ビバリーヒルズ・コップ(映画)

登録日:2024/06/13 Thu 23:01:16
更新日:2024/10/22 Tue 00:10:48
所要時間:約 11 分で読めます




『ビバリーヒルズ・コップ(原:BEVERLY HILLS COP)』は、1984年に公開された米国のクライムアクション&コメディ映画。
パラマウント映画製作。CIC配給。
日本での公開は1985年4月。

主演はエディ・マーフィー。
監督はマーティン・ブレスト。

主題歌はグレン・フライの『Heat Is On』
また、メインテーマとして使われている、通称“ビバリーヒルズ・コップのテーマ”(正式な曲名は『AXEL F』で、主人公アクセルのテーマ。)も有名である。
作曲者は後に『トップガン』も手掛けるハロルド・フォルターメイヤーで、同曲を含むサウンドトラックはUSビルボード200の1位に輝きグラミー賞を獲得した。


目次


【概要】

当時、弱冠23歳(公開開始当時)ながら既に人気コメディアンとしてお茶の間の人気者となっていたエディ・マーフィーの単独初主演作作品。*1
1982年に公開された映画初進出作品の『48時間』に続く大ヒット作となったことで、エディ・マーフィは映画俳優としての地位をも固めることになった。

他の共演者の魅力もあり、当然のようにシリーズ化もされたものの、予算も増額された続く『2』にて最高潮を迎えた後で、『3』でガクりと評価を落とすというシリーズ物あるあるを迎えた末に暫く続編企画が途絶えてしまっていたものの、2024年に4作目となる『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』が初代から40年という節目にNetflixで公開された。2024年は『帰ってきた あぶない刑事』『バッドボーイズ RIDE OR DIE』も公開されており刑事映画の年となった…とも言える。


【物語】

犯罪都市デトロイトで生まれ育ったアクセル・フォーリーは、元々は札付きのワルであったが現在は更生して刑事の身。
日夜、街の平和を守るために犯罪と戦っている……のはいいのだが、なまじワルとして身につけてきた知識とクソ度胸と機転の良さと天性の喋りからか単独で潜入捜査まで行う有り様で、確実に結果こそ出すものの周囲に多大な迷惑をかけることも少なくなかった。
そんなフォーリーは、今日もヤクの売人を挙げるために無闇に大掛かりな準備をした結果、交渉の現場を巡回途中の警官に見つかってしまったことで、挙げようとしていた犯人による、自分が持ち出してきた大型トラックの暴走事件という更なる二次被害を出して大目玉を食らってしまった所。


さすがに凹んで帰宅したフォーリーだったがはかかっていたものの自宅アパートに違和感が……警戒しつつ中に入るが、待っていたのは幼馴染で悪友のマイキーだった。
マイキーが手にしていた出所不明の無記名債券を金に変えようとしているという話から、またもやマイキーが面倒事を起こそうとしていると感づきつつも一緒に飲みに出たフォーリーは、おなじく幼馴染のジェニーの伝手でビバリーヒルズにいたというマイキーの近況を聞き出しつつも昔話に花を咲かせる。

その中で、マイキーはどうしようもない奴だが今の自分があるのはマイキーのお陰だと改めて確信したフォーリーもまたベロンベロンに酔っ払いつつ帰宅するが、そこで待ち構えていた刺客達によりフォーリーは気づく間もなく倒され、失神している内にマイキーは呆気なく殺されてしまうのだった。

現場検証にやって来た上司のトッド警部に自分に捜査を任せるように訴えるフォーリーだったが、マイキーとの関係もあってか断られてしまう。
ならばとフォーリーは自ら“休暇”を申請し、フォーリーが何かしようとしているのを察しつつもトッド警部も釘を刺しつつも了承するのだった。

