Nintendo Switch

登録日:2018/06/07 Thu 15:34:00
更新日:2025/07/15 Tue 20:50:24
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いつでも、どこでも、誰とでも。



Nintendo Switch(ニンテンドー スイッチ)とは、任天堂が発売した家庭用ゲーム機である。




【解説】


2015年3月、任天堂とDeNAの業務提携発表の記者会見中に、コードネーム「NX」として突如その存在が発表される。*1
この時点で判明したのは、コードネームと家庭用ゲーム機である事のみである。
2016年10月には正式名称と商品詳細、発売日等が発表された。
2017年3月3日に発売、価格は29,980円+税。


据置機と携帯機を兼ねるという特徴を持ち、ハイブリッドゲーム機とも称される。
任天堂は携帯する事もできる据置機と定義しており(現在はその限りではない)、それに基づいた場合「第9世代の据え置き型機」として扱われる事になる。
ただし、「WiiWii U」のような性能の圧倒的向上があるわけではない点などから、Wii Uと同じ「第8世代」に含めることもある。

持ち運び可能な本体にワイヤレスコントローラーを組み合わせる事で、
  • 本体をSwitchドック経由でテレビやモニター等に接続して遊ぶ「TVモード
  • 本体をモニターとしてテーブル等に設置して遊ぶ「テーブルモード
  • 本体にJoy-Conを装着して携帯機として遊ぶ「携帯モード
の3つのプレイスタイルから好きな物を選んで遊ぶ事ができ、これらのスタイルはゲームプレイ中であってもシームレスに移行が可能。

  • 「いちいちテレビを点けてプレイするのが面倒」
  • 「ファミリー層のユーザーが多い任天堂ハードはリビングに置かれる場合が多く、家族でテレビの取り合いが起きる事もある」
といった問題への解決策として登場したWii Uゲームパッドをさらに発展させたようなコンセプトを持つハードとも言える。
また、本体から大きく離れた場所でプレイ出来なかったWii Uゲームパッドとは異なり、本体そのものを外へ持ち出せるので、「持ち歩いてゲームがしたい」「ゲームは大画面でやってこそ」という相反する2つの需要を1機で満たせるようにもなった。

下記にある仕様をまとめて、発表会では
……等、過去の任天堂ハードの特徴全てを注ぎ込んだ集大成であると本ハードを表現した。
任天堂の赤歴史ことバーチャルボーイには触れられなかったが、据え置きと携帯の中間という立ち位置はある意味バーチャルボーイの目標も受け継いでいると言えるかもしれない。
……と思いきや本体発売から約1年後、『Nintendo Labo VR kit』を発売しVR・立体視対応したので、正式にバーチャルボーイの血筋も受け継いだと言えるだろう。

2019年8月30日より「バッテリー持続時間が長くなった新モデル」が発売された。その名の通り携帯モードでのプレイ可能時間が約2.5~6.5時間から約4.5~9.0時間に伸びている。
これに前後し、旧モデルは購入時に3,000円相当のニンテンドーeショップ用クーポンが付くキャンペーンが実施されている。旧モデルが3000円安くなるクーポン券付き!
新旧を区別するには型番を見ればよく、旧モデルの本体は型番がHAC-で始まり改善した本体はHAD-で始まる。

同年の2019年9月20日には、小型軽量化され携帯モード専用になった「Nintendo Switch Lite」も発売。
2021年10月8日にはディスプレイを有機ELに変更した上位版の「Nintendo Switch(有機ELモデル)」が登場。詳しくは下記を参照。

そして2025年6月5日には、完全後継機である「Nintendo Switch 2」が発売された。結果として初代Switchは初期モデル発売から後継機の発売まで8年3ヶ月という、ファミコンの7年4ヶ月を越えた任天堂据置機で最長のロングランを記録することとなった。

【Nintendo Switchの特徴】


※以下、特筆がなければ通常モデルについて記述する。

本体外観

一見すると本体はテレビに接続されたSwitchドックの方に見えるが、実際は液晶画面のついたタブレットのような外見の機械が本体。

本体サイズは縦104mm×横172mm×厚さ13mm(Joy-Con非装着時)。
一般的なDVDケースを一回り小さくしたようなサイズで、これまでの据置型ゲーム機の中でもダントツに小さい。
コントローラを外した本体そのものには一般的にゲームの操作に使用されるボタン類が一切ついておらず、これだけでは基本的な操作はできない。

本体前面はほぼ全体を6.2インチの液晶画面が占める。
テーブルモードと携帯モードではここにゲーム画面を映して遊ぶ。画面解像度1280×720(720p)で、いわゆるHD。
1920×1080(1080p)の採用も検討されたが、サイズの問題で720pとあまり変わり映えしないのと、コストの問題から採用は見送られた。*2
すでにほとんどのスマートフォンがHD対応のご時世なので驚きは少ないが、携帯ゲーム機でネイティブなHD解像度に対応したのは本機が初である。

タッチスクリーンになっているため、DS・3DSやWii Uゲームパッドのように画面に直接触れて操作する事もできる。
抵抗膜方式を採用していた過去3機種とは違い、スマートフォン等で採用されている静電容量方式を採用しているため、2点以上の同時タッチを検出できるようになった。
しかし、圧力をかければそれだけで反応したDSシリーズやWii Uと違い、それらのタッチペンのような「ただの棒」で押すだけでは認識しなくなっているので、『Splatoon2』のお絵描きや『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』のステージ作り、『スーパーマリオメーカー2』などではタッチペンを別途用意するといい。
純正タッチペンが公式から発売されている他、スマホ用のスタイラスペンなどでも代用可。

本体上面はソフトメディアであるゲームカードを挿入するスロット、ヘッドホンマイク接続端子、放熱用ファンの排気口、音量調節用ボタン、電源ボタンが備わっている。
両側面には本機のコントローラーであるJoy-Conを装着するレールと接続端子があり、必要に応じてJoy-Conを着脱する事でプレイスタイルを切り替える事ができる。
背面には放熱用ファンの吸気口、本体を自立させるための折りたたみスタンドが設置。スタンドを開けたところにmicroSDカード用のスロットがある。
底面近くにはUSB Type-C端子があり、Switchドックや充電ケーブルとの接続に使用される。
底面にあるので本体のスタンドでは難しいが、他のスタンドやType-C変換アダプタ等があれば一部のコントローラー等も接続可能。
小さいので目立たないが、下部には2基のスピーカーと周囲の明るさを検知するセンサーもある。
また、内部にはWiiリモコンや3DSのように加速度センサーやジャイロセンサーが搭載されていて、本体の傾き等を検知する事も可能。

携帯機としても機能させるため、リチウムイオンバッテリーを内蔵している。
充電時間は約3時間、バッテリー持続時間は本体の使用状況やプレイするソフトによって約2.5~6.5時間とバラつきがあり、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」等のマシンパワーを使用するソフトでは消耗が激しく、3時間ほどの持続時間となる。
なお「新モデル」と有機ELモデルでは約4.5~9.0時間(ゼルダの伝説は約5.5時間)、Liteでは約3.0~7.0時間(ゼルダの伝説は約4時間)と、持続時間が伸びている。

コントローラー

Joy-Con(ジョイコン)

Nintendo Switchの専用コントローラー。
Wii Uゲームパッドの左右を切り取ったような見た目で、左側用の(L)と右側用の(R)があり、基本的には2つで1セットとして扱われ、
本体にも(L)と(R)の2つ1組で同梱されている。

(L)と(R)を一つのコントローラとして見た場合、2個のスティック、2個ずつあるLRボタン、方向キーと4つのボタンといった、近年の業界標準コントローラにあるものは全て備えている
両手にそれぞれ持って自由な姿勢で遊ぶこともでき、付属の両手用グリップにセットすれば標準的なコントローラーに近い感覚で遊ぶことができる。

携帯モードでプレイする時、本体の左右に取り付ける事で本体の一部として機能する。


(L)と(R)は別々のコントローラとして認識させることも可能で、2人のプレイヤーがそれぞれ(L)と(R)を使用する事で2人プレイを行う事も可能である。通称「おすそわけプレイ」。
ただ、ストラップ兼用の専用グリップ込みでもWiiリモコンより小さいため、手の大きい人だと持ちにくさを感じることはある。
また、加速度・ジャイロセンサーを搭載しているため、Wiiリモコンのような体感型コントローラーとしても使用可能。
Wiiリモコンより小さいのに感度がかなり良くなっているあたりに、技術の進歩が見て取れる。

一方、これまでの任天堂の機器と比べると耐久性が下がっており(むしろ今までが頑丈過ぎたが)、激しい操作を繰り返したり埃が溜まったりすると、スティックが特定の方向に倒れっぱなし扱いになる「ドリフト現象」や、ボタンを押しても反応しなくなる不具合(特にLとRボタン)などの原因になるので注意。
これらはNintendo Switch純正コントローラーの最大の欠点として知られており、特にドリフト現象はアメリカで訴訟されたり(最終的に取り下げたけど)欧州委員会に問題提起されたりもした。

