登録日:2024/01/24 (水) 21:33:17
更新日:2024/12/23 Mon 19:55:46
所要時間:約 9 分で読めます
「ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。~魔導書の力で祖国を叩き潰します~」とは、
小説家になろうにて掲載されている小説である。
著者は「はぐれメタボ」氏
【HJ小説大賞2021前期】受賞作品。
2022年5月より書籍版が発売。絵師は「昌未」氏
2023年2月より漫画版が発売。作画は「おおのいも」氏
あらすじ
他の令嬢に心を移した王太子から、パーティーで婚約破棄を告げられた公爵令嬢・エリザベート。
そのまま不当な咎で牢屋に幽閉されてしまい、すべてを捧げてきた国からも裏切られたことを知る……。
ついに我慢も限界に達したエリザベートは、強力な力を秘めた魔導書を手に、亡命を決意!!
隣国の子爵・ルーカスの手を借りて新たな地で新生活&商売を始める。祖国への凄烈な復讐心を胸に秘めながら――。
(公式サイトより引用)
作品概要
あらすじの通り、女性向け「小説家になろう」作品においては人気である「婚約破棄」からの「婚約者ザマァ」…
ではない。
多くの婚約破棄ストーリーでは、元の婚約者よりもはるかに優秀で主人公に価値を見出したお偉いさまが主人公を拾う…というのがテンプレではある。
だがしかし、
主人公は戦況的不利をあっさり覆す軍事戦術・戦略眼、そして抜きんでた戦闘力の持ち主であり、また商売接客営業能力に現場での道具開発、失われた魔法具の復活、庶民にも受けの良い清濁併せ吞む施政と、才色兼備文武両道というか最早
チートキャラであるため、
シンデレラもの作品でいう
王子様のようなヒーローキャラクターは登場しない。基本的に主人公とその従者の二人三脚で物語は進行する。
なんなら
投獄されている間すら仕事を振られるくらい優秀な人間ではあるのだが、
「あいつは優秀だから自分でなんとかするだろう」と牢から1か月も出してもらえなかったことで自身の祖国を見限り、
祖国を滅ぼそうと本気で牙を剝く…という作品である。
この「祖国を滅ぼそうとする」は
比喩でもなんでもなく、特に「小国編」」ラストでは
とんでもない凶行に走る……これのせいで「日本にやってきてくれ」だとは口が裂けても言えない
以上より、本作は小説家になろうにおいて人気な「追放もの」「悪役令嬢もの」や「シンデレラもの」ではなく、「復讐」「ダークヒーロー」ジャンルの作品である。
でも「婚約破棄してざまぁ」はする。なろうだからね、仕方ないね。
登場国家
ハルドリア王国
公爵令嬢エリザベートがかつて王の補佐、ミスばかりの王子のフォローとして仕え、施政を施していた国。
…ただ、あれほど尽くしたエリザベートが国家反逆の罪を着せられた際、身近な人間以外はあっさりとデマを信じてしまったりと、住民のおつむはお世辞にも良いとは言えない模様。
ユーティア帝国
国家反逆者エリザベート…もといエリーが亡命先として選んだ国。
まだ建国から100年と経っていないが、主君の武功により周辺諸国を吸収、瞬く間に勢力を拡大していった。
かつて王国とは戦争をしており、若干10歳であるエリザベートには大層な被害を受けたらしい。
エリザベートが居ない王国と比べたらまともな国…と言われるとそうではなく、
悪辣な手段を用いる商人や、亜人や人間含めて
奴隷を人間扱いしない奴隷商人、道が整備されていない街道では野党が蔓延っておりそれを放置する領主の存在など、
まだまだ完璧な施政が施されているとは言えない模様。
サージャス王国
ハルドリア王国の属国。
王都と街が3つ、いくつかの村がある小さな国であり、帝国や王国相手に戦争をする国力はないが、かといって
王国の脅しを跳ねのける国力もない。
20年前、魔物の発生から帝国の援軍により保護してもらった過去があり、その見返りとして領土の一部が帝国に併合されたという過去がある。
だが、「奪われた領土を取り返す」という名目でユーティア帝国の領土となった村に侵略戦争を仕掛け、略奪行為を行ってしまう。
エリザベートが率いる冒険者たち義勇軍にすら敗北してしまう有様だが、侵略の賠償のため九代国王が
取った行動と、その息子たる十代国王が
贖罪のため行ったことは…?
