登録日:2023/12/20 Wed 23:00:00
更新日:2023/12/27 Wed 01:22:18
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「これより全員砂の海に運ばれ、人食い怪獣サルラックの巣に投げ込まれることになります」
「サルラックの胃袋の中で苦痛にもだえながら、千年掛けてじっくり消化されよとの、仰せ……」
サルラック(Sarlacc)とは、
スターウォーズ・シリーズに登場するクリーチャーの一種。
「サーラック」などの表記揺れがある。
●目次
【概要】
旧三部作の完結作・
EP6に登場した、超巨大生物。
タトゥイーンの砂漠にある「
カークーンの大穴」と呼ばれる地帯に生息しており、犯罪王
ジャバ・ザ・ハットが処刑場として利用していた。
あたかもアリジゴクの怪物といった趣で、すり鉢状もしくは谷状になった砂漠の奥底に生息し、巨大な口を広げている。
この口の中央には鳥のクチバシのような部位があり、このクチバシと、周辺の触手を駆使して、砂漠のすり鉢エリアに接近した獲物を、丸呑みにして捕食する。
極めて特徴的な生態と恐るべき危険度を持つことから知名度は高いが、作中世界ではほとんど研究がされていないという。
理由は単純、調査するまでもなく危険だと言うことがわかりきっているから。
危険すぎて調査できない、という理由もあるし、また一つには能動的に動く生物ではないため、いる場所さえ分かっていれば近寄らなければ良いから、という理由もあった。
そのため、情報についてはデマや伝説も多い模様。
原産地は惑星タトゥイーンということらしいが、ほかの星にも生息例があるという。
【生態】
先ほどはアリジゴクを例に出したが、アリジゴクと違いそこから変態したりはせず、EP6の姿で成体である。
寿命は三万年以上といわれ、成体になるのにも何千年も要するという。
地中に埋まって口を天に向け、サルラック本体は全く動かないため、以前から「これは動物なのか、それとも植物なのか」と話題になっていたらしい。
ただ、もろもろの描写や設定を考えると、植物ではなく動物であるのは確かな模様。
◆口
実は映画本編で見せていたのは口の部位だけ。
口の直径は3mぐらいとされる。意外と小さい。
砂のすり鉢エリアは、途中から肉の膜のような部位に変わっているが、これが頬の内側。
この頬の内側には「返し」のような針がびっしりと生えているが、これは「歯」が変化したもの。用途はもちろん、口に落ちてきた獲物を逃がさないようにするため。
そして口の中央で動き回っているクチバシ状の器官は、頭でも口でもなく「舌」である。正確には、舌を包み込むように外殻ができあがっていると言うべきか。
作中ではまるで舌のクチバシが動くのに合わせて声を発しているように見えるが、声帯はもっと奥にあり、実はこのクチバシが音声を発しているわけではない。
また口の中には数本の触手があり、これを伸ばして周辺の獲物を絡み取り、口の中に引っ張り込む。
この触手の動きは素早く、近づくだけでも危険極まりない。
もちろん、クチバシ状の舌を駆使して捕まえることも可能。
そして喉には神経毒を撃ち込む「針(おそらく毛の変化したもの)」があり、獲物の抵抗力を奪う。
目は完全に退化しているので、近くを通る生物が歩く際に砂を落とすと、その感触を追って触手を伸ばす。
ちなみに、体内には「砂袋」のような器官があって、大量の砂が落ちてくるとそれを吐き出すことがあるらしい。
動けない代わりに獲物を呼び寄せるため、強い匂いを発することができる。
◆消化器官
胃袋は複数ある。
タトゥイーンの伝説によれば、サルラックは胃袋に収めた獲物をすぐさま胃液で溶かすのではなく、獲物を胃袋の壁といわば「融合」させて、養分を共有させながら千年もかけてじっくりと消化していくという。
獲物を、消化すると言うより、栄養を吸い上げる保存食にしてしまうと言うべきだろうか。
しかも、壁に取り込まれた獲物は即死するのではなく、生きているという。意識も消えるわけではないため、自由を失い命を吸われる苦痛を感じながら、延々と生かされ続けて保存される。
さらにサルラックはテレパシーに近い能力を持ち、胃袋で融合させた犠牲者の脳や意識に接触し、思考回路の一部にしてしまうとも言われる。