無線通信にはBluetooth(バージョン3.0)を使用しており、また任天堂のサポート対象外ながらPC等への接続もできる。

ちなみに、下記にあるモーションIRカメラとHD振動は将来的に役立ちそうだったので付けたもので、これらの機能を生かす遊びを考えた結果Nintendo Laboが開発された(ゲームボーイに通信機能をとりあえず付けておいたらポケモンの交換で役立ったのと似たような感じ)。

  • 搭載ボタン及びスティック
Joy-Con(R) A、B、X、Yボタン
Rボタン、ZRボタン
Rスティック、Rスティックボタン(スティック押し込み)
+ボタン
HOMEボタン
Joy-Con(L) 上、下、左、右ボタン
Lボタン、ZLボタン
Lスティック、Lスティックボタン(スティック押し込み)
-ボタン
キャプチャーボタン

  • HD振動
今までのコントローラーにあった振動の強弱のみを伝える機能とは違い、「感触」を表現する機能。
グラスの中で氷がぶつかる感触、箱の中でボールが転がる感触のおっぱいを揉む感触等をリアルな感覚としてプレイヤーに伝える。
技術的に言うと、リニア振動アクチュエータを2系統搭載し、2つの振動を合成することで「感触」を生み出している。
リニア振動アクチュエータは他のコントローラーで採用しているような重りのついたモーターを回転させるのではなく、リニアモーターで振動子を「水平に揺する」ことで振動を起こす。
なので、振動強度を細かく制御できる特性を応用して、簡単な音を鳴らすこともできる。
AppleのApple WatchやiPhone 6S以降に入っている「Taptic Engine」にWiiリモコンのスピーカーを組み合わせたような機能だといえよう。

  • モーションIRカメラ
Joy-Con(R)底面に搭載。
Wiiリモコン先端に入ってたのと同じ赤外線(IR)カメラだが、今回は配置が配置なので捉えた物体の形状・動き・距離等を読み取るために使う。
例としてはジャンケンのグー・チョキ・パーといった手の動きを認識できる。
当初はロンチタイトルの『1-2-Switch』ぐらいしか活用するタイトルが無かったが、発売から約1年間の雌伏を経て『Nintendo Labo』でそのポテンシャルがさらに発掘された。
具体的には、リモコンカーの先に取り付けて暗視カメラにしたり、ダンボールでできたピアノの鍵の動きを読み取ったり等。
他にも『リングフィット アドベンチャー』ではここに親指を押し付けることで脈拍計として使えるなど。
なお次世代機であるSwitch 2のJoy-Con 2では側面中央のマウスセンサーに姿を変えた模様。任天堂だけでも対応作が7~8本だけだったので、あまりにもニッチ過ぎたようだ

  • NFC通信
Joy-Con(R)のスティックの内部に搭載。
現時点ではamiiboとの連動要素にのみ使用され、Wii Uで可能だった交通系電子マネーの使用には対応しなくなった。

  • キャプチャーボタン
Joy-Con(L)に搭載。
ゲーム画面の静止画及び最大30秒の動画の撮影を行う事ができる(動画については全てのソフトで対応しているわけではない)。
他社のゲーム機と同様、ソフトメーカー側がネタバレされたくないような場面は撮影・録画できないようにも設定可能。
撮影した画像や動画は保存され後から見返す事ができる他、インターネットを通じてSNSへの投稿も可能。

周辺機器

コントローラー関連

  • Joy-Conグリップ(両手用/片手用)
両手用はJoy-Conの(L)と(R)を合体させ1つのコントローラーとして使用するため、片手用はそれぞれに装着して、おすそわけや両手に1つずつ持ってプレイするためのグリップ。本体に各1セット同梱。
あくまでアタッチメントであり、グリップを使わずLR分離状態のまま使うのと操作性以外の違いはない。片手用も必須ではないものの、使わないとかなり持ちにくい。また、すっぽ抜け防止のストラップと横持ち/おすそわけ専用のSR・SLボタンを押しやすくする補助ボタンも付いている。
なお、Joy-Conも当然ながらバッテリー内蔵式。本体の充電時に両脇に繋いでおくと同時に充電される。
流石に本体よりは長持ちするが、着脱の時はそこそこ固いのでテレビモードでは手間なのが難点。
そのためか、充電ケーブルが接続可能なJoy-Con用の充電機能付きグリップも別売されている。

  • Nintendo Switch Proコントローラー
分離合体するJoy-Conとは異なり、1個で完結している無線コントローラー。1回の充電で40時間持つ。Switch本体には付属しておらず、別売り。
有線接続も可能だが、テーブルモードの場合はUSB Type-C変換アダプタ(とプレイスタンド)が必要なうえに、入力遅延が無線の方が少ないという謎仕様。*3
モーションIRカメラが搭載されていない以外は基本的にJoy-Con(L)・(R)と同様の機能を備えつつ、ボタンもスティックも大きく操作しやすくなっていて快適。
コントローラ中央にあるロゴの辺りはNFCになっており、amiiboなどを読み込ませられる。しかしamiiboマークが描かれていないので気づきにくい。
Joy-Conと同様、Bluetooth経由でPC等への接続が可能。
バッテリーパックの取り外しは出来ないが、仕様書からCTR-003、すなわち無印3DSのものと共通化流用している様子。
また、右スティック部分の基板に「THX2 ALLGAMEFANS!」*4とメッセージが刻まれている。
充電・接続はUSB Type-Cで行い、ドックのUSBポートとつなぐためのUSB Type-C to Aケーブルが付属している。

ちなみにコントローラーのスティック配置は、Joy-ConとProコントローラー共にゲームキューブとXbox系列に準じたものになっている。

  • ファミリーコンピュータ コントローラー
  • スーパーファミコン コントローラー
  • NINTENDO 64 コントローラー
  • セガ メガドライブ ファイティングパッド 6B
マイニンテンドーストアにて、後述のNintendo Switch Online加入者限定で販売。
オンラインサービスに加入する事で遊べるレトロゲームのオンライン対応版ソフト(後述)を、本格的に遊ぶための無線コントローラー。
ファミコンコントローラーはジョイコンと同じレールが付いているので、本体に取り付けるだけで充電が可能。
HD時代のゲーム機に任天堂機コントローラーの元祖が挿さっている光景は中々シュール。
ファミコンはⅠコンと、マイク付きのⅡコンの2個セットで、それ以外は単品での販売。

Nintendo Classicの同機種ゲームにしか対応してないと思いきや、64コントローラーがソフト版のスーパーマリオ3Dコレクションスーパーマリオ64に対応している。
ただし要アップデート。

  • ゲームキューブコントローラ接続タップ
スマブラでお馴染みゲームキューブコントローラを使い回す際に必要なタップ。Wii U版の再販なので、スマブラーの人は買い足さずに流用可能。
Wii Uとは異なりスマブラ以外にも対応ソフトがあるらしいが、使い勝手にやや難がある模様。
スーパーマリオ3Dコレクション内スーパーマリオサンシャインがアップデートでネイティブ対応するようになった。

これらの他にもHORIのゲームキューブ風コントローラをはじめ、サードパーティー各社から様々な有線・無線コントローラーが発売されている。
Joy-ConやProコンのスティックを酷使すると壊れたときに出費が痛い……ということで、ゲームによっては初めからサードパーティ製のコントローラーを使用するプレイヤーもいる。

Nintendo Switch ドック

ドッではない、ドッ

Switch本体を差し込んで接続する事で、テレビへの映像出力を行う周辺機器。本体に1つ同梱。
本体の充電用スタンドになるのは勿論、背面にHDMI 1.4出力端子が1基、USB 2.0端子が側面に2基、背面に1基が搭載。
誤解されがちだが、ドックはテレビへの出力と必要な電力の供給、USB機器への対応が役目であり、ドックに差したまま本体の画面でプレイする機能はない。

背面のUSB端子にWii用含めた別売の有線LANアダプタを付ければ、インターネットへの有線接続もできる。
有線LANについてはギガビットに対応しているので、対応しているアダプターなら更に高速で安定した通信が可能である。
ただしASIX社のAX88179*5を搭載している製品に限る。

また、3つあるUSB端子の内、背面の1つは今後のアップデートでUSB 3.x Gen1(5Gbps)に対応予定だった
USB 3.x対応端子は青色に塗装することを推奨されており(一応、必須ではない)、ドック内の端子の1つのみ実際に青色なので、そこをアップデートで3.xに変更することが予想されていた。
しかし、後述の有機ELモデルと共に新たな仕様のドックが発表され、新ドックはUSB端子が1基減った代わりに有線LANポートが搭載されている。
その削除されたUSB端子がまさに前述の青い背面端子で、ドックの公称仕様は「USB 2.0×2」と明記されているため、少なくともこれ以降のドックではUSB 3.x対応が無かったことになる模様。
というか有機ELモデルの発売と同時に、任天堂公式サイトから「USB 3.0に対応予定」の文言がひっそり消えた
2種のドックはあくまで搭載設備が違うだけで、Switch本体はどちらも自由に併用可能。

余談だが、差込口がType-Cだからといって、DisplayPort Alternate Mode対応のスマホやタブレットを差し込んでも当然テレビには映せない。これはドックには物理的にSwitch以外を直接差し込めないのみならず、信号的にもSwitch以外を受け付けないようにしているため。
一部機種では映ったとも言われたりするが、言うまでもなく動作保証外なので素直に専用のアダプタを使いましょう。