そして、それから1日の後……全米に名だたるセレブの街であるビバリーヒルズに場違いなオンボロ車に乗ったフォーリーの姿があった。

もちろん、親友を殺した落とし前をつけさせるために。


【主な登場人物】


  • アクセル・フォーリー
演:エディ・マーフィー/吹替:富山敬(テレビ朝日版)・山寺宏一(VOD版)・屋良有作(機内上映版)
本作の主人公。
少年時代から数々の犯罪行為に手を染めてきたワルだったが、長じてからは更生して故郷のデトロイト市警の刑事。
長年のワルとしての知識を活かした独自の捜査を行うのが()で、異常に高い検挙率を誇りつつも、全く周囲への根回しをしないことや、手段を選ばない大立ち回りをやらかすために更なる騒動の火種になることもあり、常日頃から直属の上司のトッドや友人のジェフリーからの小言が絶えない。
今回も親友マイキーを殺されてしまったことから居ても立っても居られず、誇りを持っている刑事の職を失う覚悟で“休暇”を申し出て単身でビバリーヒルズへ。
瞬く間にマイキーを殺したのがメイトランドだと看破するも、そのメイトランドの街の名士としての影響力から手こずることに。
しかし、その傍迷惑な厄介者でありながらも常に本質を突く天性の人たらしとしての魅力から、いつの間にかタガートとローズウッド(更にはボゴミル)を始めとしたビバリーヒルズ市警の面々を味方に付けており、メイトランドとの決戦に臨む。
詐欺は専門ではなかったようだが、その類いまれなるトークスキルとアドリブ力を以てしてオンボロ車でビバリーヒルズでも一番豪華な見た目のホテルに乗り付けて予約も無しに宿泊(しかもスイートルーム)を取りつけたり、セキュリティが固い会員制レストランに正面から入り込んだりとやりたい放題である。
ちなみに、ビバリーヒルズ市警にて勾留されていたフォーリーが牢屋から出される時に心底疲れたような顔をしているのは、それが最後の撮影シーンでスケジュールに追われた強行撮影もあってかエディ・マーフィーがろくに食事も摂れずに本気で疲れていたため。


  • “マイキー”マイケル・タンディーノ
演:ジェームズ・ルッソ/吹替:石丸博也
フォーリーとジェニーの幼馴染。
2年ほど前にムショから出た後はデトロイトに戻らずにカリフォルニアのジェニーを頼ったようで、メイトランドの倉庫で働いていたようだが、そこで違法な海外向けの無記名債券を見つけてしまい、思わずくすねてしまった模様。
足がつかないようにしていたつもりだったようだが、さすがにメイトランドの組織レベルの相手にそれが通じるはずもなく、確りとバレておりデトロイトに戻った所をザックに殺されてしまった。
現在は更生しているフォーリーやジェニーとは違い、未だにムショを行ったり来たりしていたり、本編でも勝手に鍵開けしてフォーリーの部屋に上がり込んで冷蔵庫の中を漁ったりとどうしようもない小悪党ではあるようだが、少年時代に一緒にやった車泥棒で自分だけ捕まってもフォーリーのことを話さなかったり*2と身内には優しい面があり、それがフォーリーやジェニーから愛されていた理由なのだと思われる。


  • “ジェニー”ジーネッテ・サマーズ
演:リサ・アイルバッハー/吹替:藤田淑子(テレビ朝日版)・齋藤絵理(VOD版)
一応は本作のヒロイン。
フォーリーとマイキーの幼馴染で、現在はメイトランドが経営するアトリエの代表として画商をやっているキャリアウーマン。
現在の姿からは想像もつかないが、フォーリー達の幼馴染ということから元はデトロイトのワルガキだったと思われ、劇中でも事情があったとはいえ部下の車を勝手に持ち出している場面がある。
マイキーに迷惑をかけられるかもと思いつつも仕事を紹介した張本人で、その後のフォーリーの訪問によって知らされたマイキーの死と、その件についてメイトランドが探りを入れてきたことから事情を察し、フォーリーの仇討ちに協力することになる。


