アレッサンドロ・ディ・カリオストロ

登録日:2023/09/05(火) 22:45:00
更新日:2025/03/06 Thu 22:05:57
所要時間:約 6 分で読めます




アレッサンドロ・ディ・カリオストロ、通称カリオストロ伯爵とは、18世紀において名を馳せた錬金術師……

というか、詐欺師


【経歴】

本名をジュセッペ・バルサモ。
当人曰く『高貴な生まれのクリスチャンだったが捨てられ、孤児としてマルタで育った』とされるが、実際はシチリア島パレルモの貧しい家庭で育ったともいわれる。

実際のところ、当人が『自身を神秘的な存在と見せかける詐欺師』なので、主張が錯綜しており、とくに幼い時分の逸話には信憑性の薄いものが非常に多く
  • マルタ騎士団に入会して錬金術やカバラ、魔術を学んだ
  • サンジェルマン伯爵と出会い『最聖の三重の知恵』という魔導書を得た
  • 聖ヨハネ修道院で薬剤師をしながら錬金術を学んだ
  • アラブの大魔術師『アルトタス』の弟子になって魔術を学んだ

のような伝説が数多く残されている。

また、こうした非現実的な伝説を抜きにしても
  • 裕福な金細工師ヴィレンチオ・マラーノを「大量の埋蔵金がある」として騙して連れ出し、準備費用として大量の銀貨をだまし取った挙句殴って気絶させて逃げる
  • 贋作家アリアータから得た偽造技術で自身を貴族と誤認させ、様々な社交界に潜り込みロシアの女帝エカチェリーナとすら謁見する
  • オカルト的な医療行為で医師としての名声を高め、ついにはアメリカ建国の父ベンジャミン・フランクリンにすら名医として推薦される
といった詐欺師としての能力の高さを物語る逸話も多い。

卑賎な身分から高貴な上流階級に潜り込み、貴族社会へと成り上がろうとした姿勢は『山師(アヴァンチュリエ)』と称される。

カリオストロが歴史の表舞台に登場するのはマリー・アントワネットの首飾り事件。
ときのフランス王妃、マリー・アントワネットの友人を騙るラ・モット=ヴァロワ伯爵夫人が、王室に取り入ろうとするロアン枢機卿から高級な首飾りをだまし取った事件。
この事件は事実無根の醜聞や陰謀論の流布と、王室と距離をとるパリ高等法院の思惑から単なる被害者であるはずの王室の権威が致命的に失墜し、フランス革命の原因のひとつともなった。

で、カリオストロは何をしたかというと、詐欺師であるにもかかわらずこの詐欺には一切無関係
なのだが、たまたまロアン枢機卿と親しかったこと、そして彼の周辺で詐欺事件が多発しており明らかに怪しかったことなどから、ラ・モット=ヴァロワ伯爵夫人によって関係者と告発されてしまった。

一応は無罪を勝ち取ったものの、醜聞からフランスや貴族社会からは事実上追放されてしまった。

【その後】

1789年、フリーメイソンのロッジ(自身が分派したエジプト・メイソンリーという秘密結社)をローマに設立しようとした罪で異端審問に掛けられた。
異端審問で裏切り彼を売ったのは彼の妻だったという。
裁判では死刑判決を受けたが、のちに終身刑に減刑され、サン・レーオ城要塞にて1795年8月26日に獄死した。


【カリオストロ・もしくは彼をモチーフとしたキャラの出るメディア作品】

大きく分けて「歴史上のアレッサンドロ・ディ・カリオストロ当人」のパターンと、ただモチーフにしているパターンがある。

フィクションでは多くの場合『錬金術師』としての側面が強く、また、奇人や怪人物として描かれることも多い。

また、アルセーヌ・ルパンシリーズの「カリオストロ伯爵夫人」を元ネタにしたキャラも多い。こちらの場合は錬金術師ではなく『怪盗』『ルパンの宿敵』という側面になる。

カリオストロ当人

カール・クラフト=メルクリウス(Dies Irae)

Dies Iraeに登場する最強の錬金術師。
カリオストロ伯爵であると同時にヘルメス・トリスメギストスであり、サンジェルマン伯爵であり、パラケルススであり、クリスティアン・ローゼンクロイツであり、カール・エルンスト・クラフトである。
要は歴史上の錬金術師はだいたい全員コイツの偽名。滅茶苦茶すぎる。

カリオストロ(戦姫絶唱シンフォギアAXZ)

パヴァリア光明結社の幹部。元男でありながら、錬金術によって性転換したカリオストロ。なお声優は
厳密には当人だとは確定していないが、元はしがない詐欺師だった点、サンジェルマン伯爵との繋がり、作風などからおそらくは史実の当人。

