ポング・クレル

登録日:2019/12/16 Mon 23:00:00
更新日:2023/12/20 Wed 23:08:11
所要時間:約 20 分で読めます





「勝利に代償はつきものだ! お前もそのことを悟るだろう……」


ポング・クレル(Pong Krell)は、スター・ウォーズ・シリーズの登場人物。
銀河共和国末期のジェダイマスターであるが、クローン大戦中、とある予見をしたことで戦争の真実を悟り、共和国から独立星系連合に寝返ろうとしていた
将来の保身と野心のため、クローン大戦中、あえて味方に損害を強いることを手土産にしようと画策する。



【人物】

「私はどちら側にも就かない。ボスだけを信じる。すぐに、マスターとなるボスだ」

◆種族

種族はベサリスク
大型の陸行鳥から進化した種族で、鶏冠を思わせる頭頂部の外骨格、顎の下の袋、くちばしに似た唇、と特にニワトリを思わせる風貌を持つ。
最大の特徴は、腕が四本もあること。その腕はいずれも屈強かつ器用で、指が大きくパワーもある。
発汗をコントロールしての体温調節機能や、取り込んだ養分の維持などに長けており、飲まず食わずでも一週間は平気らしい。

出身惑星はオジョム。この星は氷河が陸地となっている極寒の海洋惑星で、生息環境は極めて厳しい。彼らの体温調節機能や生命力はこの環境から進化したものであろう。
こんな環境のため、ベサリスクは銀河において数が少なく、母星を出ても他の星で独自の植民地を作るほどの勢いもない。
代わりに、他の文明社会に住み込むことが多く、暗黒街に溶け込む姿がよくみられる。
反面、場合によっては広範な知識を備えていることもあり、EP2にてオビ=ワンが毒矢の出所について助言を求めたコルサントにある食堂のオーナーデクスター・ジェッスターがそれにあたる。


◆性格

「私の話は直立で聞け!」

作中で登場する彼は、表向きは共和国軍を率いる将軍にして、ジェダイマスターのひとりでありながら、裏ではフォースの暗黒面に開眼してダークジェダイと化し、来たる新秩序に寝返るため、卑劣な保身と野心に満ちた男として登場している。
それ以前の、ジェダイであったころの姿については不明。暗黒面に目覚めたのは、クローン大戦に入って未来を予知してからのことなので、ごく最近と思われる。
しかし、裏切ろうとしている男が急に行動を変えてしまうと怪しまれることや、前評判の「味方に多大な犠牲を強いるが成果は上げる」というのはそのまま現実なので、おそらく外面はそんなに変わっていないと思われる
ヨーダをはじめとするジェダイ評議会が普通に派遣しているあたりからも、彼の性格は周囲が違和感を感じないレベルの差異しかないはず。

そんな彼の基本的な性格は、極めて権威主義的で独善的
クローン兵以外と接触する場面がアナキン・スカイウォーカーとのわずかな会話やオビ=ワン・ケノービとの通信ぐらいしかないため、クローン以外との付き合いがわからないが、そのクローン兵たちは完全に消耗品扱いで、人権・人格などまったく認めていない
確かにクローン兵は工業生産の消耗品で、周囲も本人たちもある程度そう考えてはいる(特に製作者たるカミーノ人は顕著)が、それにしても異常なまでに高圧的だった。
501大隊のクローンは上司の影響でことさら人間味や独立性が強かった、いわばイレギュラー集団なので、一般的なクローン兵と比較はできないが、彼の行動にはクローンでなくても目をひそめるものは多かっただろう。

また相当な自信家でもあり、ある種傲慢とまで言えるほど。ひどいパワハラ上司である。
部下には苦難の行進を命じながら自分は後方に待機するあたりも文句を言われていた。

「命令には絶対服従すること! 私の言ったことが わ か っ た か ね、CT-7567!!?」


一方、交代するアナキンには「気をつけていくがいい」とフランクに肩を叩いたり、進捗を讃えるオビ=ワンには「首都を制圧したら盛大に祝おう」と謙遜したりと、クローン以外にはそこまで高圧的ではない模様。


ただ、厄介なことに自信や傲慢さに見合った実力があるのも確か
擬態していたとはいえ、前線が苦境に陥ると、後方に抑えていた部隊を適宜に投入して後退を助けたり、いざとなれば大ジャンプで敵に踊りかかったりと、機を見るには敏感。
アンバラ攻略の重要性も間違ってはおらず、戦術面にこそ問題はあるが、戦略眼そのものは正しい
そして後述するように戦闘能力も極めて高く、兵の犠牲だけで成果を上げたとはとても言えない実力と性格を持つ。