  • ダグラス・トッド警部
演:ギルバート・R・ヒル/吹替:阪脩(テレビ朝日版)・北島善紀(VOD版)
デトロイト市警の捜査本部を預かる責任者で、フォーリーの直接の上司。
フォーリーの刑事としての才能を高く買っており未来もあるとまで言っているものの、フォーリーが独断専行で周囲に迷惑ばかりかけているのには辟易している様子で、フォーリーに振り回されるたびにブチ切れるのがお決まり。
しかし、その実力を買っているだけに明らかに含みのあるフォーリーの“休暇”の申請を受け入れた他、ビバリーヒルズ市警から照会が来たときにはフォーリーを直ぐに帰すようにと言いつつも「優秀な刑事」であることは伝えていた。
なお、口の悪さについてはフォーリーと大差無いレベル(原語版を聴くと、Fワードの単語を連発している)
ちなみに、演じるギル・メイヤーは取材のために市警を訪れた際に監督のブレストが物腰を気に入り出演してもらった本物の警部さんである。
本作のヒットにより世界的な知名度を得てしまった中の人は他からもオファーを受けたりもしたそうだが役者に転身することはせずに警官の職務を全うし市議会議員にもなっている。
しかし義理堅い性格だったようで、役者として本シリーズのみには出演を続けてくれた。


  • ジェフリー・フリードマン
演:ポール・ライザー/吹替:小室正幸(テレビ朝日版)・赤坂柾之(VОD版)
デトロイト市警でのフォーリーの同僚。
優秀だが問題ばかりを起こすフォーリーを気づかい、忠告ばかりをしてくるがもしかしたら遙か未来の子孫かそっくりさんとは違って普通にいいヤツ。


  • “ビリー”ウィリアム・ローズウッド
演:ジャッジ・ラインホルド/吹替:野島昭生(テレビ朝日版)・金城大和(VОD版)
ビバリーヒルズ市警の刑事で、タガートとコンビを組んでいる若手。
まだまだ経験の浅い生真面目な若者だが、それだけに耐性が(いい意味で)無かったり、経験が浅い一方で映画好きが昂じて刑事にでもなったのか、密かに射撃の腕を磨いていたりという意外な一面がある。
それ故に、監視として付けられたにもかかわらず比較的に年が近いということでフォーリーともウマが合ったのか、フォーリーのハチャメチャながら“正しい”行いにも直ぐに慣れていき、終盤では射撃の腕でフォーリーの窮地を救っている。……そして、続編では。


  • ジョン・タガート巡査部長
演:ジョン・アシュトン/吹替:大塚周夫(テレビ朝日版)・相沢まさき(VОD版)
ビバリーヒルズ市警のベテラン刑事で、若いローズウッドとコンビを組む。
元々は堅物で、管轄違いで勝手な捜査を行ったフォーリーが挑発的な行動を取ってきたことから殴ったりしたこともあったものの、監視を続ける中でフォーリーにしてやられたり(追跡されないためにホテルの高級サービスをデリバリーさせた隙にバナナを車のマフラーに突っ込まれてエンストさせられた。)、何よりもその後で仲直りと称して入ったストリップ・バーでの強盗逮捕の一件にて如何にフォーリーが優秀な刑事で更には誠実な性格(完全に自分の手柄なのにローズウッドとタガートの手柄として、更には監視の任務も手を抜いていないことを自分の立場が悪くなるのに主張した。)なのかを知ったことと、どんどんフォーリーに感化されておかしくなっていくローズウッドのせいもあってか、終盤にはタガートもまたメイトランド邸へのカチコミに参加することに。


  • アンドリュー・ボゴミル警部補
演:ロニー・コックス/吹替:中村正(テレビ朝日版)・中博史(VОD版)
ビバリーヒルズ市警の捜査本部を預かる責任者で、タガートやローズウッドの上司。
部下には、他にもフォスターとマケイブ等がいるが、まんまとフォーリーに出し抜かれていた。
非常に生真面目な堅物で規則と規範を重んじる性格。
厄介者のフォーリーを部下のタガートが殴ったのを見咎めたのを見た時にはタガートをその場で厳重注意しつつ、身内だからといって庇おうとせずにフォーリーに告訴するかを聞いたことでフォーリーを呆れさせた。
しかし、堅物であるが故に善悪の判断は付く性格のようで、普通なら尻込みするであろう街の名士であるメイトランドの悪事の疑惑についても無かったことにするのではなく真摯にフォーリーの話を聞いていたのもボゴミル。
規則と上司であるハバード本部長の命令もあってか、一度は問題を起こし続けるフォーリーを強引に退去させようとしたものの、終盤にはメイトランド邸周辺での通報から事情を察すると市警を挙げて支援に駆けつけた。
その後の本部長からの詰問に対する“粋な返し”は本作の名場面の一つ。
中の人は、数年後に奇しくも(?)フォーリーがやって来たデトロイトを舞台とした近未来バイオレンアクションでジョーンズおじさんを演じたことでも有名。