ただ、この「千年かけての消化」「サルラックに取り込まれる恐怖」というのは
タトゥイーンの神話、もしくはジャバが獲物を恐怖させるためのホラというところらしい。
実際に飲み込まれてから脱出した
ボバ・フェットは、サルラックの胃袋の中で強力な胃酸を浴びて装甲服に大きなダメージを負っていた。
また、彼は胃袋の中で食べられた
ストームトルーパーを発見したが、酸によってボロボロになっていた=千年も生かすとは思えない消化速度であったことと、そのストームトルーパーはボバが触れても身じろぎ一つせず、死んでいるように見えたことを証言している。
この、言ってしまえば「非科学的な俗説」が広まったのは、ひとえに「サルラックの科学的な研究」というものが危険極まりなく、命を捨てるような無謀な学者がほとんどいなかったためである。
要するに「危険だ、ということが分かっているから、それで充分」だったのだ。
◆肉体
地上から見えるのは口だけだが、地中には巨大な胴体が埋まっている。
そのデザインは、現実世界のどの動物とも当てはまらない、奇妙な姿をしている。強いて言うなら「
ゲゲゲの鬼太郎」に登場する
ヤカンズルのような姿、といえば分かるだろうか。
丸っこい巨大な胴体は、地上に覗いている口と同じぐらいの太さがある。
また手足も長い。腕は四本、脚も四本あり、非常に気色の悪いデザイン。地中に埋まっていて動きこそできないが、これを用いて地中でも巨体を支えているという。
また、口と首の間(人間なら顎のあたり)には大きなこぶが複数ついているが、これは水分を蓄えているとのこと。
◆弱点・天敵
いくら巨大・強力と言っても生物であることには違いがないので、表皮を焼き溶かしてしまうビーム兵器・エネルギー兵器には弱い。
作中では、巨大な個体でも触手にビームを撃ち込まれただけで慌てて引っ込めている。
天敵はクレイトドラゴン。サルラックに匹敵する巨体を持ちながら、しかも地中を移動して横から食らいついてくるため、サルラックといえど身動きのとれないごちそうにしかならない。
またサルラックを食ったあとには大きな穴が残り、それはクレイトドラゴンにとって格好の巣穴となる。いろんな意味で「おいしい獲物」となってしまう。
また天敵と言うには微妙だが、サルラックは口を大きく開けていて目立つ割に移動できないため、SW世界の飛行戦艦・宇宙船を使って上空から爆撃すれば、駆除は容易と思われる。
少なくとも
スターデストロイヤーの精密爆撃(衛星軌道上から海底都市に撃ち込んだ際、大気と海水で減衰したビームでも都市を粉々に粉砕できた)には耐えられないだろう。
【成長サイクル】
サルラックも生物である以上、幼体から成体までのサイクルがあり、雌雄があって繁殖もする。
しかし、このサルラックの成長サイクルは極めて特異なものである。
実は、サルラックは胞子の形で誕生する。
それが年月を経ると幼体となるが、この幼体は地上を歩き回り、捕食する相手を見つけると積極的に飛びかかる。
また、完全な地中生活こそしないものの、砂の中に潜って待ち伏せし、足音が近づくと突然砂中から飛び上がって襲いかかる、ということもするらしい。
この幼体期がサルラックとしては一番活動的な時期で、その姿は完全な肉食動物。大きさも、一メートルから二メートルぐらいになることがあり、人間にさえ襲いかかる。
この胞子から幼体までの時期に、オスとメスが出会えば、繁殖の準備が整う。
まず、オスがメスの下腹部に寄生する。この時点ではオスの方がメスよりもずっと小さい。
やがて、メスは活発に動き回るのをやめて、地中に潜って
巨大化を始める。オスは小さい姿のまま、メスの下腹部にくっついている。餌を食べるのはメスで、オスはメスから栄養を吸収して生きる。
しかしある時期から、オスが大きくなり始め、逆にメスが小さくなっていく。
この時点で、メスの体内には受精卵がいる。
最終的に、メスはオスの肉体に完全に吸収されて外からは視認できなくなり、もとのメスと同じ大きさになったオスが、地中から大口を覗かせる。
三万年以上の寿命を使い切ると、サルラックは突然、大爆発を起こす。
その爆発時に、体内で蓄えていた受精卵が胞子となって大気中に飛び散る。
その胞子が、やがて幼体となり、さらに異性のサルラックと触れあうことができれば、次世代まで命を繋げる。