登場人物
主人公とその縁者
エリザベート・レイストン ⇒ エリー・レイス
ハルドリア王国の王子にして次期国王、フリード・ハルドリアの嫁だった。
施政、軍事、経済、社交辞令、商売、そして野盗の群れ程度であれば一人で殲滅してしまう剣と魔法の武芸と、いっさいの隙の無いパーフェクトヒロイン。
そんなチートキャラが「国」に向けて本気で牙を剝いたらどうなるか…彼女の振舞いを戦々恐々と見守るのが本作の醍醐味である。
性格は良くも悪くも徹底した合理主義者。
無能王子への婚約も、民の心情も意識した施政も、私財を投げうった貧民への施しも、全ては自身の祖国を思うがゆえに「合理的に」判断を下した結果である。
また、「野盗」や「敵国の兵士」には一切の容赦はせず、首を撥ねたり、頭を串刺しにしたり、縦に真っ二つにしたり、氷漬けにした後に粉々に砕いたりする。
そんな彼女だが、あまりにも優秀過ぎるが故に自身の婚約者である王子が無能すぎて全く目に入っておらず、彼に足元を掬われたというのが物語のきっかけである。
ただし、復讐に巻き込んだ何の罪もない人々に対しては罪悪感がない訳ではなく、原作終盤ではそれが掘り下げられる。
魔力を操る者が最後に行き着く到達点、「神器」。
人によっては剣や鎧の形を取るのだが、彼女の場合魔導書の形となっている。
七冊の魔導書全てが彼女の神器にあたるのだが、合理的な彼女はそのうちの一冊のみを公にしており、自身の親や婚約者、侍女にすら真の能力を隠している。
七つの魔導書のうちの一つ。
他人の魔法を記録する事で、適性のない魔法を扱う事が出来る強力な神器。
彼女は本来水の魔法にしか適性を持っていないのだが、土の魔法で塹壕を作ったり、闇の魔法で催眠や暗示をかけたりできる。
彼女が国や身内に公にしているのはこの一冊だけであるが、それでも10歳のころに帝国相手の戦争で猛威を振るったらしい。
七つの魔導書のうちの一つ。
相手の記憶を改ざんし、強力な暗示を掛けることが出来る。
強力な反面、使用中は自身の右腕が黒く染まってしまい、常に激痛が走ってしまう。
七つの魔導書のうちの一つ。
天界や冥界など、この世界とは違う世界の存在と契約し、対価を支払う事で力を借りる事が出来る
作中では主に、人言を理解する鳥「セイントバード」を銀貨を対価に従わせ、王国時代から築いていた連絡網からの情報収集に使っている。
ミレイ・カタリナ
エリザベートもといエリーの直属の侍女である
メイド。
没落した貴族の娘である
ストリートチルドレンだったが、エリザベートに拾われて
メイドとして仕えることになった。。
エリザベートより「あなたの努力する姿勢を買っている」「ミレイ・カタリナはエリザベート・レイストンの傍に相応しい存在だとそう思わせてみなさい」という言葉を励みに成長。
家事に諜報を完璧にこなす超人になり、エリザベートからは
親や婚約者含めた誰よりも信頼を寄せられている。
光を操って他人に姿を偽ったり、姿を消して隠密行動をすることが出来る。
アリス
エリザベートが倒した魔物(変異体で通常より強い)の体内から出てきた結晶に閉じ込められていた少女。
エリザベートのことを「ママ」と呼んで懐いたため、エリザベートの養子となる。
血は繋がっていないが、エリザベートはアリスのことを実の娘のように愛情を注いで育てていく。
水属性と火属性の2種類の魔法を使うことができるが、この世界ではごく一部の例外を除き1人につき1種類の属性魔法しか使えないため、その存在には何やら謎が隠されている様子だが…。
彼女の正体が明らかになる最終章「アリス編」は2022年9月以降、更新が停止している。
ルノア
エリザベートが設立した「トレートル商会」の従業員の少女。
元々はエリザベートが他の商会から引き抜いた商人の娘で、重傷を負っていたところをエリザベートの治癒魔法に救われてからはエリザベートの補佐のような立場で働くことになった。
風属性の魔法のほか、「鑑定」の固有魔法が使える多才な可能性を秘めており、まだまだ成長過程だが将来は「荒野の商人」と言う二つ名の冒険者としても大成することが示唆されている。
ミーシャ
エリザベートが自分の商会の人手確保のために購入した獣人の奴隷少女。
体裁としては奴隷だがエリザベートたちからの扱いは丁重であり、アリス、ルノアと一緒にいることが多い。
こちらもまだまだ成長過程ではあるが、身のこなしを活かした短剣での戦闘を得意とする。
エリザベートの仲間・友人
ティーダ
エリザベートたちが帝国への道中に知り合った、イブリス教のシスター。
「〜っス」と言う口調が特徴。でも別にボールを投げたりコンボが気持ち良すぎたりはしない
大の酒好き、ギャンブル狂い、(相手が悪人とは言え)平然と殺傷を行うなど、シスターらしからぬ振る舞いだらけの生臭坊主ならぬ生臭シスター。
実力は高く、多彩な神聖魔法を使える上に直接戦闘も優秀であり神器も使えるなど、どうやらただのシスターでは無いようで…?