また、彼の厳格な規律重視は、軍人として作られたクローン兵たちに「軍人とはどうあるべきなのか、クローントルーパーとは何なのか」を再認識させる結果にもなった。
場合によっては、兵たちの勇戦や活躍を称賛する場面もあり、そういった軍人らしい規律と剛柔織り交ぜた統率が、軍人としてはそれなりに的確なものだったともいえる。

「命令に従わないと厳罰に処す、そうだろ……?」


もっとも、暗黒の予知をして自分の身の振りを変えたあとのクレルは、生来の自信はゆがんだ傲慢さへ、厳格さは他者への威圧と軽蔑へ、闘志は邪悪な嗜虐性へと変質してしまった。

暗黒面の使い手でも、ダース・ティラナスアサージ・ヴェントレスダース・モール、そしてダース・ヴェイダーといったシス卿たちは、単なる邪悪さだけではなく、それぞれに哲学性や気品、仲間や家族への優しさを見せたりもする。
ダース・シディアスとて、ヴェイダーが自分を超えてくれるなら殺されてもいいと考えるなど、例外ではない。

しかしクレルの場合、性格はむしろゲスさが前面に押し出てしまっている
もともとの性格からして、ドゥークーやアサージのような深さがなかったのかもしれない。

「私はお前を、利用していたのだ! うっはははは……あーっはははははは!!!!


【能力】

「ジェダイに勝てると思うか!!?」

人間性は問題山積みだが、能力は確かに高い
というか、シリーズのジェダイでも彼ほど多芸な人物はめったにいない

まず、種族的な特徴で腕が四本ある。この四本の腕を活かして、ダブル=ブレードライトセイバー二本も扱うことができた
ダブル=ブレード・ライトセイバーは、柄が長くなってしまうために肉薄されると反撃しにくく、しかも柄の両端から光刃が出るので、うかつに振り回すと自分を殺してしまいかねない。
そのため使用者はめったにいないのだが、彼はそれを同時に二本も扱う。
結果、四本の光刃を縦横無尽にぶん回し、全方位に向けてすさまじい防御力と殺傷能力を披露できた
劇中ジェダイやシスと戦った場面こそないが、単純に考えて、戦闘能力ではグリーヴァス将軍にも引けを取らないだろう。
なおこのライトセイバーは、普段は中心から折り畳むことができ、コンパクトに持ち運べる。

しかも彼は拳法や体術にも通じている
最後のクローン兵との戦いでは、別に奪われたわけでも故障したわけでもないのに、自分からライトセイバーを仕舞い、素手の格闘で完全武装したクローントルーパーを圧倒していた。
相当な自信と実力がなければあり得ない行動である。


フォースの能力も飛びぬけている
おそらく、フォースを光明面と暗黒面の両方とも使用しているのだろうが、パワーも精度も桁外れ
兵たちをなぎ倒す衝撃波じみた念力、百メートルはありそうなタワーから飛び出すフォースのジャンプ、空中の動物やトルーパーたちの居場所を正確に把握した感知能力や読心術、四方八方からのテレパシー、といった数々の能力を持つ。
特に、ジャングルで兵たちをあざけりながら四方八方からの「声」(おそらくはテレパシー)で攪乱する場面は、シスですら使わない術である。
これを使う人物といえば、レジェンズ作品まで手繰ってもコマリ・ヴォサなどごくわずかしかいない。


「新たな力が台頭する……予感した通り、ジェダイはこの戦いに負けるだろう。そして共和国は内部から分裂する! そこには新しい秩序が生まれる……私はその支配者となる!」

そして決定的に重要なのは、この戦争の真実を見極めた予知能力であろう。
詳細は後述するが、ポング・クレルは戦争中のあるとき、この戦争が最終的に、ジェダイの滅亡とシスの復活、共和国の終焉と帝国の出現をもたらすことを正確に把握していた。
これは、ヨーダを含めたどのジェダイでもできなかった予見である。