サードパーティ製のよりコンパクトを謳うものや、ドックというかテーブルモード向けの充電機能付きスタンドも存在する。

ACアダプタ/充電端子

充電端子はWii U・3DSまでの独自規格の端子ではなく、Androidスマートフォン等でお馴染みの汎用型のUSB Type-C端子となっている。

そのため、市販のモバイルバッテリーで充電することが可能。
ゲーム部門ではライバル会社であるはずのソニー製のモバイルバッテリーの箱に「Nintendo Switch対応」というシールが貼られている光景は、一部で話題になったとかならなかったとか。
ただし、遊びながらモバイルバッテリーを使う場合、通常のUSB給電では電力が足りなくなることがあるため、USB PDで9V・2A(18W)相当の出力に対応したものを使うのが推奨される。
任天堂公式ライセンスを受けたPD対応バッテリーなら安心。

ちなみに、SwitchのACアダプタを他の機器の充電に使い回すのは非推奨。
付属のアダプタは急速充電規格「USB PD」にほぼ準拠した仕様(形状はカステラアダプター)となっているものの、15W以上の出力で必要な「9V」出力の仕様が無い(付属アダプタは15V×2.6A=39Wなので、本来9V・3.0A以上の出力仕様も必要)ため、対応していない機器に挿して充電しようとすると機器を損傷するおそれがある。
なお、筆者が個人的に調べてみた結果であるという前置きをつけた上で書くなら、どうやらSwitch本体側はUSB PD規格に対応(或いはそれに近い制御)しており、ACアダプタ側が独自規格であるという可能性が高い。(ACアダプタの仕様により、「9V」「12V」「15V」と電圧が変化するのが確認できた)

このため、汎用のPD対応アダプタでもほぼ問題なく急速充電は可能と考えられる。
だが、できることなら15V・1.8A以上(と9V・3.0A)の出力に対応した製品を使うのが、充電速度の面では推奨されるだろう。

ソフトメディア/パッケージ

ソフトメディアは「ゲームカード」と呼ばれるカートリッジを採用。
任天堂の据置機のソフトメディアがシリコンメディアカートリッジになるのは、実にNINTENDO64以来。
ゲームカードの容量は2018年10月時点で最大32GBであり、2019年には64GBカードも登場予定……だったのだが結局2025年現在でも実現せず、事実上Switch 2に持ち越されたと思われる。

スーパーファミコンなどを見ればわかるように、カートリッジメディアは容量アップなどのメディア自体の強化がしやすい反面、原価はディスクより高いというデメリットもある。
当然、容量の大きいカートリッジ程原価が高いため、データ量の多いパッケージソフトはそれだけソフト価格も上がりやすい。
バイオハザードリベレーションズ』等、価格を抑えるためにデータ量の多い作品をダウンロード専売としたソフトもある。
その他、カートリッジにギリギリ入りきらないデータは発売と同時にアップデートパッチをダウンロードさせて補うなど、色々と価格上昇を抑える工夫がなされている。

このゲームカードはDSや3DSソフトより一回り小さい程度と非常に小型なので、誤飲防止のために、ギネスに世界一苦い物質として登録されている安息香酸デナトニウムが塗布されている。
Switch発売直後にはゲームカードを舐めると非常に苦い味がする事が大きな話題になり、Switchソフトは(前の所有者が舐めているかもしれないから)中古で買ってはいけないといったネタまで広まった。
ちなみに、ゲームカードを触った後の手を舐めても味を感じるレベルの強烈な代物である……

パッケージは縦長で今までよりも薄くなっているが、ゲームカードのサイズとの割合を考えると面積はやや大きめ。
透明になっているので、ジャケットの紙の裏面に何かが印刷されている場合は内側から見える。例えば『スーパーマリオ オデッセイ』の場合「Jump Up, Super Star!」の英語歌詞が書かれている。

コストや紙資源の削減、アップデートで変化していくようになったゲーム内容といった都合からか、基本的に取り扱い説明書は廃止されており、ゲームによってはチラシの1枚も入っておらずゲームカードがポツンとあるだけなので若干寂しい。
代わりにジャケットの紙の裏面に情報や基本操作が載っていることが多く、サードパーティ製のソフトによっては簡易的なマニュアルを付属している他、初回限定版の特典に説明書封入という作品もある。

一方、本機はWii Uの直接的な後継機ではないという位置付けから、Wii以降の据置機に搭載されていた後方互換は廃止され、他のソフトメディアには非対応となっている。*6

本体機能

プレイスタイルの自由度

Wiiでは棒状のコントローラ、Wii Uでは画面付きのゲームパッドの存在が、サードパーティにとってゲーム制作の「制約」となっていた面が否めなかった。
今回は1画面に標準コントローラと、他のゲーム機からの移植や複数ハード展開がしやすい構造になっている。
Switch固有の特徴である「切り替え可能なプレイスタイル」についても、以下のように1つのモードに重点を置いたソフトが早々に出ているため、「無理に特徴を生かす必要はない」というスタンスが取られている。*7
  • 画面から距離を取らなければならないなどの理由で「TVモード推奨」のソフト
  • タッチ操作を必須とする「携帯モード専用」のソフト
  • Joy-Conの片方ずつ(Proコンなどは不可)を必須とするため「携帯モードでは使用不可能(Liteでは別売りのJoy-Conが必要)」
    • マリオオデッセイの2人協力プレイ、『世界のアソビ大全51』のローカル多人数モードなど

スリープ

Nintendo Switchはスマートフォンのように、使い終わったら電源を切るのではなく「スリープ」するのが基本的な使い方。そのため、電源を切るには電源ボタンを長押しする仕様になっている。
スリープからの復帰は一瞬で完了し、待機画面を経てそのまますぐゲームの続きが楽しめる。
また、長時間操作せずに放置していると画面が暗くなり、そのまま更に放置すると自動的にスリープモードになる。「寝落ちしたら充電がなくなって電源が切れたせいで1時間分のプレイデータを失った」という心配もない。
各ソフトの起動も全体的に高速化しているので、「ゲームを起動すること自体が億劫」という悩みを解消。忙しい人でも気軽にいろんなソフトを遊べる。
またソフトによっては「画面はスリープするが音はそのまま流れる」という画面オフ再生に対応していて、ヘッドホンと共に持ち出せば携帯音楽プレイヤーとしても使える。

ゲームニュース

登録しているチャンネルを中心に、ゲームの最新情報を届けてくれる。
定型文ばかりでなかなか読む気の起きなかったWii Uなどの「おしらせリスト」とは違って画像や動画付きのニュースが多く、中には書き下ろしのイラストやマンガが載っていたり、ソフト制作者直々のメッセージやゲームの攻略情報、小ネタを紹介するような力が入った記事もあったりするので読み応え十分。
何よりどのページも一瞬で開くのでサクサク読める。
インディーゲームの情報も積極的に発信されており、Nintendo Switchでインディーゲームがよく売れる土壌を作るのに一役買っている。乙女ゲーの紹介文は最早ただの限界オタク

アルバム

静止画の撮影と最大30秒の動画撮影に対応。
動画はキャプチャーボタンを長押ししたとき、その30秒前からボタンを押した瞬間までの映像を保存する。「いまの良かった!」と思った後に押して保存できる仕組み。
なおこの間に悪魔城は崩壊する*8
アルバムは保存した画像の閲覧や整理、静止画に文字を付ける、動画の切り抜き、SNSへの投稿などができる。
今のところDSiほど派手にデコるような機能は無い。

また、ゲームや場面によっては静止画と動画のどちらか、あるいは両方が撮れなくなることがある。

みまもりSwitch

正確には本体と連動するスマホアプリ。
1日に遊ぶ時間を制限したり、インターネットへの接続や年齢区分のあるソフトをブロックしたり、プレイ記録をスマホから確認できたりする。
保護者がスマホにダウンロードして子どもの使用状況をチェックする使い方が想定されているが、プレイ時間を確認したりやり過ぎを防止する機能が便利なので、自分のスマホにダウンロードして使う人もいる。

Nintendo Switch Online

名前通り、Nintendo Switchの有料オンラインサービス。
有料サービスであり、個人プラン(30日306円、90日815円、365日2,400円)か、最大8つまでのアカウントで使用できるファミリープラン(365日4,500円)のいずれかのプランを選択して加入する。
加入していれば以下のサービスを受ける事ができる。

  • インターネットを介した他のユーザーとの対戦・協力プレイ
一部のゲームはこれを加入せずにオンラインプレイが可能だが、基本的にはPS+やXboxGamePassと同じく、
任天堂が整備しているインフラを使ったオンラインプレイの利用権として必要。

  • 「Nintendo Switch App」アプリの使用
相手とボイスチャットやオンラインプレイの待ち合わせを行ったり、対戦結果を保存・確認したりできるスマートフォン向けアプリ。

ファミコン及びスーパーファミコンゲームボーイのタイトルをプレイできる。いわばサブスク版バーチャルコンソール。
プレイできるタイトルは不定期に追加される。自社作品が中心だがサードパーティーの物も配信されることもある。
ゲームボーイは「無印」「ポケット」「カラー」の三つの画面を再現可能。