カリオストロ(Fate/Grand Order)

存在が示唆されているキャスターのサーヴァント
第2部5.5章『地獄界曼荼羅 平安京』にて卜部季武が召喚したものの、渡辺綱によって本編登場前に退場。
あのキャスター・リンボをして「凶猛かつ分別のきかぬ」と称すほどの問題児な模様。
その後、異星の使徒に伯爵を名乗る人物がおり、このカリオストロではないかと話題になった。
そして「奏章Ⅱ不可逆廃棄孔イド」にてサーヴァントとして登場。

カリオストロをモチーフにしたキャラ

カリオストロ伯爵夫人/ジョセフィーヌ・バルサモ(アルセーヌ・ルパンシリーズ)

アレッサンドロ・ディ・カリオストロの『娘』であり、不老のまま100年を生きる怪人にして腕利きの怪盗。アルセーヌ・ルパンの師にして、宿敵の一人。
ルパン最初の冒険『カリオストロ伯爵夫人』で登場する。
+ ネタバレ
とはいえ、アレッサンドロ・ディ・カリオストロの娘を主張する詐欺師でしかなく、実際には血縁関係はない。
不老不死のトリックも魔術でも何でもなく、容姿が瓜二つの母娘で『襲名』していただけだった。

カリオストロ夫人/志摩男爵夫人

1931年(昭和6年)の横溝正史の短編小説「カリオストロ夫人」に登場する人物。
紛らわしいが、元ネタはルパンシリーズではなく、実在人物の方で「古い時代のことをよく知っている」ことから、
大昔から生きていたというカリオストロ伯爵のような夫人という意味で「カリオストロ夫人」というあだ名を持つ。
本編では夫人は自分がパトロンになっていた若い男が同じぐらいの若い女との関係を選び裏切られ、
その後夫人が自殺したとの情報が男に来るが、目当ての女性と結婚後、恐ろしいことを花嫁が告げるオチとなっている。
なお、横溝正史作品なので紛らわしいが、本作は謎解きミステリーではなくホラー小説である。

クラリス・ド・カリオストロ、ラサール・ド・カリオストロ伯爵(ルパン三世 カリオストロの城)

世間的にはもっとも有名なカリオストロ。
しかし、彼彼女の名前の直接の由来はカリオストロ伯爵ではなく、上述のアルセーヌ・ルパンの長編『カリオストロ伯爵夫人』。
また、クラリスの名前の由来は「カリオストロ伯爵夫人」に登場するルパン最初の妻クラリス・ディティーグである。

カリオストロ(グランブルーファンタジー)

錬金術の開祖にして、自身の作ったホムンクルスに魂を移し替えることで病弱な身を克服し、不老不死美少女となったTSカリオストロ。
通称カリおっさん*1であるが、上述のシンフォギアのカリオストロも含めまさかのTSカリオストロ2人目(※世に出た順ではこちらが先)である。錬金術師カリオストロをなんだと思ってるんだ。

また、カリオストロの妹の末裔に当たるクラリスというキャラも登場するが、こちらの名前の由来はおそらく上述のクラリス・ド・カリオストロ。

カリオストロ(LORD of VERMILION)

スクエニの神話逸話昔話全部ぶち込みカードゲームにも勿論登場。
種族は「亜人」→「人獣」で、錬金術師ではなくいかがわしい山師としてのキャラ付けがされている。
様々な「風評」を認めたり認めなかったりする人を食ったような言動を取る男であり、性能も1の時は「種族の数に応じた強化」だったが2の時は「敵全体のデバフ」と真逆に変わっている。

…しかし3では上記グラブルのカリオストロがコラボで登場。
名義も同じだった為に少しネタになったが、人獣カリオストロはその後復活を遂げることなく、歴史の闇に消えていった…。


怪盗カリオストロ/ジョセフィーヌ・ミステール(探偵オペラ ミルキィホームズ2)

ゲーム版第二作、探偵オペラ ミルキィホームズ2のラスボス怪盗アルセーヌの姉を嘯き、彼女不在の怪盗帝国を支配する怪盗。
にして、その正体は生徒会長アンリエット・ミステールの姉にして生徒会長代理、ジョセフィーヌ・ミステール。つまり嘘でも何でもなく姉。
元ネタは上述アルセーヌ・ルパンの宿敵ジョセフィーヌ・バルサモ。


追記、修正は錬金術師か詐欺師になってからお願いします。

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最終更新:2025年03月06日 22:05

*1 なお、親父臭い部分などは特になく、早死にする前に肉体を捨てた=肉体的にはおっさんだったこともないので、単に語感優先の呼称である。