ただ、これはクレルが戦争中、暗黒面に触れてそれに身を沈めた結果、感知したものである。その割に彼は、ドゥークーに仕える機会をうかがうようになった。
つまり彼は「最終的にシスが復活する」ことは予見できても、「だれがシスマスターなのか」は分からなかったということになる。
また、最終的にドゥークーは帝国の到来を迎える前に死ぬが、クレルはドゥークーが帝国にいる姿を予見していたようだ。
彼の予見が不完全であったのか、それともこの時点ではドゥークーを切り捨てる気がシディアスになかったか、はたまた事態はいまだ流動的で、シディアスもおおまかなプランしかもっていなかった(ドゥークーの死は確定事項ではなかった)のか。
どれにも解釈はできるが、いずれにせよ彼の予見は必ずしも完全なものではなく、齟齬はあったということだろう。

ただ、それでもこれは、シスの師弟を除けばやはり彼だけが到達できた領域であった。
戦場で暗黒面のフォースに触れるという経験は、ほかのどのジェダイも同じように経験してきたはずである。そんな中で、彼だけがシスの計画に踏み込めた。
善悪の是非は別として、彼が当時もっともすぐれたフォース感応者のひとりであったことは間違いない。

そしてもう一つ強調するべきは、ポング・クレルは自分が理解したことも、変節したことも、内心の野心も、全て、ヨーダを含む周囲の偉大なジェダイたちから隠しおおせたということである。
もしも彼が本当に共和国から逃げおおせてドゥークーの麾下についていれば、銀河の歴史はまた大きく変わったかもしれない。


【来歴】

◆前歴

「私の隊が成果を挙げているのは、私が基本を守っているからだ。それには礼儀も含まれる」

ジェダイになった経緯や、弟子の存在など、これまでの詳しい経歴は不明。
しかしクローン大戦時点ですでにジェダイマスターであったことや、言動の節々から見られる貫録を見るに、おそらくそこそこの年齢と思われる。
クローン大戦以前から戦争で名を上げてきたらしい描写があり、おそらくは以前の紛争にも積極的にかかわってきたのだろう。


クローン大戦が発生すると、他のジェダイの例に漏れず、クローントルーパーの上官、将軍となる。
彼の作戦と行動は激しい攻撃による苛烈な進撃であり、作戦の成功率は極めて高かった
しかしながら彼の指揮には、配下のクローン兵に対する損害が、他の軍と比較しても飛びぬけて大きいという問題があった。
味方の損害は少なく、敵の損害は大きく、というのが兵法の常道であれば、彼の場合は味方の大損害と引き換えに敵を壊滅させるというもので、成果は上がるが非効率、邪道のそしりは免れないものだった。
なにより、当のクローン兵にとってはたまったものではない。
しかしクレル将軍にとって、クローン兵とは「いくらでも替えの利く消耗品」であり、彼らの死体がどれだけ積み重なろうが気にはしなかった。

そんな彼だが、とにかく「作戦目標は達成する」という常勝将軍といっていい成果と、フォースの技量、ライトセイバーの技術、といった単一の戦闘能力がとにかく高かったことから、割と高い評価も下されていた。


◆暗黒面の開眼

しかし戦争のさなか、ポング・クレルはあることに気づく。

フォースの暗黒面が勃興し、光明面のみに浸っていたジェダイが未来を見通せなくなって長い年月が経っていた。
しかし彼はこの大戦中、未来の見通しがむしろ冴えわたってきたのである。

理由は簡単――ポング・クレルは、暗黒面のフォースに開眼しつつあったのだ
暗黒面のフォースが銀河に広まり、未来や世界が見通せなくなったということは、裏を返せば、暗黒面のフォースを理解すれば、未来や世界は見通せるということだ。

そして彼は、暗黒面に浸り、暗黒面を手繰って、戦争の未来を見た。戦争の真実を見た。

ジェダイの絶滅と、新しい「帝国」の出現を。シスの暗黒卿の台頭を。


ポング・クレルは、この戦争が虚偽の舞台にすぎないと悟った。そして、自分が生き残るには、いや自分がより大きく輝くには、共和国やジェダイについていてはだめで、シスにつかなければならないと悟った。
現在、シスといえばドゥークー伯爵しかありえない。

このときから、彼は銀河共和国を裏切り、独立星系連合に寝返る機会を見計らっていた。

クローン兵に必要以上の犠牲を強いたのは、ひとつには彼の生来の作戦パターンもあったが、ひとつには共和国に多くの「損害」を与え、その「撃破スコア」をドゥークーに寝返るための「手土産」にするためでもあった。