  • セーブデータお預かり
本体内のセーブデータをインターネット経由で外部に預ける事ができる。万一本体のゲームデータが消えてもこのサービスで復活可能。
ただし対応していないソフトもあるので注意。

  • 2本でお得 ニンテンドーカタログチケット
オンライン加入者のみが購入できるゲーム引き換え券。
交換対象が任天堂ソフトのみかつダウンロード版限定という制約はあるものの、9,980円でソフトを2本交換できる破格のサービス。
実際の割引率はソフトによって異なるが、例えば『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』と『ゼノブレイド2』を購入しようと思った場合、通常では二本合わせて16,456円になるところが9,980円になり、約6,000円も得をしてしまう魔法のチケット。
有効期限は購入から1年間なので、予め計画を立てて購入することを推奨する。
2026年1月末に販売終了予定。

また、DLC同梱版やNintendo Switch2専用ソフトとは交換不可なので、これまた注意すること。
両機種に対応したタイトルをチケットで交換してアップグレードパスを買い足すという手はあるにはある。

  • いっせいトライアル
不定期で開催されるイベント。
加入者はイベント期間中、対象ソフトを最後まで遊ぶことが可能。時間が許せば全クリだってできてしまう。
プレイしたデータは製品版に引き継ぎができるので、購入さえすればイベント終了後もそのまま遊べる。

  • Nintendo Music
任天堂から今まで発売されてきたゲーム等のBGMが聴ける音楽配信サービス。SwitchではなくAndroidiOSのアプリとして提供されている。現状パソコンには未対応。
基本的に毎週火曜日に配信タイトルが1作品分追加される。
収録タイトルも様々で、直近にサントラCDが発売されたばかりの『Pokémon LEGENDS アルセウス』や『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』に、サントラCDにプレミアがついて入手困難になっている『スーパードンキーコング』シリーズなどが目玉。
なお、過去にサントラが発売されているタイトルについては、曲名やデフォルトのループ調整等が基本的にそちらに準拠している。
シャッフル再生やループ再生、自分のプレイリスト作成といった音楽配信サービスの基本的な機能は勿論完備している他、ゲームに特化したサービスらしく、一部の曲は自然に長さを変更できる「ながさチェンジ」という機能が提供されており、15分・30分・60分単位で選択可能。何故かポケモン曲は全曲非対応
また、各楽曲のサムネイルはゲームのスクリーンショットなどから個別に設定されており芸が細かい。
過去に自分がSwitch上でプレイしたゲームの一覧も見られるので、そこから曲を探すことも可能。
まだクリアしていないゲームのBGMを聴くのもなぁと思う人のためにもネタバレ防止機能が存在しており、登録した作品の曲をを一旦除外することができる。


  • その他加入者限定特典
上記以外のネットワークを介したサービス(ニンテンドーeショップや本体更新など)は未加入でも無料で使用可。
なお、2018年9月の正式サービス開始までは無料で利用できていた。その後も一部タイトルの購入特典や外部とのキャンペーンなどで一定期間の無料特典が付く場合もある。デフォルトの無料体験期間は7日。
2019年2月には加入者限定無料ソフトとして『TETRIS 99』の配信が開始。また、2020年9月にはスーパーマリオ35周年を記念して『SUPER MARIO BROS. 35』が期間限定で配信(現在はサービス終了)、2021年4月には『PAC-MAN 99』が、2023年9月には『F-ZERO99』が配信されている。

Nintendo Switch Online+追加パック
上記のオンラインサービスに加えていくらかの新コンテンツが追加された新しいプラン。
従来プランとは異なり料金は12ヶ月分まとめ払いのみであり、金額は個人プランで4,900円、ファミリープランなら8,900円。
追加パックでのみ受けられるサービスは以下の通り。

  • Nintendo Classics NINTENDO64/ゲームボーイアドバンス
64ゲームボーイアドバンスのアーカイブ。
なお、64では配信に際しCEROで「D」または「Z」区分に指定されたタイトルを遊ぶための専用ソフト「NINTENDO64 Nintendo Classics 18+」が別途用意されている。

  • セガ メガドライブ for Nintendo Switch Online
まさかのセガ・メガドライブのアーカイブ。開発には『SEGA AGESシリーズ』やメガドライブミニのソフト移植などでマニア層に定評のあるM2が関わっている。
バーチャルコンソールから唯一復活した他社ハード。

利用期間内に限り、これらのDLCを追加料金なしで遊べる。

本体バリエーション

2021年7月時点ではおおまかに3つのモデルが存在している。
それぞれ特徴が違うので、購入の際には自分に合ったものをチョイスしよう。

【通常モデル】

  • グレーセット
  • ネオンブルーネオンレッドセット
通常販売されているセット。
同梱されているJoy-Conの色が違うだけで、基本的なセット内容は同一。
2019年8月30日以降はバッテリー持続時間が伸びた新モデル(HADモデル)に変更されている。

  • カスタマイズセット
Joy-Con及びストラップのカラーをそれぞれ自由に選択できるセット。
マイニンテンドーストア専売商品で、これでしか手に入らないJoy-Conやストラップの色パターンもある。

  • 2台目用セット
SwitchドックとACアダプターを廃し、27,478円で購入できるようになった廉価版。
うちにはすでにSwicthを持っている家族がいるし、TVは家に1台しかないのでこれ以上ドックは必要ないなぁ、という方はこちらを。
カスタマイズセットの亜種なので、Joy-Conとストラップのカラーも自由に選択できる。
マイニンテンドーストア専売商品。

【Nintendo Switch Lite】

TV出力やJoy-Conの分離合体、ほか一部機能をなくした、携帯モード専用バージョン。
左側が4つボタンでは無く、お馴染みの十字キーになっているのが特徴。
Joy-Con装着状態の通常モデルより小さく持ち運びしやすい。
価格も21,978円と手ごろで買いやすいが、当然なくなった機能は使えないので、ソフトによってはSwitch Liteでプレイすることが不可能なものもある。
プロコンやJoy-Conといった無線接続のコントローラーはそのまま使えるが、有線コントローラーなどUSB接続が必要な周辺機器はサードパーティ製のハブスタンドがないと使用できない。

カラーバリエーションは「グレー」、「ターコイズ」、「イエロー」、「コーラル」、「ブルー」の5種類となっている。

【有機ELモデル】

2021年7月に突如発表された新モデル。発売日は2021年10月8日。
基本性能は通常モデルと変わらないが、本体の液晶画面が有機ELに変更されて発色が鮮やかになっているほか、画面サイズ自体も7インチに拡大されている。
スピーカーも強化され、テーブルモード時に本体を自立させるスタンドは無段階に角度を変更可能に。本体ストレージが64GBに倍増した他、ドックも新調され有線LANを標準搭載した。
特に携帯・テーブルモードに特化した豪華版といった立ち位置のモデルで、通常モデルよりも上位のゲーム体験ができると言えるが、そのぶん価格も37,980円と3つのモデルの中では最も高い。
普段からTVモードが主体で、有線LANアダプタや十分なメモリーカードも持っているという人にはすぐに買い替える程の進化は感じにくいかもしれない。
また、通常モデルよりも3ミリだけではあるが横幅が大きいので、Nintendo Laboなど通常モデルの寸法を前提として作られている周辺機器は使用感が異なる場合もあるとのこと。
無線式のプロコンは勿論、Joy-Conや旧型ドックといった主要な機器は問題なく流用可能。

カラーバリエーションは通常モデルと同じネオンブルーネオンレッドセットと、Joy-Conとドックが白くなったホワイトセットの2種類。
奇しくも同日に発売する『メトロイドドレッド』のメインキャラであるサムス及びエミーと、それぞれ同じ配色である。
なお、ホワイトカラーのJoy-Conとドックは 現在でも単品販売されていない ので注意。


性能

公式からは「NVIDIA社製、カスタマイズされたTegraプロセッサー」以上の詳しい仕様は公表されておらず、下記は有志の解析から推定された内容。

Nintendo Switch Wii U(比較用)
CPU コア ARM Cortex-A57 4コア
+ARM Cortex-A53 4コア
IBM PowerPC "Espresso" 3コア
ビット幅 64bit 32bit
クロック 可変レート(ベースクロック1.02GHz/コア) 1.24GHz/コア
GPU 名称 NVIDIA Maxwell CUDAコア "GM20B" (DirectX12) AMD Radeon HD カスタム "Latte" (DirectX10.1)
処理性能(FP32) 単体使用時: 157~196~236GFLOPS
ドック装着時: 393GFLOPS
160~352GFLOPS
処理性能(FP16) 単体使用時: 314~392~471GFLOPS
ドック装着時: 768GFLOPS
N/A
CPU・GPU製造プロセス 20nm(初期型)
16nm(新モデル・Lite)
45nm(CPU)
40nm(GPU)
メインメモリ 4GB LPDDR4(初期型)
4GB LPDDR4X(新モデル・Lite)
2GB DDR3+32MB eDRAM
内蔵ストレージ 容量 32GB
64GB(有機ELモデル)
8GB(ベーシックセット)
32GB(プレミアムセット)
転送速度 400MB/s 104MB/s
ソフトメディア 専用ゲームカード(ROMカートリッジ)、最大32GB 専用光ディスク(BD-ROMベース)、25GB
消費電力(最大) 39W 75W