ただ、胞子の状態は非常に弱く、捕食されたり餓死したり、はたまたつがいとなる異性を見つけられなかったりすることが多く、成体まで成長するサルラックは非常に珍しい。
それを補うべく胞子は何百万も飛ばされるというが、
マンボウしかり、こういうのはなかなか生きながらえるのは難しいわけで……
ちなみに、胞子放出のための爆発エネルギーは実際すさまじいらしく、一説によればその胞子は宇宙にまで飛び、違う星まで広がることさえあるという。
実際、
惑星アンバラのヴィクサスや
惑星トウォン・ケティーのラスターという生物は、サルラックと同じ祖先から枝分かれしたと言われている。
またレジェンズ作品「
フォースアンリーシュド」では、
惑星フェルーシアにフェルーシアンに伝わる生贄の地の古代アビスに巨大なサルラック(メガ・サルラック)が生息していた。
いちおう、ハイパースペース航路の普及により宇宙船が星々を渡る時代であるため、違う星域にサルラックがいたとしても、それは爆発のエネルギーで宇宙を飛んだというのではなく、宇宙船にくっついて移動しただけとするものもいるが、
一方で三万年も生きるサルラックに対して、ハイパースペース航路の開発は銀河共和国発足後の21,000年前またはデュロスが開発した25,000年前とされ、「同じ祖先から枝分かれして個別の進化を遂げた」というほどの世代更新を重ねたという事実から考えると、とても間に合わなさそうである。
【作中の活躍】
惑星タトゥイーンの砂漠にある「
カークーンの大穴」に、巨大なサルラックが生息していた。
この大穴は
ジャバ・ザ・ハットの宮殿から比較的近いところにあったことから、ジャバはこのサルラックを一種の
ペット、あるいは
処刑装置として利用していた。
刃向かった相手をサルラックの餌にするというのが、彼のお気に入り処刑方の一つだったという。
またタトゥイーンではサルラックは神話にも登場するほどの存在であり、ジャバは
「この星の至宝」と呼ぶなど、文化的にも重んじていたようである。
ジャバの執事長ビブ・フォーチュナが過労で倒れた際、代理となった執事は役立たずばかりだったため、フォーチュナが復帰するまでに五人の執事代行がサルラックの餌になったという。
ただ、いくら「近い」と言ってもそこに行くまでには飛行船を何艘も繰り出すので、なんだかんだ手間が掛かるのも事実だった。
そのため宮殿の内部で手っ取り早く処刑できる、
ランコアへの落とし穴の方が使われる頻度は高かったようだ。
EP6では序盤の山場・ジャバ一味とルークの戦いで登場。
ランコアを倒されてしまったジャバがルーク処刑のため、カークーンの大穴へと赴き
ルーク・スカイウォーカー、ハン・ソロ、チューバッカの三名を食い殺させようとした。
しかしルークは、ジャバの処刑開始の合図が出ると同時に猛反撃を開始。
このルークの猛攻によって十数人の兵士が次々と大穴へと落とされていき、サルラックの餌となっていった。
ジャバ配下随一の賞金稼ぎ
ボバ・フェットも、視力を失っていたソロがつい振り回した棒の誤爆でジェットパックが炸裂し、サルラックに一呑みにされてしまった。
さすがのサルラックもいきなり十数人を飲み込んでは辛かったらしく、ボバを飲み込んだ後にゲップをする場面がある。
(本来サルラックは、獲物が来るのを何年も待ち続けると思われるので、短期間に大量の餌を食べられるようにはできていないのだろう)
ランド・カルリジアンもサルラックの触手に足を掴まれ、危うく口の中に引きずり込まれそうになった。
が、幸い視力を取り戻しつつあったソロがブラスターピストルで触手を狙撃。
サルラックは悲鳴を上げて触手を引き上げ、ランドはかろうじて生き延びることができた。
一方、ボバも数時間後、
脱出に成功する。
サルラックの胃袋には「先客」として
ストームトルーパーが一人おり、ボバはまずそのヘルメットからチューブを繋いで空気を確保。続いて
火炎放射器を駆使してサルラックの胃袋を破り、ついに体外へと脱出した。
しかし、さすがの彼も力尽きて気絶し、その間にジャワ族にマンダロリアンアーマーを奪われ、さらにタスケンレイダーに捕縛されることとなった。
このサルラックはボバ脱出後も生きていた(腹に開いた傷も回復したらしい)が、タスケンのもとで療養したのち愛機スレーヴIを取り戻したボバ(曰く「ベスカーは溶けん」)がアーマー探索のため再訪した際にスレーヴIに食らいつき、引き合いになったところサイズミック・チャージを食わされるという壮絶なオーバーキルで駆除された。
