われればどんな汚れ仕事も引き受ける。
とは言いつつも、引き受けた仕事は終わるまできっちりこなし、なんだかんだで義理人情や友情には篤い男。

啖呵を切るのに妙な言い回しのセリフが多い。
実は美少女アニメ好きの隠れオタクで、バレたら面子が丸つぶれになるのに加えて島でグッズを手に入れるのに苦労している。




追記・修正は、沖縄の離島に放り出されても生きていけそうな人がお願いします。


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最終更新:2025年01月08日 10:29

*1 こちらもPCゲーム版がBOOTH、CS版がレジスタよりNintendo Switchにて発売

*2 ただし取材に関して周辺の久米島や久高島には行けたがこちらはコロナ過で移動が制限されていたため、内情は完全にファンタジーとのこと。