全体的にWii Uよりもスペックが高い。非常に小さな本体でWii U以上のスペックを発揮できるあたり技術の進歩を感じさせる。
可動部を空冷ファンのみにしたことや、SoCのTegraの高い電力効率等のおかげで、消費電力もWii Uより下がっているのもポイントである。
しかし携帯機としても使用できるSwitchは発熱・バッテリー持続時間等を考慮しなければならない都合上、単体での使用時には意図的に性能を落としている。
TVモード専用のソフトにでもしない限りは携帯モードの性能に合わせてソフトを作る必要があるため、本体性能を限界まで引き出すようなソフトの開発は難しい。
普通にゲームを遊ぶ分には、RAMが増えたところ以外はWii Uからの大幅な進化を感じるという事は少ないと思われる。

しかしWii Uのスペックを限界まで引き出したであろう「ベヨネッタ2」や「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」が携帯モードの時点で、同等もしくはそれ以上のグラフィックやフレームレートで動いている*12ため、そうした意味での「進化」は確実に感じられるはずである。
「マリオカート8 デラックス」ではTVモードの描画解像度が720pから1080pに向上している上、Wii U版で実現出来なかったアイテム2個持ちが可能になっていたり、
60fps動作を死守している「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」では8人対戦がほぼ制約なしで遊べるようになっていたりなど、中にはWii Uをはるかに上回る性能を引き出しているソフトもある。
また「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」や「スーパーマリオ オデッセイ」、「Mortal Kombat 11」など携帯モード時の一部場面で、通常よりも高いクロック周波数で動作するソフトも存在する模様(上記の236・471GFLOPSがそのモード)。

ゲームキューブ以降の任天堂の据置機は、IBM製CPUとAMD製GPU*13を採用してきたが、本機はゲームボーイアドバンス以降の携帯機で採用されていたARM系アーキテクチャと、任天堂の家庭用ゲーム機としては初となるNVIDIA製のGPUを採用している。

元々、ゲームキューブ以降の任天堂ハードはゲーム開発がしやすいハード設計を目指しているが、Switchは汎用的なアーキテクチャを採用する事で歴代ハードでも特に開発がしやすくなっており、インディーズタイトルの参入や他機種からの移植が容易になっている。
また、移植のしやすさはインディーズ制作会社だけでなく任天堂自身も恩恵を受けており、Wii U向けとして制作していた「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」のSwitch移植が簡単に行えたとのこと。*14

ただ単純なスペックの制約故、同世代の競合機やPCとの連動も必要なクロスプラットフォーム対応はやや苦手。特にメインメモリの少なさは、容量の大きい3Dゲームでは純粋なハンデに繋がってしまう。
クロスプレイではないか、もしくはプレイスタイルの多彩さを活かせる自社タイトルの移植でこそ大きく輝く特性と言えるだろう。
また、バッテリー消費を考える都合上、マシンパワーで無理に動かす手は難しいのでデータの念入りな軽量・最適化はおそらくクロスプレイしなくても必須事項。実現できるプログラマー様々とも言えるが。

上記した「バッテリー持続時間が長くなった新モデル」及び「Nintendo Switch Lite」は初期型のSwitchからバッテリーの持続時間が伸びているが、これはバッテリーの容量が増やされたわけではなく、内部パーツの消費電力が減ったことで結果的にバッテリーの持続時間が伸びた為である。*15
有志の解析では、SoCのTegraプロセッサの製造プロセスが20nmから16nmに微細化されたことと、メモリがLPDDR4の省電力版であるLPDDR4Xに変更されたことが要因であると推測されている。
ゲームハードの解析に定評のあるEurogamerによると、「ゼルダの伝説BotW」をTVモードでプレイした時の消費電力が約13.3Wから約7Wに減らされ、さらに発熱も抑えられていることが明らかになっている。*16
ちなみに新モデル及びLiteのSoCの型番はODNX10-A1(旧型はODNX02-A2)。
新モデルを発売したのは、部品を共用することで生産コストを抑える狙いがあると考えられる。


本体ストレージは、通常モデル及びLiteと有機ELモデルで差があり、通常・LiteではWii Uのプレミアムセットから引き続き32GBフラッシュメモリを搭載。有機ELモデルでは倍の64GBを搭載している。
だがOS等にも利用しているため、実質的にユーザーが保存用に使えるのはそれぞれ約26GB、約53GB。
また外部ストレージとしてmicroSD(XC)カードを使用可能。SDXC規格の最大容量である2TBまで対応している。
スピードクラスはUHS-Ⅰ・U3*17に対応しており、高速な読み出しが可能である。
現状は外部保存媒体としてサポートしているのはSDカードのみだが、HDDを外付けして使えるようにする予定と任天堂が表明している。
とはいえ発売前から2025年現在まで続報がなく、かと言って撤回もしていない。ポシャったけど過去の発言を放置してる可能性が濃厚になりつつある*18

映像出力はWii Uと同様フルハイビジョン対応。
解像度は1080p、720p、480p及び「自動」から選択可能。
出力端子はHDMIのみに対応。Wii U以前とは異なりD端子、S端子、AVマルチ端子等は使用できない。

前述の通りコントローラの無線通信はBluetoothで行なわれているが、コントローラ以外の物をBluetoothで接続できなかった。
なので任天堂公式HPのスペック表に「通信方式: Bluetooth 4.1」と書いているが、他のデジタル機器のようにBluetoothキーボードなどを接続で利用しようとしてもできないので注意。
ファームウェア13.0.0からBluetoothオーディオ機器やイヤホン類を接続可能になったが、利用中はコントローラの最大接続数が2つまでに減少したりローカル通信が使用不能になったりするので注意。
また、無線オーディオは現時点では音が遅延しやすいSBCしか対応していない為、普通のゲームはともかく遅延するとやりにくいゲームでは有線のイヤホンを使うのが無難。
もちろんイヤホンジャックやUSB接続でのアクセサリは大抵のものが使える。

【動向】

ハードウェア

発売に先駆けてオープンしたオンラインストア「マイニンテンドーストア」では、Joy-Conやストラップのカラーを自由に選んで組み合わせる事ができるカスタマイズ仕様の販売を告知していたのだが、予想以上の好評を受けてアクセスが殺到。
長期に渡るアクセス障害を発生させ、発売日発送分の予約受付が初日にほぼ終了となった。

その後もしばらく需要が衰えず、公式ストアのみならず全国的に品薄に。
スマホやタブレットと部品の取り合いになるので上手く増産できないといった不運まで重なってしまい、入荷する度に即完売、ネット上での相場は定価より1万円以上も高騰という時期が数ヶ月続き、ついには公式サイトに謝罪文が掲載される事態にまで発展。

最初の年末商戦が明けた2018年には徐々に解消され始めたと思ったら、今度はソフトや関連商品の売り切れが各地で多発してしまう等、久々に社会現象クラスの事態を引き起こした。
2018年夏以降は本体・関連商品双方の品薄は解消されており、しっかり定価で購入できる。

……と思いきや、それでは終わらなかった。
4年目に突入した2020年3月、あつまれ どうぶつの森』の発売と新型コロナウイルス流行(COVID-19)による生産出荷の遅延や外出自粛に伴う需要が重なり合って再び品薄状態となり、またもや価格が高騰する状況に。
需要の増加に加え、転売ヤーの標的にされ品薄状態に拍車がかかっている状態だったが、2020年末の年末商戦に向け増産体制を強化。
2020年末から2021年初頭までには概ね定価で購入できる状態に戻った。

海外でも好調な滑り出しを見せており、発売およそ1年でWii Uの最終売上を越える国内約400万台、世界合計約1,700万台を売り上げた。
シリーズ累計販売台数は2025年3月末時点で1億5,212万台
それまで任天堂の据え置きゲーム機で最も普及していたWiiの1億163万台を越える売上となり、VHSの後釜たるDVDプレイヤーとしての莫大な需要に応えたPlayStation2*19や、実用・教育ツール需要によりゲームの浸透を推し進め任天堂機の最多記録を打ち立てたニンテンドーDSシリーズ*20に迫るペースで売り上げを伸ばした。

ソフト展開

Wii Uでのスタートダッシュの失敗やサードパーティ不足の反省点を生かしてか、Wii U用ソフトとして開発されていた『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』を本機とのマルチ展開とした上でローンチタイトルに持ってきたり、そこからさほど間を空けず『Splatoon2』や『スーパーマリオ オデッセイ』など大作を次々投入。*21
その後も、2020年の『あつまれ どうぶつの森』、2022年の『Nintendo Switch Sports』『Splatoon3』など、引き続き自社作品の投入が進められている。

『New スーパーマリオブラザーズ U デラックス』、『Xenoblade Definitive Edition』『ピクミン3 デラックス』などWii・WiiUのソフトの要素追加移植作品も多く登場している。