ボバ脱出の一連の流れはドラマ『Book of Boba fett』で映像化されたほか、ドラマ『
マンダロリアン』では、サルラックの巣穴に現在はクレイトドラゴンが住んでいるという形で言及される。
映画本編の数年前、ハン・ソロとチューバッカはある筋の依頼で「サルラックの幼体を捕獲して引き渡す」という変な任務を請け負う羽目になった。
ちなみにこの舞台は辺境域の惑星アイヴォルシア・プライムで、サルラックはそこに生息していた。つまりタトゥイーン以外にも生息域を広げていると言うことだが、いかなる理由で伝わったのかは不明である。
この星にはもともと「サルラック研究の第一人者がいた」とのことで、またこの星の保護区にいたことから、野生というよりこの博士が持ち込んだのかも知れない。
ソロとチューバッカは待ち伏せていた犯罪者のせいで一度はサルラックの生息区域に落とされ、幼体の群れに襲われたが、なんとか脱出した上に幼体一匹を捕獲、依頼主に引き渡した。
この依頼主はドク=オンダーという名前のアイソリアンで、悪名高いコレクターだが、続三部作の時代も存命。
ソロから入手した幼体サルラックを「シンピ」と名付けてカプセルに入れて飼育していた。
34 ABYには彼の店がギャンググループとファーストオーダーの戦闘の舞台となったが、この際にギャング側によってカプセルが破壊され、飛び出したサルラック「シンピ」はトルーパーに襲い掛かった。
腹が満ちれば大人しくなるらしいことがドク=オンダーから語られている。
【製作事情】
現在知られているサルラックの姿は、EP6が1997年に「特別版」としてリメイクされたあとのデザイン。
1983年のEP6製作当初では、技術的な問題からサルラックをデザイン通りに製作することはできず、結果として
- すり鉢状の口が開き、底に三角形の穴(喉)が開き、周囲に逃がさないための棘(歯)がびっしりと生えている
- しかしクチバシ状の舌はなく、ぽっかりと口が開いているだけ
- 触手の数も少ない
- 声を上げることはあるが、少ない
という、現在の設定のものとは大きく異なるデザインとなっていた。
ただ、
ボバ・フェットやランド・カルリジアンにはしっかり触手を伸ばしていたので、恐ろしさ自体はしっかり描写されていた。
この1983年のオリジナルサルラックの撮影は特に大変だったらしい。
砂漠の穴とサルラックの大口は、カリフォルニア州バターカップバレーの砂漠を掘り、直径約3メートルの口を実際に作り、そこに各エイリアン(ジャバの傭兵)に扮したスタントマンが実際に飛び込んで食われていく、という1/1の方式で撮影された。
小さく見える棘(歯)の長さは三十センチ以上あった。
またサルラックの口の裏側には六人ほどのスタッフが入り込み、内部設備を駆使して口や触手を動かしたという。
しかし、砂漠のど真ん中を彫り込んで設備を地下に作るという都合上、サルラックを動かすシステムは非常に扱い難いものになった。
なにせ、獲物が落ち込むたびに大量の砂がサルラック内部に入り込み、触手を動かすための油圧設備に詰まって壊してしまったのだ。
この砂をサルラック内部から出すのにものすごい苦労があったという。
しかも、サルラックの口の皮は「呼吸をして脈打ち、時にはゲップもする」という表現を出すために薄い素材で作られたのだが、それ故に獲物の傭兵が飛び込むたびに皮が破れてしまい、修理の頻度が非常に高かった。
おまけに、ジャバの傭兵に扮して飛び込むスタントマンの多くが、落下によって負傷したという。
当時の監督は「とにかくひどいクリーチャーだった」と回顧している。
1997年の特別編で追加された、クチバシ状の舌や長い触手は、コンピューターアニメーションによる。
【余談】
- 大爆発によって胞子を飛ばして繁殖する
- その際に胞子が宇宙空間に飛びだして、別の星に行くことさえある
- 植物とも動物ともつかないところがある
「サルラック野郎」というとスターウォーズ世界の慣用句として「口先だけ」という意味になるらしい。
「怪獣サルラックの生贄として堂々と死に臨むことを閣下は希望しておられる。またお前たちの中で追記・修正を請うものがあれば、その最後の願いを聞こうとも仰っておいでだ」
最終更新:2023年12月27日 01:22