◆惑星アンバラの戦い

「部下を置いては行けません!」
「私が代わりを務める」

大戦二年目、ポング・クレルはジェダイ評議会の命令で、惑星アンバラに派遣された。
当時、アンバラは独立星系連合に加盟していたが、銀河共和国軍はこれを奪還するべくアナキン・スカイウォーカー率いる第501大隊を差し向けていた。
しかしなぜかパルパティーンと評議会はアナキンをコルサントに招集し(この理由はついに不明)、クレルが代わって501大隊の指揮を執ることになったのである。

すでに腹の内では「いかにクローンに損害を与えるか」を考えていたクレルは、アナキンの立てていたゲリラ作戦を破棄し、体力も人命も消耗不可避の正面からの力押しを命令。
アナキンのもとで「型破り」な行動を見せつけられ、それを学習していた501大隊の面々は、クレルの無茶な作戦に猛反発するが、これは「クローントルーパーとしての思想」にも「軍人としての規律」にも反するものであったため、クレルは将軍の権威やライトセイバーによる恐喝でゴリ押しした。

「キャプテン。お前は忘れたのか? この大隊の任務は、アンバラを奪回することだ! 後ろを見ろ。大勢の兵士がいる!! 彼らの任務は、首都を早急に制圧すること! 休憩などという贅沢を共和国は認めない! 我々がカギを握っているのだ。他の部隊の成功も我々次第!! 我々の失敗は、ミッションの失敗だ!! それを理解しているのか!!? 他の者たちはどうなのだ!!!」

ただ、確かにオビ=ワン、アナキン、アソーカ・タノ、と破天荒でフランクすぎるジェダイばかりに彼らが馴れすぎ、軍隊の規律から遠ざかりすぎていたのも事実であり、クローン兵らしさ・軍人らしさを突き付けるクレル将軍に賛同する兵士がいたのも事実である。
クレルにもっとも多く諌言したキャプテン・レックス(CT-7567)も、彼の作戦には嫌悪感を抱きつつ、彼の規律主義には思うところがあったようである。

また、行軍中にクレルはバンシーなる空飛ぶアノマロカリスのような怪物に襲われた兵士を救出している。
このときの彼の身のこなしや戦闘力は確かにアナキン並みで、そうした強さも兵たちの尊敬をつかむことにはなったようだ。

他方クレルの側も、アナキンに鍛えられた兵たちが、他のクローンのような無個性ではないことを悟り、彼らの意志と知恵に敬意を表するなど、妥協姿勢を見せてもいる。

「自分は命令に従いました。たとえその作戦が、個人的に最悪だと思っていたとしても……犠牲になったのは、クローンじゃなく、人間です!」
「………………」
「もちろん上官であるあなたに従うのが自分の仕事ですが、自分のもう一つの仕事は、部下を守ることです」
「…………。
君は頑固なところが魅力らしいな。君が言う通り、確かに今までのジェダイと私の命令は違うだろう。特にスカイウォーカー将軍とは……しかし私は私。難しいことを命じるが、困難な時には仕方がない。それに成果は出ている。
……お前の部下に対する誠実さは見上げたものだ。部下もついてくるだろう。優秀な隊長には必要なものだ。…………それではキャプテン・レックス(●●●●)。君の意見は了解した。解散だ」


ただ、この時点でクレルの意志は、彼らのほうを向くことはついになかったのだが……


◆不協和音

「もっと、安全なルートがあるかどうか、偵察隊を出しましょう」
「オビ=ワンやほかの大隊はこの瞬間も戦っているんだぞ。我々が基地を叩くのを待っている! 安全なルートを探す時間などない!」
「……イエッサー」

作戦は、当初の首都攻略から、首都を支援する空軍基地の制圧へとシフトする。
クレルは例によって、遠距離を直進しての突撃を決定。
クローン兵のあいだでは、無謀な作戦だ、将軍は部下を殺す気だと嫌悪するCT-5555ファイヴズや、これこそがクローン兵の、軍人の在り方だと肯定するドグマ、直接的なやり方に惚れ込むハードケース、といったふうに、上官への不満のみならず同僚たちのあいだですら意見の対立が発生していた。
彼らの直接の上司で中間管理職となったキャプテン・レックスも、心情ではファイヴズに同意つつ、立場としてはドグマが正しい、という本心と立場で葛藤。
レックスは部下たちには「それが軍人だ」と厳しく律する一方、クレルに対してはあえて歯向かわないが、できるだけプライドを傷つけないよう代替案を提示するなど踏ん張ったが、
クレルの無謀な攻撃で兵士が次々と消耗していき、援護を求めても後方部隊を温存するような状況では、蔓延する不和はもはや彼の小手先では納められないところまで来ていた。