『1-2-Switch』や『Nintendo Labo』、『ARMS』、『マリオカート ライブホームサーキット』『リングフィット アドベンチャー』、『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』といった本機の特徴を活かした新ジャンルの開拓にも積極的。
そうでない既存シリーズにおいても、シリーズに新たな風を吹き込むような革新的要素を盛り込み、“アタリマエを見直す作品”が出てくる傾向にある。


アップデートによるコンテンツ追加やDLCの導入ソフトも増えており、特に『マリオカート8 デラックス』では発売から5年経ってからの「コース追加パック」の販売により、元々化け物だった売り上げ本数を更に伸ばしている。

サードパーティのソフトでは2017年にマイクロソフトの『Minecraft』、2018年にはエピックゲームズの『フォートナイト』、2019年にはスクウェア・エニックスの『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』を発売するなど、こちらも強力なラインナップを揃えている。
また、本体発売から4年経った2021年にもカプコンの『モンスターハンターライズ』やコナミの『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』、アトラスの『真・女神転生V』など、積極的にサードパーティーソフトを展開している。

また、現行の携帯ゲーム機が事実上Switchだけになったため、上記の『ポケモン』等携帯機メインのシリーズの多くも新作はSwitchに移行。*22
ギャルゲーや乙女ゲームなど、携帯機を中心にハード晩年に急増する傾向のあったノベル系ジャンルも現在はSwitchでの展開が中心となっているようで、乙女ゲームに関しては任天堂も自社サイトに「乙女ゲーム特集」というページを作成したりNintendo Directや公式Twitter(現X)などで紹介したりしている。

上記の様にSwitch自体がゲーム開発のしやすいハードである事に加えて、外部の開発者が参入しやすい環境も積極的に作られており、Unreal Engine 4やUnityが使える等開発・移植がしやすく、開発ツールに至っては約5万円という超安価で提供。
更にインディー開発者向けのサポートも行われており、数々のインディーゲームが移植、販売されている。

加えて、発売前にゲーム機で展開していなかったスマートデバイス向けのアプリ開発を行っていた企業にも、任天堂の営業担当者がSwitchに参入しないかと腰を低く打診して回ったようだ。
この辺りはかつての任天堂社長であった山内氏自らの「ついてこられる会社だけついてくればいい」という方針がソフト不足の一因になってしまった64時代の反省と、ダウンロード専売タイトルの一般化という時代の流れがあると言える。

以上の様な努力が功を奏し、PlayStation4をはじめとした他社ゲーム機とのマルチ展開が開発しやすくなり、同時発売・移植を問わず多くのマルチソフトが発売されている。
結果としてダウンロード専売ソフトも合わせれば1年程で400以上のタイトルを揃える事に成功。手軽さが評価されてSwitch版が一番売れている物も。
その後も順調にソフト数を増やし、発売1年半ほどで全世界での対応ソフト合計数が1000本を越え、現在も世界のどこかで1日あたり2本以上のペースで新作ないし移植タイトルが発売される状況が続いている。

ソフトの売り上げも順調に推移しており、2025年3月末時点での累計売上本数は13億9,123万本
Switchが据え置きハードも兼ねている事や、昨今ではデータのみのダウンロードという販売形式が普及している事などから一概には比較できないが、なんとそれまで最多記録を堅持していたニンテンドーDSのソフト売上本数9億4,872万本を大きく上回った。

ソフト単体の売上記録でも驚異的な記録がいくつも生まれており、発売から7年経過した『マリオカート8 デラックス』はあの『スーパーマリオブラザーズ』を超える約6820万本(2025年3月現在)という世界売上を記録。
『スプラトゥーン3』は日本での売上記録が3日で345万本となり、Switchのソフトでも最速の売上記録を達成したかと思えば、『ポケモンSV』が405万本で即座に更新。それどころか全世界3日で1000万もの記録を達成し、Switchソフトどころか任天堂ハードの全ソフトでの最高記録を塗り替えた。
そしてわずか半年後、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』が再び発売3日で全世界1000万本を記録。「最も早く売れた任天堂のゲームソフト」としてギネスにも記録された。

以前のゲーム機では任天堂のソフトばかりが売れるという状況も多かったが、Switchではサードパーティやインディーのソフトも売れているようで、ショップ内の週間ダウンロードランキングで任天堂の大作とインディーソフトが肩を並べているような状況も珍しくない。
中にはSwitchで出したらPC版の20倍も売れ、おかげで会社の存続に繋がったというインディー開発者がいる。
これを後押しするためか「Indie World」と言う名称で任天堂の担当者がインディーゲームを宣伝する様になった。

反面、Wii・Wii U・3DSで展開されていたバーチャルコンソールは2025年現在行われていない。
Switch発売前はこれまで配信されていた64以前のソフトに加え、GCのソフトもVC配信されると海外のニュースサイトに掲載されたが、任天堂アメリカ法人のレジー社長(当時)は「要望は理解しているが、当面は行う予定がない」と発売後インタビューで答えている。
ただしレジー社長は「これまでと異なる新たな形のレトロゲーム体験を模索している」とも答えており、
上記のNintendo Switch Online加入者特典でFC・SFC・N64・メガドライブ・GB・GBAのソフトが配信される様になった(N64とMD、GBAは高価格プランのみ)。

その代替と呼んでいいのか不明だが、ダウンロード販売が一般化したことからサードパーティーは他社ゲーム機と合わせて自前で販売することが増えている。
サードパーティソフトとしては、スクエニがSwitch発売と同時にSwitch向け移植『ドラゴンクエストヒーローズI・II』を投入。
3ヶ月後にはエミュレーションで実機でのプレイを再現した『聖剣伝説コレクション』。
2021年にはコナミが任天堂に先駆けてGBAのエミュレーションである『Castlevania Advance Collection』の発売を開始した。*23

家庭機ではなくアーケードタイトルとしてもネオジオがPS4・Xbox Oneにて先行配信されていたアーケードアーカイブスシリーズがSwitch発売日と同日から展開されており、Wii以来久々に任天堂ハードでネオジオのタイトルが遊べるようになっている。
ネオジオ以外のアケアカも、2018年7月の『オメガファイター』以降は基本的にPS4と同時配信となった。
またアケアカでは新たに『VS.スーパーマリオブラザーズ』等、これまで一度も配信されたことのなかった過去の任天堂のAC作品が初めてダウンロード配信されており、順次様々なタイトルが配信される予定である。

【問題点】

前評判を覆して任天堂最高売上を記録したハードであるが、コントローラーを筆頭に独特な仕様を山ほど詰め込んでいるため、ある程度仕方なくはあるが難点もある。

特にJoy-Conの値段に見合わぬ耐久性の低さ(特にスティック)はよく話題となる。
また、ボタンはもとよりコントローラー本体が小さすぎて、特におすそ分けプレイや横持ちプレイでは、大の大人ほど逆に慣れを要するなど、耐久性以外にも単純な使用感に難があるのもよく言われる部分。慣れれば問題なく操作できるので欠陥と言うほどではないのだが。
先祖となるWiiリモコンですら「ボタンが小さい」と言われていたので、「持ち運び」という点ではJoy-Conに圧倒的な分があるが、扱いやすさや手に馴染む感覚はWiiリモコンとどっこいと言えるかも。
Joy-Conに馴染めない人にこそプロコン……と言いたいところだが、こちらもスティック部分については初期不良が多く、経年による劣化も激しくなりやすい(これはSplatoon2大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIALといったスティック酷使対戦ゲームが2つも早々に台頭してきた影響もあったかも)。

Joy-Conの値段が高いのは良い意味での高機能・小型化を詰め込んだ結果であり、その多くは体感ゲームの手応えをよりよくするためのものである。
が、肝心の体感ゲーム系は任天堂からですらほとんど出ておらず、Joy-Con推奨ゲームはローンチのいくつかと、たまーにそれを推したゲームが作られるくらい。そもそも任天堂自身ですらやんわりとプロコンを推奨していると思しきゲームも多い。
勿論、Nintendo Laboやリングフィットアドベンチャー、マリオカート・ライブホームサーキットなど貪欲な作品もあった。これらは用途が限定的と言われたWii Uゲームパッドとは異なり、コントロール装置に関してはソフトに同梱という、事実上の別売りとなった。
しかしその別売り化したことが結局ハードルの高さに繋がってもおり、自身が生み出したコントローラー・コントロール装置について革新しきれてはいなかった。
この「ハード特有の機能を使い切れていない」という点は、Wii以降の3DSを筆頭にどのハードにも言えることであるが、このSwitchでも惜しいことに解消はされなかった。
とは言え、ゲーム開発の選択肢と可能性を拡げるという面での寄与と、それがJoy-Conの耐久性及び値段とトレードオフにするほどのものだったか、と考えた場合、賛否どちらにせよ軽々に答えは出さないほうが良いだろう。

なお、Joy-Conはその耐久性がなさすぎた結果なのか、格安で修理を行うサービスを外部委託で展開していた。
これについてはカスタマーハラスメントが酷かったようで短命に終わっているのだが、こういった余計なサービス展開をする羽目になったのも、ひとえにJoy-Conに機能を詰め込みすぎた結果耐久性が犠牲になりすぎたことが原因となっている感は否めない。
ちなみに海外では「意図的にJoy-Conの故障を起こして修理費用で小銭を稼ごうとしている」という主張からくる、なかなか悪意たっぷりな裁判が起きている。
上記は極端な例としても、次世代機を求めるユーザーから「性能以上にコントローラーの耐久性を改善してくれ」といった要望は多かった。