  • セルジュ
演:ブロンソン・ピンチョット/吹替:林一夫(テレビ朝日版)・永井将貴(VОD版)
ジェニーのアトリエで働くオネエが入っている同僚の画商。
彼との会話があまりにも印象的だったのか、後にフォーリーはメイトランドを詰問するべく訪れた高級レストランにてカマ演技で押し通った。
ちなみに、セルジュとの会話シーンにてフォーリーは“いい笑顔”を見せているが、これはピンチョットの演技があまりに面白すぎて感心したエディ・マーフィのマジ笑いである。


  • ザック
演:ジョナサン・バンクス/吹替:安田隆(テレビ朝日版)・さかき孝輔(VОD版)
メイトランドの配下で、荒事担当のプロ。
マイキーをデトロイトまで追ってきて始末した張本人でもある、冷酷で残忍な男。
しかし、トッド曰くプロ故にマイキーを始末する際に無関係はフォーリーは殺さずに留めていたことが、結果的に自身の組織の崩壊へとつながる大きなミスにつながった。
ちなみに、中の人は『48時間』にも出演している。


  • ヴィクター・メイトランド
演:スティーヴン・バーコフ/吹替:田口計(テレビ朝日版)・後藤哲夫(VОD版)
ビバリーヒルズを拠点としている貿易商。
表向きには美術品やコーヒーの卸売りを行っているらしいが、その実態は大規模な麻薬の密売に手を染めている犯罪組織の親玉。それで稼いだ金で豪邸を建てたりするなど贅沢三昧な暮らしを送っている。
ジェニーの雇い主ではあるが、マイキーを始末した件から刑事のフォーリーに追われることになったのが運の尽き。
当初は「(当時の時点で治安の悪い)デトロイトから来た虫ケラ」とフォーリーを舐めていたが、最後に彼はそれが大きな間違いだったことを知るハメとなる。


【余談】

  • ちなみに、本作は元々はシルヴェスター・スタローン用に用意されていた企画だったというが、スタローンはコメディ的な要素を含むことに難色を示し、脚本の書き換えを要求……。
    その他、予算の都合などで降板することになったことからエディ・マーフィが出演して当初の予定通り(以上)のコメディ要素を含む刑事物となったとのこと。*3

  • ある世代以上だとエディ・マーフィーと言えば下條アトムの声が思い浮かぶかもしれないが、この初代『ビバリーヒルズ・コップ』ではフジテレビ版が存在しないので、初代のみ下條アトム声のアクセル・フォーリーを聞くことが出来ない。



追記修正は高級ホテルのスイートにシングル料金で宿泊してからお願いします。

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最終更新:2024年10月22日 00:10

*1 これ以前の出演作である『48時間』ではニック・ノルティと。『大逆転』ではダン・エイクロイドとのダブル主演。

*2 この話をしたときのフォーリーの反応から、一緒に少年院送りになっていたら現在の“刑事としての自分”は無かったかもと考えているのが窺える。

*3 尚、この後でスタローンが自ら企画を焼き直してワーナーに持ち込んで公開されたのが『コブラ』であり、こちらもヒットこそしたものの話題性や評価については完全に『ビバリーヒルズ・コップ』の圧勝であった。また、この時のいざこざの恨みもあってか、続く87年製作の『ビバリーヒルズ・コップ2』にて、パラマウントは『コブラ』のヒロイン役で当時のスタローンのリアル嫁だったブリジット・ニールセンを悪役として起用した上に『コブラ』のポスターをアクセルに一瞥させるというシーンを入れている。……ちなみに、スタローンとニールセンは『2』が公開された後に離婚しているが、後にニールセンは『2』の監督だったトニー・スコットとの不倫を告白。……最初にケチを付けたのはスタローンの方だったが可哀想すぎんか?