その後の空軍基地攻略でも、「正面からの力攻め」を命令するクレルと「潜入して敵戦闘機を奪い内側から崩す」と考えるレックス(および実行するファイヴズ、ハードケース)のあいだで対立が勃発。
最終的にレックスが、上下双方の意見を現場で調整して「双方完遂」することでなんとか占領はできたが、もはやファイヴズの我慢は限界に来ていた。

ついにファイヴズは、制圧した敵の戦闘機を使って、いまだ首都を支援する宇宙艦隊に奇襲をかける作戦を言い出した。
クレルは、陸路からの首都攻撃を決めていたのもあるが、なにより麾下の兵がパイロットではないことや、その戦闘機というのがアンバラ独自のテクノロジーで、銀河の一般的な船とはまったく操縦系統が異なっていたから、飛ばすこともままならないだろうと却下。

……この意見はレックスでもぐうの音も出ないほどの正論で、実際「やれるぜ!」とやってみたハードケースは飛ぶことも火器管制もままならずに格納庫を半壊にしてしまったのだが。
このシーンは、陰鬱な当エピソードでも随一のお笑いシーン。
音声通信でこの意味不明な破壊音を聞いていたクレルもクレルで、言いつくろうファイヴスに「お前誰だ!? CTナンバーを言え!!」(「Who is this? What's your CT number?」)と帝国軍人風のメタネタを吐き出す始末。


だが彼らはこの失敗にもめげず、ついにファイヴズは命令なしでハードケースとジェシーを伴い、戦闘機を使って出撃。敵の戦線の核である補給船は撃沈させたが、その代償としてハードケースが戦死した。

「彼らは勇気ある行動を終えたようだな。残念なことに、私の命令に従わなかったという犯罪を犯したことになるが」

クレルはファイヴズとジェシー、それにキャプテン・レックスも「反逆者」として出頭させ、弾劾。
レックスとファイヴズがそれぞれ責任を追おうとするのを見て、将軍の裁量まで犯していると激怒したクレルは、ファイヴズとジェシーを軍法会議で死刑にするといいだした。
レックスはなおも諌言するが、クレルは邪悪な笑みを浮かべつつ、軍法会議の取り下げと引き換えに、即時の銃殺を決定する

「確かにそうだな……軍法会議の必要はない。時間の無駄になるし、審理する必要もない。必要なのは処分することだ」

軍法会議さえ経ない処刑。それは、兵士として扱わないというに等しかった。

しかし、この無理筋の処刑、いや殺戮は、処刑されるファイヴズたちだけが悩んでいるものではなかった。
クローントルーパーは、みんな一人の男から生まれた兄弟だ。
その兄弟が、敵と戦って死ぬならまだしも、こんなカタチで命を失っていいのか――そんな思いは、ほぼ全員が共有していたのだ。

そして、そんな思いを叫ぶファイヴズを、撃ち殺せる仲間はいなかった。

ファイヴス「忠実な兵士として、命令には従うが、なにも考えないドロイドじゃない! 人間として、正しい判断ができるはずだろう!」
レックス「英雄が処刑されるというなら、いつの日か、この大隊の全員が同じ運命をたどるだろう」


◆露見

これもまた、クレルの思考に従えば反逆である。全員がライトセイバーで殺されるところだった。
いや、もはやレックスは本気で反抗していた。隠すことさえしなかった。

「私を裏切るのは間違いだぞ、クローン……!」
「『キャプテン』です、『将軍』……!」

しかしクレルはあえて彼らの処刑を延期し、代わって次の指示を下した。敵のアンバランが共和国の備品を強奪したという報告を受信したため、これを攻撃せよ、と。
敵は鹵獲した装備を着込み、クローントルーパーに擬態している、と。

処刑を猶予されて収監となったファイヴズ、ジェシーを除いたレックス麾下501大隊はさっそく出動し、クローントルーパーの鎧を着た敵部隊を発見し、激しい銃撃戦を繰り広げる。
しかしその「敵部隊」は、自分たちと同じ顔をした、本物のクローントルーパー、212大隊だった。

レックス「見ろ! クローンだ! みんなクローンだ!!」
ドグマ「……ウソだ……!」

レックスがヘルメットを脱ぎ捨てて必死で絶叫する。同胞を殺していたと、突き付けられた兵たちが絶望する。
212大隊長ワクサー――惑星ライロスで、トゥイレックの少女を助け、彼女の似顔絵をヘルメットに刻んだ男――は、自分たちもクレルからの要請で、501大隊が変装したアンバランだと教えられ、攻撃命令を受けた……といい残して絶命する。