コントローラーと言えば発売当時から囁かれた入力遅延も見過ごせないだろう。
Wii Uからの移植タイトルやレトロゲームサブスクなどでも言われてきた以上に、Switchは操作遅延が如実に出るハードとなってしまった。
もっとも、これは先代であるWii Uが「遅延を前提に作らざるを得なかった結果、無線前提のゲームハードとしては入力遅延が減少している」……要はWii Uの遅延防止の技術が半端なかったという事情もあるのだが、先述したプロコンの仕様含めて悩ましい課題となっている。

そして、先にちょっと触れたように、他社ゲーム機と比べるとハードウェア性能が低いことも見過ごせなくなっている。
元々、任天堂のゲーム機には必要以上に高い性能を求めるユーザーがそれ程多くない。これはソフトの客層的にも、競合相手がひしめき合う中で現に生き延びてきたことからもまず事実である。
……が、そうはいってもこのSwitchに関しては基本性能が変わらないまま既に8年以上を戦い抜いたXbox360もかくやのゾンビ機であり、いくら移植の互換性が高いとは言っても流石に旧型のスペックであることは否めない。
当時としてもちらほら懸念されていたスペック面のハンデは、やはりゲーム機ライフサイクルの末期になるにつれて一気に浮き彫りになってしまったと言える。

そもそも任天堂はWiiの頃より「ローパワーハイパフォーマンス」を開発に標榜している。
ここら辺は『社長が訊く』のWiiプロジェクトに詳しいが、Switchは同時期の他社ゲーム機より圧倒的に安い。
コストを抑えた上で現状の性能を発揮することに最新技術を注ぐのが任天堂のハードウェア開発であり、実際日本国内の圧倒的普及率からその方向性は見事に成功しているのだが、購買層はさておき開発する側からしてみれば、やはりゲームが動くハードウェアのスペックは高ければ高いほどありがたいのだ。

実際、スペック面のハンデをもっとも食らうのが、いまやPlayStation・Xboxやパソコン(Steam)にも売り出しているサードパーティである。
ぶっちゃけ実質的な先代となるWii Uと比べた性能変化は一部の処理速度の向上がメインであり、とてもざっくり言うとPS3世代の性能を少し良くしたくらいのもの。
Switchの展開中には、Switch目線で見れば2世代分進化したような他社ゲーム機が台頭しており、その差はさらに広まってしまった。
結果、マルチ展開されたソフトもSwitchだけハブられていたり、出せたにしても格落ち仕様……なんてこともザラ。元から劣っているので仕方ないとはいえ、PS4にも劣っていたのである。
それどころか自社ソフト販売のソフトですら処理落ちが発生したり(主にセカンドパーティではあるが)、性能を重視しないというユーザーすら眉を顰めるレベルで不利益を被るパターンが多くなっていた。
何よりも、単純に開発側もSwitchに合わせて再調整するのには苦労があるようで、Switchが売れすぎたことでゲームのダウングレード作業を嫌々行う羽目に。
ソフトメーカーからは性能の向上を求める声が絶えないが、それと同時にSwitchへの最適化については任天堂自身すら不安定になりつつあった。

一番わかりやすく、かつ痛ましいのはスマブラ参戦も果たしたキングダムハーツシリーズなど「クラウド版」の劣悪な仕様。
これらはほぼサードパーティのゲームであるが、クラウド方式というまだ発展途上の技術であるため仕方ないとはいえ、遅延や順番待ちなどに苦しめられているプレイヤーが多く、ぶっちゃけ買うメリットがあんまりない。

また、性能不足や先の最適化において難を感じる作品が時間の経過とともに多く増えているのも否定できない。
こうしたマルチ展開における不安は、Wiiの末期と似た構図になりつつあると言えるだろう。
さらに、そもそも性能を重視しないのは「日本人の目線」であり、より販売拡大を狙える海外はバリバリの高性能路線思考である。海外は据え置きプレイがもっと当たり前であり、その点から見てもあまり即していないという観点もある。
性能不足が足を引っ張るのはもはや時間の問題だったことから、パワーユーザーとサードパーティの開発陣からは次世代化を常々求められていた。
……しかし、次世代に本格的に移行するにもSwitchは8年以上経っても尚現役とばかりに今も売れ続けており、こうした問題にメスを入れた新ハードを出そうにも出せなかった(≒出す必要がなかった)という嬉しい悲鳴めいた事情があったりもする。
“次世代機”ことSwitch 2の開発を表明した後もまだまだ現行Switch対応の新作ゲーム発表は続いており、任天堂としてもSwitchにはもうしばらく一線を張らせるつもりと思われる。

オンラインサービスについても、他機種のサービスと比べて少々物足りない、という声が聞かれることもある。
Nintendo Switch Onlineのサービスは値段相応(PS Plusと比較すれば格安)でこそあるし、セーブデータの預かり機能も存在するが、一部はゲームの特性上別ハードへの引っ越しが面倒だったりする。
それはまだしも、同サービスの特典として付いてくる「Nintendo Classics」の入力遅延が酷い点は難点によくあげられる。
恐らくオンラインプレイが出来ることも関係しているだろうが、星のカービィSDXの刹那の見斬りなどの遅延が代表的。ぶっちゃけこの手のものはオンライン対戦だとガチプレイが困難なレベルである。

これでも通常のオンラインサービスは「値段を考慮すれば十分」と概ね納得するユーザーが大半だが、一方の追加パックについては「割高」という意見も多かった。
確かに移植不可能とされていたゴールデンアイ007などが任天堂ハード間で初の完全移植となったりと、現在価値に照らし合わせた場合の価値自体は高い。
が、主な追加要素は「Nintendo Classics」の拡充と、一部追加コンテンツの特典としての提供がメインである。後者のDLC無償化の恩恵は、当然該当する作品(2024年12月現在3作品のみ)を所持していなければ受けられない。
値段自体も通常プランにもう1年分重ねる程度の額(=ほぼ倍額)となっており、しかもSwitch内における決済でしか加入できない。
少なくとも現状の追加パックは「誰もが値段相応」と言い切れるサービスでは残念ながらないと言える。勿論満足しているユーザーも多数居り、今後の展望に期待したいところ。

また、新型コロナ以降、国内で特に注目されるようになった転売対策についても、任天堂は対応を求められていた。
もっともこれは次世代機においてはそう深刻にならないよう調整しているようだが。

【その他】

  • NVIDIA社の関わり
ハードウェアの開発には、パソコンでゲームをやっている人には当時までお馴染みだったNVIDIA社が深く関わっている。
NVIDIAはプロセッサのみならず周辺機器やミドルウェア、そして新開発のゲーミングAPI「NVN」などSwitchを構成するあらゆる要素を任天堂と共同開発している。
かつてPlayStation 4・Xbox One・Wii Uの時代(いわゆる第8世代ゲーム機)で御三家すべてにハブられた*24NVIDIAにとっては自社製の「SHIELD」を除けば久々の家庭用ゲーム機参戦であり、上記の共同開発に500人年もの労力を費やす、自社のブログでSwitchに注いだ技術について熱く語る、NVIDIAのCEOジェン・スン・フアン氏が「Nintendo Switchに圧倒されるだろう」とコメントする等、かなりの気合いの入れようが見てとれる。
その言葉通りSwitchの売上は2023年1月現在約1億1400万台、NVIDIAのアーキテクチャを採用した家庭用ゲーム機で歴代最大の売上を達成した。*25

  • Joy-Conの意外な使い道
上記の通りJoy-ConはBluetoothに対応したPCに接続できるので、マウスを使うPCゲームやイラスト用の左手デバイスとしても活用できる。
特に左手デバイスとして見た場合構造・重量上長時間握っても疲れにくくなっており、ボタン14個分も登録できるポイントがあるためなかなか優秀である。
わざわざ高価な左手デバイスを買うよりは、うまいこと設定を見繕えば出費が抑えられるため、探している方は一考に。

  • リージョンロックの廃止
過去の任天堂ハードでは本体とソフトのどちらかあるいは両方にリージョンロックが設定されており、異なる販売地域のカートリッジを国内仕様に物理的に挿入できないようにカートリッジの形状を変更するなどしていたが、今回はリージョンロックが撤廃され、海外版のタイトルもそのまま国内のSwitchで遊べる。
どの国のeショップに接続されるかは接続ポイントとなっている機器が存在する国ではなく、アカウントに設定された国で決定される。
このため日本にいながら海外専売タイトルを購入することが可能で、もちろんその逆もできる。海外じゃ絶対に出ない微エロゲーが買えちゃうので、向こうのHENTAIが歓喜したとか

一方で国ごとの事情や規制基準に合わせてソフトの内容を変える事が難しくなり、収録カードやリミットレギュレーションが国内と海外の折衷で混乱を招いた『遊戯王 レガシー・オブ・ザ・デュエリスト:リンク・エボリューション』*26や、国内より規制基準が厳しい海外版に合わせざるを得ず、衣装の露出減少やシナリオ削減などで物議を醸した『幻影異聞録♯FE』など、この仕様が仇となってしまっている作品もいくらか存在する。