エルザ
〈不死鳥のエルザ〉の
二つ名を持つA級ランク冒険者。
Aランクパーティ《鋭き切先》のリーダーでもある。
高い実力を持つ剣士で、エリザベートとは『小国編』での依頼を通して関わって以降、何度も共に死戦を潜り抜ける戦友であり友人でもある関係になっていく。
所有している神器「不屈の大剣」は、自身が窮地になればなるほど強力なバフがかかると言うものであり、
二つ名もそれに由来する。
ユウカ・クスノキ
〈漆黒〉の
二つ名を持つA級ランク冒険者。
舞台の王国・帝国から見て東方にある国の出身で、外見は12歳くらいの小柄な少女。
見た目に似合わぬ身体能力の持ち主で、巨大な戦斧をメインにした接近戦を得意とする。
また、薬師としても一流の腕前を持ち、いずれは世界に7人しかいないS級ランクにも届くと言われている。
『迷宮編』でエリザベート、エルザ、ティーダと共に依頼に挑んで以降、エリザベートの良き仲間であり友人のような存在となっていく。
作中では、もっぱら「ユウ」と呼ばれることがほとんど。
作者の別作品「薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる」の主人公とは世界観を共有した同一人物と思われる。
ユーティア帝国関係者
ルーカス・レブリック
帝国の子爵家の当主。
王国にも大使として派遣される立場の存在だが、そこでエリザベートに目を付けられてしまってからは、
彼女の亡命を手引きし、帝国内でも彼女の面倒を見ることになる。
エリザベートに最も近い異性だが、ヒーローには程遠く苦労人ポジション。
戦闘力は意外にも高く、戦いにおいては炎属性の剣の神器を使い前線に出ることも多い。
ハルドリア王国関係者
フリード・ハルドリア
エリザベートの婚約者であった、王国の王子にして、どうしようもない馬鹿。
理想論ばかりで国民の心情を無視した無謀な施政を掲げ、努力嫌いで武術の訓練時に兵士に手加減を要求、自分が愛するシルビアには大甘で国庫を無駄遣いする、
エリザベートの置き土産である商会も速攻で使い潰すなど、
そのくせプライドだけは高く、「エリザベートがいれば…」「エリザベートなら…」という言葉を聞くたびに癇癪を起こす、王族として以前に人間としてもダメな男。
本作が小説家になろうテンプレな追放モノ作品であれば真っ先に報いを受けるべき存在なのだが、無能であるがゆえに多くの人間の思惑により生かされ、問題を加速させていく。
シルビア・ロックイート
エリザベートより婚約者の座を奪った、ロックイート男爵家の令嬢。
庶民生まれ故に歯に衣着せぬ言動が貴族たちの心を掴み、虜にした。
無学だが無能ではないため、フリードを操ってエリザベートを蹴り落とすことに成功するも、エリザベートが居なくなった王国がどんどん悪い方向に転がっていくことに気づいてしまい…
ロベルト・アーティ
国王とも個人的に親交もある騎士団長の息子。
フリードに仕える騎士であり、王国の将来を担う優秀な人間であるのだが、
「たとえ悪行でもフリードのいうことを聞く」「けど侵略戦争からの虐殺は許容できないからやっぱり離反する」など、理想の騎士を追い求めるあまり頭でっかちで融通が利かない、まだ青さが抜けない半人前の男。
フリードのデマを鵜吞みにしてエリザベートを公衆の面前で拘束したことを、帝国への降伏ついでにエリザベートに詫びるのだが…
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エリザベートが許すわけがなかった |
上記のダブルスタンダードより、エリザベートより「貴方のやっていることはただの騎士ごっこ」「騎士モドキ」と断じられ、色欲の魔導書より暗示を掛けられたうえで王国に返還される。
実家のベッドにて目を覚ますと、妹からは泣きつかれ、父からは鉄拳制裁を受けるも、無事に帰ってきたことを喜ばれる。
父の勧めで一兵卒からやり直す覚悟を決めた矢先、妹を切り捨ててしまう。
かくして、エリザベートの暗示により暴走した未熟な騎士は、アーネスト卿の父親を除く家族と使用人、無辜の民を105名、兵士を21名、騎士を2名殺害する大量虐殺事件を引き起こし、処刑台にてその命を散らした。
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ブラート・ハルドリア
ハルドリア王国現国王にして、フリードの父。
非常に武勇に優れた人物で、戦場では雷属性の魔法と戦闘力であらゆる敵を圧倒する。
エリザベートからは「脳筋」呼ばわりされることもある単純明快な思考の持ち主だが愚王ではなく、フリードが次期国王としての器ではないことも承知している。