レックスは悟った。クレルは味方ではない。知っていて仲間殺しをさせるような男が、共和国の軍人であるはずがないと。
レックスは501大隊と212大隊の「兄弟」に告げる。反逆を覚悟で、ポング・クレルを逮捕する、と。

レックス「では今このときより、我々は未知の領域に入ることになる」


◆クレルの猛威

「気が付いたとは大したものだ。クローンにしては……」

クレルは遠くにいながら真実を悟っていた。兵たちが悲しみと怒りに燃えて戻ってくるのを感じていた。そのうえで、あえて笑みを浮かべながら彼らが包囲するのを待った。
そして包囲が終わった瞬間、強力なフォースと二本のダブル=ブレード・ライトセイバーを起動し、クローンたちを血祭りにあげていく!

「負けるものか、研究室の中で生まれたクリーチャーどもになど!!!

戦いは基地から森へと移動するが、クレルの四つの光刃と莫大なフォースはブラスターの光弾をことごとく弾き、クローンたちの手に負えない。
しかも彼は暗黒面のフォースをも身につけ、兵たちの居場所はおろか、感情や意識まで手に取るように感知していた。

途中から彼はライトセイバーの光刃さえもしまい、体術で圧倒しはじめる。ライトセイバーなど使うまでもないといわんばかりに。


しかしここで油断が生じた。
タップがとっさに、サルラックの小型種のような触手持ちの穴居生物ヴィクサスを刺激し、クレルを釣り上げさせたのだ。
さすがポング・クレルは、その状態でもライトセイバーでブラスターの砲撃をはじき、ついに触手も切り捨てたが、着地した瞬間のスキを突いたスタン・ブラスターが直撃し、ついに生け捕りにされてしまった


◆最期

「ジェダイ? ハハハハァー、いつまでもジェダイでいるほど甘くはない」

完全に拘束されて監禁されたクレルは、キャプテン・レックスの尋問によどみなく答えた。
ジェダイ騎士団の壊滅と銀河共和国の崩壊の確信、シス帝国の勃興の予知、そして自分は、その時代のために生きるのだ、今回の一件もその都合に過ぎない、と……。

「アンバラから共和国軍駆逐が完了したら、伯爵がその褒美として、弟子としてくださる……」

レックスはクレルの頭に向けて銃を突き付けた。もはや生かしておいてはならない敵だと。処刑するしかないと。
しかし……レックスは引き金を引けなかった
クレルには暗黒面のフォースを通じてわかっていた。クローン兵にとって、上官を撃つというのは多大な負担に感じる。撃ちたくても撃てないのだ。レックスの心に、ブレーキをかけるプログラムがあるのだ、と。

「だがお前は恐れているな……? 震えている! 違うか……?」
「お前にはできない。だろう……?」

クレルがそう嘲笑った瞬間、彼の背中を光弾が撃ち抜いた
それは、最後まで彼を信じていたのに裏切られた、あのドグマが撃ったものだった。
理性ではない感情、暴走した感情、プログラムをも超える真情は、暗黒面のフォースでも感知できないことを暗示するかのような、そんな最期であった。

またクレルの死後はジェダイ側に内部に暗黒面が蠢いていることが明らかになったことになり、ジェダイ聖堂爆破事件にてクレルの例からジェダイ内部による犯行を疑う声も上がるなど大きな余波を与えることとなる。


【余談】

共和国を寝返りドゥークーのもとにつこうとしていたと本人は発言しているが、実際にドゥークーと渡りをつけていたのかは不明。
本人も「ドゥークーの手先なのか!?」という詰問に「まだ違う」と返していたことや、アンバラのエピソードにドゥークーをはじめとする独立星系連合の幹部はまったく登場していないことから、あの時点ではクレルひとりの計画でしかなかったと思われる。


腕利きのジェダイでありながら暗黒面に落ちてシス側に寝返ろうとする、というのは、かつてレジェンズ分類作品において多くの類似例があった。
有名なのは、メイス・ウィンドゥとともにヴァーパッドを編み出した達人ソーラ・バルクであろう。
ポング・クレルはひょっとすると彼の代役かもしれない。




「項目の追記・修正が完了したら、伯爵がその褒美として、弟子としてくださる……」


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最終更新:2023年12月20日 23:08