ただストア毎に内容を変えることは不可能ではないらしく、Nintendo Classics版のスーパーマリオ64は海外アカウントであればバグ無修正版がプレイ可能となっている(日本版は振動パックver準拠)。
3Dコレクションでは不可能だった「ケツワープ再び」として、各オンラインメディアで話題となった。

ちなみにリージョンロック撤廃については以前から検討しており、Switchで実装されたのはタイミングが良かったからである。
だが転売を含めた全世界的なマネーロンダリングの増加を危惧してか、Switch 2では日本版のみ本体のリージョンロックが復活、ロック撤廃の多言語版はマイニンテンドーストア専売としている。
更にそれに先駆けてクレジットカードの利用制限(海外発行カード不可)をe-Shopおよびマイニンテンドーストアで実施しているため、海外からのアクセスは実質的に再び制限された格好になっている。

  • ソフト容量について
圧縮技術の更なる向上やソフト媒体が円盤からフラッシュメモリになったのもあり、全体的にSwitchの移植版タイトルは容量が小さくなっている。
もっとも分かりやすい例が『レゴシティ アンダーカバー』であり、オリジナルのWii U版が約20.3GBなのに対し、Switch版は約7GBと大幅に抑えられている。それでいてPS4版(こちらは12GB)と同等のクオリティを実現している。
他の例を挙げると『ドンキーコング トロピカルフリーズ』(11.4GB→6.6GB)や『ベヨネッタ1+2』(14.6GB+17.6GB=32.2GB → 8.5GB+12.4GB=20.9GB)など。

  • ゲーム用APIについて
ゲーム用のAPIの一つである「Vulkan」に対応している。
上記したNVNも割りとローレベル(ハードウェア寄り)なAPIだが、Vulkanは更にローレベル*27なAPIで、主にDOOM*28等、マシンスペックを限界まで使うゲームソフトで使用されている。
その恩恵か、同作は負荷の強いソフトでありながら携帯モードでも美しいグラフィックと、比較的滑らかなフレームレートを両立している。

  • コードネーム「NX」の由来
本項の冒頭にある通りSwitchの開発コードネームは「NX」であった。
このコードネームの名付け親は当時任天堂の社長であった岩田聡氏なのだが、その由来は当の本人しか知らなかった。*29
由来について語るつもりはあったらしいのだが、岩田氏がコードネーム発表の僅か数ヶ月後に急逝。*30
由来を語る機会は遂に訪れなかった。
それ故、コードネーム「NX」が何を表していたのかを知る者は、任天堂内部ですら誰もいないという。

  • 後継機について
2020年代に入ってしばらく経つと、登場から数年経過したこともあり後継機についての話題がマスメディアから取り上げられることが増え始めた。
2020年9月の決算説明会で、古川社長は「ライフサイクルは中盤に入ったばかり」と発言。またCOVID-19に影響された巣籠需要でハードの売上が伸びたこともあり、当面は現Switchの拡充に力を注ぐ予定と宣言していた。
2022年の決算報告会では、「仮に次のゲーム機が登場した際にスムーズに世代交代できるかは課題になっている」と答えている。
その後は公式から後継機に関する情報は行われなかったが、2024年5月に年度内に後継機の発表を行うことを正式に公表。
11月にはオンラインサービスも含めて現行Switchとの互換性を維持することが宣言された。

翌2025年1月に外観が公開され、後継機の正式名称がNintendo Switch 2となることも公表された。
その後6月5日に発売。当面は抽選販売形式を取る模様。

  • OSについて
きせかえテーマやリッチデザインを採用した事でお世辞にも動作が速いとは言えなかった3DS・Wii Uの反省から、SwitchのOSはシンプルなフラットデザイン・無地の背景・最小限のアニメーション効果・BGM無しと徹底的にリソースを削る工夫がなされている。
設定でテーマ機能があるものの、当初からSwitch 2発表の2025年まで選べるのは「ホワイト」と「ブラック」のみのまま。
シンプル化したことで起動時間は他機種の追随を許さないレベルで爆速となったが、すぐに選べるゲーム数が大幅削減されたのは難点とされている。
特に大量のゲームソフトを買うユーザーからは、フォルダ機能及びホーム画面からワンボタンでゲームソフトの一覧へ飛ぶショートカットなども要望されているが、今のところフォルダ機能が実装されたのみ。
あとはSwitch 2とのおすそわけや、バーチャルゲームカードと言った複数本体の連携対応に向けていくつか機能が追加された程度であり、Switch 2でもUIの路線は概ね継承されている。
よってWii UのUIを惜しむ声も多い。





追記・修正はゲームカードを舐めた方がお願いします。

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最終更新:2025年07月15日 20:50

*1 発表に至る文脈としては、いわゆるソシャゲ方面に強みを持つDeNAとの業務提携であることと、当時の情勢から「任天堂も買い切りのコンシューマーゲームを捨て、スマホ向け課金ゲームに移行するのか?」という疑念に対する否定材料として、次世代ゲーム機の開発を進めていることを明かしたもの。

*2 出典 https://www.4gamer.net/games/990/G999026/20170302001/

*3 ちなみに有線よりBluetooth無線のほうが遅延が少ないというコントローラーは、他社ゲーム機のものでもだいたい同じだったりする……

*4 Thanks to all game fans! 「すべてのゲーマーに感謝!」と言う意味。

*5 Wii/Wii U向けの公式LANアダプタに内蔵されたAX88772のパワーアップ版。

*6 SwitchはWii Uと比べて、プロセッサの仕様やソフトメディアの形状等を大きく変えたため後方互換が取りにくいという事情もある。

*7 複数人で大画面を囲うこと=TVモードを想定したミニゲームが多い1-2-Switchがロンチタイトルのため、無理に複数のモードに対応したソフトを作る必要がないことを任天堂が本体発売と同時に自分で示したとも受け取れる。

*8 実際にキャッスルヴァニアアドバンスコレクションのSwitch版発売直後に、実機でのマクシームany%をこの機能での録画一本に収めたものがTwitterに公開されていた。

*9 2025年3月25日時点で23曲が先行配信され、残りの曲は2025年内に配信予定。

*10 Wiiメニュー、似顔絵チャンネル、写真チャンネル、Wiiショッピングチャンネル、お天気チャンネル、ニュースチャンネル、みんなで投票チャンネル、Miiコンテストチャンネルの楽曲を収録。

*11 2024年11月19日にソフト本編の楽曲が配信され、2025年4月1日に「エクスパンションキット」の楽曲が追加された。

*12 Wii U・Switch携帯モード共にベヨネッタ2が720p・60fps。ゼルダの伝説が720p・30fps。

*13 ゲームキューブのGPUを開発したArtX(後にATI→AMDに吸収される)は、NINTENDO64のRCP(GPU)を開発したSGIのスタッフ達で立ち上げた企業なので、厳密にはN64時代からの付き合いになる。

*14 出典 https://www.4gamer.net/games/341/G034168/20170303060/

*15 初期型・新モデル共にバッテリー容量は4310mAh。Liteは3570mAh。

*16 出典 https://www.eurogamer.net/articles/digitalfoundry-2019-new-nintendo-switch-hac-001-01-review

*17 U3は読み書き速度が最低30MB/s保証されていると言う意味でUHS-Ⅲとは別物。

*18 携帯・据置をシームレスに切り替えるSwitchの特性上、外付けストレージは相性が悪いのと、Switchのソフトは全体的に容量が抑えられているのでmicroSDだけで事足りるユーザーが多いと言う事情もある。

*19 公式発表では累計1億5,000万台とされていたが、生産終了後にも販売台数の再計測を何度か行っており、2025年2月時点の公式データは累計1億6,000万台となっている。

*20 累計1億5,402万台

*21 余談だが、任天堂の看板ソフトである『マリオ』シリーズと『ゼルダ』シリーズの本編新作が同年に発売されるのは結構珍しい。

*22 PlayStation Vitaは2019年で生産を終了し後継機も発表されず、ニンテンドー3DSシリーズも2020年9月で生産を終了。

*23 GBAの任天堂ソフトが配信されるようになったのは2023年から。

*24 Xbox(第6世代)、PlayStation 3(第7世代)に提供。

*25 Xbox:2,400万台、PS3:8,740万台。

*26 遊戯王カードは、国内向けの遊戯王OCGと海外向けの遊戯王TCGで収録カードやリミットレギュレーション(禁止・制限カードリスト)が異なっており、この違いから別物レベルのTCGとして考える人もいる。

*27 レベルが低くなればなるほどマシンの性能が引き出しやすくなるが、それに比例して開発難易度も上昇する。

*28 ゲームエンジンの「id tech 6」がVulkanに対応している。

*29 出典 https://web.archive.org/web/20190401004208/https://japanese.engadget.com/2015/12/06/nx-wii-u/

*30 冒頭にある通りSwitchの存在を発表したのが2015年3月、岩田氏が急逝したのが同年7月のことだった……