しかしフリードが自分と同じ雷属性の素質があることからフリードを後継ぎにすることを諦めきれておらず、フリードへの対応を寛大にしすぎる悪癖があり、それが徐々に国に取り返しのつかない損害を与えていくこととなる。
ジーク・レイストン
エリザベートの実父。ハルドリア王国の宰相にして、ブラート国王の古い友人でもあり、実質的な右腕的存在。
軍事、政治面に精通した極めて優秀な人材であり、愛国心も強く、エリザベートと同様かそれ以上に合理的に国のために動いている。
しかしその強すぎる合理性と国への忠誠心のために、実の娘であるエリザベートに対してすらも「すべての私情を捨てて国のために尽くすべき」と言う在り方を押し付けており、
挙げ句の果てにはフリードの婚約破棄はフリードに全面的な非があることを承知の上でエリザベートを牢から出そうともせず国務を手伝わせ続け、エリザベートがブチ切れて帝国に亡命した後はエリザベートを指名手配するなど親として娘を守ろうとする姿勢を欠片も見せなかった。
本人はあくまで国の安定と存続をすべてに優先させているだけとは言え、エリザベートが祖国に対する復讐心を増幅させた大きな原因の一つと言える。
アデル・ハルドリア
フリードの妹であるハルドリア王国の王女。
ボクっ娘。
非常に聡明な頭脳や分析力を有しており、兄のフリードとは比較にならないほどまともで優秀な人物。
武力も高く、風属性の神器と格闘術を駆使した戦闘力はエリザベートにも引けを取らない。
そのエリザベートのことは幼少期より慕っており、エリザベートもアデルを妹のように可愛がっていた。
フリードが後継となることが前提だったこともあり、彼女は南方にある国に留学して国政に関わることは無い…はずだった。
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中盤のネタバレ |
フリードの度重なるやらかしに遂に庇いきれなくなったブラート国王により、フリードに代わる後継者候補として呼び戻され、傾きかけた王国を立て直す役目を追う。
最終的に、彼女が王国を守るために下した決断とは…
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追記、修正は、自分の母国への復讐の為にお願いします。
- これ読んだけど、実際ロベルトの下りはやり過ぎではと引いてしまったな… -- 名無しさん (2024-01-24 23:21:35)
- 復讐を目的としたり、敵に容赦しない主人公を他に数名知っているが、彼らはまだ優しかったんだなとロベルトのところを読んで思いました。 -- 名無しさん (2024-01-25 06:45:02)
- ロベルトの一件は、理由が作れれば免罪しようとしてた国王もかなりヤバかったな…… -- 名無しさん (2024-01-25 07:30:04)
- シレッと罪のない一般人を虐殺した(させた)ところで見るのやめたな… -- 名無しさん (2024-01-25 14:17:44)
- 結構前から更新止まってない? -- 名無しさん (2024-01-26 13:39:07)
- とあるなろうレビュワーのいう「適度な復讐」がなってないと読者はついてきてくれない -- 名無しさん (2024-05-09 18:30:21)
- エリザベートにとってはハルドリア王国の一般人はフリードの流したデマをあっさりと信じる裏切り者だから、罪のない一般人なんていないんだよ。皆殺しにするつもりなの。 -- 名無しさん (2024-05-09 20:37:58)
- ↑ざまぁ系って露悪的になりがちだからな。カタルシスのためにヘイトを貯めることは必要でも、ヘイトを稼ぐことが目的になりがち…。 -- 名無しさん (2024-06-08 17:54:59)
- エリザベートは「国民に尽くしてきたのに」ってキレてるけど、国民も労働・納税等で貴族に尽くしているわけで。この互恵関係を無視して一方的に恩を着せて裏切り者扱いって酷い女だな。お偉いさんのゴシップなんて一般人のささやかな娯楽だろうに。 -- 名無しさん (2024-12-17 01:10:35)
- でも汚職不正一切働いてない、私財を投じて慈善事業いくつも重ねて、裏切り者扱いされたら、そりゃ勤め先を滅ぼそうという気になるのも頷ける。子供を殺したのはやり過ぎだが… -- 名無しさん (2024-12-17 07:55:31)
- そもそも噂が流された時点でエリザベート側が正しい情報を発信してない(バカ王子を一か月もフリーにしていた)のに王国民に悪い噂を信じた責を問うのはなぁ…しかも信じようと信じまいと無差別に復讐の対象にしてるし。ロベルト使った虐殺後に人格者っぽい描写入れられても飲み込めないわ。 -- 名無しさん (2024-12-23 19:55:46)
最終更新:2024年12月23日 19:55